女 刑 事  凌 辱 法 廷

作:高輪 茂

 巧妙な闖入者


「ちわーす、宅急便ですが……」 

 と、京田がインターホンに声色をつかっている。
 ここまで来ても、まだ柳瀬は不安だった。帰宅時の誘拐がうまくいきそうもないので、京田の計画は女刑事の自宅を襲うという過激なものに変更されたのだった。
 誘拐よりは単純だけれども、強盗まがいのやり口には不安がつきまとう。相手は女とはいえ、現役の警察官なのである。しかも、空手の有段者だという。
 もしも部屋に男がいたら、そいつは同僚の刑事である可能性が高いから一目散に逃げる。という京田の珍妙な作戦も、柳瀬の不安を増幅させていた。そうしているうちに、マンションのドアが開いた。

「ご苦労さまです」

 という女の声がした。間違いなくあの女刑事の声である。

「奥さん、印鑑を」
「あら、あたし。奥さん、じゃないんですけどね」

 と、女が笑っている。いよいよだと思うと、柳瀬は胸もとに激しい動悸を感じた。
 女の手が荷物を受けとった瞬間、京田が手首を絡め取った。女の「何よ、何をするの!」という鋭い声があるかなしか、京田が彼女の手首に手錠をくい込ませていた。
 京田と女が組み合って、大きな音がした。折り重なるように倒れたまま、京田と女がもみ合っている。

「はよう、部屋の中を確認しいや!」

 京田の声を聞いて、柳瀬はおそるおそる廊下を進んでいく。
 トイレには……、だいじょうぶ、誰も入っていない。バスルームもOK。ダイニングキッチンには、誰もいない。その向こうには、京田が言ったとおりリビングと寝室をかねた広い部屋がある。さいわい、ドアにはガラス窓が入っていた。
 柳瀬はおっかなびっくり、引けた腰で部屋を覗いてみた。玄関から京田と女の激しく争う音が聞こえている。
 やった、誰もいない! リビングのドアを開けて確認すると、柳瀬は部屋のカーテンを閉めて京田の応援にもどった。

「だ、だいじょうぶ。誰もいないっスよ」
「はようこの女の腕、何とかしてや。ああ、その前に猿轡を噛ませよう」

 と、京田がうんざりしたように言う。
 京田は手錠をかけられた女に、胸ぐらをつかまれて身動きがとれないのだった。女のネグリジェの胸がはだけて、シルクのメタリックブラジャーがのぞいている。

「こんなことして、どうなるかわかってるの!? あたしは警察官なのよ!」

 タオルで口を封じられながらも、女は激しく抵抗した。ようやく後ろ手に縛りあげた時には、距離を保っていたはずの柳瀬までが数発のパンチをもらっていた。

「こらタイヘンな女やなぁ。これが広い場所やったら、間違いなく空手四段の餌食やったで」

 と、京田が汗をふきながら言う。空手四段という言葉を聞いて、女の顔色が変わった。
 この強盗たちは、あたしを知っている……?

「辛抱しいや。これから箱の中に入って移動や」

 京田の言葉に、女がピクリと反応した。

「なんや? ワシらが何者かて言いたいんか? 大学出のエリート刑事さんやったら、誰ぞに恨みを買うようなこと、ぎょうさんおますやろ。なっ、敏腕の女刑事さん」

 女が驚いたように目を見ひらいた。やっぱり、ただの強盗ではないらしい……。いや、あきらかに自分を標的に襲ってきたのだ。事態を察したらしく、女のひたいに汗が浮かんだ。

「はよ、ダンボールを組み立てんかい」

 と言うなり、京田が女の腹をヒジで打ちつけた。顔をゆがめている女の身体を裏返すと、手際よく足首を縛り上げた。

「安藤葉子、29歳。職業、警察官。権力を傘にきた傍若無人のふるまいにより、逮捕する。これより、女体裁判法廷に連行する」

 と、京田がわけのわからない宣告をした。



 揉みしだかれる果実


 京田は呼吸を乱している女の胸をつかむと、ネグリジェの上着を左右に分けた。すぐにボタンがはじけて、メタリックのブラジャーが露出した。胸の谷間の深さに、思わずゴクリと喉が鳴った。
 大きく盛り上がったバストは、大きめのカップからはみ出しそうに息づいている。成熟した女の色気が、匂い立つようにつたわってきた。
 京田は、たまらずにブラジャーのカップを捲った。

