夏美の夜の夢

ブラン 作
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早乙女らの一行はやっとのことでノラの屋敷に到着したが、ノラからは肝心のグラ
ンポワの解呪の鍵はリムナス城にあると聞かされたのだった。三人は屋敷で一夜を
過ごした。
翌朝、食卓で改めてメリル姫とノラ司祭と顔を合わせた。姫の脇にはガイル将軍も
座っていた。
ガイルは立派な髭を蓄えた老将軍で見るからに厳しそうな男であった。元はメリル
に使える近衛兵であったそうだ。数々の戦功を立て将軍にまで上り詰めたそうであ
る。しかし、姫が王位継承に敗れた後はマドラから迫害を受けるようになった姫が
国を出るのを助け、自らも将軍の位を投げ捨ててパローナまでやってきたのだった。
ガイルはメリル姫をわが娘のように見守るとともに、姫に忠義を尽くしているので
あった。
冴木は改めてメリル姫の美しさに心を奪われた。
朝の光が姫の美しい横顔を照らし出し神々しいまでの雰囲気を醸し出していた。
絹のドレスに包まれた胸の膨らみは巨大で、夏美がよくやるようにテーブルの縁に
胸を載せ、肩にかかる重量を軽減させている。かつての乳比べの際、姫のバストサ
イズは45ターク(180センチ)を記録したと伝えられているがその数字はほぼ
変化はないようであった。37ターク(148センチ)の夏美とは比べるまでもな
く巨大であった。
メリル姫はオリビア女王が健在なのかどうかを聞きたがった。三人はマドラから女
王は病にかかっていて人前に出られないということを聞いただけだったのでその通
りオリビアに伝えた。
「やはりそうですか・・・」
三人が何も知らないことに姫はひどくがっかりしたようだった。
ノラ司祭はリムナス国内の状況、城内のことを知りたがっていた。早乙女たちが知
っている範囲で質問に答えると、民衆の暮らしぶりがますます悪くなっていること、
マドラの執政が相変わらずよくないことなどを改めて認識したようだった。
早乙女は改めてこの国に来た理由、マドラから許可を受けて峠の要塞を抜けてこの
国に入ったこと、そして昨日ノラ司祭と出会った経緯を語った。
その話を聞いてガイル将軍は突然驚きの声を上げた。
「まさか、この娘さんにグランポワにかかっていると!?」
メリル姫も非常に神妙な面持ちになり、静かに口を開いた。
「まさか、もう一人グランポワにかかっている方がいるなんて・・・。信じがたい
でしょうが、オリビア女王もあなたと同じグランポワにかかっているのです。」
「女王様も!?グランポワに?」
「どういうことですか?」
三人は驚き、お互いに顔を見合わせた。
「あなた方はご存知ないかもしれませんが、王位継承を巡って私とオリビアは争い
ました。大きな胸の女性は豊穣の女神の生まれ変わりとされるリムナスでは二人の
うちより胸の大きい方が女王に選ばれることになったのです。結果、オリビアが勝
ちました。オリビアの胸は偉大なる魔術グランポワの力によって大きくされていた
のです。オリビアにグランポワの魔術をかけたのはマドラ司祭。秘伝であるグラン
ポワの魔術をどうして彼が知っていたのかは謎です。
オリビアが女王に選ばれたことに問題はありません。どんな方法であれ胸の大きい
方が選ばれるのがルールでしたから。
しかし、問題なのは、彼が女神のミルクを取り出す方法も解呪の方法も知らなかっ
たことなのです。そのため、オリビアの胸は今でも大きくなり続けています。おそ
らく自分で身を起こすことも出来ないでしょう。私にはわかります。私たちは双子
ですから離れていても姉が日々苦悩していることを感じとれるのです。」
三人はオリビア女王が人前に出られない本当の理由を知ったのであった。
「我々はマドラを倒し、オリビアを救いたいと考えています。リムナスの城を奪え
ばグランポワの書の封印を解くことができます。そうすればオリビアとナツミさん
のグランポワも解くことができるでしょう。」
メリルはまるで姉の姿を求めるように愛おしそうに夏美を見た。
「しかし、衰えたとは言えマドラの軍隊は強大です。我々には味方が必要なのです。
貴方たちの力を貸していただけないでしょうか?」
メリルは訴えかけるように三人に言った。もちろん三人に断る理由はなかった。
「もちろん協力いたします。」
早乙女はそう答えた。
次にガイルが口を開いた
「マドラは我々を恐れている。以前はオリビア女王を祭り上げて好き勝手に国を動
かしていたが、その女王が利用できなくなり焦っている。今のところ独裁者として
の地位は揺るぎないが、その求心力は低下する一方だ。国内にはメリル姫様こそ女
王にふさわしいと考える者たちがおり、奴はその者たちと我々が呼応するのを恐れて
いる。そのため、峠の要塞を増強し守りを固めている。」
ガイルが続けて話す。
「マドラは女王から女神のミルクを取り出す方法を探し求めている。それができれ
ば伝説で伝えられるように国は豊穣の大地に生まれ変わり、女王も人前に姿を現す
ことができる。民衆の不満も解消される。
マドラはノラ司祭ならその方法を知っていると思い込んでいるので藁にもすがる思
いでそなた達をパローナに送り込んだのだろう。」
夏美と早乙女は顔を見合わせた。
「女神のミルクを取り出す方法って・・・デルレの儀式のことでしょうか?」
「どうしてその儀式の名前を?」
今度はノラ司祭が身を乗り出した。
「夏美の胸を小さくするために定期的に行っていますから。」
ノラたちは驚きの声を上げた。
「ええっ!」
「そんなばかな・・・」
「グランポワはリムナスに伝わる最上級の魔術、その中でもデルレの儀式は秘術中
の秘術だ。失礼だが、そなたらがそれを知り得るはずがない。」
ノラの言葉に早乙女は少々気分を害したようだった。
「私も魔術師の端くれです。疑うのでしたら次の満月の夜にデルレの儀式をやって
みせましょう。夏美の胸も大きくなって困ってきた頃ですから。」
早乙女は自信満々にノラ達に言い放ったのだった。