コンプレックス少女

ブラン 作
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冬休み明けの教室は久しぶりに顔を合わせた生徒達が楽しげに休み中の出来事を語ってい
た。そんな中で大友はるかは一人静かに本を読んでいたのだが、おしゃべり好きのなつき
がその沈黙を破るかたちとなった。
「おはよー、はるか。元気してた?」
「うん。なつきは相変わらず元気そうね。ところで、なんでそんな日焼けしてるの?」
「休み中、家族でハワイへ行ってたからね。」
小麦色に日焼けした腕を見せながら、なつきの家では正月をハワイの別荘で過ごすことを
自慢げに説明した。
「はぁ、やっぱ、お金持ちは違うわねぇ。」
「ところで、はるかはお正月、何してたの?」
「何って別に・・・初詣に行ったくらいで後はずっと家でごろごろと・・・」
「ふーん、それで・・・」
「それで?」
「太ったわね?」
「うっ。」
なつきが指摘したとおり、去年の秋頃から増加傾向にあったはるかの体重は年末年始の食
べ過ぎでさらに数字が増してしまい、ダイエットを余儀なくされているところだった。
「そのプクプクのほっぺたを見れば一目瞭然だわ。それに・・・お腹周りもかなりきてる
んじゃない?」
そういって、なつきははるかのウエストのお肉をつまんだ。
「ちょっと、やめなさいよ!そ、育ちざかりなんだから仕方ないじゃない。」
「あ、でも、胸には脂肪がつかなかったようね。」
「むきー!もう成長が止まった人から言われたくないわ!」
二人が取っ組み合いになりそうなところに京極あやのがやってきた。

「こらあっ!新年早々、あなた達はまたケンカなの?」
「あ、あやの。だって、なつきがひどいんだから・・・」
普段は冷静なはるかだったが、気にしていた体重増加を指摘されて思わず感情が露わにな
ってしまったのだった。
「もぅ、ちょっとからかっただけじゃない・・・んっ?もしかしてあやのも?」
「ん?なに?」
「太った?」
「うっ。」
あやのの場合、太ったというより成長したというのが正確な表現だった。
「どう見ても、また一回り大きくなったよね。それ。」
ウエストやヒップのサイズには大きな変化はなかったが、バストだけがまた一段と大きく
なってしまったようだった。
「う、うん。またブラがきつくなっちゃって・・・」
あやのははるかの殺気を感じてなつきの方に向き直った。
「と、とにかく。私も少しダイエットしなきゃいけないと思うの。」
昨年、購入したブラはもう窮屈になっており、バストが溢れるようになっていた。あやの
は市販で手に入る最大サイズのブラを使用しており、これ以上大きくなると着けるブラが
なくなるのであやのにとってもダイエットは喫緊の課題であった。
「わかった!3人でダイエットを始めるしかないわね!」
なつきは大声を張り上げた。
「えっ!なつきもダイエットが必要なの?そんなふうに見えないけど・・・」
「へへん。ワタシは食べても太らない体質だから必要ないんだけどね。ここで一肌脱ぐっ
てのが親友ってものじゃない?」
あやのとはるかは顔を見合わせた。
「いやみね。私たち二人で頑張りましょうよ・・・」
「ちょ、ちょっとお!せっかく人が親切に協力してあげようっていってるのに!」


