みのQファンの 秘小説

作:みのQファン



−イントロ−

「ばあちゃん、僕今日なんだか寝つけないや」

ペロロンチョ星人のケン坊は、祖母のバロンミフネ3世堂の八つある腕のうち、一番緑色に光っているやつにすがりついた。

「よしよし、じゃあ今夜はわしが寝物語にとってもメルヘンチックなお話を聞かせてあげようじゃないか」

「わーい!ばあちゃんの話はいつも夢があって好きさ!」




−1−

「ああ、どうしてこんなことに…」

見慣れぬ繁華街の裏通りを頼りなげな足取りで歩きつつ、マサコは一人自問していた。

サングラスで表情を隠しつつも、山の手沿いでもうらぶれたこの街では嫌でも目に付くシルクの白い帽子が、彼女の場違いさを際立たせてしまう。だが、世俗のことに疎くなってしまった彼女はそれに気付くべくもない。

名ばかりが華々しいゴールデン通りのアーチ型看板をくぐり抜け、吐き溜めのような匂いの漂う小道を曲がるとすぐに、小林の指示したその建物があった。

「ホテルロイヤルラブ…」

マサコにとってなんとも皮肉な名前である。壁肌がはげかかり、いまにも崩れ落ちそうなそのけばけばしい建造物を見上げ、マサコは今日何回目かのため息をもらした。

「行くしかないのね…」

意を決するようにサイケデリックに誇張されたドアノブをまわし、中に足を踏み入れる。そこにはラブホテルなど入ったこともないマサコにとって予想外の情景が広がっていた。しみったれたカーペットの敷かれた陰気な通路の脇に、カーテンのかかった映画館の切符売り場のような受け付け口がぽつんと一つ存在するのみ。そこにはマサコの知るホテルのエントランスには必ず存在する、豪華なシャンデリアもソファーも、礼儀正しいお出迎えのホテルマンもいない。

マサコはわずかに見せたとまどいを、持ち前の冷静さで押さえ込み受け付けに向かって声を出した。

「あの…、小林という名で予約が入っているはずですが…」

帰ってくるのは重たげな沈黙。

いっそのことこのまま帰ろう…マサコの理性が首をもたげはじめた丁度その時、

「ああ、302号室ね。もう来てるよ男の人」

カーテンの奥から聞き取りにくいしわがれ声がもれ聞こえた。

「…鍵は渡してあるから勝手に行って…」

声の主はめんどくさそうにそれだけ言うと、窓口から左手だけ出して通路の先のエレベーターを指差す。

「は、はい…」

マサコは消え入るような声で返事を返し、何かいけないことをしたのが見つかった小娘のように早足でエレベーターへと乗り込んだ。3階のボタンを押して目を閉じる。本来彼女は自分でエレベーターのボタンを押す必要すらない身分であった。

しばしの浮遊感の後、チン、と安っぽい音がして扉が開く。

はっとして降りようとしたマサコは向かいからやってきた皮ジャンの男とぶつかった。

「こーちゃん、ダメでしょ!降りる人が先よ、もう」

あわてて後ろから、茶色い髪をケバケバしく立て飾ったピンクのコートの女が皮ジャン男の袖を引く。

「あ…、スンマセン」

「いえ、こちらこそぼうっとしていて…」

ばつが悪そうに頭をかく今風の男に笑顔でそう返したマサコの表情も、サングラスが足元に落ちていることに気付くと一瞬にしてこわばった。

「あ、いいっスよ。オレ拾います」

マサコの視線でそれに気付いた男は長い手を伸ばしてサングラスを拾い上げ、白い手袋をしたマサコの手の平にさしだす。

「あ…どうもすみません」

深々と頭を下げるマサコを珍しげに眺めながら、カップルはエレベーターに乗りこんだ。代わりに廊下へと出たマサコの耳に、エレベーターの扉が閉まる直前の二人の会話が流れ込んできた。

