エピローグ
早乙女先生は冴木、稲垣の二人を部屋に迎えいれた。
「あーら、いらっしゃい!」
二人が早乙女の部屋を訪ねるのも久しぶりのような気がする。
「先生、ほんっとうにありがとうございました!」
電話では散々お礼を言った夏美だが、改めて先生に深々とお辞儀をした。
「まあまあ、玄関先では何だし中に入って。ハーブティーでも淹れるから」
二人はリビングルームに通される。
早乙女としても夢の中の世界はスリルと興奮に溢れていて、しかも、魔術の勉強に
もなったのですごく楽しかったと二人に言った。
「先生!実は今日は重要な報告があるんです・・・」
夏美は急に神妙な顔つきになった。
「私と冴木君・・・つっ、付き合うことになったんです!」
そういって夏美は恥ずかしそうに下を向いている。
「えええーっ!!あなたたち!!・・・・・・まだ、付き合ってなかったの!?」
驚きの声がリビングに響いた。
「いやぁ、その。正式な形でっていうのはまだだったかなってことで・・・」
冴木はしどろもどろになりながら先生に話す。
「まったく・・・二人であんなことやこんなことまでしておいて、まだ付き合って
なかったなんて!」
冴木はバツが悪くなり話題を変える。
「それはそうと夢の世界の人たちはどうなったんだろう?」
「やっぱり気になっちゃう?史実ではリムナスはイメリアに攻め込まれて滅んだこ
とになっているけど、現実にはそうじゃなかったわよね。夢占いで調べたんだけど、
見事に共和政の国に代わったみたいだわ。」
「メリルやオリビアのその後は?」
「ふふふ、どうなんでしょう?それに書いてあるから読んでみなさい。」
二人はテーブルの上の先生が示した書類をめくり、そこに書いてあることを読んだ。
―――
▽ガイル将軍
パローナで旗揚げしマドラ司祭を倒した後、リムナス国民から英雄として迎えら
れる。国が共和制に移行するまでの間、暫定政府のトップとして政治手腕を振るう。
共和国のリーダーへ立候補を熱望されたが断ってパローナへと帰る。余生はメリル
姫たちと共にノラの屋敷で過ごしたという。
▽ノラ司祭
ガイルとともに英雄として称えられたが、人前に出ることを嫌いしばらくしてメ
リル姫とともにパローナの屋敷に帰る。ガイルやメリル姫たちと楽しく過ごしたと
いう。
▽マドラ司祭
ガイルに捉えられ新政府の元、裁判にかけられる。不正蓄財など様々な罪で裁か
れ、永久国外追放となる。
▽ハスバル将軍
峠の要塞でガイルに拘束され牢に入れられた後、新政府になってからは恩赦によ
り解放される。相変わらず酒癖は悪かったという。
▽モゼフ老師
国民から推され、新政府の司法長官として返り咲く。相変わらず豊満な女子を眺
めることが好きだったという。
▽イザベル(宿の女主人)
イメリアやパローナとの交易も盛んになり、宿は大いに繁盛する。リムナス一円
に宿をチェーン展開し、パローナの温泉の村にもリゾート施設を作ったという。
▽青い目の青年
オリビアの体力が回復した後、ノラ司祭とともに彼女にかかったグランポワを解
呪する。オリビアが王位を捨てたあとも彼女に寄り添い、オリビアと結婚して夫と
なる。
▽オリビア
王位を捨て、リムナスの王政を終わらせる。その後、パローナに移住したと言わ
れる。ホワイトナイトの青年と結婚し周囲を驚かせたという。夫と仲睦まじく暮ら
したという。
▽メリル
姉のオリビアとガイル将軍を助け新政府の礎を築いたとされる。新政府誕生後は
ノラ司祭とともにパローナに戻って屋敷で暮らしたという。一生結婚はしなかった
が、子を身籠り、生まれた娘を立派に育てたという。
―――
「ええっ、オリビアってあの青年と結婚したんですかぁ〜。」
「確かにものすごくハンサムだったわよねぇ。リムナスが王政のままだったら身分
の差で結婚できなかったでしょうね。」
「あっ!もしかして彼と結ばれたかったから王位を捨てたとか?きゃあ〜」
「ありえなくはないわよね。」
「だとしたらオリビアってやり手ですよね。うふふ。」
夏美と早乙女はガールズトークで盛り上がっている。
「それと、あのメリルがシングルマザーになるなんて信じられないわ!」
「あの堅物のメリル姫が・・・何があったのかしらね〜」
「叶えられぬ恋?その後も誰とも結婚しなかったって言うし・・・」
「私たちが帰ってから結構すぐ子供ができたらしいわよ。」
「うっそ〜。父親は誰なのかしら?きゃあ〜」
冴木は二人の会話を横で聞いていて真っ青な顔をしている。
「冴木君、どうしたの?具合でも悪い?」
END