「はぁ・・・」
毎年のことだが、はるかにとって夏は憂鬱な季節である。
成長著しいクラスメイト達の胸元を横目に見ながら、全く膨らむ兆し
のない自分の平らな胸をみてため息をつくのであった。
「水泳の授業なんて無くていいのに・・・」
更衣室でも周囲の女子になるべく見られないよう配慮して水着に着替
えている。
「よっ、はるか!相変わらずの貧乳ぶりね。私なんか去年より成長した
みたいで水着がちょっと窮屈なの、いやになっちゃう。」
なつきは小柄な割りに豊かな胸を両腕でぐいと寄せてはるかに嫌味を言う。スクール水着に包まれた形のよいおわん型の膨らみがゴム鞠のように
むにゅんと変形した。
「このぉ、許さないわよ!」
はるかは鋭い目つきで彼女をにらみつけ、いつものようにヘッドロック
をかけようとするがいち早く殺気を感じたなつきはすばしっこくそれを
スルリとすり抜けてしまう。
「残念でしたぁ!」
ちょうどそのとき更衣室のドアが開き、入ってきた京極あやのとなつき
は正面衝突を果たした。
「(ボフッ!)」
大きく膨らんだあやのの制服の胸元になつきの顔が埋まっている。
「こらぁ、更衣室で暴れないで!」
このように二人のケンカを止めるのはいつも京極あやのの役目であった。
「ところでさぁ、なんであやのが更衣室にいるの?」
「そうそう、プールの授業は休むんじゃなかったっけ?」
プールの授業となるときまって欠席するあやのが更衣室にいることに
二人は疑問を投げかけた。
去年と一昨年もあやのは一度もプールの授業に出ていないし、今年に
なってもプール開きから数えて何回かの授業は全て欠席をしているのだ。
あやのがスカーフを取って制服を脱ごうとしているのを二人は怪訝な
表情で眺めている。
「ほら見て、注文してた水着!」
突然、あやのが二人の目の前に広げたのは学校指定のスクール水着
だった。一見普通の水着だがよく見ると胸の部分がかなり余裕をもって
作られているのがわかる。
「注文って・・・もしかして特注?」
「こんなの作ってくれるところあるんだ?」
二人は興味津々であやのの水着を手にとって眺めている。
「うん。いつも水泳サボってばっかりじゃダメだって思って。思い切って
作ってもらったの。」
驚く二人を尻目にあやのは着替えにかかっていた。
制服の上を脱ぐと淡いピンク色の巨大なブラジャーに包まれたバストが
現れる。日焼けをしていない肌は雪のように白くて美しい。外国製の
Kカップ(日本のサイズでMカップ相当)のブラは多少の装飾がされて
いるもののデザイン性は低くオシャレとは無縁のものであった。
背中に手を廻して4段になっているホックを外すとブラジャーの拘束
から放たれ、重量感たっぷりの大きくて柔らかそうな二つの乳房が露わ
になる。その大きさ、重量にも関わらず重力に逆らうように美しい
かたちを保っている。
「こ、こらぁ。なに見てるの!」
着替えのようすをまじまじと見つめるなつきとはるかに気付き、
あやのは慌てて胸にバスタオルを巻いて隠した。
「ごめん。思わず見とれちゃったわ・・・」
「相変わらずおっきーわね。また育ったんじゃない?」
その大きい胸は見事に水着に納まったが、その胸元は巨大な水風船の
ようにパツパツに張りつめて大きさを誇示しており、標準的サイズの
ウエストやヒップとのギャップでさら胸の膨らみが強調されていた。
京極あやのがプールサイドに姿を現すとクラスメイト達が騒然となった。
「あれ見て!京極さんが授業に出るみたいよ。」
「初めてじゃないかしら?」
「すごいわね。あの胸。」
もちろん男子達が喜ばない訳はなかった。
「うおおおーっ。すげぇぞ。」
「京極のスク水姿が拝めるとは!」
「その辺のグラビアアイドルなんかより明らかにでかいぜ・・・」
男女問わずあやのの胸の膨らみに視線が集中した。
あやのは多少危惧していたものの予想以上の周囲の反応に多少の困惑を
覚えながらも自分自身に大丈夫と言い聞かせた。
「(大丈夫、大丈夫。カレンのように堂々としてればいいのよ。)」
始業のベルが鳴った。
体育教師の合図のもとプールサイドで準備体操が行われる。
腕を振り上げたり、横にふったりする度にあやのの大きなバストは
ぶるんぶるんと大きく揺れ、身体を捻るとむにゅんと柔らかそうに
かたちを変える。当然、男子達はその様子を見逃すまいと彼女に熱い
視線を送っている。
その場で軽いジャンプすると胸は上下に大揺れとなってさらに皆の注目
を集めた。
「(水の中にはいっちゃえば大丈夫よ。)」
プールに入ると胸はぷっかりと浮いて軽くなり肩や胸の付け根で感じて
いた重さをほとんど感じなくなった。
「(懐かしいわ。この感じ。)」
あやのは実は水泳は得意であった。
小学生の頃はスイミングスクールに通い、中学生の頃は水泳大会で
大活躍をしたこともある。その頃は今とは逆で、胸の膨らみが小さい
ことにコンプレックスを感じていたのを覚えている。
(あやのの胸が急成長を始めるのは中学3年の頃からである。)
あやのの泳ぎのフォームは美しく、水しぶきを大きく上げない。
その優雅な泳ぎにも注目が集まる。しかし、本人は自分の泳ぎに少し
不満げである。
「(・・・ムネが邪魔で上手く泳げない。)」
大きなバストは脂肪で水に浮くのと、相当な水の抵抗を受けるためで
あった。
そうはいいながらもあやのは久しぶりに味わう水の感触を楽しんでいる
のであった。
なつきとはるかの二人はあやのがご機嫌に泳いでいる姿を見て顔を
見合わせた。
「あの極度の巨乳コンプレックスのあやのが・・・」
「一体どういう心境の変化なのかしら?」
その脇であやのはすいすいと背泳ぎを泳いでいる。
背泳ぎだと胸が水の抵抗を受けず意外に泳ぎやすいことに気付いたの
だった。
「おっぱい島!」
島のようにプッカリと浮いたあやのの胸を見てなつきはそう名付けた。
END