「ううッ……!」

 ストラップがはじけ飛んで、大ぶりの乳房が躍り出た。女が必死に肩を揺すって、バストを隠そうとする。

「こいつは、男に揉まれるために発達したパイオツやね。遠慮なく触らせてもらおうかい」

 京田が指をさしのべると、女が激しく首を振った。

「うーん、いいパイオツだ」

 持ち上げるように掴むと、弾力を確かめるようにタプタプと揉みたてた。期待どおりの若々しい弾力である。 

「ううッ……」

 女の喉から、声にならない呻き声がもれた。
 重さで垂れ気味にみえる果実の中心には、質感のある乳首が眠っている。

「なかなか立派な乳首やないね。処刑判決が待ち遠しいで」

 と言いながら、京田はやわらかい乳輪に指を埋めた。脂が乗った肌が汗ばんで、吸い付くように指先に絡む。乳首の根もとに指を埋めると、乳頭が立ち上がってきた。

「く、くうッ……」
「感じてるみたいやな、女刑事さん」

 女は身をよじらせて逃れようとするが、腕を動かすのもままならない状態である。
 自分の意志に反して、プックリと膨らんでしまった乳首に、女が嫌悪感をあらわにした。抑揚をつけながら指の腹で乳頭を揉み込むたびに、性感の芯を捕えられた女の頬が、ピクリと反応する。

「ほれ、どうかね?」
「うぐッ……!」
「男顔負けの女刑事さんも、こうされりゃただの女やな。どうかね? 乳首が感じすぎて堪らんみたいやね」

 京田が女の背中を抱くように、本格的な愛撫を加えはじめた。

「ふぅ、くうッ……」

 京田の指がコリコリと乳頭を転がすのにつれて、女の息がじょじょに荒くなってきた。ついに、女は髪をゆすって顔を隠した。

「よし、ダンボールに詰め込むぞ」

 と、京田が柳瀬に合図した。
 このまま拉致されるのに気づいた女が、喉をふるわせている。京田はバストを荒っぽく掴んだまま、女の身体を横倒しにしたダンボールの中に押し込むと、大きなヒップを蹴り上げたのだった。

「ヒイッ……!」
「静かにしてるんやで。騒ぎ立てるようなら、綺麗な肌が傷だらけになるよってな」

 京田は脅すように、ダンボールに錐(キリ)を突き立ててみせた。



 女体裁判の開廷


 警視庁の女性刑事、安藤葉子が連行されたのは、郊外のワンルームマンションだった。もとはファミリーマンションだったものを改造したのか、仕切られた天井だけが洋間と和室の面影をとどめている。

「何キロあるんや、まったく重たい女やで」

 と、ダンボールの梱包を解きながら、京田が葉子に聞こえるように言う。葉子は思わず耳をふさぎたくなった。グラマラスなプロポーションは同性が羨むほどだったが、大きすぎるバストとヒップは自分でもイヤになるのだ。

「獲物は重量級でっせ。料理のし甲斐がありまんな」

 いきなり光が射し込んできて、葉子は目を凝らした。やはり、誘拐の依頼人がいるのだろうか……? どう考えても、押し入ってきた男たちに面識はない。いったい誰が……? 車で運ばれているあいだ、葉子はそのことばかり考えていた。
 梱包が完全に解かれると、京田が葉子を抱きかかえるように箱から出した。

「久しぶりじゃないですか、安藤刑事」
「あ……!」

 葉子は、相手の顔を見てたじろいだ。数年前、彼女がオトリ捜査で検挙した婦女暴行の常習者だったのである。
 そうだ、あの時はたしか、強制猥褻の別件で逮捕したのだった。葉子はその時の恐怖とともに、相手の名前を思い出していた。毎日眺めている犯罪者リストにも、その顔があったのを思い出した。

「名前は覚えてますね? 牛川ですよ。まだあの頃は可愛い女の子だったのに、こんなに綺麗になって。そろそろ熟女の域じゃないかね?」

 と、相手は葉子の剥き出しのバストに触れてきた。

「ううッ!」

 ブルンとバストをはじかれて、葉子が顔をくもらせた。

「タオルをはずしてやってくれたまい。綺麗な声が聞きたい」

 と、牛川が京田に指図した。

「さあ、牛川はん。さっそく裁判を始めましょうや。被告人は席について」

 そう言うと、京田が葉子を椅子にすわらせた。
 ワンルームとはいえ、部屋はたいそう広い。男たちが間近にいない分だけでも葉子はホッとした気分だった。長い髪をゆすって、はだけた胸を隠した。

