優等生の大友はるかは難関大学合格に向けて勉強漬けの毎日を
送っていた。
授業が終わってからも補習、休日は予備校に通ったりと忙しい。
そのお陰もあって成績は常に学年3位以内をキープしていた。
京極あやのは特に勉強はできる方ではなかったが、近頃ははるか
に触発されて次第に勉強に熱が入ってきたようだ。
そのせいで日々退屈なのが佐竹なつきである。もともと大の勉強
嫌いであり、授業以外の勉強をしたことはない彼女は期末テスト
でも禄に勉強をしない。
大学受験も気合いでなんとかなると考えているようである。
「ねえっ!ちょっとこれ見て〜!」
朝イチの教室で元気よくなつきが二人に駆け寄ってきた。
「ほらほら〜、これを見てみい。ピュア・ビューティーの
合格ハガキよ。今度、オーディションを受けることになったの!」
なつきが二人の前に突き出したのは一枚のハガキである。
「ピュア・ビューティー?って何?」
はるかが怪訝な顔をしてハガキを眺めている。
「し、知らないの!?アイドル・女優の登竜門。ピュア・ビュー
ティフル・ガールのコンテストじゃない。歴代のグランプリには
超有名な・・・」
なつきが熱く語ろうとするところをはるかは冷静に制した。
「はい、はい。夢みたいなこと言ってないで受験生は勉強、勉強!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。これだって厳しい書類選考の中から
選ばれたものだけが手にするハガキよ。夢じゃないわよ。それに・・・」
なつきは隠していたさらに二枚のハガキを取りだした。
「じゃーん!!はるかとあやのの分もあるわよ。」
「何で私たちのハガキまであるの!!」
「ねぇ。奇跡としか思えないでしょ?二人の分もついでに出したら
合格しちゃうんだもん。」
「ばかぁ!だいたいこのせっぱ詰まった受験シーズンにオーディシ
ョンなんて行ってられるかぁ!」
受験で頭が一杯になっているはるかはお気楽すぎるなつきに腹を立て
ている。
「お、オーディションで何次選考まで残ったっていったら受験の面接
のとき、きっと有利よ?それに大舞台で緊張して固まらない訓練に
なるわ。」
「またぁ、調子のいいこと言って!」
はるかがなつきの腕を掴もうとするがなつきはするりとそれを
かわした。
「こらぁ!二人とも静かに!ホームルームが始まっちゃうわよ。」
いつものようにあやのが制して二人を止める。
「ねえ、ねえ。あやのは一緒に行ってくれるよね?」
「えっ?わたし?うーーん・・・」
あやのにも少なからず華やかな世界を覗いてみたいという好奇心
はあり一瞬返事を躊躇した。それをなつきは見逃さなかった。
なつきはあやのに脈ありと見ると休み時間の間にあの手この手で
説得工作をかけて首を縦に振らせることに成功する。
すると今度は、あやのが親友の頼みを聞いて行くんだからはるかも
来るべきよと攻撃をしかける。大舞台に強くなるための訓練になる
とか受験勉強の息抜きも必要だとか三人の思い出作りだとかとにかく
しつこく言うので結局はるかも折れて3人でオーディションに参加
することになったのだった。
オーディションの当日
なつきの遅刻のせいで3人は集合時間ぎりぎりに会場に到着した。
会場には約8000通の応募の中から選ばれた300人のいずれ
劣らぬ美しい娘達が集まっていた。この300人の中からたった
一人のピュア・ビューティフル・ガールが選ばれることになっている。
会場はコンサートホールのようで正面にステージとスクリーンが
あり、客席はかなりの人数が入れそうである。オーディションを
受けるのはいずれもはるか達と同年代の高校生でほとんどが客席に
着席している。
3人が着席するとまもなく一次審査が始まるというアナウンスが流れ、
エントリーナンバーと名前を呼ばれたら指定された面接室へと入って
いくようにと指示があった。
なつきは全く緊張するそぶりもないのに対し、はるかはそわそわと
していて落ち着かない。
「ねぇ、なつきの付き添いで来てるのにはるかが緊張してどうするのよ?」
冷やかし気分で来ているあやのは比較的気楽に構えている。
「う、うん。でもこういうの苦手で・・・。受験の面接もこういう
雰囲気なのかなって考えると急にどきどきしてきちゃって・・・。」
放送で次々と名前が呼ばれてゆく。とうとう3人の順番が回ってきた。
「2048番、佐竹なつきさん」
「はい!」
なつきは自身みなぎった表情で面接室のドアをノックし、中に入って
いった。
「佐竹さんは・・・、趣味はスポーツ全般、特技は華道と茶道、日本
舞踊ということですが多彩ですね。」
「はい。小さい頃から教え込まれたもので。」
なつきは普段とうってかわっておしとやかな受け答えをしている。
この日のために髪の色を黒く戻し、いつも束ねている髪は今日は束ね
ていない。仕立てのよい白いブラウスとプリーツのかかったブルー
のスカートという出で立ちの彼女はどこから見ても清楚はお嬢様に見えた。
