夏美は冴木に話したように、相変わらず例の性夢に悩まされていた。
夢の中の夏美の乳房は相変わらず超がつくほどの巨乳であり、見知らぬ青い目の青
年がその巨大な乳房を弄んでくる。そして執拗に乳首を責められ絶頂を迎えるとこ
ろで記憶が途切れるのであった。
次の日、目を覚ますと空がまだ白み始めるくらいの時間であった。
性夢を見た証拠にショーツの中は愛液でじっとりと濡れており、胸の奥がまだじん
じんと熱を持っていた。夏美はもやもやとした気分のままベッドの中でもう一度眠
りに落ちるのを待った。しかし、その熱が彼女が眠りに落ちるのを邪魔していた。
昨日、冴木に胸を弄ばれた感覚が甦ってくる。夏美は小さな手を胸の方へ持ってい
くとパジャマの上から硬くなっている乳頭に触れた。
「(あっ)」
乳頭に軽く触れただけで声が出そうになるほどの快感が走る。夏美はパジャマの上
から両手でゆっくりと自分の乳房を揉み始める。デルレの儀式で冴木に胸を責めら
れるたびにその快感が大きくなってきているのが不思議だった。
「(気持ちいい・・・)」
冴木の大きな手の感触を思い出しながら、彼がやるように乳首をつまんで弾く。
より一層強い快感が彼女を貫く。
「(ああんっ)」
胸の疼きは収まるどころか酷くなる一方であった。しかも、胸だけではなくショー
ツの中の疼きもどんどんと大きくなっていることに気付く。
「(冴木君があんなことするから・・・)」
夏美は冴木がしたのと同じようにショーツの中に手をすべり込ませ指で割れ目の間
をなぞってゆく。指先が小さなクリトリスに触れた瞬間、電撃のような快感が全身
を貫いた。
「(くはあっ、き、気持ちいいっ)」
夏美はいけないと思いつつも押し寄せる快感に抗うことはできずに指を動かし続ける。
「(くっ・・・くふぅ・・・)」
声が漏れないように必死に我慢しながらも、さらに強い快感を得るためにもう一方
の手では乳首をつまみ、引っ張りながらくりくりとねじりを加える。
「(はあっ、だめぇ、一人でこんなことしちゃあ!)」
二つの快感が折り重なって夏美の体を駆け巡る。
「(ああっ、もういっちゃうううぅ!)」
ベッドの中で体を大きく弓なりにさせながら夏美は絶頂に達した。
しばらく怠惰な感覚に身を委ねながら夏美は自慰をしてしまったことへの罪悪感に
苛まれるのだった。
夏美は定期的に学校の保健室を訪れ、早乙女先生に現状を報告していた。
学校では夏美が度々保健室に出入りしていることから、彼女が病気かなにかにかか
っていて薬の副作用で胸が大きくなっているのではないかなどと憶測がなされてい
た。また、冴木と良い仲であることも既に校内に知れ渡っているため彼女を揶揄す
る者もいなくなっていた。
夏美は早乙女先生にしばらくの間、デルレの儀式を中止したいと相談を持ち掛けて
いた。
その申し出は早乙女を少し驚かせた。
「どういう心境の変化なの?しばらくデルレを休むなんて・・・」
早乙女は紺のベストを突き上げている巨大な胸の膨らみを見ながらいった。成長は
停止しているものの人目は引くし、日常生活には不便なサイズであることは明らかだ
った。
「大きすぎて不便なこともあるけど今の大きさに慣れてきちゃったみたいなんです。
この胸に合わせて新しいブラも作っちゃいましたし♪」
そういって胸に手を当てながら説明する夏美の目は以前の彼女とは異なり明るく生
き生きとしていた。
「まぁ、夏美がそれでいいって言うんならいいんだけど・・・。デペルマは定期的
に続けるようにね。」
「はい」
「それと・・・」
早乙女は次に何かを言おうとしたが思い直して押しとどめた。
「いえ、やっぱり、なんでもないわ。時期が来たら告げましょう。」