「あれって、コスプレ?」

「え、何のだよ?」

「キコ様じゃなくて〜、何だっけ?マコ様だっけ?」

マサコは全身の穴と言う穴から汗が珠のように湧き出すのを肌で感じた。




−2−

一週間前、マサコは自室でネグリジェ姿のままベッドに腰掛け本を読みふけっていた。古代アテネの喜劇作家アリストファネスの『女の平和』。女性の性的ストにより戦争を治める反戦劇の小説版だ。

「ふう…」

マサコはここ数年の彼女の癖のベストワンとなっている、ため息を一つつくと、本を閉じて放り投げた。

「私はストなんかしなくてもSEXなんかにありつけないわよっ…」

完全防音のプライベートルームでは、普段民衆の前で見せるたおやめぶりもどこへやら、過激な発言も辞さないマサコであった。

30代も半ば過ぎになろうとする彼女に、SEXへの渇望が人一倍あったわけではない。むしろ元々お嬢様育ちで、そういった方面に関しては奥手と言ってもいいだろう。その彼女があのような発言をしてしまう原因は全てSEX恐怖性で種無しの夫にあった。結婚して初夜を迎えたあの日、夫は行為を果たせなかった。まだウブだったマサコは、特にそのことを気にするでもなく、日を送った。しかし、二回目、三回目と同じことが繰り返されるに及び、とうとうマサコの中の疑念も核心に変わった。

この人は世に言うインポテンツなのだ、と。

以来マサコの態度が硬くなったことに気付いたのか、夫も自ら彼女と寝所を共にするのを避けるようになった。

その後、御付きの相談係から、夫が精子を持たない体質の為、体外受精も不可能ということを知らされた。

この国で唯一、子供を作るのが仕事とも言えるこの身分、果たしてそんな状態でいいのだろうか?という疑問も確かにあった。しかしマサコはそんなことよりも、望んで結婚したわけではない夫との性生活をせずに済んだことに逆に安堵感を覚えていた。

が、その日々も長く続くにつれ、マサコは自分では否定しているはずの熱い感情が体の奥底に芽生え始めているのに気付きはじめた。性的欲望である。

それは、マサコがふと気を許すと、とたんに鎌首をもたげ、女としてこのまま手がつかずに朽ちていくには実に惜しい豊満なその肉体を、内部から食い荒らす毒蛇の如く激しくゆさぶるのだった。

車に乗れば薄皮一枚で顔面に貼りつけた笑顔を下々の大衆に振りまき、つまらぬ展示会に招かれては思ってもいない褒め言葉を吐いて微笑む。

民衆の為、虚構の世界の王女様を演じる彼女にとって、部屋に帰った後の睡眠までのひと時は、素の自分に戻れる僅かな真実の世界であった。その精神的激務に疲れた肢体をベッドに倒れこませ、一息ついているつもりのその時、自分の右手が知らず知らずのうちにショーツの中に伸びているのに気付き、戦慄を覚えたのが一年前。以来、日を追うごとにからだはマサコの意思を離れ、淫らな行為に及ぼうとする勢力も強くなってきているのだ。

一ヶ月前の外交使節接待のパーティがあった日には、褐色の肌の大使にいただいた南国の強めの蒸留酒による精神侵略も手伝ってか、いつになく酩酊したマサコはベッドで大使の黒光りするような肉体に思いを馳せとうとう未開のその花園に指を挿し入れるという破廉恥な行為にまで至ってしまった。快楽の波が彼女の全てを包み込もうとするまさにその時、外務省育ちの高尚な理性と堅牢なプライドが外敵の前に立ちはだかり、彼女の手を止めさせたのだった。しかし、はっとして引き抜いたその指が、禁断の甘い蜜を吸って湿り気を帯びていることは彼女も認めざるを得なかった。顔から火の出るような恥ずかしさと共に、自分のその強固過ぎる貞操観念に対する漠然としたもどかしさも感じる自分がそこには混在しているのだった。

