chap.3: Intermission T


 作:九兵衛
編集:キャプテンJ



万由子が目を覚ましたのは、3畳満たない狭い牢獄だった。
手には手錠をかけられていた。
消毒薬の匂いがする部屋は、所々にしみのようなものが点在していた。
自分の体に掛けられた、薄手の毛布がしみだらけで汚らしく、それを見た万由子は気持ち悪くなって毛布を投げる。
床も汚らしく立ちあがろうとしたが拷問のために体中に激痛が走り出来なかった。
彼女の着せられたお仕着せは、灰色のワンピース状の囚人服だった。
今まで身につけていたものはすべて、脱がされていた。すなわち彼女は、この囚人服以外は下着やストッキング等は勿論の事、靴もはかされていなかった。
彼女に自分の立場を判らせる目的らしい。

昨日まで、両家の子女として何不自由無く生きてきた彼女にされた、手錠も、囚人服も、体中につけられた無数の鞭の痕も、すべてが痛々しく見える。
自分にされた、手錠をぼんやり見ているうちに、自分自身がとてつもなく惨めに思えた彼女は、
うっ、うっ。
と嗚咽漏らすと、目から涙があふれでた。

鉄の扉が軋むように開く音を聞いた彼女は、必死の思いで涙を止め、囚人服のすそで涙を拭いた。
こんなところを見られては相手の思う壺だ。

入ってきたのは、マキだった。
黒のドレスに身を包み、さりげなく金のネックレスと、エメラルドの指輪を身に付けた彼女の時計はカルティエだった。
パンプスは、ヒールの長さが10cmほどある。

気分はどう?

良いわけ無いでしょ。散々ひっぱたいといて。

そう、えさを持ってきたあげたわ。

そう言うと、右手に持ったバケツを少し持ちあげた。

ほら囚人、拷問史様がじきじきにえさを持ってきたのよ。
さっさと皿をこちらに持ってきなさい。

マキが指差した方向に、薄汚れた皿があった。万由子は仕方なく、その皿をマキに差し出す。
昨日から何も食べてないので、食事のことを思い出すとやはり空腹感が襲ってきたのだ。
マキは、その上にバケツに入ったひしゃくで、どろどろの物体を盛り付けた。

何よこれ。

囚人のえさに決まってるじゃない。

だから材料とか.....。

知らないわ、残飯を混ぜたものだから。

バカにしないでよ。こんなの食べれるわけないじゃない。

食べておかないと、体が持たないわよ。
いい事、拷問に耐えるには気力を保つこと。
そのためには体力を温存する必要があるわ。
すなわち、出されたものはどんなものだろうと食べる。
そして後はひたすら寝るの。余分な体力を使ってはだめ。

どうして、そんなことをわたしに教えるの?

だって、簡単に喋ったら面白くないじゃない。
昨日だってだらしなく泣き叫んで、あたしが手加減してやらなきゃとっくに喋ってたわよ。

万由子は相手をきっとにらんだ後、皿のほうに目をやった。

あっそうそう、食器類は無いからね。囚人は手で食べなさい。

何処まで自分を辱めれば気がすむのか...このまま泣いてしまうのは簡単だが、それではプライドが許さない。
彼女は、マキを睨みつけながら手掴みで食事を口に運ぶ。

...まずい
どうやったらこれだけまずくなるのか?

まあ安心して良いわ。
そのえさは抗生物質が入っているから、食べて病気になったりしないわ。
その分味はひどいけどね。
この部屋だって同じ、匂いで判ると思うけど、見た目ほど不潔じゃないの。
あくまでも囚人に自分の立場を判らせるのが目的だからね。
じゃあ、ゆっくり休みなさい。

それからトイレはそのバケツだからね。
考えてしないと、臭くてたまらなくなるわよ。

マキは部屋のすみに置かれたバケツを指差すと立ち去ろうとした。プライドがずたずたにされていくのを感じながら、万由子は拷問で痛む体を無理に起こすと、鉄格子にしがみついた。

負けないから。絶対に負けないから。暴力に屈したりしないから。

マキは、振り返らずにに左手をあげる。

その調子よ。明日は拷問をしないであげる。あさってから楽しみましょ。

鉄の扉がしまる音を聞いたとたん、万由子は鉄格子にしがみついたまま崩れ落ち、またもや泣き出していた。
次に誰かが入ってきても、涙を止める自信は無かった。

扉を閉めたマキは、携帯で電話をかける。

あっ、J、あたしよ...そう、マキ。
さすがに何の訓練の受けてないのに、あたしの鞭に耐えただけの娘ね。
いい根性してるわ。
発破掛けといたから、これなら、あさってには拷問が再開できるわ。

えっ、誰に物言ってるの、あたしはプロよ。
あの程度の小娘なんて造作無く落とせるわ。

じゃまたね。




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