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落 涙 の 白 百 合 セント・リリィ 作:凡田英二
第2話 拉 致 ゴォォォーン..ゴォォォーン...ゴォォォーン...ゴォォォーン... 創立以来100年にわたり『時』の訪れを告げて来た、『セント・リリーのチャペル』..と呼ばれる鐘の音が、校内に響いている。 卒業生の多くがこの音を懐かしみ、この音を聞いて時に涙ぐむ者すらいる。 それが喪われた青春の日々を呼び起こすものだから..? それもあるだろう。 だが、それだけでは無い。 明治、大正、昭和、そして平成..と、激動の時代を風雪にさらされながら、日本女子高等教育の歴史を刻んで来た音でもあるからだ。 もっとも、鐘 本体はとうに老朽化して、既に博物館入りしており、今では録音テープの音に切り替わっている..。 だから、往事を偲ばせる重厚さだけは再現出来ないでいる。 校庭の一角にある5メーター四方のバラックが『生徒会役員室』、いわゆる『白百合同盟本部』である。セント・リリーの伝統は代々ここから発信され、その住人として、これまで幾多の日本女性運動を支えて来た人材を輩出して来た。 その中には代議士・政治家になった者、或いは知性派女優として日本演劇史に、その名を残す者もいる。医師、弁護士、経営者、或いは有名人の妻としてその全容は数知れない..。 今、ここの住人として名を連ねているのは、生徒会役員10人である。その中には下級生達も混じっているから、最上級生だけが就く事になっている主要ポストは4つ。運命のこの日..、ここに会した主要メンバーの4人の少女、生徒会長の石黒あゆみ、副会長の矢崎茉莉、書記の後田ひとみ、会計の安田梨花..であった。 何れも3年生各クラスの級長を兼ねる、才色兼備の少女達である。
セント・リリーでリーダーになる為には、学業成績やリーダシップだけでなく、容姿だって人並み以上のもの要求されるものなのである。 「さて..今年の百合校祭なんだけど..」 会長のあゆみが今日の議題を切り出した。 大きな瞳と長い睫が印象的な、サラサラのセミロングの髪の美少女である。昨年のミス・セント・リリーの覇者でもある。 「学校側に我々の活動を認知させる為には、ここで一つ大きなイベントを組む必要があるわね。」 副会長の茉莉が言った。 緩くカールした黒髪がかすかに揺れる。彼女もまた、1年生の時からあゆみとセント・リリーの座を争う。昨年の成績は『準ミス』であった。 但し、学業成績に関して言えば、入学試験以来の学年首席の座は未だ誰にも譲った事が無かった。目指すのが『T大』は間違いナシとして、医者と弁護士、どちらを目指すのかが目下の教員達の関心の的であった。 ちなみに、今春の実力テストで茉莉に次ぐナンバー2になったのが編入生の酒田恭一であった。 「そうよ。でかい事をやりましょう。教頭達の威を借りて態度のでかい『男』どもを見返してやる為にもね。」 こう言う言い方をするのは書記の後田ひとみの特徴である。 運動の邪魔になるからと、美しいロングヘアーをポニーテールに束ねたスポーツウーマンである。親譲りのきりりとした面差し、長身の彼女は、古のレジスタンス運動の闘士を思わせた。 その凛々しい容貌のせいか、下級生の人気が高く、密かに『ひとみお姉様』の写真をパスケースに忍ばせている後輩も多い。 もっとも、本人は至ってさばさばとした性格であり、そのケは全くない。 「あゆみはどう思うの?」 と最後に聞いたのが会計の梨花である。 他の女子役員と比べると小柄、ぽっちゃりとした体型がコンプレックスになっていて、なかなか自分の意思を表に出すことが無い。 