そして、それから一週間後の今日、残っていた蒸留酒を執事に無理を言って部屋に持ち込んだマサコは、自ら求めることは決して許されないその抗えぬ感情の波に、意思とは関係無くさらわれてしまうことを期待して――もちろん本人の理性ではそのことを認めてはいないが――、その魅惑の液体を飲み干し、白馬の王子の到来に焦がれる少女のように、それが押し寄せる時を待っていたのであった。

気晴らしに読んでいた小説の内容が気に障り、思わずはしたなく投げつけてしまったことを恥じたマサコは、立ちあがり本を拾いに行く。しかし、既にかなりアルコールが回っていた為足取りもおぼつかず、思わず倒れ掛かってベッド脇の鏡台に手を付いた。

綺麗に磨かれた大きな鏡から、バストアップの自分がこちらを見つめていた。甘めにカットされたネグリジェの胸の開きからも、斜めに構えたこの体勢だと胸の谷間が覗き見える。

「ふふ…まんざらでもないわよ…ね?」

誰に言うとでもなくつぶやき、さらにかがんで胸を強調してみる。鏡の向こうからは流行りのグラビアモデルのようなポーズを取った淫らな女が一人、こちらをうつろな目で眺めていた。

胸のボタンを一つはずす。

行き届いたケアと、誰の手にも汚されていない為に少女のように白く澄んだ肌が、鏡ごしに目の前に晒された。

もう一つ、ボタンに手をかける。

たわわに実った果実のふくらみが二つ、これでもかと言わんばかりに存在を主張しはじめた。

さらに一つ。

出番を待ち焦がれていたかの如く、濃い目の桃色づいた乳頭が眼前に姿を現わす。それは既に皿に盛ったストロベリープディングのように新鮮な盛り上がりを見せていた。焦点のあやふやなその目で、この国で最も高貴なストリップを見つめていた自分でも気付かぬうちに、 左手は既にショーツの中への侵入に成功していた。

「あっ…」

胸を揉みあげる右手の動きと同時に、せつなげな声があがる。

しかし今のマサコにそれが自分の声だと気付く様子はなかった。手の動きだけが激しくなる。誰に聞いたでもない、本能に導かれる形でのぎこちない愛撫。しかし性的に未成熟なマサコにとってそれは十分すぎるほどの威力を持ってからだの芯に響いた。

「はああぁっ…」

胸の奥底から声がしぼり出された。

「ダ…ダメよマサコ…私は下賎の女達とは違う…」

封じられかけていた理性の光りが、遅れ馳せながらも長年築いてきたロイヤルレディとしての気高い矜持を礎にマサコの精神を駆け上ってくる。

「こ、こんなはしたない行為で身を汚し…、はぁうっ…!」

マサコの指が、胸の頂点に位置する突起に触れた瞬間だった。

「だめ、だめよぉ……ああっ…」

その叫びもほとんど喘ぎと変わらぬ淫靡な旋律の中に埋もれていき、マサコの堕ちた夜は更けていった。




−3−

次の日の朝、目覚めたマサコは自らの乱れた衣類に慄然と昨夜の痴態を思い出し、全身の血管がはちきれるのではないかという程の羞恥心に襲われた。

魔が差したのだ、二度とあのような真似はすまい、と心に誓い、いそいそといつも通り身支度を整え朝食に出掛けて行く。日々の疲れは徐々にその日の秘儀を忘れさせていった。

運転手の小林からマサコの運命を変えることになる一枚の封書を受け取ったのはそれから五日後のことだった。

「何も言わず読んでください」

いつも礼儀正しい彼が妙ににやついた表情を浮かべているのが気にかかったが、いち運転手になどに構っている時間のないマサコは特に追求もせず軽く流して受け取った。その日の仕事も終わり部屋で髪を下ろし休んでいる時、ほとんど忘れかけていたその封書のことを思い出した。封を切って中身を取り出すと、収められていたのは一枚の便箋と写真。そこには、お気に入りのネグリジェさえ羽織っていなければとても自分とは思えないほど淫らな格好をした女が写っていた。胸の部分を大きくはだけたネグリジェの間からは見事に整った釣鐘型の胸が惜しげも無くこぼれ、ひざの位置まで脱げたショーツの向こうでは白く細い指が黒い繊毛の上を這っているのがはっきりわかった。望遠カメラで撮ったらしく、それほど鮮明ではないが、写っているのが誰かを特定するには十分だ。はっとして想定されるカメラの方向に目を向けたマサコの目に移ったのは、北窓のカーテンが揺らぐ様子だった。そこのカーテンは本棚が前にあって手が届きにくい為よく閉め忘れていた。口惜しげに唇を噛み締めるも、全ては遅かった。目を落とした便箋にはただ一行、携帯の電話番号が載っているのみ。しかし、今のマサコにとって、そこに掛ける以外の選択肢はなかった…。

