夏美はうっすらと目を開けるとベッドを覆う天蓋に目が止まった。明らかにそこは自分の
部屋ではなかった。部屋の中は薄暗く、いくつかのロウソクの炎が揺れており、それが天
井の色を変化させていることがわかった。
辺りに人の気配を感じ取り、恐怖で身をすくめた。その気配は一人ではなく複数である。
それらは小さな声でぶつぶつと何やら呪文のような言葉を発している。
恐怖のあまりベッドから跳ね起きようとするが身体が鉛のように重く全く身動きが取れな
かった。複数の男たちは夏美に危害を与える様子もなくぶつぶつと言葉を発したままだっ
た。
部屋の中はろうそくの匂いといくつかの香草が混ざり合ったような複雑な匂いが充満して
いた。夏美は身を竦ませながらも暗さに目が慣れてくると冷静に部屋の様子を観察した。
夏美の右手側には一人の男が彼女の方に向いて直立しているのがわかる。顔かたちは判然
としないが背は高く屈強な身体を持っている。
後の男たちは夏美の足元側にいるようだった。何人いるのかはわからない。声がするだけ
で姿は見えなかった。
夏美はふと足元の男たちがよく見えない理由に気がつく。それは夏美の胸の辺りに山のよ
うな大きな塊が鎮座しており、それが障害物になっているからだった。
そしてさらに目が慣れてくるとそれは巨大な乳房であることに気付く。乳房の高さは1メ
ートル以上もあり、幅はそれ以上あった。乳房の大部分は夏美の胴の両脇にはみ出してお
り、ベッドの上に重々しく鎮座している。夏美はそのあまりの大きさに乳房であるという
ことを認識するのに時間を要したが、ロウソクの炎に照らされて艶めかしく映し出されて
いる姿はまさにそれだった。しかも、それらは夏美自身のものであった。胸囲を測れば5
mは超えるであろうという大きな膨らみであった。
そしてそれらの巨大な乳房が胸に載っているために全く身動きが取れないのだということ
にも気づかされた。夏美が身体を動かすとその動きに合わせて巨大な乳房が重そうに揺れ
るからだ。
夏美は大声で叫びたい衝動に駆られたが言葉を発することができなかった。
見知らぬ部屋、男たち、ロウソクと香草の匂い、大きすぎる乳房、夏美はその状況が理解
できず恐怖に怯えている。
再び何か言葉を発しようと試みるがどうしても声にならなかった。
突然、男たちの呪文が止む。すると右手側の男が夏美の方に進み出てベッドの天蓋の中に
入ってきた。逃げ出そうにも巨大な乳房のせいで身動きが取れない。
その男はおもむろに夏美の方へ手を伸ばした。そして、夏美の右手を掴むとその甲にやさ
しく口づけをした。
「(えっ?)」
男からは危険な雰囲気は感じられず、むしろ夏美に対して敬愛の念を持っているかのよう
に穏やかであった。男が近づいてきたのでロウソクの灯りで顔が判別できるようになった。
古代ギリシャの彫刻のように青い目をした端正な顔立ちの青年であった。夏美は筋肉で引
き締まった男の身体に目をやった。
青年はさらに夏美に近づいてくる。身動きが取れず、声もない夏美は身を任せるしかなか
った。
青年は右の乳房に覆いかぶさり、その巨大な乳房に顔をうずめた。そして2つの大きな手
でゆっくりと夏美の胸を揉みしだき始める。
「あんっ」
その心地よさに夏美は思わず声を漏らしてしまう。そして、その感覚がうず高い巨大な乳
房が自分のものであることを改めて知らせるのであった。
男が力を強めると男の指はずぶずぶと夏美の乳房に埋まった。男は夏美の乳首が十分に硬
直しているのを確認し、そこに唇を近づけていった。
夏美の右の乳頭が男の口に含まれた瞬間、夏美にこれまで感じたことのない快感が身体中
に駆け巡った。
「はあああんっ!」
夏美は自分の発する声が大きいことに驚き、それを押しとどめようとした。しかし、押し
寄せてくる快感に打ち負けてしまい思わず声を漏らしてしまう。
夏美が身をよじらせると二つの山はまるでダンスをするようにぶるんぶるんと激しく揺れ
る。男は乳房をあまり暴れさせないように逞しい両腕を廻して両手をがっちりと組み合わ
せてしっかりと押さえこんで、執拗にその乳頭を吸い続ける。
「くははあぁっ!」
男は左の乳房も同じように攻め立て始める。左の方が感じやすい夏美は乳首が口に含まれ
た瞬間大きく身をよじらせた。男が乳房を吸い舐めまわす間、部屋中に大きな夏美の喘ぎ
声が響いた。
やがてその快感は最高潮に達し、夏美はさらに大きな声を発したかと思うと頭の中が真っ
白になりそのまま記憶を失ってしまった。
―――
稲垣夏美は時々このような性夢を見た。
朝目覚めても青い目の青年に弄られた乳房がまだ少し熱を持っているようなひりひりとし
た感覚が残っていた。ショーツは愛液でぐしゃぐしゃに濡れており現実にも絶頂に達して
いたことがわかった。
彼女は寝汗を流すためにシャワーを浴びた。バスルームの鏡には夏美の華奢な体躯と、高
校生には似つかわしくない豊かに発達したバストが映っていた。
中学の頃、夏美は一向に膨らまない胸にコンプレックスを感じていた。豊かになってゆく
クラスメイト達の胸元をうらやましげに眺めていたのを覚えている。
変化が表れ始めたのは中3の夏を過ぎた頃だった。まな板と言われても仕方がなかった胸
元にはやわらかい二つの膨らみが隆起し、両手でそれらを中央に寄せてみるときちんと谷
間ができるようになった。ランジェリーショップにいって測ってもらうとCカップが丁度
だということが判明した。
ようやく人並みのサイズに成長したと喜んだ彼女であったが、その成長はそれだけに留ま
らなかった。二つの膨らみはどんどんその容積を増し、購入したブラはすぐに窮屈になっ
た。そして、高校1年の春にはF、夏にはHカップと爆発的な成長と遂げ、逆にほかの女
生徒からうらやましがられる存在となっていた。
この急激な変化には彼女の両親も驚き、病院で検査を受けさせたり、妊娠したのでは無い
かとうるさく詮索したりした。もちろん彼女にそのような覚えはなかった。
病院の検査結果はホルモンバランスの変化もなくいたって正常であり、やや遅めの成長期
だろうということに結論付けられた。
性夢をみるようになったのも胸が急に成長してきてからのことだった。
夏美は胸の成長が夢と何らかの関係があるのではないかと感じていたが、そのような話を
信じてもらえるとは思えなかったので両親や医者にはそのことを語らなかった。
夏美の不安もよそに秋にはバストサイズはあっさりと3ケタの大台に突入し、冬の時期に
なってもすくすくと成長を続けていた。国産のブラではとうとうサイズが合わなくなり、
外国製の大きいサイズのブラを着けるようになった。
夏美はドレッサーの引き出しからメジャーを取り出して、バストの周りに巻き付けて数字
を確認した。
「やっぱり・・・また、大きくなってる・・・」
1ヶ月前に測定した時より3cm増え、108cmを示していた。