首相の自宅に送りつけられた万由子は、奇跡的に生きていた。
しかし、箱の中の暗闇で、自分の現実に絶えられなくなった彼女の心は外界との接触を絶ってしまった。
体の傷はすぐに回復するだろうが、彼女の破壊された精神はいつ回復するのだろうか?
マキは執務室で「メサイヤ」を聞きながら2通の報告書に目を通していた。
1通は万由子の入院の様子を報告するもので、どうやって撮ったのか、病院での万由子の写真も添付されている。
この写真の万由子は、無表情で目は死んだ魚のようにうつろであった。
もう1通は、渋沢首相の急な辞意表明を伝えた新聞や号外等の切抜きを集めたものである。
退陣の理由もつけずいきなりの表明にマスコミもその真意を計りかねていた。
与党のほうも相当混乱し、留任を求めるがその意思は変わらなかった。
それらを読み終えたマキはポツリとつぶやく。
万由子ちゃん、あんた本当に役に立ってくれたわね。

|