 

*

 

「よくぞいらっしゃいましたマサコ様。いや、妃○下とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

電話で指定された当日、指定の場所――ホテルロイヤルラブ302号室――に現れたマサコを御付きの運転手小林はうやうやしく迎えた。仰々しく毛皮で飾られた椅子に木目調のテーブル、そして思わずマサコが眉間に皺を寄せるほど派手な色使いのダブルベッドが一つ。それがこの部屋の調度品の全てだ。追加するなら壁には何やら禍禍しい模様が描かれ暗めの照明にライトアップされていたが、それが卑猥な絵だと気が付くほどマサコはすれていなかった。

「誇り高いマサコ様を迎えるのですから、ふさわしい部屋をと思ったのですが、私めの安月給ではこれが精一杯でして…」

セリフとは裏腹に汚いジャンパーとジーンズという姿で椅子の背をに腕を乗せ逆向きに腰掛ける小林は、立ちあがろうともせず脂ぎった顔に気味の悪い笑みを浮かべた。

「小林さん、今日はあの写真のネガを返してもらいに来たのです。前置きはいいですから本題に入ってください」

マサコは慣れぬ部屋の異様な雰囲気と普段とは打って変わった小林の慇懃無礼な態度に圧倒されそうになりながらも、動揺を巧みに隠し毅然とした態度で言葉を返した。

小林は少し眉をあげて驚いた表情を見せたが、すぐにも下品な笑みを顔に貼りつかせマサコのからだを舐め回すように視線を上から下へと移動させる。ベスト付きの白いスーツにいつもの白いハーフスカート。全身から育ちの良さが溢れ出すも、それだけでは隠しきれない見事なからだの曲線美が女の色香を漂わせている。異様な視線に思わず一二歩後ずさりするマサコを確認すると小林は満足げに口を開く。

「そうですな、確かに理知的なマサコ様のことだ。うだうだ面倒なことを言わずともいいでしょう。単刀直入にいきましょう…」

一呼吸置き唾液の粘りつくような湿った声が発せられた。

「ではまず、裸になってください…」

「…!」

一瞬言葉の意味を理解しかねたマサコも、数秒の後その意図を理解し、背中に氷柱を押しこまれるような感覚を覚えた。

「な、なぜそんなことを私がしなければならないのです!私にできることなら何でもします。お金ならある程度用意してきましたし、身分を取り立てて欲しいのなら相談係くらいになら…」

「何か勘違いをしていませんか?マサコ様」

マサコの言葉を制して小林が口を挟んだ。

「貴女は私に写真を返してもらいに来たと言っていた。まずそれが違う。あれは私が撮った写真です。よってもともと私のものだ。それをあえて妃○下にお譲りしようというのです。それ相応の見返りが欲しい。当然でしょう」

陰気な普段とは別人のように雄弁になった小林は一気にまくしたてる。

「そして私は貴女の裸が見たいと言った。欲しいものは提示しました。あとは貴女が払う気があるか、否かです…」

言いたいことを言い終わると、小林はたるんで皺の寄った首を傾げて腕にのせ、今から始まる世紀のストリップショーを寸分たりとも見逃すまいという熱い眼差しでマサコを見つめた。彼の中ではマサコが断るという選択肢は存在していなかった。またそれは、自分の身分から言ってこれ以上ないと言えるほどの弱みを握られてしまっているマサコにとっても同様であった。

