サディスティック・パーク

第4話 隷嬢娼婦

作:凡田英二


『隷嬢娼婦』

嵐のような時間は去った。夕凪が船を包み、船は順調に南下を続けている。だが、船倉の弘美にそのような時の流れなど知る由も無かった。アナル破瓜の苦痛の後もバイブ、そして男達の生身の肉体によって何度も昇天させられた弘美は、一日の調教を終え、船倉の檻にぐったりとその身体を横たえていた。
「そらお客さんだ。」マサオが扉を開き、3人の船員を伴って入って来た。何れも東南アジア系らしく、褐色の肌をしていた。
両腕に入れ墨をしている者もいる。
「何の用事ですか?お・・客・・さん?って何?」昼間の調教で疲れはてた半身を起こしながら弘美が首を傾げる。
「昼間、あんなに『いい思い』したんだから、一人じゃ淋しくてしかたないだろう。」
「な、何を言ってるんですか。あんな事・・『いい思い』なんてとんでもないわ。出てって!出てって下さい。」
「ひぃひぃよがって喜んでたくせに、何言ってるんだ。さあ、さっさと俺達の相手をするんだ、マゾ娼婦。」
「..ひ..酷い。出てって。今すぐ出てって。」
「もう一度言ってみろ。お嬢ちゃん。」マサオが凄んだ。
「い…や、あの…嫌なんです。出てって…出てって下さい。」
身をよじらせて檻の隅に逃れようとする弘美。
「お前の身体が、ひとときたりとも『チ○ポ』を咥えこまずにいられるわけないだろう?だから『お客さん』を連れて来てやったんだよ。」
「何言ってらっしゃるんですか?『お客さん』って..どういう意味ですか?まさか..」
「その、まさか、ってやつさ。」
その言葉が意味する所を理解した途端、弘美の顔色が変わった。
「いやぁー。み、みんな出てって。いやあー。」狭い室内に弘美の絶叫がこだまする。鉄格子をつかみ、檻全体がガタガタと揺れている。
「メス犬、いい加減にしろ!」途端にマサオの手に持った鞭がピシリと鳴った。
「淫売!俺達にケツの穴までほじらせておいて、もったいつけんじゃねえよ!。俺はもう、こいつらから、前金で貰っちまってるんだよ。愚図愚図言わず、黙って尻を差し出せ!こいつをケツっぺたにくらいたくなけりゃあな。」
ピシリッと鞭の音が唸る。散々味合わされた鞭への恐怖に、弘美はへなへなとその場にくずれおちた。
男達が檻の周囲にしゃがみこみ、鉄格子の隙間から、弘美の身体を撫で回している。マサオは、それを見ながら言った。
「いいか?『淫売』。お前は、『淫売』・『マゾ』なんだ。人間じゃない、ただの飢えた『メス』なんだ。ただの『肉』として自ら慰み物になる事を志願して、これから島に渡る正真正銘の『マゾ』なんだ。だから、早く向こうの生活に慣れることができるように、昼間の調教だけでなく、夜の補習をしてやろうってんだ。ありがたく思え。」
言うが早いか鞭の音がピシリと鳴り、その尖端が弘美の乳房に押しつけられる。
「ご主人様の前で、その態度は何だ。マゾならマゾらしい挨拶があるだろう?」
鞭の先端をグリグリとねじ込みながら、マサオが耳元でささやく。
「さあ、言え。」
徹底的に身体中に叩き込まれた『奴隷の挨拶』を述べるよう強要する。
「嫌です。そんな事言えません。」
ヒュウウー。途端に鞭が唸った。「何だとぅ?」
「いえ・・私が間違っていました。」
檻の中で弘美は、苦痛に顔を歪ませながら、姿勢を正し、三つ指を着いた。
