chap.7: 4th MISSION


− 駿 河 問 い −


 作:九兵衛
編集:キャプテンJ



浅い眠りの中でも、万由子は扉が開く音だけは聞き逃していなかった。
誰かが来ても牢獄で眠っているなんて事をすれば、どんな折檻を受けるか判らない。
飛び起きた彼女は、来訪者を迎えるべくいつもの姿勢をとる。
来訪者は万由子に声も掛けずに、牢の中に入ってくる。
不安に駆られた彼女は相手に気付かれない様に、そっと確認をする。
例の3人組みだ。

何がご所望でしょうか?
お願いですから仰って下さい。

万由子にも、彼等が何を考えてるのか判らない。
どうせ逆らっても散々折檻されて、言うことを聞かされるのだから痛い思いをする前に相手に服従しておいたほうがましだと、考えるようになっていた。
しかし彼らは万由子のそんな言葉には耳を貸さず、万由子を外へ引きずり出した。

そんなに拷問史様方の手を煩わしたりいたしません。
何処へ行けば良いか仰っていただければ自分で参りますから。

と言って立ち上がる彼女の肩を拷問史の一人が小突く。歩けと言う意味だろう。
扉の外に出た彼女は、拷問室の前を足早に通り過ぎようとする。
そこで拷問史に髪をつかまれる。

..やはりここなんだ。

絶望的な気分になってくる。

ここで御座いますね。

部屋の中には豪華ないすに足を組んで腰掛けたマキがいた。

よく来たわね。

と言って指をはじく。拷問史は万由子から手錠と囚人服を剥ぎ取る。
さらに彼女をうつぶせにすると、両方の手首と足首を後ろに回し全てを一箇所に集める。
マキは、太い縄を用いてこれを固定する。
背中が反って苦しい。

マキ様どうか、わたくしの罪をお教え下さい。
囚人の分際で度の様な禁を犯したのでしょうか?

まさか寝ているときに、マキがいたのか?
それはありえない、あの牢獄で彼女は熟睡など一度もしたことが無い。
つねに、緊張しながら寝ているのだから。
それにしても、折檻の理由ぐらい教えてくれてもいいのに。

ぐっく。

うつぶせに寝かされたままの万由子の背中に、40Kg近い重石が乗せられた。
こんな事されては息も出来ない。
マキはその重石を縄で固定する。
太い縄が引き上げられ、万由子は吊り上げられる。
手首と足首に全体重がかかりちぎれてしまうように痛い。
重石のせいで、体の反りが余計大きくなり本当に苦しくて死にそうだ。

(こんなの折檻じゃないよ。まるで拷問だよ。こんな酷い事される覚えなんか無いのに。)

支えの無い万由子の体は、ゆっくりと回っていた。
逆さ吊りの時の味わった恐怖の体験が脳裏によみがえる。
人間は地に足がついていないとこんなにも不安感にさいなまれるとは。
しかしそんな不安感も消し飛ぶほどの痛みと苦しみが襲っていた。

マキ様...、お願いですから....、何の罪か教えてください。

万由子はうめきながらようやく言った。

おまえは未だ隠していることがあるはずだ。

マキは冷たく言い放つ。

そんな事はありません......。本当です、信じてください。

おやり。

万由子の懇願を無視して拷問史に指示を出すマキ。拷問史は万由子の体をゆっくりと回して行った。

ほ...本当に....全て、お話しました。

何をされるか気付いた万由子は恐怖に駆られた。

な.....何を....申し上げれば良いかヒントだけでも下さいまし。

縄が十分によれてきた。
マキは右手を上げる。
そして下ろした。その瞬間支えを失った万由子の体は恐ろしい勢いで回転を始めた。

いやあああぁぁぁっっっ!!!

彼女の体からあらゆる体液が搾り出されて行く。
その苦痛は逆さ吊りの時の比ではない。
床が恐ろしい勢いで回転し、三半規管の狂いにより生じた平衡感覚の損失に与える恐怖も逆さ吊りを上回る。
苦痛と恐怖にかれながらただ絶えることしか許されない。
回転が収まってもまた逆に回り始めるのだから、この苦痛と恐怖の終わるときはかなり先の話だ。
脂汗ばかりでなく、胃液も飛び散り始める。さらに時間が経つと、血まで飛び散って来た。
回転が収まったとき、体中の穴から血が噴出していた。

何を.....御話すればいいんですか。

消え入りそうな声で万由子は尋ねる。1秒でも早く下ろしてほしかった。

おまえは、ある人身売買の組織の内偵をしていたんだよね。

はい..

その組織を取り仕切っているのは、首相の渋沢だったわね。

はい、その通りです......。
もういいでしょ下ろして.....
下ろしてくださいーっ!!。

その前に、それをそのビデオに向かって告白なさい。
原稿も書いといてあげたからね。
ただし、ちゃんとやらないと何度でもやらせるよ。

マキの指差した方向にビデオカメラとホワイトボードがあった。

ホワイトボードに有った文章を読み終えた万由子はようやく床に下ろされ、そのまま後ろ手に縛りなおされた。
口の中に手ぬぐい2本分の布切れをつめられて口に猿轡押される。
そのまま木箱に入れられていしまう。
木箱の中には無数のベルトがありこれで万由子の体を固定した。
マキはその体にビデオテープを縛り付ける。

これで拷問は終わりにしてあげるわ。
これはさっきあんたが喋ったビデオのダビングよ。
これから渋沢の自宅にあんたを送り返してやるわ。
なんて顔するか楽しみにしていなさいよ。
なんせあんたはわが身可愛さに首相を売ったんだからね。
最も途中で死んじゃうかもしれないけど。

そんな言葉にも、もはや万由子は何の反論や反発も出来ずただ、悲しげな目で相手を見つめるしかなかった。
木の板が打ち付けられるたびに、万由子の視界が狭くなる。
最期の板を乗せようとした拷問史を手で制したマキは、おどけたように敬礼をして万由子に最後の挨拶をする。

Bad Luck ..




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