「えっ、何なんですか?すっごく気になるじゃないですかぁ?」
早乙女はデペルマの効果は絶対ではなく偉大なる魔術グランポワの力を抑える一時
的な効果しかないことを彼女に告げるべきか迷ったが、結局、告げないことにした。
なぜか幸せそうにしている夏美に言う気になれなかったからだ。
「もしかして、グランポワの解き方がわかったんですか?」
早乙女の杞憂をよそに夏美は期待の目で彼女を見つめている。
「ええ、まぁ。まだ全部じゃないけど、実はある程度わかってきたの。いずれ披露
できると思うから、乞うご期待ね!」
それから数か月が過ぎ、二人も高校卒業が近くなってきた。
ある日、冴木は夏美と並んで歩きながら彼女の制服姿が見られるのもあと少しもな
いなと呑気なことを考えていたが、その胸の膨らみを見てある異変に気がついた。
「稲垣・・・む、胸、大きくなってないか?」
冴木は紺色のベストを押し上げる膨らみがいつにもまして大きくなったような気が
した。
「う、うん。実は・・・」
夏美の話によれば昨日の朝、着替える時にブラジャーがきつくなったような気がし
たのだが、気のせいかと思いそのまま気に留めなかったのだそうだ。しかし、今朝
は明らかに窮屈になっており、カップからバストが溢れてしまうのを見て慌てて早
乙女先生に連絡したというのだ。学校の帰りに早乙女先生宅に伺うことになってい
て、冴木にもついて来て欲しいということであった。冴木はもちろんついていくこ
とになった。
早乙女先生はいつもとは違って神妙な面持ちで二人を出迎えた。早乙女は夏美の一
層大きく膨らんだ胸元にちらりと目を向けた。
「いくつあるの?」
「今朝図ったら133センチありました。」
夏美は制服を突き上げる大きな膨らみを見下ろしながら低い声で答えた。
「たった二日で6センチも?かなりペースが速いみたいね。」
冴木は二人の会話を横で聞いて、彼女のバストサイズに驚いた。今まで夏美は恥ず
かしがって彼に一切サイズを公表していなかったため、133という非現実的とも
思える数字がにわかには信じられなかった。しかしそれは彼の目の前で現実的に起
こっていることなのだった。
「おそらく魔術グランポワの魔力がデペルマの効果を上回ったのが原因のようね。
こうなるといくらデペルマを続けても意味がなくなってしまう。次の満月もしばら
く先だからデルレも行えない・・・」
早乙女が危惧していたようにデペルマの効果は一時的なもので、神々のエーテルを
防ぎきれなくなり、再び胸の成長は勢いを取り戻したのだった。
「こうなったらいよいよ偉大なる魔術グランポワを解呪するしかないわね。」
早乙女が真剣な面持ちで二人に告げた。冴木はその言葉に驚いたようだった。
「ほ、方法がわかったんですか!?」
夏美がグランポワにかかっているとわかってからもう2年近くが経つ、冴木はすっ
かり解呪という道があるなど期待していなかったのだ。しかし、早乙女は地道に研
究を続け、その方法の確信に少しずつ迫りつつあったのだった。
「いいえ、完全には。でも、グランポワを解呪する鍵は、夢の世界にあるの。夢の
世界に行ってその方法を探しましょう。」
「夢の世界?」
「今から、いざないの儀式を行いましょう。そして夢の世界に旅立つのです。」
早乙女は二人をホーリーサークルの真ん中に立たせた。その部屋はいつものデルレ
とは異なる儀式の準備がされてあった。予めこの時が来るのを知っていた早乙女は
徐々に準備を進めていたのであった。早乙女自身もホーリーサークルの内側に入り、
二人には聞き馴染みのない新しい呪文を唱えた。
この夜、夏美は長くて不思議な夢をみることになるのであった。