「わ、わたくし、鈴村弘美はマゾで露出狂の・・・淫らなメスでございます。このたび、ペット・・・として皆様にご奉仕させていただくことになり、歓喜のお露でオマ×コを溢れさせております。どうかこの淫乱マゾメスの欲情を、皆様のお情けと愛のムチでお静め下さいませ。」
言った途端に、あまりの悔しさと情けなさで涙がこぼれた。頬を伝う涙が一層弘美の美しさを際立たせていた。
「そうか。お前は、淫乱なマゾだったな。男が欲しくてたまらないんだろう?。安心しな。俺が早速連れて来てやったぜ。感謝するんだな。こいつら船の生活が長くて、だいぶ溜まってるらしいから、さぞかし可愛がってもらえるはずだ。『マゾ慰安婦』としてせいぜい頑張ることだ。」
弘美は、俯いたままだった。男達は、あれほどの屈辱を与えるだけに飽きたらず、他の男達までに凌辱させようとしているのだ。ガチャガチャと音をさせて、マサオが檻の扉を開いた。
首輪に手をかけ、檻の外に引きずり出す。恐れおののきながら、弘美はその場に崩れ落ちた。
最初の船員がチャックを下げながら、弘美に近づいた。
「オレは、イモウトをニホンのヤクザにボロボロにサレタ。ダカラ、日本ノ女に復讐シテヤルンダ。口ヲアケロ。」
「は、はい。」弘美は、素直に口を開けて目を閉じた。御主人様の肉棒を受け入れる準備だ。だが、弘美の口の中に入って来たのは男の肉棒ではなかった。
ジョボジョボジョボ・・水が溢れる音がする。男は、弘美の口の中に小便を始めたのだ。「ぐえ。げぼ。」思わずむせる弘美。
すかさずマサオの鞭が檻を叩く。
「飲め、飲み干すんだ。マゾのくせにご主人様のションベンくらい飲めなくてどうする。」
「はい・・」あふれる小便を懸命に口で受け、何度も噎せながら、やっとの思いで飲み下した弘美であった。
「いいぞ、いいぞ。褒美をやるから、ケツを差し出せ。」
獲物にたかるハイエナの様に、男達が弘美の裸身に群がった。
最初の男は弘美を抱き上げると、そのまま膝を抱えて正面から挿入した。待ちきれずに次の男が、その口めがけ肉棒を捩じりこむ。
「ふぐぅ・・ふぐぅ・・。」ケダモノの群れの中に投げ入れられた哀れな生贄。
くんずほぐれつ、ヘビが絡み合うような男達の渦の中に、哀れな肉塊が白い肌を垣間見せていた。声も無く、ただ涙だけが溢れて床に大きな滲みを作った。哀しみの涙なのか、或いは歓喜にむせぶ涙であったのか…それは生け贄として捧げられた、一人の女だけが知っていた。


『搬 入』

その日の早朝、弘美を乗せた船は桟橋に着けられた。数10分の接岸作業の後、全裸の弘美を入れた剥きだしのままの檻は、クレーンで吊り上げられ、4WDトラックの荷台へと移された。
港で荷役作業をしていた男達が20名程度その場に居たが、その好奇の視線が弘美の乳房に、尻に、或いは固く閉じられた秘所に、痛いほど突き刺さった。
半裸でせわしなく動き回る、男ばかりの作業員の中に、ただ一人全裸でさらされた弘美の白い身体が眩しく光っていた。
ああ・・・・いや・・・・恥ずかしい・・・・早くこの場からどこかへ・・・・誰でもいい・・・・連れて行って・・・・。
弘美は、後ろ手に縛られた不自由な身体を切なげに身をくねらせながら、その肉と肉をすり合わせ、必死になって、男達の視線から、たわわな乳房と童女の様にツルツルにされた股間を隠そうとしていた。しかし、2週間近い荒淫の航海は確実に女体を性的に成熟させ、あたりにムンムンと性臭を漂わせていた。