「これより、女体裁判をはじめます」

 と、京田が反対側にあるデスクに腰かけた。

「では、検察官は起訴状の朗読と冒頭陳述を」

 京田にうながされて、牛川がメモを見ながら楽しそうにきり出した。

「被告人安藤葉子は、司法警察官という職責にありながら、豊満な肉体を武器に男性を誘惑し、何人もの善良な男性を篭絡したうえ罠に陥れ、さらには公権力を不当に行使し、善良な市民を不当にも逮捕し、暴虐のかぎりを尽くしたものであり、その犯行の態様はまことに悪質であります。ここに女体裁判によって、改悛の情をうながすものであります」

 口上のあまりのバカバカしさに、葉子はふて腐れた。

「罪状認否を行います。被告人は検察官の読み上げた罪状を認めますか?」
「な、何のつもり!? こんなことして、どういうことになるかわかってるの!」

 葉子は息をつぎながら叫んだ。

「ここまでなら、冗談ですませてあげるわ! はやく私の手をほどきなさい!」
「被告人は聞かれたことだけに答えて」

 と、京田が威厳をこらした。

「裁判長!」
「はい、検察官の発言を認めます」
「被告人のこのような態度が問題なのであります。権力をかさにきた言動は、とうてい司法警察官に不適当なもので、検察官といたしましてはただいまの被告人の発言を、証拠として提出いたします。甲第一号証、被告人の傍若無人な発言。なお、さきほどの被告人の発言は、法廷侮辱罪に相当するものと思料いたします」
「証拠採用します。被告人には、法廷を侮辱する発言を禁じます」



 恥辱の懲罰動議


 安藤葉子は茫然としていた。ただのゴロツキだと思っていた男たちが、弁護士なみの法律用語を操っているのである。
 そうしてみると、勝気な性格の彼女は法律論争でうち負かしてやろうという気分になるのだった。

「さ、裁判長の訴訟指揮に、異議を申し立てます。私には弁護権はないの? 弁護権のない裁判なんておかしいじゃない。刑事訴訟法にのとって、この場に弁護人の臨席を要求するわ。弁護士が来るまで、この裁判は休廷ね」
「異議は却下します。被告人は勝手な発言をしないように。被告人は先ほど、罪状認否を拒否したんですよ。当法廷は弁護権の放棄とみなしました」
「バカ言わないでっ! そんな裁判ないわよ、あんたたちバカなんじゃないの?」
「法廷侮辱罪だッ! 懲罰だ、懲罰を要求します」

 と、牛川が嬉しそうに叫ぶ。

「わかりました。被告人に懲罰を与えます。廷吏は被告人の着衣を脱がせてください」

 京田の言葉で葉子が顔色を変えた。着衣といっても、上半身はすでに何も着けていないのだ。全裸にされる恐怖に葉子は身構えた。

「い、いやよ……」

 廷吏役の柳瀬が、葉子の腰に跳びかかった。

「いやっ、やめなさい!」

 髪を振り乱して逃れようとしたが、床に押し倒されたのだった。いかに空手の有段者でも、両手首を後ろに縛られているのでは、どうにもならない。葉子は小男の柳瀬に、楽々と押さえつけられていた。

「ああっ、おねがい……。脱がせないで!」
「へっへっへ」

 お尻からベビードールを抜かれて、葉子の黒いTバックショーツが晒された。

「ほう、ストリングスねぇ。エッチな下着が好みなのか」

 と、牛川が舌なめずりした。
 ベビードールばかりか、ショーツまで抜き取ろうとする柳瀬を、葉子は思いきり蹴り上げた。
 このままでは、確実にレイプされてしまう……。葉子は制止しようとする牛川に体当たりして、玄関のドアまで駆けた。
 しかし、玄関のドアにたどり着いたところで、牛川に捕まってしまったのだった。鍵が開けられない……。後ろ手に縛られているのでは、どうにもならなかった。

「残念だったなぁ、女刑事さん」

 と、牛川が葉子の背中を抱きしめながらささやいた。バストを包み込むように揉み上げ、柔らかい果実に指を食い込ませてくる。

「さ、さわらないで」
「いい感触だ。これが安藤葉子の乳房の感触か」
「いやっ!」
「俺は長い間、この日を待ってたんだぜ。あんたの豊満な肉体をたっぷり味わうために、いままで希望を捨てずに生きてきたんだからな」

 牛川が葉子のヒップに指を潜らせて、ショーツの脇からアナルに指先をこじ入れようとした。

「やっ、やめて! 変態っ!!」
「静粛に、静粛に!」

 と、裁判長役の京田が叫んだ。

「法廷逃亡を謀った被告人を拘束します。廷吏は被告人の両手をロープに拘束して。いいですか、被告人。今後は乱暴な口のきき方も懲罰の対象にします」
「……」
「警告しておきますが、次の懲罰はショーツも脱がせます。脚を広げて身動きができないようにしますから、そのつもりで」

