フィットネスクラブで“水泳”を終えて家に帰った多恵子はその夜、アイデア
ル・ドール社への報告を書いた。思っていたよりも楽にこなすことができたこ
とに彼女は満足していた。身体が冷えすぎたり熱くなりすぎたりすることもな
かったし、泳ぎ終わった後も痛みやだるいような症状もなかった。一つだけト
ラブルはあったがもちろんそのことについて書くつもりはなかった。
「更衣室でエッチなことしたなんて、絶対に恥ずかしくて書けない・・・。」
オプションの体験項目に性行為というのがあるが、自慰行為もそれに含まれる
のでもし報告すればかなりのボーナスを手にすることができる。しかし、多恵
子にはそのつもりはなかった。
「でも・・・気持ちよかったな。オナニーであんなに気持ちよくなっちゃうな
んて・・・。」
彼女は男性の監視員からじろじろと胸を見られたこと、胸の疼きを我慢しなが
ら泳いだこと、そして更衣室のシャワールームで一人でしてしまったいけない
ことを思い浮かべた。
絶頂に達したときの快感の余韻が思い起こされ、ムラムラとエッチな気分が沸
き上がり胸が疼き始める。
「また変な気分になってきちゃった・・・。だめだめ!」
慌ててトランス・システムのスイッチを切り、リナから自分の身体に戻した。
「ふぅ、危なかった。」
リナの胸は一瞬で小さく縮み、胸の疼きはどこかに去ってしまったかのように
思えた。
しかし、多恵子の身体に戻っても昼間の強烈な自慰の余韻が残ったままであ
る。彼女の小さな胸の突起は硬くなったままであった。
「あんっ」
自分の胸に触れてみる。Bカップの小さい胸を今まではあまり気持ちいいと感
じることはなかったが、その晩はいつもと違いやけに敏感になっているよう
だった。
「あっ、やだ・・・だめ、気持ちいい・・・」
リナの乳房ほどの快感は得られないまでも心地よい快感が多恵子を侵食してい
た。両手で乳首をひっぱりながらねじったり弾いたりを繰り返しながらさらに
刺激を加えていく。
「あんっ、だめ、やめられない・・・」
彼女はベッドにもぐりこみ、声が漏れないようにしてから、胸を揉みながら片
手の指を下半身に滑らせた。指が肉芽に触れると強烈な快感が走った。
「あああんっっ!き、きもちいいっ!」
クリトリスを刺激する指の速度をどんどんと高めていく。今まで感じたことの
なかった快感が多恵子の中に生まれていた。身体が弓のように大きくしなり快
感の絶頂に達していく。
「も、もうだめええっっ!」
びくんと痙攣したかのように身体が揺れ、絶頂の向こう側へと達する。彼女は
しばらくベッドの中でその余韻に浸った。自分の身体でもこれほど気持ちよく
なれたことに困惑とともにひそかな喜びを感じていた。
「リナのせいで私の身体までエッチになっちゃったのかしら・・・?」
翌日から次のオプション項目である“連続装用7日間”に取り掛かることにし
ていた。
アルバイトのシフトを調整してもらい7日間の休みを空けた。普通の会社員
だったら難しいことだが、フリーターの彼女にとっては比較的簡単なことだっ
た。休みの間、アルバイトの収入が減ることになるが、オプション項目のボー
ナスはそのバイト代よりも遥かに多いので心配はなかった。
朝起きて朝食を摂ったあとすぐにトランス・システムの稼働スイッチを入れ
る。円筒状の機械の中心から煙が吐き出されて多恵子はリナの身体へと変身す
る。連続装用のスタートである。飲食とトイレのときは解除してよいなどの注
意事項をもう一度確認した。
この一週間に多恵子はやりたいと考えていたことがあった。それは人形の製作
である。以前から手の空いた時間に作ってはネットで販売していたが、時間に
追われて自分の満足のいく作品を作れていなかった。この一週間を思う存分、
人形の製作をやろうと決めていたのであった。このために人形の素材やパーツ
も沢山買い込んであった。
「よーし、やるぞぉ!」
多恵子はリナの姿で人形製作に取り掛かった。
それを始めると没頭してしまいあっという間に昼の時間を過ぎていた。多恵子
はトランス・システムを解除して、カップラーメンを流し込み再びリナの姿と
なって続きに取り掛かった。時間はあっという間に過ぎ、制作も順調に進ん
だ。
2日目、3日目も同じように一日が過ぎた。多恵子の部屋には一体、また一体
と人形やぬいぐるみが出来上がっていった。
4日目になるとさすがにずっと家に居続けるのにも疲れてきた。
食料は底を尽きかけているので多恵子は気分転換の散歩も兼ねて外に買い物に
出かけることにした。リナがあまり男性の目をひかないように帽子を深めに被
り、おとなしい目の服装に身を包んだ。近所のスーパーマーケットの客はほと
んどが近所の主婦か老人であった。多恵子はいくつか野菜をかごに入れ、主食
のカップラーメンとお菓子を物色する。
スーパーの若い男性従業員がチラチラと彼女に視線を送っていた。彼女はその
視線に気づきながらも先日のジョギングや水泳のような状況になることはない
と大して気にかけなかった。前に変な気分になってしまったのは胸が揺れた
り、水着が小さすぎたりして男性から熱い視線を集めてしまったのが原因なわ
けで、帽子を目深に被って目立たない格好をしておけば大丈夫だと思ってい
た。
しかし、多恵子の考えは少し甘かったようだった。リナの美しい横顔と上着を
突き上げている大きな胸の膨らみは男性の視線を惹きつけるのに十分であった。
「(やだ・・・見られてる・・・)」
品出しをしているアルバイトや威勢のいい鮮魚コーナーの従業員からもじろじ
ろと熱い視線を感じた。
「(もう・・・男の人ってそんなに大きな胸が気になるものなの?)」
多恵子はブラジャーに包まれた二つの乳房がむずむずと疼き、股間の辺りも熱
を持ち始めているのを感じた。
「(だ、だめっ。早く帰らないと。)」
多恵子はカゴに入っているものを慌ててレジで清算し、この前のプールのよう
なことにならないように急いで店を出た。店を出てからも後ろからあの視線が
注がれているような変な感覚が続いていた。
家に着いたとき胸の疼きは収まるどころかむしろ大きくなっていた。胸は早く
快感を与えられたくて二つの突起を硬直させている。多恵子は玄関の扉を閉め
てその場に荷物を置くと服の下に手を滑り込ませて背中に廻し、ブラジャーの
ホックを外した。
「も、もう、我慢できない!」
多恵子はブラのカップの下に手を入れて柔らかい乳房を両手で揉む。愛撫を待
ち受けていた乳頭にようやく快感を与えられる。
「ああんっ!!き、気持ちいいっ!」
乳首を引っ張ったり抓ったりを繰り返しながら押し寄せる快感の波に身をゆだ
ねる。
「あんっ、ああんっ・・・あっ、いいっ・・・」
片手でスカートの下に滑り込ませ、さらにショーツの中に手を入れる。
「ゃああんっ!」
リナの細い指が小さな肉芽に触れると痺れるような快感が身体を貫く。そして
膝ががくがくとなり玄関の壁にもたれかけた身体がずるずると下がってゆく。
昨日のシャワールームの中と同じだった。しかし、昨日に比べてその快感は一
段と大きく強く感じられる。
「きっ、きもち・・・いいっ・・・だ、ああんっ、も、もうだめええっっ!」
空を仰ぐかのように身体がのけぞり多恵子は絶頂を迎えた。がくんと身体が揺
れて玄関に足を投げたしたままぐったりとなった。