| な ご り 雪 |
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作:眠猫
3 ひとみは幸人の車に乗っていた。 運転は幸人がしている。 自分の出生の秘密を聞かされて、ひとみは幸人に何でもすると言った。 幸人を章子が傷つけていた。 その償いの為なら何でもすると幸人に誓ったのだ。 申し訳無いと思う。 そして、償っていけば幸人に許してもらえるかもしれない。 ひとみは幼い頃から寂しかった。 母も父も構ってくれなかった。 肉親の情に飢えていた。 幸人から、少しでも愛情をもらえれば満足だった。 血のつながりは無いとわかっていても、今のひとみには唯一の身内だ。 「本当にいいんだな?」 運転しながら幸人が聞いた。 「はい、おじ様」 償うと言ったひとみにある会のホステス役をやれと幸人は言った。 幸人が入会したい会には審査があり、それを合格したいと言う。 どんな物かはわからないが、了承した。 「普通じゃないって事はわかってるんだな?」 何回もそう言われた。 それでもよかった。 少しでも幸人の役に立ちたい。 「わかって・・・います」 誰の子かもわからない自分はどうなってもいいと言う投げやりの気持ちになっていた。 「そうか。着いたぞ」 車は大きな洋館の前に泊まった。 すぐに黒いスーツを着たボーイが出てきた。 「行くぞ」 車のキーをボーイに預けて、車を降りる。 中に入ると小さなフロントがあった。 看板も何も出ていないがホテルのようだ。 「こっちだ」 フロントで鍵を受け取ると幸人は2階に上がる。 ひとみはそれに従った。 入った部屋は大きなダブルベッドのある洋室だった。 中の調度品は見てわかるほどの高級品だった。 「俺は下に挨拶をしてくる。待ってろ」 「はい・・・」 幸人はそう言いながら、ポケットから黒い布を取り出した。 それで目を覆う。 目のところには穴が開いていた。 誰なのか特定できないようにするマスクだ。 ひとみはそれを不思議そうに見つめた。 幸人が出て行く。 階段を降り、案内を受けて大きな部屋に通される。 中には10人ほどの男達が酒を飲みながら歓談していた。 皆、幸人と同じようなマスクをつけている。 幸人が部屋に入って頭を下げると一人の小太りの男が近寄ってきた。 「私が世話人のカーペンターです」 幸人は丁寧に頭を下げた。 世話人が大きな声で皆に呼びかけた。 「皆様、お待たせしました。本日入会テストを受けられるスミス氏です」 ここでは全員がマスクをし、偽名で呼ばれる事になっている。 幸人に与えらえれた名前はスミスだった。 皆が拍手で幸人を迎える。 「それでは、いつのようにテストを行いますが、その前にスミス氏の方から今日の趣向を簡単に説明してもらいます」 世話人に肩を押されて、幸人が一歩前に出た。 皆の前で丁寧にもう一度、頭を下げた。 「皆様、今日は私の入会テストの為にお集まり頂き、ありがとうございます」 拍手が湧く。 「私の出し物はこれです」 幸人がスーツのポケットから出したのは、バイブだった。 男をリアルにかたどってあるが、サイズも普通だ。 集まった男達の口から落胆の声が漏れた。 「何だ、あんなの・・・」 「バイブで女を苛めるだけか?」 ここは特殊な人間達の集まりだった。 俗に言うSM倶楽部だが、集まった男は全員Sの趣味を持っている。 そう言う人間が集まり、趣向を凝らして女をいたぶる。 ただし、会員になるにはテストがあり、全員を満足させなくてはならない。 また、会の規則は厳格だった。 「スミス氏、あの・・・貴方はこの会の趣旨を理解しているんですか?」 世話役が言いにくそうに幸人に言葉をかけた。 会員達は皆、金も名誉も持っていた。 莫大な会費を払って、入会している。 大きな声では言えないが、政界や財界で活躍している人間が多い。 だからこそ、こうやって秘密の倶楽部で自分達の趣味を満足させる。 ここであった事は他言無用であり、秘密を破った者には罰がある。 ストレスの多い生活をしているせいか、男達は生半可な事では満足しない。 「勿論です」 幸人はにっこりと笑った。 その為にひとみを連れてきたのだ。 商売でやっている女を連れてきて酷い事をするならいくらでもできる。 だが、それ位では入会が認められると思わなかった。 どうしたらいいのか考えている所にひとみが何でもすると言い出した。 ちょうどよかった。 