その時、檻の後方で、カツカツと靴音が響いた。弘美が振り返ると、船からタラップを降りて来る竜一ら3人の姿が見える。
男達は、真っ直ぐ弘美の檻へと近づいて来た。
・・・・ああ、もう来ないで・・・・いや・・・・。船の中で加えられた、おぞましい嗜虐の行為を思いだし、弘美は許しを請い、身を縮めて男達から逃れようとした。
「お願い。お願いですから・・・・もう勘弁して下さい。」
男達はそれには答えず、檻に手をかけただけで、意外にも弘美に手も触れようともしない。それどころか優しげな声で、話しかけて来さえした。
「あばよ。ここで俺達はおさらばだ。ひでえ目に遭わせてすまなかったな。でも楽しかったぜ。」最初に声をかけたのはテツだった。
「もう会うこともないだろうが、いつかきっと我々に感謝する日が来るはずだ。元気でな。」竜一が言った。
「姉ちゃん。いい身体だ。きっと1級の『メス』になれるよ。頑張んな。」マサオが言った。
男達は名残惜しそうに弘美にそれぞれ声をかけると、何もしないで再びタラップへと戻って行った。
そう、弘美に悪魔のような時間をもたらした、あの男達は去って行った。弘美は、ひとまずほっとした。もうあの悪魔達はいないのだ。
・・・・もう二度と・・・・あの男達に酷い目に遭わされることは無いのだ。
そう、確かに最初の悪魔達は去った。だが、これから弘美を待ち受けている地獄の門には、最初の悪魔とは比較にならない程怖ろしく、そして強力な悪魔達が待ち受けていたのである。
弘美はそのことを未だ知らない。


4WDはかなりのスピードを出しながら、熱帯雨林の中に切り拓かれた一本道を進んでいた。檻の天井がガサガサと繁みを擦る。弾みで、葉先にとまっていたクモや、小虫が落下するたびに、弘美は小さな悲鳴を上げ、振り払わなければならなかった。
10分ほど走った頃、密林が突然開け、広大な敷地が目の前に姿を現わした。弘美の眼前に聳える巨大な門柱と、扉。高さは10メートルほどあろうか、門柱と門柱の間も、車2台がゆうにスレ違えるほど広い。
『遺伝子操作によって甦った太古の恐竜が登場する映画』に登場する、巨大な扉によく似ていた。だが、ただ一つ違っていたのは、その扉に書かれていた文字が、「ジュラ○ック・パーク」の文字では無く、「サディスティックパーク:ウエルカム・トゥー・スレイブ・ファーム」と刻まれていたことである。
「サディスティック・・・パーク?ようこそ『どれい牧場』へ?」
・・・・・・何?・・いったい、どう言う意味なの?・・・・
4WDが門の前に停止した途端、ギィー、と軋むような音を立てて門扉が開かれた。
車は滑るようにゲートの中に入った。あたりには朝もやが立ちこめ、周囲は驚くほど静かだ。
ジャングルの中を切り拓いて、良く手入れされた広大な芝生が広がっている。所々に警備用のフェンスが張られている。
ゴルフ場?それとも・・・・レジャー施設?弘美は不安げに周囲を観察していた。何となく人の気配がしているような気もする。
・・・・だが、朝靄の向こう側で何が行われているのか、囚われの裸女には、わかりようもなかった。
「きゃあぁぁぁぁ..」突然、静寂を切り裂いて女の悲鳴が響いた。弘美は身体を強張らせて。聞き耳を立てた。
....何、今の悲鳴は?....
だが、女の悲鳴はそれきり聞こえなくなった。....あれは、空耳だったんだろうか?