楚々とした古風な女学生を思わせる立居振舞いと、ボブヘアーがトレードマークで、その辺りが逆に通学路で行き交う他校の生徒の関心を呼ぶのか、他校の男子から渡されたラブレターは数知れない。 もっとも、通学路では求愛の手紙の数と同じくらいの、彼女からの断りの手紙が交わされて来たのだが。 「そうねえ..私はこう思うの。『男』だ『女』だと肩肘合わせて張り合う事より、協力して新しい21世紀の百合校祭を創って行ければいいかなぁーなんて。」 あゆみは自分の考えを述べた。 あゆみは諄々と説いた。 ..確かに、教頭や委員会の連中の卑劣なやり方には我慢出来ないものがある。 『特反』にしても校内でセクハラまがいの事が行われているのではないか..と言う疑惑があり、そうした当局の横暴は、決して許せない事だと思う。 ただ、『特反』から帰って来た女生徒の誰もが口をつぐんでしまう為、確証が無いのが残念で、いずれは決定的な証拠を握って、その悪業をあばいてやろうと思っている。 だが、学園祭と言う事を考えた時、それとこれとは別だと思う。 全ての男子生徒が委員会のような考え方を持っているとは限らない..。 ここ数年の動きを見ても、滅び行く名華『セントリリー』が、このままでいい..とも、決して思っていない。 だから、新風を吹き込むとしたら..、変わるとしたら..、今回の『男子』達の『編入』は、決して悪い事では無いのではないか..。 そう思っている。 男だ、女だと互いにこだわるのでは無く、男女と言う、肉体も精神も異なる構造を持った、『人間同士』が互いの良い所を取り入れ、弱き所を補い、助け合う..。どちら上だとか、どちらが支配するとか、そんな事じゃなくて、共に協力しながら社会と言うものを創って行く。 『共生』..それが今に生きる我々の課題ではないだろうか..。 「甘いね。あゆみ!」 ひとみが言う。 「そう..?」 「それは理想であって、現実では無いと思うよ。」 これは茉莉だ。 「そうかな、茉莉..」 「だって、あいつら私たちを潰そうとしてるんだよ。共存共栄と言ったって、こちらが潰れたら元も子も無いじゃん。」 軽くカールした前髪をかき上げながら茉莉が言う。 「そうよ、多くのセンパイ方も訪れる学園祭はビッグチャンスよ。この際だから学園OGのセンパイ方もも巻き込んで、奴ら男どもに私たちの力を見せつけやろうじゃない。時代錯誤の男尊女卑を振りかざす あいつらの目を覚まさせるにはそれしか方法が無いわ。」 こういう時のオーバーアクションはひとみの癖だ。 「うーん..。」 あゆみは考えて込んでしまった。確かに副会長以下の意見の方が、今の生徒会にとっては現実的な路線ではあるのだが..。 そのときだった。 バタンッ。音を立ててバラックの扉が開かれた。 「生徒会役員の諸君、学校命令だ。この部屋をたった今から我々が接収する。」 入口から夕陽が射し込み、少女達の居るテーブルまで人影が大きく伸びている。 「酒田君..!」 「酒田っ..てめえ!」 女生徒は一斉に立ち上がった。だが、不意をつかれた少女達には逃げるいとまもなく、数に優る生徒委員会のメンバー達はあっという間に室内になだれ込んできた。 その数は優に12、3人を超える。いや、この狭い部屋に20人以上の男子がひしめきあっていた。 女生徒達は周囲を取り囲まれ、一瞬のうちに窮地に陥った。 これまで悉く対立してきた両者だったが、こういう形で襲撃を受けるのは、初めての事だった。 もち論これ迄も、『その危険』が皆無であったと言うわけでは無かった。 だが、『神聖な学内でまさかそこまではやらないだろう..!』と言う、相手に対する油断があった事も、『確か』である。 「どういうつもりなの?私たちは何も聞いてないわ。」 ..と、あゆみが口火を切った。。 「聞いてはいないだろうな。ここを潰して、新たに委員会室を作ると言うのは、たった今職員会議で先生達が議論をしている最中の事だ。