天使のアメ 後編

ブラン 作
Copyright 2013 by Buran All rights reserved.

学校の帰りにナナミが公園の前を通りかかるとあの老人はベンチに腰を下
ろし眠っているようだった。ナナミが近くに立つと老人は気配を感じたの
かゆっくりと目を見開いた。
「わしの言った通りじゃっただろ?」
「うん。疑って悪かったわ。」
成長のおかげで制服のシャツが身体にぴっちりと張り付き豊かになった乳
房を際だたせており、腰回りは幅、厚みとも存在感を増し、短めのスカー
トの下からは健康的なふとももが顔を覗かせていた。
仙人は変化したナナミの身体をじろっと眺めた。
「しかし・・・ピチピチの玉を使ったわりには発達の度合が低いのう。
こう、もっとボインボインになると思ったんじゃが。」
「(ボコッ)。もともと私の胸が平らだったからって言いたいわけ!?」
「いや決してそんなことは言っておらん・・・」
「実は、わたしももうちょっとグラマーでも良かったかなって思ってるの。欲を言えば90センチは欲しいかなって〜」
「ふうむ。」
「ねぇ、アメ玉をもう一つ食べたらもう少し大きくならないかな?」
「・・・・ダメじゃ。残念じゃが、ピチピチの玉はあれで終わりじゃ。」
「ええーっ。でも、巾着袋に沢山入ってたじゃない!ケチ。」
「うむ。あれはピチピチの玉ではなく、ムチムチの玉といってな。ピチピチ
の玉より格段に効き目はあるのじゃが、成人女性が対象じゃ。お前さんには
ちと早い。」
「ねえ、ねえ!仙人さまぁ。お願ぁい!」
「ダメじゃ。」
「ねぇ、ねぇ。お願い。ちゃんとお礼するから?」
「ダメと言っとるじゃろが。」
「パンがいい?」
「パンなどもういらん。」
「じゃあ、何ならいいの?」
「・・・・。ぱ、パンはパンでもそなたの脱ぎたてのパンティーをくれるな
ら考えてもええがのう。」
一瞬、辺りに沈黙の時間が流れる。
「パ、パンティー!?このど変態!(ボコッ)そんなのやれるかぁ!」
「そりゃ、そうじゃの。それでは、わしはそろそろ天界へ帰るとするか」
「ちょ、ちょっとまってよ。じゃあ、朝まで着けてたブラはどう?窮屈すぎ
てもう使えないし。」
「若いおなごの使用済みのブラジャーか・・・。ふむ。よかろう、それで手
を打とう」
ナナミは老人の手からピンク色のアメ玉を受け取るとすぐに口に放り込ん
だ。そして老人に礼を言うと足取りも軽く家の方向へ駆けていった。
「ありがとう!じゃあ、またね。」


家に帰るとナナミは鞄を放り投げ、冷蔵庫から牛乳パックを取りだしてコッ
プに注ぎ、ごくごくと一気に飲み干した。胸の成長に悩むナナミが毎日の習
慣にしていることだった。
「(ふぅ)。牛乳を飲むのも今日でおしまいかもね♪」
ナナミの家庭は両親と姉の4人家族だが、父親は単身赴任、姉は大学生で一
人暮らしをしているので実際は母との2人暮らしだった。その母親も仕事を
持っているので大抵は家に帰ってくると一人だった。
ナナミは自分の部屋でベッドに腰掛け、あめ玉の効果が表れるのをじっと
待っていたが一向に変化する様子は見られなかった。ベッドに横になりマン
ガを読んでいるうちにナナミはうとうとと居眠りをしてしまった。

