乳神様の洞くつ 8

ブラン 作
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【地下八階】
周囲に立ち込める妖気は濃厚で私でもそれが感じ取れる。感覚の鋭いリンダは
これをもっと前から感じていたに違いない。
最下層はだだっ広くワンフロアになっているようだった。階段を降りてしばら
く進むと広間のような場所に出た。一番遠い所に祭壇のようなものがある。
二人で足音に気をつけながら歩いていく。

祭壇の前には一人の神官が立っていた。

“ここに何の用だ?”

低くおぞましい声が洞窟にこだました。
黒い装束を身にまとい、顔は隠れて見えない。手には大きな水晶のついた杖を
持っている。
この神官が魔物たちのボスなのだろうか?私は少し間合いをとって身構えた。

“我は魔導神官ネルロ。ここまで来たことは褒めてやろう。しかし、貴様らも
ここで終わりだ。”

神官ネルロは手に持っていた杖をこちらに向けた。

“死ねっ!”

杖の先から大きな火の玉が飛び出し、大きさを増しながらこちらに向かって飛
んでくる。やばい!

(ドドドーーーン!!)

目の前が炎に包まれた。ものすごい炎の勢い。これまでの魔物たちとは次元が
違う。
素早く身を引いて盾を構えたが私とリンダはかなりのダメージを負ってしまっ
た。
もう一度食らったら命の保証はない

“ぐははは。焼け死んでしまえ!”

ネルロは杖の先から巨大な火の玉を生み出し、容赦なくこちらへ撃ってくる。

「お願い!女神さま!!!」

私は水流の盾を頭の上にかざした。
すると、それが青白く光ったかと思うと目の前に水のカーテンが出現する。

(バッシャーーン!)

水のカーテンが火の玉を呑み込み消してしまった。
なるほど、こうやって使うのね。
ネルロが続けて大玉を撃ってくる。私はまた盾をかざして水のカーテンで防い
だ。

私はすかさず電撃の剣を振った。
剣先から電撃がほとばしり刃のようになってネルロに襲い掛かる。電撃は見事
に命中し、神官の苦しそうな声がこだまする。

“ぐおおおおっ。人間の分際でこしゃくなまねを!”

ネルロがうずくまった隙をついて私は一気に間合いを詰めた。
魔法タイプは接近戦に弱い。ここで一気に片づける!
ネルロが再び杖を振るより早く、私の剣が敵の体を引き裂いた。

(ズババババーーーッ!!!!!)

“ぐあああああーーーっ”

神官は膝をついてその場に崩れ落ちる。やった!仕留めたわ。

「やったわね!マリア!」

リンダが大喜びで私に駆け寄る。
意外とあっけなかったかも?そう思った瞬間だった。
突然、ネルロの身体が妖しい赤い閃光をあげてまぶしく光った。
な、なに?今の?
祭壇の上には何やら黒っぽい霧のようなものが漂っている。
そしてそれらは次第に集まり実体を現し始める。なんなの?
ネルロの身体が再生している。
しかも、身体は数倍に大きくなり、さっきまでとは比べものにならない闇の
オーラをまとっている。

“グロロロロ・・・人間め。どうやら本当の地獄が見たいらしいな!”

「マリア!気をつけて!」

神官は杖を掲げ巨大な火の玉を生み出した。さっきとは比べ物にならない大き
さだ。

“これでも食らいやがれ!!”

私はすかさず水流の盾をかざした。
巨大な火の玉が水のカーテンにぶつかり物凄い水しぶきを上げた。その爆風を
受け私とリンダは吹き飛ばされダメージを受ける。
なんて威力なの?

ネルロは両手を大きく横に広げた。
すると左右に2体ずつ、4体の魔導士があらわれた。

「仲間を呼んだわ!やつらも火の玉を撃ってくる!」

脇の魔導士たちの火の玉が足元で破裂しまたダメージを受けた。
私は剣を思い切り横一文字に振って電撃を走らせる。電撃は狂った竜のように
蛇行しながら魔導士たちに襲い掛かり、4体とも消し去った。

「よし!」

ネルロはまた両手を大きく横に広げた。
するとどこからともなく、また4体の魔導士があらわれた。

「また呼んだわよ!?」

魔導士たちは身構えると火の玉をこちら目がけて撃ってきた。それをまた水の
カーテンで消し去った。

「くっ、周りの魔導士たちが邪魔で近づけないわ!」

電撃の剣を振るって魔導士たちを片付けてもすぐネルロが新しい仲間を呼んで
しまう。これの繰り返しだった。ネルロが撃ってくる巨大な火の玉の爆風で私
たちの体力はどんどん削られていく。このままではいずれやられてしまう。

「リンダ!これを任せたわ!」

そう言って私は水流の盾を彼女の方に放り投げた。

「ええっ?マリアはどうするの?」

「突っ込むわ!援護して!」

ネルロが仲間を呼び、その魔導士たちが火の玉を撃ち始める。
今度はリンダが盾を頭の上にかざして水のカーテンを作り出す。
火の玉が飲み込まれ、大きな音と蒸気が発せられたそのときだった。
私は大きく飛び上がり敵の目の前に飛び出した。

“なにぃ!!!”

「やあーーーっ!!」

周りの魔導士たちには目もくれず私は神官ネルロに目がけて剣を振り下ろし
た。

(ズバババッッッーーーー!!!!!)

“うぎゃああああああーーーっ”

魔導士ネルロの断末魔が広い洞くつの中で反響した。

「やっつけたの?」

ネルロの身体は崩れ去り砂のように溶けて次第に消えていく。周りの魔導士た
ちも魔力を失い同じように消え去っていった。

「ふぅ、ちょっと手強かったわね。」

私は剣を下し、神官が溶けてなくなっていった地面を見つめた。
リンダが喜びの声を上げて駆け寄り、私に飛びついた。

「さっすがぁ!私が見込んだだけの剣士だわ。」

「ま、当然ね。」

私はリンダに何でもなかったかのように強がって見せたが、正直なところ勝て
たのが不思議なくらいだった。強大な魔力をもつネルロと際限なく出てくる魔
導士たち、飛び込んで一発勝負をかけてなかったら今頃やられていたかもしれ
ない。

「!?」

うっ、くっ、苦しい……胸が……