「わか…りました…」

消え入るような声でそう言うとマサコは帽子を脇のテーブルに置き、首に巻いたスカーフを音を立ててはずした。布の擦れる音が静かな部屋に響きわたる。ついで上着、ベストと脱いではきちんと畳み、テーブルの上に並べてゆく。ついに上半身は薄手のブラウス1枚となった。淡白いその布地の下は素肌に下着があるのみだ。それだけで恥ずかしそうに胸元を押さえるマサコ。その様は観衆――と言っても1人しかいないが――に、生地の隙間から彼女の柔肌が透けて見えるような妄想さえいだかせる。しかし無闇に想像を凝らさずとも、今にマサコはその美麗な肌地を他人の目に晒し示さなければならないのであった。

フロントに並ぶボタンに手を掛けたマサコの指が震えている。少し上を向いて目をつぶり、呼吸を整えると第一ボタンを外した。再び静けさが支配していた部屋では小林が唾を飲み込む音が誇張されてマサコの耳に聞こえた。手を止めて目を開ける。

「こ、小林さん…、ここで裸になったら本当に写真のネガを渡してもらえるのですよね?」

既にロイヤルファミリーの威厳はなく、小娘のように震えた声でマサコは囁いた。

「ああ、もちろんですとも。ただし、少なくとも今日一日は私の言う通りにしてもらいますけどネ」

その言葉の意味を深く考える力も今のマサコには無く、観念したように再び目を閉じる。第二ボタンを外し、第三ボタンに手を掛けたはずみで、純白のブラウスの隙間から乳白色の胸肌がちらりと垣間見えた。小林のソレは既にジーパンの中でパンパンにいきり立っていた。

襟を重ね合わせるようにして肌を隠しつつも、第五ボタンまでさしかかった頃、マサコの閉じた瞼から一筋の涙が頬を伝って流れ落ちた。手が震えてうまく外せない。

「手伝ってあげましょうか、お姫様?どうやらお困りのようだ」

下卑た笑いと共に小林が野次を飛ばす。

「け、結構です…じ、自分で外せます…から…」

マサコはきっと唇を噛むと力強い手つきで残りのボタンを外してゆく。とうとう全てのボタンを外し、一瞬の躊躇の後マサコはブラウスを脱ぎ捨て床に落とした。Cカップのブラジャーに収まりにくそうにつつまれた双球が、はじけるようにその全貌を現す。マサコはブラウスを畳む余裕もなく両手で肩を抱き、淡いブルーのブラジャーを覆い隠した。

「まだ前半戦も終わっていませんよ?お姫様」

容赦無く響く小林の声が、マサコの頬を流れ落ちる涙の量を残酷に増やさずにはおかなかった。




−4−

「確かにあんな写真はどこの週刊誌でもあつかってはくれないでしょう。でも、現代社会にはインターネットという無差別爆撃機がありますから…いくらでも不特定多数の目にふれさすのは簡単なんですよ…」

あれからブラの背中のホック1つ外すのに躊躇とためらいを繰り返して3分以上もかけたマサコの緩慢な動作にとうとう業を煮やしたか、小林は冷たい金属色の光りを放つ携帯電話をちらつかせながら発破をかけ始めた。

「実際この携帯のリダイヤルボタンを一つ押せば、家のパソコンが貴女のあられもない姿を僕のホームページにアップするようにしてありますから、その点くれぐれもお忘れなく……」

「そ…そんな、ひどい…」

未だ胸を隠すように上品な薄青のブラジャーを押さえたままのマサコは、小林の陽動に狼狽の色を隠せない。咎めと哀訴を宿らせた視線で小林を射抜くも、普段日常でならいざ知らず、この小林が用意した弄虐の舞台上では、○太○妃による譴責も何の効果もなかった。逆に彼女の動揺した様子に自分の言葉の確かな効果を感じ取った小林が、さらに促しの言葉を加速させる。

「もちろん、言うことを聞いてくれれば全て無しにしますよ。僕はどっちでもいいんですけどね。貴女が世界中に自分の恥を晒したくないとおっしゃるんでしたら方法はひとつです。さ、どちらがいいか御自分でお選びください…」