居眠りから目が覚めたのは母親がナナミを呼ぶ声がしたからだった。
「ナナミ!帰ってるんでしょ?もうすぐご飯できるから手伝いなさい!」
時計の針は夜の7時を指しており、辺りはもう暗くなっていた。母親が仕事
から帰ってくるのは大体6時過ぎ頃でそれから夕飯の支度をする。ナナミも
その手伝いをするのが日課になっていた。
「(はっ)。うっかり寝ちゃったみたい。手伝わないと機嫌悪いからなぁ・・・」
ベッドから身を起こした瞬間、胸がずしりと重くなっていることに気がつい
た。
「ええっ、やだぁ。やっぱり大きくなっちゃってるみたい。」
手を胸にあてると昼間のときよりも明らかに体積が増加し手のひらには収ま
らないサイズになっている。ルームウエアの胸元はその大きな胸に押し上げ
られパンパンに張りつめている。
「ナナミー?」
キッチンから再び母親の声が聞こえた。
「もぅ、わかってるって!今行く!」

夕食が済みナナミはリビングで母親と二人でテレビを見ていた。
「(娘の胸がこんなに成長したっていうのに、何で気付かないかな。)」
ナナミの母親は絵に描いたような無頓着な性格で、テレビに集中し一向に娘
の変化気付く様子もなかった。ナナミは成長した胸を誰かに気付いて欲しい
反面、少し気恥ずかしさもあった。
「先にお風呂入るわね。」
テレビドラマに夢中の母親を横目に彼女は風呂場へと向かった。

脱衣所で上の服を脱ぐと、大きくなった二つのバストが露わになった。ナナ
ミは鏡に写った自分の胸の美しい形にほれぼれとしていた。
「テレビで見るグラビアアイドルよりも大きいかも♪」
ドレッサーの引き出しからメジャーを取り出してサイズをチェックした。
「きゅ、95センチ!夢の90センチ台を突破しちゃったわね。」
下を脱ぐと今度は一回り大きくなったヒップが鏡に写り、ショーツに収まり
きらない尻肉がはみ出している。ウエストにもうっすらと脂肪の層がつき女
性らしい身体のラインに変貌を遂げていた。
「ちょっと、グラマーすぎるかなぁ。あした男の子達に見つかって冷やかさ
れるんだろなぁ・・・。」
この夜、ナナミは男の子達にモテまくる自分の姿を想像しながら眠りについ
たのだった。


次の日の朝、
ナナミの母親の朝は早い。毎日、二人の朝食と昼の弁当を用意して朝の7時
には家を出て行く。
「ナナミー!いつまで寝てるの!お母さん先に仕事いくわよー」
ナナミは母親が家を出る頃にノソノソと起きてきて、準備された朝食を頬張
るのが日常になっていた。ナナミは朝が弱くいつもぎりぎりの時間にしか起
きられなかった。
「(ふああぁーっ)いってらっしゃ〜い」
布団の中から母親の声に答えた。
「そろそろ起きなきゃ・・・」
そう思って身体を起こそうとしたが、身体が思うように言うことが利かなか
った。
「あれ?おかしい・・・」
身体が重く何かに押さえつけられているかのようだった。
「な!なにこれ?」
ナナミは身体の異変に気がついた。胸の辺りに布団の大きな山ができており
そのせいで身体の自由が奪われているのだった。しかし、それは布団ではな
く、巨大な塊は脂肪でできている。ナナミが手で布団をはぎ取るとうずたか
い山のようなバストが露わになった。パジャマのボタンは一番上以外全て弾
け飛んでいる。
「やーん!!お、おっきすぎるよぉ!」
ナナミはバランスボールのような巨大な胸を見て泣きそうになりながら、
誰かに連絡を取ろうと携帯電話に手を伸ばした。しかし、電話まで手が届か
なかった。仰向けの体勢から何とかうつ伏せになろうと片方の乳房を動かそ
うとしてみたが異常な重さのため思うようにいかなかった。
ヒップも豊かというレベルを超えて大きくなっており、パジャマは縫い目の
ところで裂けて破れ、ショーツは紐のようになって食い込んで肉に埋もれて
しまっている。ウエストにはたっぷりと脂肪がつき、僅かにくびれのライン
が残る程度になっている。


