アイデアル・ドール

ブラン 作
Copyright 2015 by Buran All rights reserved.

次の日の午前中に多恵子は早速、トランス・システムのスイッチをONにし、
起動ボタンを押してアイガールに変身した。
まずは室内でこの姿のまましばらく過ごしてみる。ガイドには最初30分ほど
装用してみて違和感がなければ外に出てもよいと書かれている。また、アイデ
アル・ドール社から確認事項のリストが添付されていたのでそれをもとに確認
作業を行った。
身体が問題なく動くかのストレッチ運動。軽くその場でジャンプ。皮膚をつ
ねってみて痛みを感じるかなどである。

「すごい・・・何の違和感もない・・・まるで私の身体のよう。」

30分が経ち、特に異常も感じられないので多恵子は外出してみることにし
た。
しかし、その前にひとつ問題があった。

「どうしよう服がない・・・」

当然のことながら普段のBカップのブラはホックを止めることすらできない。
仕方なくノーブラのままでキャミソールを着る。シャツは当然ボタンが止まら
ないし、お気に入りのワンピースも胸がつかえてジッパーが上がらなかった。
諦めてニットを着る。伸縮性があるため着ることはできたが、布地が胸にぴっ
ちりと張り付きその大きさを際立たせてしまう。

「やだぁ、むねが結構目立っちゃうなぁ」

スカートについては問題はなかった。ウエストが細くなったせいで今まできつ
かったスカートでもかなり余裕をもって履くことができた。多恵子は普段の自
分と比べてちょっと悔しい思いをした。

「なんて羨ましいスタイルなの? やっぱり体型に合う洋服を買わなきゃだめ
ね。服だけじゃなくて下着も必要よね。」

多恵子にとって洋服を買うことの優先順位はかなり低かった。どうしても人形
や人形の素材にお金を使ってしまうので服は学生時代からほとんど買い足した
ことがなかった。しかし、アイデアル・ドール社から支度金としてかなりの金
額が支給されていたので今回は躊躇することなく洋服や下着を買おうと思っ
た。

「そうだ、この子に名前を付けてあげよう。えっと・・・どんな名前がいいか
な?」

多恵子は自分の名前があまり気に入っていなかった。ちょっと昔風の感じがす
るし、小さい頃演歌歌手のような名前と言われたことがある。昔から、まりあ
やありさなど英語風の名前に憧れていた。しばらく考えて、多恵子はリナとい
う名前にすることに決めた。

「今日からあなたは北山リナよ。名前の響きもいいわね♪」


多恵子はリナの身体でアパートを後にした。いつもは服を買うときは近所の
ファストファッションの店で値段の安いものを選ぶのだが、今回は遠くのデ
パートまで歩いて行くことにした。
普段ならバスと電車を使うところだが、歩けば片道30分、往復1時間くらい
になるのでちょうど体験項目の“ウォーキング”を済ませることができる。
外に出るといつもと違う自分にドキドキと胸が高まる。こんなに美人だと男の
人に声かけられたりするんだろうかと周りの様子が気になる。
歩き始めるとノーブラの胸は服の下で小気味よくプルンプルンと揺れた。大き
な胸の膨らみが思いのほか邪魔だ。膨らみが壁になって足元が見えにくいので
少しの段差でも躓きそうになる。多恵子はいつもより地面をよく見ながら歩く
ことを心掛けた。
多恵子は住宅街と公園を抜けてオフィス街を歩く、閑散とした住宅街とは対照
的に平日の昼間のオフィス街はたくさんのスーツ姿のサラリーマンやキャリア
ウーマン達が足早に道を歩いている。
多恵子はキャリアウーマン達に少し引け目を感じながらも背筋を伸ばしてデ
パートの方向へと足を進めた。
道行くサラリーマンたちがチラチラと自分に視線を送っているのがわかった。
当然ながらその美しい顔とゆさゆさと揺れる大きな胸の膨らみにどうしても注
目が集まってしまうのだ。男たちはすれ違う度に多恵子の身体に舐めまわすよ
うな視線を送った。

「やだぁ、見られてる・・・」

30分の道のりの末、多恵子はデパートに到着した。
デパートではまず下着を購入することにした。普段はネットショップの値段の
安いもの済ませているのだが、リナにはピッタリと合う可愛いデザインの下着
を選んであげたいと思っていた。早速、店員にサイズを測ってもらった。