なつきが無事に面談を終えて帰ってくると次ははるかの番だった。
「2049番、大友はるかさん」
はるかはどうせ出るなら頑張らなきゃと思っているようでなつきと
同様に気合いがはいっている。しかし、緊張のせいで気合いは空回り
し、受け答えもたどたどしく要領を得ていない。
「大友さんは・・・お勉強が得意な方のようね。シートには趣味にも
特技にも勉強と書いてありますが、どんな教科が得意なのですか?」
「えっ?(そんなこと私、書いてない!なつきの野郎。)あの、それは
私の友達が勝手に・・・」
はるかはまたなつきにしてやられたと悔しがっている。しかし、
そのせいで不思議と緊張はほぐれ、それ以降の質問には難なく受け
答えができた。
はるかは面談から帰ってくるや否やなつきにラリアートをお見舞いした。
「2050番、京極あやのさん」
あやのには二人のような気負いはなかったので特に緊張もせずすらすら
と質問に答えていた。
「京極さんは・・・趣味は読書と音楽鑑賞。この・・・特技の
“おっぱい”とはどういうことですか?」
あやのは一瞬凍り付いたように固まっている。
「は?(なつきの仕業ね!もぅ、あの子ほんとに!)あの、それは
友だちが勝手に書いたもので。特技とかではないんです。」
なつきにいっぱい食わされたのははるかだけではなかったのだ。
「そうですか・・・。それにしても、大変失礼ですが、かなり豊かな胸
をされているようですね。応募シートにはスリーサイズが記入されて
いなかったのですが、教えてもらってもよろしいでしょうか?」
大人の男性にこんな事を聞かれると思っていなかったあやのは一瞬躊躇
した後に、か細い声でサイズを申告する。
「・・・くじゅうさん、60、86です。」
「すみません、バストサイズがよく聞こえなかったのですが・・・」
「ひゃ、113センチです!」
数名の審査員達は信じられないという驚きの表情を浮かべ、その
大きく突き出した膨らみを無遠慮に品定めした。あやのの心配をよそに
その胸は未だにすくすくと成長を続けており、最近は外国製の最も
大きなブラからもバストが溢れ出してホックを止めるのにも苦労する
ほどになっているのであった。
全員の審査が終わってからしばらく会場で待たされた。
会場の傍らではあやのが両手でなつきの首を絞めていた。
そうこうする間に審査結果の発表が行われる。
「皆様お疲れ様でした!これから一次審査の通過者50名の番号を
読み上げますので呼ばれた方はとなりの会場までお越し下さい!」
順番に番号が呼ばれて行き、そのたびに喚起の声があがったり、
どよめきがおこったりしている。
「2048番!」
「2049番!」
「2050番!」
なんと、驚くべきことに3人とも通過者に選ばれている。
なつきはおしとやかキャラを演じるのも忘れて片手を振り上げて
ガッツポーズを取っている。はるかもなつきの手を取って喜んでいる。
選考に残るとは夢にも思っていなかったあやのは少し複雑な気持ちで
それを眺めていた。
なつき達3名は他の通過者とともにとなりの会場に移動した。
そこには二次審査用の衣装である水着が並べられており、合うサイズ
を選んで衣装室で着替えて準備するよう指示があった。
水着は水色のビキニでありデザインは無地でどれも同じである。
はるかとなつきは自分に合うサイズを選び一人用サイズの狭い衣装室
に入って着替え始めた。たが、あやのは当然自分に合うサイズが見つ
からずもたもたしている。仕方なく用意された中で最も大きいサイズ
の水着を選んで衣装室に入った。
しばらく経って、着替えを終えた方は先ほどの会場まで戻ってください
とのアナウンスがあった。ビキニスタイルに着替えたはるかとなつきは
隣の会場に戻ろうとしたがあやのの姿が見えないことに気が付いた。
「あれ?あやのは?」
「まだ着替えてるようね・・・」
二人が探しているとあやのは小さめの水着との格闘が終わって更衣室
から姿を現した。
「あやの・・・それ、大丈夫?」
「うん。ちょっときついけどなんとか入ったわ・・・」
水着が小さすぎるせいで胸がカップから溢れており、深い胸の谷間が
できあがっている上、カップの脇や下側にも柔らかいバストが逃げ出
してしまっている。
「(それって入ったっていうのかしら・・・)」
はるかは心の中でそう思ったが口には出さなかった。
「どっひゃあ〜!大迫力ぅ。またサイズアップしたんじゃないの!?」
なつきは相変わらずデリカシーのかけらもなく、あやのの胸に顔を
近づけてその成長ぶりを確認している。
50名の一次審査通過者はステージ裏へと集合させられ自分の出番が
くるのを待っていた。呼ばれたら出て行ってステージ中央までウォー
キングをして帰ってくることになっている。
なつきの番号と名前が呼ばれて、なつきは舞台裏からステージへと出て
行く。
「エントリーナンバー2048番!佐竹なつきさん。○○県出身。
18歳。身長は149センチ、スリーサイズは上から85、58、84」
