夏美の夜の夢

ブラン 作
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早乙女と冴木はマドラに軟禁され、城の地下牢で一夜を明かした。
城の外では戦闘が行われているらしく遠くから兵士たちの喚声が聞こえた。城門を
破壊しようとする重い音が響き、投石器から放たれた石が何かにぶつかる音がする。
夏美のことが気にかかったが牢に入れられた二人にはどうすることもできなかった。

戦闘は朝になっても終わらなかった。しかし昼前になると次第に辺りの喧騒が収ま
ってきたようだった。地下牢にこつこつと数人が階段を降りてくる音が鳴り響いた。
二人は身をすくませ警戒した。
マドラが自分たちを連れ出そうとやってきたのだろうか。それとも助けが来たのか。
陽の光がわずかにしか入らない地下牢では人の顔を判別するのは困難だった。何者
かが階段を降り切ってこちらにやってくる。次第に、顔が浮かび上がってきた。
男は立派な髭を蓄えた見覚えのある男であった。
「ガイル将軍!」
二人は緊張から解け一気に喜びを爆発させた。
「やったのですね!マドラを倒したのですね!?」
ガイル将軍は峠の要塞を落とした後、リムナス内の反乱軍と呼応し一気に城に押し
寄せた。虚を突かれたリムナス軍はあっけなく城門の突破を許し、大した戦闘もな
く一夜で陥落したのであった。
リムナス軍の本隊はイメリア軍と対峙し、小競り合いを繰り返した後、反乱軍に後
ろを突かれて敗走を始めた。
「ご無事でなにより。マドラは先ほど捉えた。もうすぐこの牢屋に入ることになるだ
ろう。」
「夏美は無事でしょうか?」
心配そうに早乙女が訪ねる。
「ああ、大丈夫だ。元気にしている。」
「よかった。」
二人はホッと胸をなでおろしたのであった。
「しかし、筋書き通りにことが運んだな!大した犠牲もなくマドラを捉えられたの
はひとえにサオトメ殿のお陰だ。わっはっは。」
ガイルの豪快な笑い声が広い地下牢に鳴り響いた。


オリビア女王は東の塔の最上階の部屋で目を覚ました。
昨日の儀式の途中でつい眠りに落ちてしまったことを思い出す。いや途中ではない。
冴木に胸を吸われ、快感のあまりに気を失ってしまったのだ。その後のことは覚え
ていない。
オリビアがふと胸元を見下ろすと昨日まで山のように鎮座していた巨大な胸の膨ら
みがそこにはなかった。彼女はきょろきょろと辺りを見回した。
女王は両腕をベッドに踏ん張り、自力で上半身を起こした。驚くほど身体が軽い。
裸の胸は美しい球状の乳房に戻っている。両手で乳房を救い上げてその軽さを実感
する。オリビアは嬉しくなり大きな声で侍女を呼んだ。彼女の声が広い部屋にこだま
した。


早乙女と冴木はガイル将軍に助けられ、地下牢から出るとすぐさま夏美の部屋へと
向かった。部屋の入り口はパローナの兵士が守っている。
扉を開けて中に入るとベッドの上の夏美が迎えた。夏美はにこやかな笑顔を二人に
向ける。
「夏美、無事だった?」
「はい。私は何とも。それより二人こそ大変だったと聞きました。」
早乙女と夏美は手を取り合ってお互いの無事を確かめた。
「ええ、デルレは無事に終わったんだけど、そのあと、牢屋に入れられてたのよ。」
「やはりマドラが本性を・・・。」
「そのせいで夏美にデルレができなかったじゃないの。ねえ?」
夏美の乳房は依然として巨大なままであり、ベッドの上にどっかりと鎮座している。
「来月まで待つしかないですね・・・」
そう言って夏美は苦笑した。
しばらくして早乙女は二人を残して部屋から出ていった。部屋の中は夏美と冴木の
二人になった。
「冴木くん・・・心配したよ」
「稲垣も、無事でよかった。」
冴木は大きな胸の膨らみに手を触れながら夏美にキスをした。
「大きいでしょ?」
冴木はうんと肯く。
「触りたい?」
「うん。」
「本当は触って欲しいけど、先生が帰ってきちゃうかもしれないわ。」
冴木は手を夏美の胸に置いたまま、二人は長いキスをした。。