「く……」

ためらいを押し殺すような唇の噛み締めと共に、マサコの細い指が遂にゆっくりと肩紐にかけられた。微弱に震える手でそれが外されていくにつれ、国家の至宝とでも言うべきふくらみの北半球が、徐々に、徐々に小林の眼前に姿を現していった。

両肩とも外したブラジャーを、抱えるように両手を交差させて支えるマサコ。哀願するような目をしばし小林に向けるも、無慈悲に首を横に振られ、力無くその手を離す。

「ああ……」

とめどなく流れる涙とともに、とうとうその名工の陶磁器を思わせるほどなめらかな、しかも年齢を考えれば驚くほど形良く張り詰めた二つの丘陵が、世が世なら絶対に垣間見れさえせぬまま生を終えていくはずの身分の者の視野に捉えられた。

「すばらしい……」

小林の刺すような視線を感じ、マサコはすぐさま、両手でしっかりと胸をかばう。

「おい、さっき注意したばっかりだろう?手をどけろ。それにまだ下がまるまる残ってんだぜ!?」

小林の言葉遣いも徐々に乱暴になってくる。マサコは物心ついてから、人にそんな口をきかれたことなどなかった。上流家庭に生まれ、何不自由無く育ってきたのだ。御付きの運転手風情に裸体を晒すなどという、平民には想像もつかないほどの屈辱に眩暈にも似た立ちくらみを感じ、言葉が耳に入らない。

椅子が転がる音にはっとして目を向けると、既に立ちあがった小林がマサコに向かって羆のように毛深い手を伸ばしかけていた。

「ぶ、ぶれいなっ!」

頬を張る乾いた音が狭い室内に響きわたった。マサコは左手で胸を隠し、今平手をあびせたばかりの右手をわなわなと震わせ、最後の力を振り絞ったが如くするどい目で小林をにらみつけている。

「……ふーん……」

打たれた左頬をさも大事そうにさすり、小林は腐れきった政治家でもかくはと思えるほどに澱んだ目でマサコを見つめ返す。視線はマサコの瞳から、濡れ光りやわらかそうな唇、今の動きの興奮からか上下に息を切らす肩へと徐々に移動し、左手一本で頼りなげに隠す胸の谷間で止まった。押さえ込まれて少し誇張されているとは言え、深く刻まれた切り込みは彼女の乳房の豊かさを示すのに十分だった。

そんな小林の目の動きに反応し、即座にマサコは右手も胸に戻して後ずさる。

「止まれよ…」

さっきとは打って変わって氷のように冷ややかな小林の口調。その圧迫感にマサコも歩みを止めざるを得なかった。

「もう一度だけ言う…。自分の立場はわかっているな?…」

黒い光りをたたえた小林の目線に、スカートとストッキング、そして薄紅色のハイヒールのみ身に着けたマサコは身動きひとつできない。前で交差する腕の隙間からは、覆い切れないふた玉の女の象徴がその存在を主張して止まない。小林にとって非常に扇情的なシチュエーションだった。

「三秒やろう。その間に答えを思い出すんだ。思い出した証拠に…。そうだな、その邪魔な両手を高く上に挙げてもらおうか。背伸びのポーズだ…」

「なっ……!」

冷酷な小林の指令に、マサコの瞳に一瞬浮かんだ反抗的な光りが陽炎のように薄れて消えた。そう、今のマサコに小林に逆らえる術はないのだ。

「ひとーつ」

「ま、待って小林さんっ…」

「ふたーつ」

 容赦無く小林のカウントは続く。

「この姿で、そ、そんな格好なんて…」

「みっつだ」

小林の手が床下に転がる携帯に伸びる。

「ああ、わかりましたっ…くっ…ううっ…」

意を決したマサコは、胸を覆う両手を放し、ぴんとのばした背筋も美しく、両腕を頭上に掲げ伸びの姿勢をとった。その流れるような仕草は淫らなポーズを強要される囚われの女というよりもむしろ、白鳥の湖を踊る有名プリマとでも言った方がふさわしかった。ただ、無防備にまろび出されたたわわな2つの実りだけが、バレリーナにあるまじきボリュームを以ってマサコの女盛りを強調していた。