ステージの中央に立つまでに歩き方や仕草、笑顔もポイントになるとい
うことで、なつきはとびっきりの笑顔を浮かべて手を振りながら楽しそ
うにウォーキングしている。
小柄な割りに大きい胸が歩くのに合わせてプルンプルンと子気味よく
揺れている。審査員の何名かは身を乗り出してなつきにかなり興味を
示しているようだった。
「エントリーナンバー2049番!大友はるかさん。○○県出身。
18歳。身長は165センチ、サイズは上から78、62、88」
緊張のためはるかの歩き方はぎこちなく、先ほどのなつきとは対照的
に表情が堅い。しかし、印象的な大きな目と整った顔立ち、ストレー
トの美しい黒髪は見る人たちを魅了していた。他の子と比べて胸元の
膨らみが淋しいが、はるかの余りある美貌のお陰で逆にそれが自然に
思えてくるのが不思議である。
それとは対照的に腰回りは肉感的である。受験のストレスと運動不足
が祟って体重は増加気味になっており、ウエストにはぷにっと柔らか
い脂肪の層が覆っている。ヒップは幅、厚みとも文句のつけようのな
いほど豊かに実っており、9号(Mサイズ)の水着では小さかったら
しく柔らかな尻肉がかなりはみ出している。ヒップサイズの88セン
チはかなり控えめに申告しての数字である。
はるかの審査が終わったようで、あやのの番になった。
ほかの子たちほどではないが、にこやかな笑顔をつくってステージに
現れる。
「エントリーナンバー2050番!京極あやのさん。○○県出身。
18歳。身長は161センチ、サイズは上から113、60、86。」
バストサイズがアナウンスされると会場は大きなどよめきに包まれ、
全員の視線があやのの豊かな胸元に注がれる。
「(はずかしくない、はずかしくない。堂々としてればいいのよ。)」
あやのはそう自分に言い聞かせステージ中央に向かって足を踏み出す。
サイズの合わない水着のせいで一歩一歩歩くたびに大きなバストがゆっさ
ゆっさと揺れる。今にも水着から胸がこぼれるのではないかと期待して
いた観客もいたが残念ながらそのようなサービスは発生しなかった。
あやのは胸に集まる視線を気にしないようにしならがステージの中央で
にっこり微笑んで一礼をした。
50名のウォーキングが終わり、審査員室の中では審査員による最終
選考が行われていた。
進行役が番号と名前を読み上げ、5名の審査員達が評価点を見ながら
がやがやと議論を行っている。
――――――――――――――――――――――――――
「では次は、2048番。佐竹なつきですが・・・」
「私はいいと思いますね。かわいいし。笑顔もいい。」
「しかしなぁ、ちょっと子供っぽすぎるかな?背も低い。」
「私もそう思いますね。」
「しかし、小柄な割りにスタイルはなかなかのものだな。」
「確かにそれは認めますが」
「ただ、ピュア・ビューティーのイメージとはちょっと違いますな。」
「では次、2049番。大友はるか・・・」
「美形ですね。今回の中では一番じゃないでしょうか?」
「うむ、確かに。申し分ない。しかし、表情が堅いな。」
「まぁ、場数を踏めばなんとかなるだろう。」
「おや?彼女で決まりですか?」
「しかし、見かけによらず大きな尻をしていますね。」
「安産型っていうんですかね。私は好きですが。」
「では次、2050番 京極あやの・・・」
「あのおっぱいの子ですか・・・」
「高校生であれだけでかいのは初めて見た。」
「準備したIカップの水着から胸がはみ出しまくってましたからね。」
「信じられない爆乳だな。」
「グラビアなら一発で彼女に決まりってところなんだが・・・」
「ちょっとピュア・ビューティーのイメージとは違いますな。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
50名の一次審査通過者が立ち並ぶ中を通って、審査員達が審査員席
に着席した。
「では、これより審査の結果を発表いたします!!!」
進行役の男は心持ち興奮気味にアナウンスを始めた。
「まず、ここにおられる50名の中から審査員達の評価が高かった
3名が選出されます!そして!!その3名で決選投票を行い選ばれた
1名に、本年のピュア・ビューティフル・ガールの栄冠が与えられる
のです!!!」
進行役のボルテージはますます高くなっている。
「ではその3名の方を発表します!!1人目は・・・エントリーナン
バー910番、竹田えみなさん!!」
わあっと歓声があがり、選ばれた女性が飛び上がって喜んでいる。
「2人目は・・・エントリーナンバー2049番、大友はるかさん!!」
はるかは信じられないという表情を浮かべどぎまぎとしている。
両隣のなつきとあやのがそれぞれはるかの腕をとって大喜びではしゃ
ぎあっている。
「3人目は・・・エントリーナンバー5091番、山縣みずきさん!!」
3人目が発表されてしばらくしてもどよめきと歓声は途絶えなかった。
「では!審査員の方々!3名の中から1人を選んで頂きましょう!!