「やはり、こんなことになっておったか・・・」
ナナミの部屋に現れたのは昨日の仙人だった。
「昨日の時間に来んから、心配して見に来たのじゃ。」
仙人は幾分豊満になりすぎたナナミの身体を見回している。
「せ、仙人さま。見てないで何とかしてください!!」
「ふうむ。困った。胸を元に戻すためにはツルツルの玉、身体全体を戻すた
めにはヤセヤセの玉が必要じゃが・・・二つとも持っておらん!」
「ええっー!!そんなぁ・・・」
仙人は巾着を開けてあめ玉の色を確認したが所望のものはそこになかった。
「仕方あるまい。わしが天界まで行って取ってこよう。」
「お、お願いね!!」
ナナミは情けない声で懇願した。
「それまではこれを使うとよい。わしのとっておきじゃが・・・仕方あるま
い。」
そう言って仙人はなにやら一枚の布きれを背負った袋から取りだした。そし
て、ナナミの大きな胸の上に広げて置いた。
「な、なんなの?」
「まぁ、待ちなさい。」
布きれはやがて淡い光りを発し、次第に大きさを増していく。ナナミの胸全
体を包み込むほど大きく広がったところで光が一段強くなった。
「できあがりじゃ。身体を起こしてみい。」
布きれは巨大なブラジャーに姿を変え、ナナミの大きな胸を覆っている。
「む、胸が軽くなった!?」
急にナナミは胸の重さを感じなくなりあっさりと身体を起こすことができ
た。
「これは天女のブラと言ってな。天界の布は天衣無縫、着けるものの身体に
よって自在に形を変える。着けると一切胸の重さを感じなくなり胸の垂れな
んかも防止するありがたいアイテムじゃ。」
仙人は得意げに肩をそびやかしている。
「ほんと、すごい。」
ナナミは立ち上がってみたが、まるで風船を入れているかのようにほとんど
重さを感じない。軽く身体を揺すってみるとブラジャーの中で巨大な胸がぽ
よんぽよんと揺れた。胸は両手が前で組めないほど巨大で前に張り出してお
り、このせいで足元も全くみえない。
「あれ?仙人様?」
ナナミの視界から仙人が消えたと思ったら、前方からうめき声が聞こえた。
「(むごむごむご)」
仙人はナナミの巨大な胸で壁に押しつけられ窒息しそうになっている。
「ご、ごめんなさい!押しつぶしちゃうところだったわ。」
「こ、こほんっ、わしは大丈夫じゃ。(もっと押しつけてもらっておけばよかった。)」
「こんな状態じゃ扉を抜けるのにも一苦労だし、階段の上り下りにも困っち
ゃうわ。早く何とかの玉を取ってきてくれないかしら?できればツルツルの
玉じゃなくて、適度にいい感じのスタイルに戻して欲しいんだ。」
「ふーむ、相変わらずわがままで人使いの荒いむすめじゃ・・・」
老人はあきれながらも背負袋を降ろし、なにやらアイテムを探し始めたよう
だった。
「で、いつ頃、取って戻ってこれるの?」
「ふうむ。歩いて片道4年、往復で8年ってところかのぅ。」
「(ぼこっ)は、8年も待てるかぁ!!雲かなんかに乗ってけば一瞬で行け
るんでしょ?ねっ?」
「わし、雲に乗れんし」
「ガーーン」
ナナミの表情が凍りついた。
仙人は背負い袋からカプセルのようなものを取り出した。なにやらボタンを
押すとスクーターのような乗り物が現れた。
「(ほっほっほ)冗談じゃ。これに乗ってゆけば10日ほどで戻って来られ
るじゃろう。」
「わ、わかった。できるだけ早くね。しばらくこれで我慢してるから。」
そういってナナミは天女のブラのストラップを引っ張って胸をゆさゆさと揺らした。
老人は空飛ぶスクーターで天界に向けて出発した。

END