−5−

見事なプロポーションだった。手を放しても幾分も形の崩れることのない大ぶりの乳房はもちろん、その頂点でつんと上を向く桜色の乳頭、くびれた腰、完璧な曲線美を見せる端正な鎖骨。どれをとっても文句の付けようが無い。押し寄せる屈辱身を打ち震わせ、目をつぶったまま強く唇を噛み締めて羞恥に耐えるその横顔も含めて、このままギリシア彫刻として売り出してもよいとさえ思わせるほどの御姿だった。

「う、うつくしい…」

呆けたように口を開き、始めてあからさまに晒されたマサコの裸身に見入る小林。いつも車で目的地まで御連れするだけだった高嶺の花が、今彼の目の前にセミヌードの体を無防備に開いている。

○室に迎える花嫁を選ぶ時にはそのプロポーションまで綿密に調べ上げるのだろうか?そんな疑念が小林の脳裏によぎった。

「へへ、アンタ、いつもすました顔して、こんなウマそうなおっぱい隠してやがったのか…」

舌なめずりして小林はマサコの前ににじりよる。

その気配を察してか、マサコは目を開き、おびえた眼差しのまま再び数歩下がった。

「おっと、わかった、手はふれねぇよ。よし、じゃあ、その代わりにアンタに動いてもらおうか?」

常に余分に唾液を湛えたような口から発せられる小林の言葉にマサコは不安気な視線を返す。

「まだ、下は脱ぎたくねぇんだろ。もう少しそのままにしといてやるからよ。そうだな、こんどは両手で下からチチを持ち上げグッっとこう前に突き出してみせろ」

小林は節くれだった太い指をいやらしく動かし、巨乳をしぼる牛女とでもいう感じのジェスチャーをしてみせた。

「なっ!…そ、そんなはしたない真似、で、できるはずないでしょう!」

張り上げられたマサコの叫びにも顔の色一つ変えず、小林は携帯のストラップをつかんで揺らしてみせる。

「く…ひ、ひどい…」

止まっていた涙が再びマサコの目から溢れ出した。

「やるのかやれねぇのか?あぁ?」

「やり…ます……うっく…うぅ…」

マサコはゆっくりと両手を綺麗に縦に割れたへその位置までおろすと、しばしのためらいの後、その手を胸の下に持っていく。

「ちょっと待った、そうだな、どうせなら、せっかく外してもらったがアンタのトレードマークだ。この手袋をはめたままでやってもらおう、ハハハいつもつけてる手袋にそのポーズがさぞ似合うだろうぜ」

新しいいたずらを思いついた小僧っ子のように笑って、小林はテーブルの上にきちんと畳まれている衣類の中から純白の手袋を取り出しマサコに向かって放り投げた。

もはや逆らう気力もなく、鼻をすすり上げながらぎこちなく手袋をはめ直すと、マサコは再び震える手を胸の下にあてがう。

「さ、グッと揉み上げるんだ!」

「く…うぅ…」

あごから落ちる涙のしずくが胸で珠をつくって流れて行く。それでも恥ずかしさに子供のように赤く上気した頬にはとめどない水流が筋を絶やさない。とうとうマサコはその民衆にやさしく手を振り握手するための格式高い手袋で、自らの胸を持ち上げ前に突き出す淫らなポーズをとった。はちきれんばかりに膨れた乳房がこれでもかと強調されている。そしてその頂点では、赤みを帯びた膨らみが僅かな隆起を見せはじめていた。

「ああ、こ、こんな…」

「ハハハ!上品な顔して商売女みてぇなことしやがる。いいカッコだぜマサコ様よぉ!」

言いながら小林は今日一度目となる射精をズボンの中で終えていた。




このお話の続きはみのQファン様主宰の『 捕まりモノ大好きッコ! 』で読むことができます。


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