お手元のフダを上げてください!!」
会場は急に静まりかえったかと思うと、照明は急に暗くなってドラム
ロールが鳴り響いた。
なつき、あやの、はるかの三人も緊張した面持ちで発表を待っている。
「竹田えみなさん、3票! 大友はるかさん、2票!で栄えあるピュア・
ビューティフル・ガールは竹田えみなさんに決定しましたぁ!!」
会場は爆発したかのような歓声に包まれ、カメラの放列が選ばれた
女性にフラッシュのシャワーを浴びせた。
「あーっ!!残念っ!!」
「もうちょっとではるかだったのにぃ!!」
あやのとなつきは地団駄を踏んで悔しがっている。しかし、当のはるか
は肩の荷を降ろしたようににこやかに微笑み、選ばれた女性に拍手を
送っていた。
後ではるかが話したことによると、やはり大勢の前で注目を浴びるの
は苦手なので心の中で選ばれないようにと祈っていたのだそうだ。
このようにして、ピュア・ビューティフル・ガールコンテストは終わ
り、再び日常が戻ってきた。大友はるかがコンテストで2位だったこ
とは学内に知れ渡り、彼女の姿を見に教室前に殺到する騒ぎになっていた。しかし、はるかの古参の親衛隊が野次馬が近づかないようにブロック
したため教室内は平穏が保たれていた。
そんな騒ぎもよそにはるかは受験勉強の追い込みにかかっており、
休み時間も一心不乱に参考書を黙読していた。
「ねえねえ、はるかったら!勉強ばっかやってないで、この間の話
考えてくれた?」
はるかの勉強を堂々と邪魔できるのはなつきだけだった。
「ちょっとぉ!うるさいわね。何のことよ!」
はるかはなつきとは目を合わせずに参考書に向かい合っている。
「もう、つれないわねぇ。私がはるかをプロデュースすればどんな
コンテストでもぜったいに1位が取れるって!今度の絶対的美少女
コンテストに出ようよぉ!」
なつきは方針転換して今度は自分がプロデューサーとなってはるかを
アイドルに仕立て上げようと考えているようだった。
「ほんと、しつこいわね・・・」
なつきは断られてもめげずに続けている。
「まず、メイクね!だいたい、ノーメイクでピュア・ビューティー
に出るなんて信じられないわよ!私がメイクしてれば絶対1位に選ば
れてたはずよ。ウケのいいメイク方法を伝授してあげるから。
それと・・・笑顔が堅い、素っ気ない、性格が暗い・・・このへんも
私が特訓すればなんとかなるかな。」
「お、大きなお世話よ!」
はるかはいよいよ我慢ならなくなってきて、勢いよく立ち上がりなつき
の方に向き直った。
「あとは・・・その94センチのヒップをもうちょっとシェイプアッ
プすれば・・・」
そういってなつきはスカートの上からはるかの大きめのヒップを指で
ぷにぷにとつついた。
「なん、なんであんたがその数字を知ってるのよぉ!」
「えへっ」
「えへっ、じゃない!わたしの手帳を黙って見たわね!このー!」
はるかは素早くなつきをとっつかまえたかと思うと容赦なく首を
ぐいぐいと絞めた。
よくある日常の光景が繰り返されていた。
END