ノラの屋敷にて、冴木はガイルの部下たちから剣の稽古をつけてもらっていた。
彼らが言うには冴木はなかなか筋がいいということだった。学校の体育の授業で剣
道を少し習ったことはあったがそれが役に立っているとは到底思えなかった。
早乙女はノラ司祭と魔術談義に花を咲かせている。デルレの一件からノラは早乙女
を一級の魔術師と認めているようで、二人で難しい言葉で難しい話し合っている。
夏美はメリル姫に乗馬を教わることになった。屋敷の裏の馬小屋でメリル姫が馬に
餌をやっているところに夏美は出くわしたのだが、メリル姫は馬たちの世話を担当
しているということであった。姫様が馬の世話をするとは最初信じられなかったが、
メリルは動物の世話が好きで家畜の世話も進んでやっているそうだ。夏美が馬を眺
めていると、メリルが乗り方を教えてくれるという。メリルの胸の大きさで馬に乗
れるものなのか心配したが、それはいらぬ心配であった。鐙に足をかけて馬の背に
巨大なバストをどっさりと載せてから鞍に跨る。その所作に無駄なところはなかっ
た。彼女は馬上の人となると馬をうまく操った。巨大な胸が馬の動きに合わせてユ
サユサと上下に大きく揺れていた。
メリル姫は夏美の生まれた国や環境に非常に興味を持ったようだった。様々な質問
を投げかけてくるので夏美が少し辟易するほどであった。
「市民はある一定の年齢に達すると男女を問わずガッコウというところで教育を受
けるのですね。素晴らしい取り組みですわ。もちろんナツミさんも、サエキさんも
そこへ行ってらっしゃるのですね。うらやましい、私も一度行ってみたいわ。
えっ?サオトメさんはそこの先生なのですか?まぁ、なんて素晴らしい。あの方が
いろいろと物知りな理由がわかりましたわ。」
メリル姫はいつも真剣で万事この調子である。いちいち答えていると時間はすぐに
過ぎた。
「自分たちの国の代表を市民たちが選ぶなんて信じられませんわ・・・。トウヒョ
ウというのですか。市民はどのような者でも構わないのですか?年齢の制限はある
のですね?なるほど至って公平な選び方ですね。選ばれた代表は数年でまた交代す
るのですね、誰かが権力を独占することも難しいわけですね。」
それらの雑多な話の中で一つ興味深いことがわかった。夏美とメリル姫の誕生日で
ある。
「7月30日・・・私とメリル姫が同じ誕生日だなんて・・・。ということは、当
然オリビア女王とも同じ・・・」
夏美が誕生日が同じであったという事実を早乙女に話すととてもびっくりしたよう
だった。
「偶然・・・恐ろしいほどの偶然だわ・・・」
ある日、ガイル将軍は屋敷の人たちを全員召集し、皆に言った。
「私は数名を連れてしばらくの間、ここを出る。2週間ほどで戻るつもりだが残った
者は心して警戒に当たるように。」
ガイル将軍はマドラを倒すための協力者を募るためしばらく屋敷を留守にすると言う
のだ。リムナスを逃れてパローナで暮らす者、それからに隣国イメリアへも協力を
依頼するのだそうだ。
「サエキ殿、私が留守の間よろしく頼む。この屋敷は迷いの森の奥深くに位置し、
踏み入ってくる者はまずいない。しかもノラの魔術により簡単にみつからないよう
になっている。
しかし、安心はできんのだ。狩猟民族や野盗たちから襲来を受けることがある。普段
は我々が常に警戒し奴らが来れば撃退しているが、我々がいない隙に襲ってくるこ
とも考えられる。何かの時は必ずメリル姫を守ってほしい。」
ガイルは部下を引き連れ、警備のため最小限の者だけをおいて屋敷を去った。
この日から冴木も屋敷の警備に加わることになった。こうなってくると日々の剣の
鍛錬が現実味を帯びてくるのであった。警備は基本的には昼間であったが、時には
夜間になることもあった。
ガイル将軍が屋敷を離れてから幾日が過ぎたある日の夜、事件は起こった。
ガイルの予言通り、不在を狙って野盗が襲来したのだ。部屋を物色していた夜盗を