いえ、決して空耳なんかじゃないわ。確かに聞こえた。
・・・・あの声は何だったんだろう?・・・・あれは・・・・。
門をくぐってしばらく経ってから、4WDトラックは倉庫の出入口のような場所に横付けに止まった。
弘美を入れた檻に暗幕がかけられる。これでは、外の様子は窺えない。不安がよぎる。
暗幕をかけられてから、箱はその場にしばらく置いておかれた。
永遠とも思われる時間が過ぎた。不意に、弘美を入れた檻が持ち上げられ、ガタン、ガタン、と音を立てながらどこか台の上に降ろされた。
弘美が「台」のように感じたものは、荷物等を運ぶ為の『キャスター』のような台車であった。ガラガラガラ・・・・キャスターの上に乗せられた弘美の檻は、長い廊下を通って、やがて、広いホールに運び込まれていた。
ドアが閉められ、屈強の男達によって、檻がテーブルの上に移される。不意に宙に浮いたような無重力感の後、弘美はまた、ガタン、と軽いショックを感じた。
檻を覆っていた暗幕が外される。暗い部屋…。室内を見渡すことはできない。
暗い部屋の中で、唯一、弘美が入れられた檻にのみ、四方からスポットが当てられていた。だから、弘美の方からは目が眩み周囲は見えないが、周囲からは、スポットライトの中にくっきりと弘美の白い裸身だけが、浮かび上がって見えているはずだ。
やがて目が慣れて来ると、ぼんやりとだが、周囲の状況がわかりかけて来た。
檻が載せられた楕円型のテーブルの周囲には、10人前後の人物が座っているらしい。もちろん、四方から当てられている眩しい光の為に、弘美の方からその顔を窺い知ることはできなかったが。
突然、部屋の明かりが消され、正面の壁からスクリーンが現れた。
カタカタと音をたてながら、スクリーンにフィルムが投影され始める。
ファンファーレと共に、『サディスティック・パーク』の文字。
やがて多くの女達の映像が画面に現れては消えた。
..何て..酷い..弘美はスクリーンを見て愕然とした。
フィルムに映る女達は、何れも白人・黒人・東洋人ありと、多様な人種で構成されていた。共通することは、どの女も若く、肉感的な体つきをしており、それが一糸纏わぬ裸で、首輪や、尻尾のように見える責具を股間に装着されながら、徹底的に犯され、辱められ、責め嬲られていることであった。
画面の中では、次々と嗜虐的なシーンが、展開されている。
四つん這いになった数人の女に、男が馬乗りになって、鞭をあてながらレースをしている模様や、手足を杭につながれた女が大型犬に犯されている場面、或いは狸のように、ケモノ縛りで木に吊られた女が、焚き火の上で炙られている場面、皿の代わりに身体中に料理を載せられ、それを食べる男達から前後に貫かれている場面、衆人環視の中で自ら排泄した物を食べさせられている場面等々、弘美にとっては、ショッキングなシーンが次々と映し出されていった。
画面に合わせて流れる、哀れな女達の叫び、泣き声、そして喘ぎ声の数々・・・・。
弘美は、思わず目を覆い、耳を塞ぎたかった。
..こんなことが、許されていいの?..21世紀の、現代社会の片隅で、こんな野蛮な行為が行われているなんて....