次の土曜日、三人はなつきの招待で高級ホテルの会員制フィットネスクラブに来ていた。
去年の夏、プライベートビーチで酷い目に会わされたあやのとはるかの二人は行くのを拒
んだが、結局なつきに押し切られたかたちになった。
三人は更衣室でフィットネスウエアの着替えジムに向かった。
運動を始める前に、はるかは周囲に誰もいないのを確認して体重計に乗った。そして、そ
れが今までに見たこともない数字を示しているのを見て愕然とした。
「う、うそ。3キロも増えてる・・・」
はるかの目は戦闘モードに変わり、猛然と筋トレを開始した。
あやのはフィットネスが初めてだったのでスタッフから説明を受けた。そして最初は身体
をあたためるためにルームランナーで軽くジョギングすることにした。始めはゆっくり、
ウォーキングからスタートするが、徐々にスピードが上がってくると小走りになり、それ
に伴って大きな胸がゆさゆさと揺れた。さらに速度が上がると胸はぶるんぶるんと上下左
右に揺れるので腕で揺れを抑えながら走らないといけなかった。ジムのスタッフや他のお
客からも視線を浴びて困惑したが、ダイエットのためと自分に言い聞かせて予定の時間を
走りきった。
あやのが予定の運動を終えて休憩しようとしたとき、はるかやなつきの姿が見あたらない
のに気がついた。更衣室に戻って二人を捜すと、サウナルームで汗をだらだら流している
はるかを見つけた。
「あ、あやの。もう終わったの?私もこれで終わりよ。ふぅ。」
「はるか、凄い汗ね。わたしもだいぶ汗かいちゃった。ところでなつきは見なかった?」
「あぁ、あの子なら早々に飽きちゃって、ラウンジスペースで待ってるって言ってたわよ。」

あやのとはるかはシャワーで汗を流したあと、なつきが待っているラウンジへと行った。
なつきは一人で優雅にお茶をしながら二人を待っていた。
「疲れたわね。一緒にお茶しようよ。」
テーブルの上には紅茶のカップとティーポットの他にショートケーキが乗っていた。
「ちょ、ちょっと、なつき。何よそれ、すごく美味しそうじゃない。」
「ほんと、一人だけずるい!」
二人はなつきの食べているいちごショートを恨めしげに眺めた。
「あなた達も食べればいいじゃん。あっちにスイーツバーがあるでしょ?私がここの会員
だから二人も自由に利用していいのよ。」
あやのとはるかの二人は顔を見合わせた。
「ど、どうする、あやの?ダイエット中だけど、疲労回復のために少しだけならいいよね?」
「そ、そうよね。少しくらいなら。」
スイーツバーは美味しそうな色とりどりのスイーツ達が所狭しと並べられていた。その中
でどれか一つを選ぶことは二人にとって至難の業だったが、長い時間をかけて一つ選んで
席に戻った。
「おいしい!さすが一流ホテルね。」
「うん。ほんと美味しいね。大満足だわ。」
二人がケーキを十分に堪能しているとなつきが新しい皿を持って席に戻ってきた。皿の上
はたくさんのケーキ達で埋め尽くされている。
「な、なつき。それ全部食べるの?」
「もちろんよ。私、このために来たようなもんだからね。」
目の前ではスゴイ勢いでケーキ達がなつきの胃袋に納まって行く。はるかとあやのは唾を
飲んでその様子を眺めていた。
「ねぇ、あやの?疲労回復のために、もう一つくらいなら大丈夫よね?」
「う、うん。大丈夫だと思う。」
二人は席をたって再びスイーツバーに向かった。色とりどりのスイーツ達が彼女らを待ち
受けていた。
「あやの?こんな高級ホテルのスイーツを心おきなく食べられるチャンスなんて人生で滅
多にないと思うの。今後のために、あえて全種類制覇しておきたいと思うんだけど?」
「賛成!」
二人はなつきのように皿にケーキを山盛りにして思う存分それらを堪能することとなった。
フィットネスで苦労して減らした体重はすぐ元通りになったことは言うまでもない。

その後、二ヶ月の間、なつきの甘い誘いを断りながら二人で懸命にダイエットに励んだ。朝晩のジョギングとカロリー制限のお陰で二人の体重は減少していった。はるかは体重が
去年の数字まで戻り、気になっていたお腹周りもすっきりとした。顔の輪郭もシャープになって以前よりも美少女ぶりに磨きがかかったと噂されるようになった。ダイエットは大
成功だった。
あやのもいくらか体重が減った。胸を除けば体型はスリムな方だったが、さらに身体が引
き締まったようだった。しかし・・・
「どうして胸のサイズだけ変化なしなのよ!?」
あやのの場合、ダイエットは大成功とはいかなかったようだ。
END