メリル姫が見つけ金切り声をあげた。
「きゃああああーーーっ!だ、だれか!」
見つかった野盗は姫を切り付けようと襲ってくる。野盗が剣を振り下ろそうした瞬
間、何者かがその剣を弾きとばした。そしてすぐさま一太刀をお見舞いした。野盗
は慌てて飛び退いたが剣先が一瞬早く脇腹を切り裂いた。野盗は脇腹を抑えながら
たまらず退散した。
野盗に切りつけた男は冴木だった。
胸騒ぎがして屋敷の中を警戒していたところに姫の叫びを聞き、すぐさま駆けつけ
たのだった。無我夢中で放った剣が幸運にも有効な一撃になったのだった。
「サエキ様。助けて頂きありがとうございました。何とお礼を申し上げて良いもの
か。」
メリル姫は冴木に何度もお礼を言った。冴木も姫に万が一のことがあれば今後の計
画がとん挫してしまい、ガイルにも申し訳が立たないところだったと思うのであった。
屋敷に侵入した野盗は2名。幸い台所で食料が少し物色されていた他には大きな被
害はなかった。
それから数日後の夜、冴木が部屋でくつろいでいると小さいノックの音がした。
警戒しながら扉を開けるとそこにはなんとメリル姫が立っていた。姫は何も言わず
に身体を冴木の部屋の中に滑り込ませた。
「突然お伺いして申し訳ありません。先日のお礼と言っては何ですが・・・私を抱
いていただきたく思います。」
冴木は突然のメリル姫の訪問と申し出に当然びっくりした。
「命を救っていただいたのですからこれくらいでは足りないのですが。」
メリル姫は冴木の目の前で羽織っていたローブを脱ぐ。姫は目のやり場に困るよう
な妖艶なビスチェ姿になった。二つの胸の膨らみは大きく前に突き出しており、手
を伸ばせば触れられる距離にある。冴木は野盗から姫を救ったのは偶然であり、自
分の役目を果たしただけであるのでお礼など気にしなくてよいと言った。
「サエキさまはナツミさんのことを気にされているのでしょうか?ナツミさんは許
嫁なのですか?」
許嫁とかそういったものではないと冴木は答えた。
「そうですか安心しました。では躊躇することありませんわね。」
姫はにっこりとほほ笑んで冴木の方へ一歩近づく。胸の膨らみが当たりそうになる。
「ちょ、ちょっとまってください。」
冴木は思わず一歩後ろに下がる。
「どうしてですか?・・・私のような太めの女は苦手でしょうか?」
メリルのバストは180センチを誇る豊かなものであるとともに、ヒップも豊かで
幅、厚みとも申し分なくみちみちと肉がついている。太腿も柔らかい肉で覆われて
みっちりと一部の隙もない。腹部も脂肪の層で覆われているが腰からヒップにかけ
ての曲線は女性らしい見事なカーブを描いており、太っているという印象は受けな
かった。冴木は全く太っていないと言うとメリル姫は安心し微笑みを返した。
「皆は豊満だとほめてくれますが、私は自分の身体がそれほど好きではありません。
胸もお尻も大きすぎてつり合いが悪すぎると思います。」
そういって恥ずかしげに身体を揺するメリル姫を冴木はいじらしく思った。
「そんなころないです。姫様はすごく魅力的だと思います。」
「まあ、うれしい。これでも少しは痩せたのですよ。パローナに来て田畑を耕した
り、馬に乗ったりしているお蔭ですわ。でも・・・ここだけはあまり変わらないよう
です。」
姫は巨大な胸をむぎゅっと真ん中に寄せて見せる。
「うふっ、触ってみたいですか?」
メリル姫はまた冴木に一歩近寄る。冴木はまた一歩身を引いた。
姫の表情がキッと厳しくなった。
「わかりました。それが冴木さまのお答えなのですね。私はここから出ていきま
す。女としてこれだけ恥をかかされてはもう二度とお目にかかることもありません。」
そういって姫は踵を返して扉の方へと進む。
「ちょっ、ちょっとと待って」
冴木は慌てて姫を引き留める。もう完全にメリル姫のペースである。
「では、受けてくださるのね?」
先ほどの厳しい表情が打って変って弾けた笑顔に変わった。