だが、いずれその決定は下される事になっている。」 あゆみの正面に立った酒田が答える。 「こんな事して..立花先生が黙っていないわよ。」 これは、茉莉の声だ。 「こっちには教頭以下主要幹部が揃っているんだ。一女性教師に何が出来る。」 また、別の男子が答えた。 こいつら..一体何人居るんだ..こんな狭い所に.. 15人..いや..20人か..ひとみは周囲を取り囲んだ人数を必死で数え、何とかこの場を抜け出す算段をしていた。 問答の最中も、男子生徒達は備品庫に入り込んで、勝手にダンボールを運び出そうとしている。 「待って、何をしているの?」 梨花が正面の男子の頭ごしにたずねた。 背の低い梨花からは、正面の男子の頭ごしに見える、ダンボールの列しか見えていない。 「どうせぶちこわすんだ。邪魔な荷物を運び出そうと思ってね。」 生徒会室には歴代役員の活動の歴史、アルバムが多数収められていた。 また、今現在は百合校祭の準備書類で書庫は溢れている。 「待って、そんな事は許さないわよ。今から会議室に行って、立花先生にこの件を報告して来ます。」 あゆみが酒田に詰め寄った。 「それで..?」 「こんな馬鹿げた事は即刻中止させて貰うわ。」 「それで..?」 酒田がふふんと鼻で嘲笑った。 「ちょっと、待ちなさいよ。あんた達、こんな勝手な事をして、ただで済むと思っているの?」 ひとみが周囲の男子達に向かって叫ぶ。 「ただで済むかどうか、そんな事は知ったこっちゃねえんだよ。」 どこからか別の男子がうそぶく。 「ともかく、そこをどいて。」 あゆみは精一杯の虚勢を張って言った。 数倍の男子生徒から受ける威圧感は相当なもののはずだ。その証拠に、あゆみの膝ががくがくと震えていた。 「ああ、いいだろう。勿論結果は同じだろうが..な。」 酒田は、すっと身を斜めによけた。まるで、正面のあゆみに道をあけるかのように..。 その時だった。 「酒田さん、ちょっと..」 委員長の酒田に、突然一人の男子生徒が近寄ると、その耳にヒソヒソと耳打ちしてきた。 手には見慣れぬ大きなダンボールを抱えている。 その生徒の話を聞いた酒田の顔がみるみるうちにニヤつき出した。 「そうか..うんうん..よし..わかった。」 聞き終わった後、酒田は再びあゆみの前に立ちはだかった。 「道をあけて。酒田君。」 先程まで道を譲るかのような態度を示していた酒田の豹変にあゆみは戸惑った。 「聞こえないの?」 再び言う。 「そうはいかなくなった。」 「えっ..!?」 「諸君達生徒会役員には重大な規律違反の可能性が出てきたんでね。」 「馬鹿な事を言わないで。何の証拠があって、いかなる規律違反を私たちがおかしたと言うの?」 「証拠?証拠ならここにある。」 先程耳打ちして来た男子生徒が、ダンボールの中身をテーブルの上にぶちまけ始めた。 ..!!.. その内容を見たあゆみは卒倒しそうになった。 何とおぞましい..。 テーブルの上には、数多くの性具...いわゆる『大人の玩具』が並べられていた。双頭の張り型、バイブレーター、パールローター..どれも相当年季が入っていて、使い込まれたモノばかりだ。中には、レズプレイでは無く、明らかにSMプレイにしか使わないような、革製の拘束具まで入っていた。教頭の前歴を知る者からすれば、出所は明らかなものばかりであった。 勿論、彼女たちはそんな事など知るよしも無い。 道具についても、その名前も具体的な使い方も、全く未知のものばかりであった。..が、多くが男根を模した、その卑猥な形状に、何の目的でそれがこの世に産み出されたものであるか..それだけは容易に想像する事が出来た。 「知らないわ。そんな..穢らわしいもの!」 あまりの事に、あゆみは見るのも穢らわしいと、その目を伏せた。 「『穢らわしい』?