夏美の夜の夢

ブラン 作
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三人は思いがけず峠の要塞で束の間の休日を取ることになった。辺境の地パローナ
の入国申請が下りるまではここで過ごすしかなかった。これまでの旅の疲れが出た
のだろうか、次の日は夏美、冴木とも昼近くまで眠った。要塞の中は決して快適で
はなかったが、周囲は豊かな自然にあふれており、美しい景色や小動物たちが三人
の心を和ませてくれた。
冴木は時間つぶしに砦の中を散歩した。リムナス側に比べてパローナ側の石壁は特
に高く険しくそびえたち外からの敵の侵入を完全に防げるようになっていた。重機
もない時代に山の中にこのような巨大な石の砦を築くのは大変な労力を費やしたに
違いないと感じた。
あくる日、ようやく隣国イメリアに行った使者が帰ってきた。ほどなくパローナへ
の入国許可が降りたということだった。
「なんだ?もう行くのか。あんたらもせっかちだな・・・」
三人は要塞の主であるハスバルに一言別れを告げた。
「そうだ、もしラパという村に寄ることがあれば黒スグリで作った酒を買って来て
くれ。俺はあいつが大好物なんだ。」
早乙女は心の中で誰が買ってくるかと叫びながらも機会があればそうしますと答えた。
ようやくパローナ側の堅牢な扉が開かれ、三人はパローナへ足を踏み入ることが叶
ったのだった。
辺境の地と呼ばれるパローナはリムナスの北に位置し、そのほとんどが山岳地帯で
ある。面積はリムナスより広く、民族は多様である。主にはリムナスやイメリアか
ら移り住んだ人々と北方の狩猟民族が占める。狩猟で生活するものと僅かな平地を
耕して生活するものがおり、平地には集落ができているところもある。そのような
集落はパローナにいくつか点在しているのだそうだ。
三人は砦の中で仲良くなった兵士にいくつかの集落の場所を聞いていた。これから
は地道に集落を回ってノラやメリル姫、ガイル将軍たちの情報を集めるしか方法は
なかった。
パローナの道は細く、勾配がきついため馬車を使うことはできなかった。三人は徒
歩で移動するしかなかった。
夏美は大きな胸のせいで足元がよく見えず、たびたび躓きそうになった。冴木は彼
女が転ばないように手を引いて歩いた。

丸一日歩いて最初の村に到着した。パローナでは比較的大きな村らしく中心には雑
貨屋と道具屋、宿屋があった。三人はここを拠点に情報集めを行ったが、簡単には
いかなかった。近くの村の場所を聞きき、その村へ移動して情報を集める、そして
日が暮れると宿に泊まるという生活が何日か続いた。
早乙女は何の手がかりも得られない状況に苛立ちを覚えているようだったが、冴木
と夏美の二人は比較的呑気に構えており、楽ではない道のりだが、美しい景色を堪
能しながら探索を続けていた。また、村々では比較的食材が豊かで、リムナス国内
とは比べ物にならないくらいおいしい食事にありつくことができた。
このように毎日毎日歩いてあちこちの村を訪ねたがノラたちに関する情報は一切得
られなかった。

パローナに入ってから一週間が過ぎていた。三人はとある村に来ていた。
この村は温泉で有名らしく、三人は久しぶりに暑い湯に漬かれると心を躍らせた。
冴木は露天風呂に身体を沈め周囲の美しい山々を眺めた。耳をすますと湯が流れ出
る音しか聞こえなかった。風呂は地元の人々の憩いの場にもなっているようで時折、
老人たちの話し声が聞こえた。
女風呂の方から早乙女と夏美のしゃべり声が聞こえてきた。
「夏美の胸 最近成長が止まってない?」
「そうなんです。この一週間はそんなにサイズが変わってないようなんです。」
「デペルマ?」
「ち、違います!毎日、たくさん歩いているからダイエットになってるのでしょう。」
「いいえ、恐らくパローナはリムナスと高い山々で隔てられているためエーテルの
量が違うのでしょう。幸いだったわね、あのペースで大きくなり続けてたら今頃歩
くことも難しくなってたかもしれないわね。今いくつあるの?」
「さぁ、メジャーもないのでわからないわ。」
「巻き尺が道具屋で売ってたわよ。後で買っていきましょう。」
「いらないですって。」
二人の話声は次第に地元の女性たちのガヤガヤした声にかき消された。冴木は少し
残念な思いで湯船から上がった。
夏美は湯船に身体を沈めると大きな胸がぷっかりと浮かび、重力から解放された喜
びを感じていた。その様子に地元の女性たちも思わず声をかけたくなったようだった。
「まぁ、なんて豊満なのかしら」
「ほんと。羨ましいわ。」
「異国の人?どこからきたの?」
夏美は照れ笑いを浮かべながら女性たちの相手をした。
「そういえば、1年ほど前にもここですごく豊満な女性を見たわ。あなたよりもま
だ大きかったわよ。しかも、もの凄い美人だったから有名な踊り子さんか何かだっ
たのかなぁ。」
「そうそう。しゃべりかけたらうつむいて恥ずかしそうにしてたっけ!?」
夏美と早乙女は顔を見合わせた。今の夏美より大きな胸の女性がそういるわけでは
ない。その女性はメリル姫のことに違いなかった。それ以上の情報は得られなかっ
たが、少なくともこの村にメリル姫が来てたらしいことを掴んだのだった。

その夜、宿屋では早乙女が夏美のバストサイズを計測していた。
「やだ、先生。本当に測るんですね・・・」
「はーい。37ターク(148センチ)です。」