しかし、それこそが、ここでの現実..『日常』の1コマ1コマなのであった。
ここは、『ソドムの市』になぞらえられる程の退廃と悪業が支配する世界『サディスティック・パーク』である。
突如、スピーカーの声が流れ、英語で、弘美に語りかける。
「『奴隷牧場』へ、我々サドの楽園へようこそ。我々は、世界中の紳士の前に、『嗜虐の生贄』として自らの身を挺し、全てを捧げられようと言う、貴女の、その尊い志に深い敬意を表するものであります。」
弘美は、耳を疑った。男の言葉は、弘美が『自らの身を挺し』などと、言っている。・・・・ウソよ、私、自ら志願した覚えなんか、絶対にないわ・・・・。
「・・・・違う。・・・・私、志願なんかしてません。何かの間違いです。・・・・誘拐犯にさらわれたんです。本当です。・・・・今すぐ、・・・・今すぐにでも日本に帰して下さい。お願いします。」
檻を掴んで揺らしながら、必死になって、弘美は訴えた。精一杯の声を振り絞って叫んでいた。だが、そのような弘美の訴えに、耳を傾ける者もなく、周囲の反応は、きわめて冷たいものであった。
弘美の訴えを無視して、スピーカーの声は、話し続けた。
「この楽園は、世界中のサディスト達の嗜虐心を満たす。『夢の楽園』として、世界中の『心ある人々』により、建設されました。」
弘美は、再度哀願する。
「聞こえないんですか?お願い。帰して。お願い。」
「この楽園は、世界中から集まった『ジェントルマン』と、その悦楽を満たすために、自ら志願された、多くの『レディ』から構成されております。」
「お願いです。聞いて下さい。」
弘美が叫び続ける間も、しかしなおもアナウンスは続いていた。
「お静かに。話を最後まで聞きなさい。」
突然、正面ライトの方向から別の男の声が響いた。
「...ここでの報酬は年間10万ドル。既に貴女には10年分の報酬として、契約金百万ドルが『前払い』で支払われています。もちろん、契約の解除は自由です。なお、これが私達と貴女の間に取り交わされた契約書です。ここには、貴女のサイン、いや『肉印』の証明もあります。」
「え..?」弘美は我が耳を疑った。


「契約書」?..確かに..あの船の上で無理矢理契約を結ばされた覚えがある。でも..まさか。
「待って、待って下さい。」
「同時に、東洋ツーリスト株式会社より、この請求書が送付されました。貴女への前払い報酬を以て、即日支払われておりますので、ご確認下さい。」
眩しい光の向こうから、手が差し出され、弘美の目の前に2枚の紙が掲げられた。1枚は、見覚えのある、『奴隷契約書』。
でも、あんな状況下で結ばされた契約なんて、どう考えても無効だわ..。弘美は2枚目の紙に目を移した。
そして、その紙に記載された内容を読み、弘美の肌に冷たいものが走った。その紙には、次のように記載されていた。
 「鈴村弘美嬢 殿
  『奴隷』体験ツアー参加費用として
    渡航費用   10万ドル
    食  費   10万ドル
  オプション経費として
    調教訓練費  50万ドル
    機材消耗品費 10万ドル
    添乗員慰労費 20万ドル
  計 百万ドル を即日お支払い頂きますようお願い申し上げ
  ます。」
そしてもう一枚の領収書には、
 「東洋ツーリスト株式会社」
    領収書
    財団法人 奴隷牧場 殿
  鈴村弘美嬢の旅費として金百万ドルを確かに立替払頂きま
  した。
                     東洋ツーリスト」
何てこと..!。あの男達は、私を誘拐し、陵辱し、様々な嗜虐行為を加えただけでなく、百万ドルもの大金で、私を売り渡そうと言うのだ。しかも、渡航費用・調教費と言う名目で..
悪魔達の楽園へ...。
これは、人身売買行為だわ..。
さらった女を売り買いするなんて、狂ってる・・・・。
「そんな。こんなの嘘よ。ねえ、わかって下さい。あなたたちは、間違ってます。」
弘美の声が室内に響きわたる。周囲がざわめいた。日本語・英語・スペイン語等様々な言葉が飛び交っている。
突如、ざわめきが静まると、落ちつき払った声が響いた。