ふふ、よく言うぜ。」 そのうちの一つを手に取ると、酒田はスイッチを入れた。ウィィンウィィンとモーター音を響かせながら、卑猥な動きを繰り返す。酒田はその色褪せた尖端に鼻を近づけると、クンクンと『臭い』をかいだ。 「このバイブなんか、そうとうに使い込まれているぜ。お前のオマンコの臭いじゃないのか?」 そう言いながら、卑猥にくねる尖端をあゆみに向け、突き出した。 「いっ..いやぁ..」 あゆみは目を閉じ、これ以上酒田の罵詈に耐えられないとばかりに、耳を塞いだ。 ..『はめられた』..こいつら、最初からそのつもりだったんだ.. 茉莉は拳を握って、怒りにぶるぶると震えていた。
代わってひとみが飛び出す。酒田に向かって手を突き出し、今にも襟首をつかみかかろうとした。慌てた周囲の男子がひとみの身体を寄ってたかってテーブルに押さえつける。 しかし、女生徒救出作戦で大活躍した、さしものスポーツウーマンも、大の男3〜4人がかりで押さえつけられては歯が立たない。 酒田は笑いながら、両端に勃起した男根を模した、双頭のバイブレーターを手にした。 「これなんか、お前がタチ役で子猫ちゃん達を随分と泣かせてたんじゃ無いかぁ..」 酒田は手にした『それ』を、テーブルの上に押さえつけられ身動きの出来ない、ひとみの鼻先に突きつけた。 「さっ..酒田てめえ..」 「それとも、『男っぽい』ひとみ嬢は実は『フタナリ(両性具有)』で、こんなモノはいらなかったとか..」 ハハハハッ 酒田の冗談に男子生徒達は爆笑した。 あまりの屈辱にひとみは涙を流した。 「それで..満足..。か弱い女子をよってたかって..。それが『男』のする事なの?」 普段口数の少ない梨花が珍しく感情を露わに『怒りの言葉』を吐いた。 余程悔しかったのだろう..梨花は泣いていた。 涙を流しながら..怒っていた。 「いや、こんな事で満足はしないね。」 酒田が軽く受け流した。 「どういう事?」 あゆみは尋ねた。 「お前達生徒会は、全校生徒に選ばれた名誉ある代表であるにもかかわらず、日々ここに集い、『レスボスの性愛』..まあ、同性愛だな..に耽り、淫らな性愛に耽溺し、名誉あるセントリリーの名を汚した。この大人のオモチャが『証拠』だ。」 「よくもそんなデッチ上げを..」 「黙れ、証拠はここに十分過ぎる程揃っている。これが事実なら、全校生徒の信頼を裏切る、許し難い背徳行為だ。どうだ、..それを全校生徒の前で認め、責任を取って生徒会を解散すると言うのなら、俺達も満足して、許してやる。」 「冗談じゃ無いわ。濡れ衣どころか、デッチ上げもいいとこじゃない。」 「そうよ、何でそんな事を認めなきゃならないのよ。」 「卑怯だわ、全部あなた方の仕組んだ『罠』じゃない。」 女生徒達は口々に言った。 その間も周囲の男子達はダンボールから出される淫具を手に取っては、スイッチを入れては愉しみ、初めて見るその異様な動きに、嬌声を上げ続けていた。 「..自らの非を認めないのなら..」 恭一は箱から出されたばかりの1本の『房鞭』を、手に取りながら言った。 「『お仕置き』しかないな。」 「..え???」 ビユンッ! 酒田が手にした房鞭で空を切るが早いか、それを合図に一斉に男子達は女子に飛びかかった。
「やめてっ、きゃああああぁ」 「なっ..何をするんだ..」 「ふぐ..むむむむむ..」 10分後..女生徒の悲鳴が止んだ後、部屋には4つの大きなダンボール箱だけが残されていた。 「さあっ、『特反』に帰るぞ。」 「はい。」 4つの大きなダンボールはキャスターに載せられ、部屋から次々と運び出されて行った。 ..ダンボールの中では、ガムテープで手足と顔をぐるぐる巻きに縛られた女生徒達が、もがき苦しんでいた..。 周囲を おぞましい淫具の束に 囲まれながら..。 第3話 へ 続く |