甘い誘惑

ブラン 作
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「ゆり子さん、次は全国放送‥‥です。」
「え?」
「全国放送のテレビ番組でしかもゴールデンのオファーが来ています。ゆり子さんに!」
マネージャーはテレビ局の控え室で衣装合わせをしているゆり子に興奮気味に伝えた。
ゆり子がこれまで出演していたテレビ局は有名放送局の系列局であり、限定された地域で
の放送だった。しかし、どこからか噂を聞きつけたキー局のプロデューサーからぜひゆり
子を使いたいと申し出があったのだ。
事務所の社長の話によると、そのプロデューサーは非常な売れっ子であり、企画した番組
は軒並み高視聴率をたたき出すということで有名なのだそうだ。
その企画とは『いきなりドラゴン伝説 人間はスイーツだけで生きていけるか?』という
ものだそうだ。
この企画では30日間スイーツしか食べることしか許されない環境で生活し、達成すれば
高額の賞金がもらえるというものである。以前に、スイーツ好きの元力士が挑戦したが2
1日で断念し、未達成となっていたのだ。
「ゆり子さんにもってこいの企画ですよね!当然やりますよね!?」
「えっ。だ、だめですよ・・・私がいくら甘い物が得意だからって毎日三食ともスイーツ
だなんて無理ですよ。」
ゆり子は正直なところ可能性はあると思っていた。しかし、連日のロケと取材で食べるケ
ーキのせいでうなぎのぼりに増えている体重のことを気にしていた。
「めったにないチャンスなんですよ。社長も大賛成だし、私もぜひやるべきだと思います。それに・・・坂崎さんも・・・」
マネージャーは相変わらずチーフの坂崎まどかの名前を使うのを忘れてはいなかった。
「実は例の敏腕プロデューサーにゆり子を売り込んだのは坂崎さんらしいのです。ゆり子
のスイーツコーナーとこの前の雑誌のグラビアがすごい反響を呼んでいることを彼に吹き
込んだようですね。彼女の顔を立てる意味でも少し考えて見ませんか?」
「まどかさんが、私のために‥‥? そういえば、ドーナツ会社のCMの話もまどかさん
が取って来てくれたって聞いたわ。」
「そうですよ!彼女はあなたに非常に期待を寄せているのです。」
「・・・・。分かりました!その企画、まどかさんのためにも絶対成功させます!」
−−
果たして、ゆり子は『いきなりドラゴン伝説 人間はスイーツだけで生きていけるか?』
の出演タレントとして抜擢されたのであった。
準備されたのはマンションの一室、室内にはゆり子を撮るために数台の固定カメラが設置
されていた。
ルールは簡単である。30日間スイーツしか食べないこと。ただし、水を飲むことと、医
薬品や健康維持のために必要な最小限のサプリメントを摂ることだけは許されている。
また、10日毎にドクターの健康診断があり、著しく健康を害していると診断されれば続
行不可能となる。30日間の献立はすべて番組側で決められていてゆり子にはいっさい知
らされない。彼女は何があろうと決められた通りに食べなくてはならないのだ。
初日、伝説がスタートする前にドクターチェックが行われる。
「す、すみません。どうして衣装が体操着なのでしょうか?」
「申し訳ありませんが、プロデューサーの趣味・・・じゃなくて指示なのです。」
衣装はゆり子の体型に合わせて用意されているはずであったが、少しサイズが小さ目のよ
うであった。大きなバストに布地がピッチリと密着して窮屈そうな皺を作り、胸の盛り上
がりを際立たせている。ブルマもきつく食い込んでおり、準備されたMサイズでは量感の
あるヒップを収めきれていない。これではゴールデンタイムの視聴者には刺激的すぎると
いうことになり結局、ワンサイズ大きめの体操着に着替えさせられることになった。
ドクターの診断の結果では特に問題は見つからなかったため、続いて、番組スタッフの女
性ゆり子の体重とスリーサイズを測定する。
「ちょ、ちょっと。どうして体重やサイズまで測られちゃうんでしょうか!?」
「これも健康管理のためです。もちろんテレビで測定結果を公表することはありませんか
らご安心下さい。‥‥えっと、体重は58.2kgですね。」
「うっ・・・(また増えてる)」
体重を測ると今度は体操着の上からメジャーを巻き付けてサイズを測定した。
「バスト99センチ‥‥ウエストが68センチ‥‥。 えーと、ヒップは97と‥‥」
胸はさらにボリュームを増し、Gカップのブラから乳肉が溢れ出して段になっているのが
体操着の薄い生地越しにわかってしまう。
ウエストは柔らかい脂肪の層で覆われ、腹部は西洋画の裸婦のようにぽっこりと膨らみを
もっている。
「(このウエストのお肉なんとかしなきゃ・・・)」
ゆり子は自分の立派に成長した腰回りを眺めて小さなため息をついた。


全ての準備が整い撮影がスタートした。
伝説開始の銅鑼が鳴り響く。部屋の扉から“助手”と呼ばれる女性が最初の食事を運んで
きた。
「1日目の朝食です。」
そういって持ってきたのはブルーベリーのタルトとヨーグルトムース、それにマンゴーの
プリンの3品だった。それらは全国の名店からわざわざ取り寄せられたものであった。
ゆり子は朝の9時からスイーツを食べるのは始めてのことだったが、何の問題もなくそれ
らをペロリと平らげてしまう。
「ふぅ。とっても美味しかったです♪」
昼食まではまだかなり時間があるので彼女は控え室兼寝室に戻り、荷物の整理や部屋の掃