そんなつもりで引き取ったわけではない。 それでも憎い女の娘だ。 自分から償うと言うなら容赦はしないと決めた。 「今日の生贄はまだ16歳の高校生です。多分、処女だと思います」 「ほう・・・」 処女の高校生と聞いて男達の目が光った。 普通の女性に無理に趣味を押し付ける事はできない。 誘拐してくるなどの警察沙汰はなるべくなら避けたい。 だから、SM倶楽部の女性をいつも利用している。 それが今日の生贄は処女だと言う。 「その娘は私に借りがあります。何でもすると言っています。まだ、今日の内容は知りませんが、多分、耐えようとするでしょう。そんな健気な女が皆様の前で恥辱にまみれて、これで処女を失うのです」 幸人の言葉に男達は生唾を飲みこんだ。 嫌がる女を甚振るのも面白いが、必死で耐えようとする女を蹂躙するのも何とも言えないはずだ。 それも年若い処女となれば格別な筈だ。 「一気にこれを突き立てはしません。皆様の前で裸になり、おもちゃにされた後で貫通式を受けるのです。彼女には死ぬほどの苦痛でしょうね」 できれば、そう言う素人の女を甚振りたいと思っていても滅多にできない。 それを今日は楽しめるのだ。 自然に男達から拍手がわいた。 「いや・・・スミス氏。お話を聞く前に責めてしまって申し訳ありませんでした。素晴らしい趣向です」 世話役も幸人を褒めちぎる。 「それではそろそろ始めましょうか?」 幸人はうなずいた。 「女を連れてきますが、皆様にお願いしておきます。耐えようとするでしょうが、最初はやっぱり恐怖で逃げようとするかも知れません。その時は、皆様で言ってやってください。彼女が逃げたら、私にとてつもない罰を与えられるってね」 「それくらい、勿論だ」 「早く見せてくれ」 男達は待ちきれないとでも言うようにうなずく。 幸人はひとみを連れに行く為にホールを出た。 ゆっくりと階段を上っていく。 部屋に戻るとひとみがぽつりと寂しそうに座っていた。 その寂しそうな表情を見ると心が痛むが、その思いを振り払った。 自分が今まで舐めてきた苦労を思えば自分のやる事は大した復讐ではない。 それにひとみが自分から言い出したのだ。 「待たせたな」 幸人の言葉にひとみは小さく首を横に振った。 「今から下に行く・・・ひとみ」 「はい?」 名前を呼ばれて、ひとみは幸人を見た。 その顔は章子に生き写しだ。 若い頃の章子を見ているようで幸人はいらついてくる。 「兄貴が何で女房にやりたい放題されても離婚しなかったか知ってるか?」 聞かれても理由はわからない。 愛していたからだろうか。 「兄貴はな、Mだったんだよ」 「M?」 いきなりMと言われてもひとみにはわからなかった。 不思議そうな顔をして幸人を見る。 「カマトトぶるなよ。マゾだよ。苛められて喜ぶ変態だ」 ひとみは顔を赤らめた。 学校などで皆で週刊誌を読んだりして、話題になった事がある。 父親がそうだったと聞いても実感はわかない。 「マゾにも色々とあってな。兄貴の場合は女房にないがしろにされたり、無視されたりするのも感じたらしいぞ」 意地の悪い笑いを幸人は浮かべている。 ひとみがショックを受けるのを楽しんでいるのだ。 「お前の母親は天性のサドだったようだぞ。男を苛めるのが好きだったんだ。そして、男が離れていかない限度を知ってたんだろうな」 喉の奥で幸人が乾いた笑い声を漏らす。 ひとみは呆然としていた。 「俺に対しても足で踏んだり、蹴ったりひどかったぞ」 「おじ様も・・・マゾ・・・?」 ひとみの言葉に幸人は大声で笑った。 「いや、俺は逆だ」 「逆?」 「サドなんだよ。女を苛めて楽しむんだ」 これ以上は悪くならないとでも思えるほど、ひとみの顔は青くなった。 まったく自分の知らなかった世界の話をされている。 だが、父や母や幸人がそう言う世界の人間なのだ。 「お前の母親におもちゃにされて、俺も変になっちまった。マゾへの反発から女を甚振らないとセックスができないんだよ」 そんなセックスもあるとは知っていたが、現実だとは思わなかった。 それでも幸人は章子のせいでそうなったと言う。 「今日の集まりも俺と同じ趣味の人間の集まりだ。それでもいいんだな?」 改めて確認されると恐怖が走る。 それでもひとみはうなずいた。 自分がそれを受け入れれば幸人が許してくれるなら我慢できる。 誰かに少しでも愛されたかった。 幼い頃からの孤独を埋めたかった。 