 最後の一枚も脱がされたうえに、脚をひろげるという京田の警告に、葉子はもう何も言えなかった。せめてショーツ一枚にされた恥辱から逃れようと、葉子は身体のバランスをとりながら男たちに背中を向けた。

「被告人っ! 裁判長にお尻を向けるとは何ごとですか。ちゃんと法廷の正面を向かなければ、下着を取りますよ!」

 葉子は慌てて身体の向きを変えた。

「証拠調べに入りますので、検察官は被告人を尋問してください」

 京田にうながされて、牛川が立ち上がった。



 謀られた女体尋問


 牛川は葉子のそばまで来ると、舐めるように彼女の肉体を検分した。

「なるほど、よく発達したバストだ。早く下半身を剥き出しにして、アソコの色を確かめたいもんだ」

 と、股間を覗き込もうとする。葉子は思わず太ももを締めた。

「検察官は余計なことは言わないで、尋問を始めて」

 と、京田が呆れたように命じた。

「では質問を始めます。被告人は容疑者を逮捕するさいに、自分の肉体を使って、つまり自分から強制わいせつ行為を仕向けるような、いわゆるオトリ捜査をおこなったことがありますか?」
「なっ、ないわよ」
「特定の容疑で逮捕した被疑者を、別の容疑で取り調べたことがあるんじゃないんですか? つまり、別件逮捕だ」

 思っていたよりも理性的な質問に、葉子は安堵していた。

「か、関係ないわ。あたしは、通常の捜査しかしてませんし、被疑者の取調べに加わることは、少ないんです」
「そうですか。ここで検察官は証人を申請いたします」
「検察側の証人申請を許可します」

 マンションではあれほど乱暴だった京田が眠そうにしている。のんびりした展開に、もしかしたらこれは休日の退屈しのぎのお遊びなのかも……。と、葉子は気分が落ち着くのを感じた。
 証人は廷吏役を兼ねている柳瀬だった。

「証人は宣誓してください」

 と、京田がうながす。

「良心にしたがい、何ごとも真実のみを話すことを誓います」

 型どおりの宣誓をして柳瀬が歩み出ると、牛川が口をひらいた。

「証人は三年前に、強制わいせつの現行犯で逮捕されたことがありますね?」
「はい、あります。この女にハメられたんです」

 葉子には、その記憶がなかった。

「まったくヒドイ女です」
「証人は訊かれたことだけに答えて」

 と、京田が裁判長らしくうながした。

「質問を続けます。証人はそのときの態様を、くわしく話していただけますか?」
「いいですとも。私が電車に乗って立っていたら、前の席に座っている女がブラチラをしてたんですね」
「ブラチラ? ブラチラとは何ですか?」

 と、京田が口をはさんだ。

「ブラウスの胸元からブラジャーをチラリと見せることです。パンチラと同じですよ」
「なるほど……。証言を続けてください」
「まあ、私がチラリと見るでもなく気にしてますと、その女は老人に席をゆずって、私のとなりに並ぶように立ったんでした。ちょうど新宿駅で乗客がたくさん乗ってきたものですから、押された拍子に女が胸を押し付けてきたんです。私は押されたので苦しくてたまりませんでしたが、こんどは女が両脚で私の腿をはさむような格好をしてきました。ミニスカートが捲れて、私が親切心から直してやろうと手を伸ばした瞬間でした。突然、女が悲鳴をあげて、私はうしろにいた私服刑事に逮捕されたのです」

 ようやく、葉子の記憶が喚起されてきた。しかし、事実はまるで違うのである。

「よくわかりました。そのときの女は、ここにいる安藤葉子ですね?」
「はい、被告人に間違いありません」

 柳瀬はそう言うと、ニヤリと葉子の顔に笑いかけた。

「嘘おっしゃい! あなたは私のとなりにいた女子高生に痴漢をしてたのよ。忘れたとは言わせないわよ」

 と、葉子はたまらずに声をあげた。

「被告人は静粛に!」
「証人に最後にお聞きします。あなたを罠にはめた被告人に、どういう感情をお持ちですか?」
「もう、こんな極悪女は素っ裸にして、たとえば全裸のうえにコートを着せてですね。満員電車の中でいきなり脱がすとかして、ヒイヒイ泣かせてやりたいですね」

 柳瀬のわけのわからない言葉に、さすがの京田も頭を抱えた。





 このお話には続きがあります。
 この続きは、高輪茂様主催の『高輪茂の官能の館』でお読み頂けます。

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