除をすることにした。控え室にはカメラが設置されていないため十分くつろぐことができ
る。昼近くになると玄関のチャイムが鳴り、助手が昼食を持ってやってきた。昼食も朝食
と同じく極上のスイーツが準備されており、クレームブリュレ、ミルフィーユ、チョコレ
ートアイスの3品であった。ゆり子は朝から外にも出ていなかったが、それらのお菓子を
目にすると急激に空腹感を感じてきた。
「(ぱくぱく)‥‥こ、これもすごく美味しいわ」
30日の間、外出などは自由に行うことができる。
散歩に行ったり、仕事を入れてもルール違反ではないのだ。ただし、外で食事を取る際は
準備されたスイーツ弁当を食べなくてはならない。
ゆり子は昼食の後、少し散歩することにした。さすがに甘いものの食べ詰めでカロリーの
ことが気になっていたのだ。体操服から私服に着替え、篠原ゆり子であることがばれない
よう帽子を深めにかぶった。近所には散歩に最適な大きな公園があり、一周りが2kmほど
の大きな池とそれに沿って整備されたサイクリングコースもあった。
たっぷりと時間をかけて散歩から帰ってくると、十分に運動したせいか急に眠気が襲って
きたので少し仮眠をとった。
「篠原さん?」
助手から呼びかけられゆり子は居眠りから目が覚めた。いつの間にか辺りは暗くなってお
り、時計は7時を指している。テーブルの上には夕食と思われるものが並んでいる。
「よくお眠りでしたね。夕食の準備が整いましたのでテーブルにお着きになって下さい。
今日の夕食はチョコレートフォンデュです。」
チョコレートフォンデュとはフルーツやパウンドケーキに溶けたチョコレートを漬けて食
べる料理である。眠っていたためほとんど空腹感はなかったが、部屋中に充満したチョコ
レートの香りがゆり子の食欲を刺激した。
「これから毎日、こんな美味しいものが食べられるなんて!幸せ〜!」
ゆり子はカメラに満面の笑顔を見せる。
チョコレートフォンデュが終わるとデザートに出てきたのは生クリームが乗ったバナナパ
フェだった。パフェの方も信じられないスピードでゆり子の胃袋に吸い込まれていった。
「あ〜。おいしかった!ごちそうさま!」
デザートを食べ終えるとようやく今日1日の撮影が終了した。
スタッフがやってきて初日の感想をゆり子に聞く。
「ごくろうさまでした。いかがでしたか?篠原さんには全く問題ないように思えましたけ
ど・・・」
「あ、はい。甘いものは得意なので。それよりもこんなに美味しいものをこれから毎日戴
いちゃっていいのかなってちょっと悪い気がするくらいです〜。」
「ははっ。頼もしいですね。」
番組スタッフはゆり子の食べっぷりに驚くとともに自分たちが彼女を甘く見すぎていたことに反省するのであった。
−−
2日目も彼女は朝食と昼食を難なく平らげあと、公園にジョギングに出掛けることにした。番組衣装の体操着のまま、頭にはちまきを締めて外に出かけようとする。
「どうしたんですか?篠原さん・・・」
「私、ダイエットのため公園でジョギングしてきます!」
「ジョギング?ですか?」
「ええ、昨日食べたもののカロリー計算をしてみたらとんでもない数字になってて・・・。
少しは走って消費しないと30日間ですごいことになりそうですから。」
そう言って彼女は張り切って部屋を飛び出した。撮影班も慌てて準備をしてゆり子を後か
ら追いかけた。
意気込んで勢いよく走り出したゆり子だったが思わぬトラブルが待ち受けていた。
「(たぷん、たぷん)ちょっ、ちょっと‥‥(たぷん、たぷん)、何よこれ‥‥。胸が揺れ
て思うように走れない。」
準備されたスポーツ用ブラが合わず、胸の揺れを少しも軽減することができていなかった
のだ。そのためゆり子の胸元は上下左右に縦横無尽に揺れまくり道行く人々の注目を浴び
た。もちろん撮影班がこのサービスショットを逃すはずはなくゆり子の揺れるバストを大
写しでカメラに納めていた。
「(はあ、はあ。おっぱいが痛い‥‥。ああっ!!)」
しばらく我慢して走っていたが、そのうちにスポーツブラがずれ上がってしまい、体操着
の中でぷるんとバストが飛び出してしまう。そうなるとバストは今まで以上に盛大にたっ
ぷん、たっぷんと揺れた。
ゆり子はジョギングどころではなくなってしまい、ゆっくり歩きながら帰ることになった。
サービスショットの積み増しができた撮影班も満足気に帰還した。
「おかえりなさい。まもなく3時になりますので、今日のおやつを持ってきました。」
「えっ?3時のおやつがあるんですか・・・」
「はい。本日は有名パティシエが作ったホールケーキが届くことになっています。ホール
といっても直径が15cm程度ですのでお一人で食べられるサイズですけどね。」
「(うそ。聞いてなかった・・・)」
初日のゆり子の食べっぷりに驚いたスタッフが急遽、追加で用意したものだった。
「きょうのはモントレーヌのオレンジシムースの生ケーキになります。」
涼やかなゼリーで表面をコーティングされ、オレンジ色に輝く丸いケーキを見てゆり子は
満面の笑みを浮かべた。
「(ぱくっ)・・・うん、いける!」
ゆり子にかかればそれが無くなるのに5分とかからなかった。スタッフ陣は再びあっけに
とられながらその食べっぷりを眺めていた。
−−
次の日以降、さすがにゆり子が体操着で公園を走るのは人目を引きすぎるということで、
ジョギング用のウエアが準備された。さらに彼女のために大きめのスポーツブラも。
毎日がこのような調子で、毎日三食と間食をスイーツ三昧、仕事の合間にはダイエットの
ジョギングという日々が続くのであった。