コンプレックス少女

ブラン 作
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 梅雨の季節が終わりに近づき、少しずつ夏が近づいてきている。
体育では水泳の授業が始まった。運動神経の良い佐竹なつきは体育の授業
ならどの種目も得意だったが、とりわけ水泳は彼女の大好きな授業だった。
というのも、子供っぽい見かけに反して抜群のプロポーションが彼女の自慢
で、それをクラスメイト達の前で披露できるのが密かな喜びなのだった。
Sサイズの水着は大きめの胸のせいで少し窮屈になっており、逆に胸の
大きさを際だたせた。ウエストはくびれ、ヒップも小ぶりで形良く盛り上
がっており、文句の付けようのないスタイルをしていた。
「なつきはいいわよね。いつもノー天気で。」
「なによ、はるか。今日はなんだかご機嫌ナナメね。」
なつきとは対照的に大友はるかは水泳が憂鬱だった。水着の胸元にはイン
ナーパットを入れて少し膨らみがあるように見せているものの、肉付きの
豊かな下半身の方は隠しようがなかった。Mサイズの水着は大きめのヒップ
のせいで窮屈になっており、少し動くと水着がお尻に食い込んでしまうの
を気にしないといけなかった。
「それより、あやのは?」
「また見学じゃない?」
なつきは周りに聞こえないように少し声のトーンを落として言った。
「本当のところ、あの大きな胸をみんなに見られるのが嫌みたいよ。
極度の巨乳コンプレックスだからなぁ。」
「私からすれば贅沢な悩みね。」とはるかはため息まじりに言った。
「そうそう、持ってるものは積極的に活用したらいいのに。この私みたい
に。」
そう言いながら、なつきはグラビアアイドルがよくやる胸寄せポーズを
取って見せた。何人かの男子生徒のがなつきの胸元をじろじろと凝視した。
「はるかなんてこんなに貧乳でも頑張って授業出てるってのに、全く
けしからんわ。」
「(ボコッ!)」
「は、はるかが殴ったぁー!」

あやのは制服姿のままプールサイドで見学をしていた。
授業を抜け出してきたなつきがあやのに声をかけた。
「泳がないの?」
「う、うん。水泳の授業は基本的にサボると決めたの。」
「あんまり気にすることないと思うけどなぁ。(その胸。)」
「なつきとは違うの。私だって、本当は思い切り泳いだりしたいわよ。
みんなの目を気にせずに。」
「ふーん。」

次の日の昼休み。
「じゃーん!」
「何よ、なつき。いきなり。」
「このチケットが目に入らぬか!」
はるかがそのチケットをサッと奪い取る。
「どうしたの?超有名ホテルのリッチ・ロイヤルの宿泊券じゃない」
「パパにおねだりして知り合いから手に入れてもらったの?みんなで
いかない?」
「ええーっ、一泊ウン万円するんでしょ?そんなのもらえないよ。」
「そうそう」
はるかとあやのの二人は困惑顔である。
「気にしなくていいって。余ってたらしいから。それより、このホテル
にはプライベートビーチがあるの。人もほとんど居ないから快適よ。」
「なつき、私のためを思って?(がしっ)」
あやのがなつきを抱きしめる。なつきの顔があやのの胸に埋まってしまい、
なつきが窒息しそうになる。
「く、苦しい。」

次の土曜日、なつきの家の高級車に乗ってリッチ・ロイヤルを目指す。
高速道路を走らせること2時間で海が見えてきた。
「この辺りなの?ちょっと辺鄙なところだけど。」
はるかが不安げな顔をした。
「大丈夫よ。ここから車はフェリーに乗って島に渡るの。フェリーで車ごと
ホテルにチェックインするのよ。」
得意げになつきが話す。
「ええーっ!」
はるかとあやのの二人は驚く。確かに海を見わたすと遠くに島が見えた。
島まではフェリーで15分ほどだった。徐々にと巨大なリゾートホテルが
姿を現す。船着き場に着くと、車はホテルの玄関で三人を降ろした。
はるかとあやのはあまりのスケールの大きさに驚いた。しかも、三人が
通された部屋は極上の最上階スイートルームだった。
「ちょっと、なつき。これって一泊ウン万円じゃ済まないじゃない!」
部屋からの景色はもちろんオーシャンビュー。眼前にはプライベート
ビーチ。ビーチには散歩している老夫婦の他にだれもいない。
「いいって、いいって。お金のことは心配ないから。それより、さっそく
泳ぎにいこうよ!」

ホテルの地下に更衣室があって、そこから直接ビーチに出られるように
なっていた。
「あやの?この日のために水着買うって言ってたけど、あったの?(サイズ
が)」
「うん、ちゃんと用意してるわよ。」
あやのが着替えたのは大胆な黒の紐ビキニ。カップは大きな胸の半分も
被えておらず、横からも下からもバストがこぼれている。
「わぉ、あやの、大胆!!」
二人は感嘆の声を上げた。
「い、一度、こんなのを着てみたかったの。」
顔を真っ赤にしながらあやのが言った。
「うん、いいよ。とても大人っぽいわ。」
「うまく、考えたわね。紐ビキニなら胸がはみ出てても不自然じゃないわね。しかし、すごい・・」
「また胸が大きくなったわね。そろそろ3ケタの大台に乗ったんじゃない?」
「乗ってないって!!」

紐ビキニは胸の拘束が弱いため歩くだけでユサユサと揺れる。少し走るものなら胸がぶるんぶるんと大揺れしてしまう。しかし、普段なら気がかりな揺れもここなら誰もいないので気にする必要がなかった。
なつきとはるかの二人もビキニに着替え、三人はビーチに駆けだした。
三人はビーチボールで遊んだあと、海で一泳ぎし、ビーチに寝そべったあとまた波打ち際で遊んだ。ランチはビーチに併設のカフェテラスに用意されており、十分にエネルギー補給をしたあと、再び海で遊んだ。ひとしきり遊び終えてビーチに寝そべっていたとき、はるかが何かに気がついた。
「ちょっと、あれ、何かな?」
はるかが指さしたのはビーチの端の方で、20人くらいの集団が歩いて
こちらにやってくるのが見えた。
「学校の遠足?何の集団だろ?ホテルのプライベートビーチに勝手に入って
来ちゃまずいんじゃないかな?」
あやのが怪訝な顔で言う。徐々に集団がこちらに近づいて来た。
「あ、あれ、もしかして、うちの学校の生徒じゃない??」
よく見ると、全員同じ学校の男子生徒だ。皆、長距離を歩いたらしく
へとへとになっているが3人を目がけてやってくる。
「おおーっ!!はるか様発見!」
「見ろよ!すげーぞ、京極のビキニ姿!」
「これは写真に納めねば!!」

「ちょ、ちょっと、なつき!!これ一体どういうことなの!!」
「あれ?なつきが居ないわ・・・」
あやのとはるかの二人は混乱し、慌ててホテルの更衣室に駆け込んでい
った。
後で、なつきが密かにあやのとはるかの二人と海に行けるツアーを企画し、
男子生徒からお金をとっていたことが判明した。なつきはプライベートビー
チとはいったけどビーチに全く誰も来ないとは言わなかったと開き直ってい
た。なつきはそのお金をスイートルームへのアップグレード代に使ったのだ
そうだ。
おわり。