「トップ93・・・アンダー68ですからカップはGになりますね。素晴らし
いスタイルですね。羨ましいですぅ。」

多恵子は気に入ったデザインのブラを選んで再び試着してみる。前かがみに
なってバストをカップに収め、ホックを止める。身体を起こし、カップに手を
入れて脇に逃げているバストをカップに収める。さらに店員がストラップの長
さを調整し、カップの内側に手を入れてバストをぐいと持ち上げると驚くほど
美しい胸の谷間ができあがった。

「わぁ、すごおい。」

多恵子は今までに見たことのない豊満な谷間にうっとりとしてしまう。店員に
は散々スタイルが良いと褒められていつしか自分のことのように嬉しくなって
いた。
ブラとお揃いのショーツも合わせてセットで3組買い支払いをすませた。

続いて服を選ぶ。スタイルがいいからどの服を選んでも似合ってしまう。
いつもは地味目の服しか選ばないが、ちょっと勇気を出して派手目で身体のラ
インが出る服を買ってみる。ワンピースを着ると細いウエストのラインが強調
されて美しい。短めの丈からは美しく長い脚が伸びている。
多恵子にとって、服を選ぶのが楽しいなんて初めての感覚であった。まるで着
せ替え人形をしているみたいに。
結局、店員にも煽てられてついつい服を3着も買ってしまった。支度金の大半
はこれでなくなってしまうことになったのだった。

「いっけない!明日から節約生活だわ!」

購入したワンピースを着て、帰りの道を歩いた。
ブラジャーのおかげで胸の揺れは無くなったが、寄せて上げられた胸の膨らみ
は一層前に突き出して人目を引くことになった。オフィス街では行きと同じよ
うにサラリーマンたちからいやらしい視線を彼女に浴びせた。中には聞こえる
くらいの声で彼女のことを指す者たちもいた。

 「お、おい、見ろよ。すっげぇ美人。」
 「それにあの、おっぱい。」
 「なんてイイ身体をしてやがるんだ。」

その声に聞こえない振りをしながら多恵子は足早に男たちの前から遠ざかっ
た。

「(ばか・・・聞こえてるわよ。もう。)」

買い物袋をいっぱいに抱え、家に帰り着いたときには慣れない身体と買い物の
せいでへとへとに疲れていた。
鏡の前に立ち、先ほど買ったワンピースを脱いで下着姿になった。豊満な胸が
球状に盛り上がり、Gカップのブラに収められている。後ろを向くと大きいが
形のよいヒップが鏡に映し出され、上体をねじると細いウエストがさらにくび
れてみえる。

「これだけ美人でスタイルがいいのも考えものね。男の人にじろじろ見られ
ちゃう。サラリーマンたち、明らかにエッチな目で見てたわよね。やだわ。」

ブラのホックを外してバストを拘束から解き放つ。半球状の豊かな二つの乳房
の先端には控えめな大きさの乳輪とピンク色がかかった薄茶色の可愛らしい乳
首が見えている。

「・・・・なに?」

胸に疼きのようなものを感じた。
変な感覚だった。オフィス街で男の人が視線を向けられた時から微かに感じて
いた感覚だった。それが視線を送られる度にだんだんと大きくなり、家に帰っ
たいまでもそれが収まっていないようだった。
胸を見下ろすと二つの乳首は硬くなり突き出しているのがわかった。胸に手を
触れてみる。

「やんっ」

手に余る大きな乳房は柔らかく心地がよかった。両手で乳房を揉んでみる。手
のひらが乳首に触れるとくすぐったいような、それでいて気持ちよい感覚が広
がった。
普段なら胸を触ってもこんな感覚になることはないのだが不思議な感覚だっ
た。
指で乳首をつまむと快感が走り、思わず声が出てしまう。

「くはぁっ。気持ちいい・・・・」

さらに指で乳首をはじくと身体がビクッと反応しさらに強い快感が走った。

「だ、だめぇ。こんなこと・・・おかしいよお。」

多恵子はそのまま胸をいじっていたいと思ったが何とか自制心の方が勝って踏
みとどまった。
そして、すぐに部屋着に着替て、トランス・システムの停止ボタンを押し、元
の自分の姿に戻った。

「今日はこれくらいにしておこう。」

元に戻ると先ほどリナの身体で感じていた疼きのような感覚は消え去ってい
た。
多恵子はほっと息をつき夕食の準備を始めたのだった。