コンプレックス少女

ブラン 作
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秋が近づき、はるか達の学校でも秋の文化祭が催されることになっていた。
ホームルームでは誰からも積極的な意見は出ず、結局、無記名投票で出し物
を決めることになった。
「えーーーっ!!!」
投票の結果が発表されて、クラス内は女子達のブーイングで騒然となってい
た。なんと、メイド喫茶が投票の一位になったのだ。
「ちょ、ちょっと。これって男子の組織票じゃないの〜?」
「一体、誰がメイドやるのよー」
「準備、超たいへんじゃない!」
担任の教師は投票で決まったことだからやりなさいと女子達に有無を言わせ
なかった。女子達は自分たちだけがメイドをするのは不公平という異議を申
し立てたが、男子も女装して参加するという折衷案に落ち着くことになっ
た。
男女のメイドは3名づつ再び投票で選ぶこととなった。

「えっと、では、女子の投票結果を発表します。最も票が多かったのは、大
友はるかさん。次に京極あやのさん。3位が佐竹なつきさん。」
はるかとあやのは名前を呼ばれて頭を抱えた。二人とも人前に立つのは極度
に苦手な方であった。しかし、投票で選ばれたので仕方なく了承するしかな
かった。
男子生徒からの人気度から言って二人が選ばれたのは至極当たり前であった。
「これはすごいことになったぜ。」
「ああ、学内一の美少女、大友はるかと学内一爆乳の京極あやののメイド姿
が拝めるとあっては他の学年からも客が殺到するだろうな。」

ところで、自分が当然一位に選ばれると思っていた佐竹なつきは不満である。
「ちょ、ちょっと、なんで私が三位なの〜!」
なつき、一部の生徒達からは絶大な人気があり、隠れファンクラブもあるほ
ど。しかし、クラス内ではそのわがままな性格から男子達からはあまり人気
がなかった。
男子達の間で陰口がささやかれた。
「おいおい、佐竹のやつ文句いってるけどやりたくて仕方ないんだぜ。」
「天性の目立ちたがり屋だからな。」
「あの性格が票数を下げていることに全く気付いてないな。」

メイド以外の生徒は衣装班、食料班、設営班のどれかの班に分けられること
になった。
今日は衣装班がメイドたちの衣装を作るために採寸をすることになっていた。
あやのが衣装班の女子に呼ばれた。
「えっ、そんなに本格的にやるの?」
あやのはどこかで買うか借りてきた衣装を着るのだと思っていたが、ある程
度自作でつくることになったようだった。衣装係はポケットからメジャーを
引っ張り出した。
「お願いなんだけど。そのぉ、サイズは誰にも内緒にして欲しいの。」
あやのは弱々しい声で衣装係に言った。彼女はうんとうなずいてあやのの胸
周りにメジャーを廻し、興奮した面持ちでその数値を読み取った。
「ひゃ・・・く、さん・・・わたし、前から京極さんのバストがいくあるの
か気になってたんだ。まさかこれほどとは・・・」
「やだ、言わないで。絶対内緒だからね。」
あやのは恥ずかしそうに顔を伏せた。
一年前、98センチを記録したバストは、2年生になってあっさりと3ケタ
の大台を突破し、現在もまだすくすくと成長を続けているのであった。

文化祭まであと数日のところで、メイド喫茶の前売り入場券が販売された。チケットの販売前には男子生徒の行列ができ、チケットは即日完売となるほ
どの盛り上がりをみせていた。


文化祭当日、メイドカフェはオープンに向けて周囲に怒号が飛び交っていた。
「やばーい。オープンまで1時間もないわ!!」
「教室の飾り付けは大体終わったけど、食料班は準備大丈夫!?」
「衣装班の衣装はできあがったの?」
はるか達メイドはようやくできあがった衣装に袖を通すところだった。衣装
班は昨日ほぼ徹夜で衣装を完成させることになったようだった。はるか達は
その衣装を受け取り更衣室に向かった。
カチューシャを手にとってなつきが不思議そうに言った。
「ねぇ、どうして私一人だけカチューシャが猫耳なの?」
なんとなく、なつきのイメージに合ってるからというのがその理由だった。
「イメージってどんなイメージじゃい!!」
大友はるかはなつきの猫耳スタイルに吹き出しそうになりながら、鏡で自分
の全身をチェックしていた。
「ねぇ、私のスカートちょっと短くない?」
はるかのスカートは制服よりも丈がかなり短くなっていてムッチリとした太
ももがあらわになっている。衣装班によれば、生地が足りなくなってやむを
えず短くなってしまったということだった。
「えーっ、屈んだらパンツがみえちゃいそう・・・」
「見せパンなんだから見えても大丈夫でしょ?」
なつきがはるかにやりかえした。
その横であやのはワンピースを着るのに苦心していた。
「あのー。ちょっと全体的に服がきついんですけど・・・。」
胸の膨らみのせいで生地がとられ、背中のジッパーがなかなか上がってくれ
なかった。全体的に小さいのではなく、あやののバストの容量を見誤ったせいであった。
あやのはなるべく目立たないように胸にさらしを巻いてきたのだが、それで
も大きさを誇示するかのように二つの膨らみが前に突き出していた。衣装班の女の子達が数人でなんとかジッパーを上まで引き上げた。

いよいよオープンの時刻となった。しかし、まさに開店というところで担任
の先生が駆け込んできた。
「大友さん、京極さん、佐竹さんの3人はメイド係を禁止します!」
教室内にどよめきがおこった。
「3人を見るためにここの入場券が法外な価格で取引きされていたそうで
す。こんなこと見過ごすわけにはいきません!!3人はすぐに衣装を脱いで
裏方にまわってください。」
結局、3人のメイド姿は幻のままで終わった。そして、代わりに男子メイド
が接客するという悪夢の事態に陥ったのだった。入場券の払い戻しは後を絶
たなかったという。

おわり。