夏美の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
二人はサッと身体を引いて何事もなかったかのように繕う。部屋に入ってきたのは
早乙女とその後ろから美しいドレス姿のオリビア女王がついて来ていた。
「女王さま!」
「もう大丈夫なのですか?」
二人は驚いた。オリビアの体はまだひどく衰弱しているはずだった。しかし、どう
しても夏美に一目会いたいとの思いで兵士に支えながらここまでやってきたのだった。
「ナツミさん、サエキさん。どうもありがとうございました。胸もこの通りになり
ましたし、声も戻りました。」
部屋には美しいオリビアの声が響いた。手足は細く、肌は驚くほど白い。その折れ
てしまいそうな華奢な身体に対してバストはアンバランスに突き出ていた。小さく
なったとはいえ十分な爆乳である。後日、夏美が聞いたところによれば33ターク
(132センチ)だということであった。
「女王さま、どうぞ椅子に掛けてください。」
「ありがとう。でもその呼び方はやめてください。オリビアで構いません。」
オリビアは夏美に近寄り、手を差し伸べる。
「あっ!」
早乙女と冴木が叫んだ。この前のような共鳴が起こるかと思ったが、何も起こらな
かった。
「今は何も起こりませんわ。大丈夫です。」
オリビアと夏美は手を取り合っている。
「それよりもあなたがこんな胸になってしまって・・・ごめんなさい。」
オリビアは自分のせいで夏美にまでグランポワをうつし、その胸を大きくさせてし
まったことに責任を感じているようだった。
「オリビア、気にしないで。この胸もデルレを行えば小さくなります。それに、ノ
ラ司祭がグランポワの解呪方法を解明してくださる予定よ。」
「本当ですか!?」
オリビアの顔がパッと明るくなった。
「今、ノラ司祭はこの城に向かっているそうです。メリル姫と共に・・・」
「メリルも!元気なのですね!?」
オリビアは子供のように無邪気にはしゃいだ。その様子は周囲の人々を暖かい雰囲
気に包むのであった。
その後、オリビアは自室に戻った。衰弱した身体が元に戻るまでしばらくの間、ベ
ッドの上で療養することになった。


次の日、ノラ司祭とメリル姫がリムナスの城に到着した。
ガイル将軍と早乙女、冴木は城門で彼らを出迎えた。夏美の姿が見えないことを不
審がるメリル姫に早乙女が簡単に事の顛末を説明した。
「オリビアにも早く会いたいところですが、先ずナツミさんの顔を窺いたいですわ。」
メリルは大きな胸をゆさゆさと揺らしながら懐かしいリムナスの城内を歩いた。
「ナツミさん!」
ベッドの上の夏美はメリルの顔を見て弾けるように喜んだ。メリルは夏美の乳房の
巨大さに驚きを隠さなかった。
「オリビアを助けるためにこうなられたのですね・・・感謝いたします。」
「私は平気よ。デルレをすれば小さくなるんだし。メリル、それより早くオリビア
に会いに行ってあげて!」
「ありがとう。では後でまたゆっくり来ますわ。」
メリル姫は夏美の部屋を後にし、オリビアのいる東の塔へと向かった。
メリルはオリビアの部屋の扉を開けて中に入る。ベッドに横たわっていたオリビア
はメリルの姿を認めて飛び起きた。オリビアは立ち上がってメリルの抱擁を受ける。
二人はお互いの手を取り合いながらとめどなく涙を流すのであった。