「おっしゃっていることは、よくわかりました。つまり貴女は、最初に、誘拐されて、ここに無理矢理連れて来られた。と言われた。つまり、決して自分の意志でここに居るわけではない。そう言われるんですね。」
「そうなんです。」
「なるほど。」
「わかっていただけますか?」
「おっしゃることは理解できます。」
弘美の顔がぱっと輝いた。
「ありがとうございます。ありがとう。わかって頂けたんですね。」
弘美は胸をなでおろした。しかし、それもつかの間のことだった。
「しかし・・・・」
「えっ・・・・?」
「さて、これは契約調印時の記念写真です。」
数枚の写真が檻の中に投げ入れられた。それを見た途端、弘美は次の言葉を失った。
「貴女は、契約の意志が無く、誘拐拉致されたなどとおっしゃるが、現にこの通り、にっこりと笑いながら、契約書に捺印されているじゃないですか。しかも、こんな淫らな格好で男を咥えこみながら・・・・。こんな写真までも撮らせている。それでも違うと..?恥ずかしくないのかね。」
「違います。それは無理矢理に、あの人達に・・・・。」
必死になって弁解する弘美。
「こんな写真まで撮らせておいて..」
失笑が起こった。
「フフン、信じられるかね。誰が見たって、貴女は喜んで契約を結んだようにしか見えませんね。」
・・・・確かに、前方に差し出された写真には、緊縛された裸体に『愉悦の笑み』さえ浮かべながら、契約書に『肉印』を押している『淫乱女』が撮されていた。
肉棒を嬉々としてしゃぶり、蕩けるような媚態を見せる『マゾ女』の姿が・・。
弘美は思い出していた。排泄感の苦痛に耐え、必死になって便意を訴えながら、男達から強要された『笑み』。
だが・・、そんな事情を知らされていなければ、どこから見ても、喜々として『奴隷契約書』に自らの肉を押し付けている『マゾ』の姿だ。
「こんな写真もあるんですよ。」目の前に突出された写真には、脱糞途中の、弘美のあられもない姿が撮し出されていた。
「それは…。」あまりの恥ずかしさに口篭もる。
「だいたい、言ってることが気違いじみている。貴女、まともに言ってるんですか?・・・・無理矢理?誘拐?人身売買?そんな非道なことが、現代の、この世の中に罷り通るわけが無いじゃないですか。本当は違うんでしょう?..『貴女はマゾで、奴隷となることを志願してここに来た。』それだけだ。違うと言うなら、一体何が、どう違うのか、証拠を見せて下さい。」
「そっ..それは。」
「ほうら、貴女の言い分は、まったく意味がわかりませんな。」
「証拠、証拠ならあります。私自身、マゾなんかじゃないんです。本人が言うんです。それが何よりの証拠じゃないですか。」
「マゾ女はね、本当は責め嬲って貰いたくて、わざとそんな事を言うんです。だいたいね、貴女の代理人が、既に金を受け取っているんだ。今更怖じ気づいても通る道理じゃないでしょう。」
「そんな…。」
「さて、貴女が何と言われようと、契約は既に、貴女の代理人との間に無事終了しております。そして前金で報酬を払った以上、我々としては貴女に『マゾ奴隷』として、働いて頂かなければならない。それともここでやめますか?先ほど申しましたが、・・・・今、ここで、『違約金』を支払って、契約を破棄して頂いても、我々は結構なんですよ。」
「本当ですか?」
..そうだ。違約金さえ払えば..理不尽かもしれないけれど、そう..日本に帰れさえすれば貯金はあるわ。結婚資金で4百万はある。百万くらいなら、何とかなるかもしれない..。
弘美は一応の安堵を覚えた。
「お支払いします。必ず。どんな事をしても。お支払いします。」
「結構です。我々としてはそれで損はない。払って頂ければね。」
「あの・・・・違約金・・・・お幾らなんですか?」弘美はおそるおそる尋ねた。
「違約金は、契約金の倍額、2百万ドルになります。今、即金でお支払い頂けるなら、帰りの交通費はサービスします。どうですか?」
弘美の顔から血の気が引いた。
「そんな、馬鹿な。無茶だわ。日本円で、2億円なんて大金。第一、今の私は、船の中で洋服を奪われて・・・・・・丸裸で、そんな大金はおろか、1円だって持ってないのよ。」