「途中で逃げたりされたら困るからな。いいな?」 「はい、おじ様・・・」 怖くて今でも逃げ出したい。 だが、ひとみはそうしなかった。 自分が償わなければならないと言う使命感みたいなものもあった。 少女の感傷かもしれなかった。 それが自分に何をもたらすのかわかっていなかったのかもしれない。 「いいだろう、じゃあ、行くぞ」 「わかりました・・・」 立ち上がって幸人の後を歩き出した。 幸人は後ろからひとみが歩いてくるのを確認した。 健気なものだとおかしくなる。 まだ何も知らないからだろう。 これなら会員を満足させられる。 会への入会は趣味を満足させるだけではなく、事業へのメリットも大きい。 お互いに普段は関わらないと言う規約になっているが、それでも連帯感は大きいようで、それなりも見かえりが期待できるのだ。 ひとみには可愛そうだが生贄になってもらう。 それが章子への復讐でもあった。 ひとみは章子と似過ぎていた。 表情に多少の違いはあるが、本当によく似ている。 ひとみを通してでも章子に復習してやりたかった。 章子がひとみに愛情を持っていないことも知っている。 それでもいい。 自分がこんな風な性癖になったのは章子のせいだった。 ホールのドアの前でひとみを振り返った。 青ざめた顔でひとみは自分についてきた。 一瞬、哀れみの感情がよみがえりそうになったが、それを打ち消した。 「じゃあ、きちんと皆様の言う事を聞くんだぞ」 幸人を大きな目で見つめながらひとみがうなずいた。 その目には絶望や恐怖、悲しみが入り混じっていた。 幸人はひとみの肩を抱くようにしてドアを開けた。 開けた途端に拍手が響く。 怯えたようにひとみが身体を震わせた。 「ようこそ」 世話役が前に進み出て、ひとみに笑いかけた。 マスクから覗く目は優しく見えた。 「さあさ、お嬢さん。部屋の真中へどうぞ」 世話役に手を取られてひとみは部屋の真中にたった。 「ほう、聖マリアナ女学院の制服だ」 「なかなか可愛い子じゃないか」 男達がひとみを見つめている。 今日は幸人に制服で来るように言われた。 制服がもたらす効果を幸人は知っているのだ。 男達が好奇の目でひとみを見ている。 「お嬢さん、今日はおじ様の為にわれわれをもてなしてくれるんですよね?」 世話役の言葉にひとみはうなずいた。 部屋にいる全員がひとみを見つめている。 ひとみは怖くて小さく震えていた。 「怖がらなくても大丈夫ですよ。リラックスしてください」 そう言われても簡単にリラックスなどできない。 世話役が微笑みながらひとみを見ている。 「お嬢さんは学校の成績はどうなんですか?賢い方ですか?」 意外な質問にひとみは驚いた。 学校の成績のような普通の質問をされるとは思っても見なかった。 「あの・・・普通です・・・」 「学校は楽しいですか?」 「はい・・・」 親戚から聞かれるような質問が続く。 ひとみの緊張も徐々に減ってきた。 幸人の言葉は脅かしで、普通に振舞えばいいのかもしれないと思い始める。 だが、そんな筈はなかった。 「BFとかいるんですか?」 ひとみは顔を赤らめた。 「正直に答えて下さいよ。嘘は許しませんよ」 そう言われてひとみは顔を赤くした。 「あの・・・中等部の時にいました・・・でも、今はいません」 中学3年の時に近くの高校生と少しだけ付き合った。 だが、すぐに別れてしまった。 ひとみは奥手の方だった。 積極的になれない性格だった。 「キスはしたんですか?それとももっと進んだ関係だったんですか?」 質問の方向が変になってきた。 ひとみは益々赤くなった。 「正直に答えるんですよ。そう言うお約束だと言うことは知ってますね?」 世話役は笑いながらも、強い口調で言う。 ひとみは目を伏せながら答えた。 「頬に・・・卒業の時・・・でも、その後、すぐに別れてしまって・・・」 それはBFがもっと先の関係になろうとしたからだった。 ひとみにはそれが受け入れられなかったのだ。 「ほう、かわいらしいお付き合いだったんですね。だったら今から少し辛いかもしれませんが、我慢してくださいよ。大事なおじ様の為にね」 これから本番だと言う。 ひとみは赤くなった顔を青くしながらも小さくうなずいた。 その為に自分がここにいるんだと自分に言い聞かせた。 男達の輪がひとみを中心に小さくなった。 ひとみはごくりとつばを飲みこんだ。 1 2 3 4 5 この続きは『 眠猫の館 』で・・ メニューへ |