何がおもしろいのか、弘美の叫びに、周囲が突然湧いた。
「さて、お支払いが頂けないとなると、決まりですな。貴女には、当財団より、既に10年分の報酬が前払いで支払われておりますので、今後当財団への債務を返済するまでは、貴女は専属契約するものと見なされます。よろしいですね。では、これより『財団』の正式職員、専属の『メス奴隷』としての登録を行います。」
「いやです。ここから出して!私を帰して!お願い!....違う!....違うのよ....私・・・・マゾなんかじゃない。『メス奴隷』になんかなりたくない。間違いなんです。何かのま・ち・が・い..なんです。わかって、わかって下さい。誰か、誰か助けてぇ。」
鉄格子をつかみ、檻全体を揺らした。ゴトゴトと音をたてながらテーブルの上で『檻』が踊った。
だが、そんな弘美の抵抗も空しいものだった。
突如、部屋の周囲から屈強な男達が現れるや、弘美の檻を押さえ、そのまま、弘美を固定にかかったのである。
「きゃあぁぁぁ。」悲鳴と共に、弘美の動きが止まった。
身をかわす間もない。あっと言う間に檻の外から伸びた手が、よってたかって弘美の手足を押さえつけていた。それぞれの手は、カチャカチャと金具を鳴らしながら、弘美の身体を鉄枠に固定して行く。うつ伏せの姿勢に首と手首が固定された後、不意に足元の扉がパンッと開けられた。次いで男達の手が足首をつかむと、右足と左足を別々の方向に引き、左右に股を裂きながら、檻の外に下半身を引き出した。ピチピチとした豊かな尻たぶが、まるでピーチ・デザートのように、テーブルの上に載せられた。
その時である。ツン、と鼻をつく匂いが周囲から漂い始めた。
何かが焼け焦げているような臭い。・・・・何なの?
弘美が考える暇もなく、突然闇の中から突き出された炎の塊が、弘美の尻たぶに押しつけられた。一瞬、何が起こったのか理解できない。ただあまりの熱さに、「ヒッ」と短い悲鳴を上げるのがやっとだった。
瞬間、弘美は失神した。あたりに漂う、『肉の焼け焦げる匂い』が鼻をつく。
弘美の右の尻たぶが、直径5センチにわたって、無惨にもケロイド状に焼け爛れている。
そこには、サディスティック・パーク所有のメス奴隷であることを表す『紋章』が焼き印で記されていた。
失神のショックで、だらりとなった淫裂から、チョロチョロと小便の洩れる音がしていた。


「フッ、さんざん勇ましく騒いだわりには、もうおやすみとは『ヤマトナデシコ』は随分雄弁を奮ったが、最後はだらしなかったね。」
正面の男が笑いながら言った。
「しぶといアマでしたが、お見事に引導を渡されましたね。」
別の男だ。
「なに、つまらぬ『セレモニー』だ。一時の慰みに『茶番劇』を演じてみただけの事さ。」
テーブルの正面に座っている男は、身体を向き直ると、弘美の左尻たぶを指し示しながら、焼きゴテを持った男に話しかけた。
「イディン、もういい。片側も早く片づけてしまえ。」
焼きゴテを握った男は、メラメラと燃える炭バケツに焼きゴテを戻すと、金属のバケツに残されたもう1本の焼きゴテを取り上げた。
男の手に握られた、焼きゴテには、『奴隷牧場所有者たる男の印章、即ち『奴隷』牧場の理事たる『陳』の名が逆に、赤々と映し出されていた。
「いくぜ。メス犬。」
男はジュウ、と音を立てながら、きれいに残された弘美の尻たぶに焼きゴテを押し付けた。
既に失神してしまっている弘美は、『焼印』の瞬間、ぴくっと身体を慄わせたものの、恐怖で意識を失ったのか、再びぐったりとなった。
テーブルの上には失禁の痕が広がりつつある。
「もういい、小便臭くてかなわないから、早く調教室へ連れて行け。それから、失禁の罰は与えておくように。」
「へい。」檻から引き摺り出された弘美の下半身が再び檻の中に戻される。
ガチャン、音を立てて南京錠が閉じられた。
失神したままの弘美を載せたキャスターは、『イディン』と呼ばれた男の手によって、ホールから表へと運び出された。

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