学校を出て病院へ向かう。歩くだけで胸が揺れ、周囲の視線を浴びている。
なぎさが心配してわたしに付いて来てくれる。今では私のほうがはるかに背が
高く、胸も大きくなってしまっている。
病院は患者で溢れていてなかなか順番が回ってこない。もし次の成長が起き
ちゃったら病院中で大騒ぎになってしまうかもしれない。どきどきしながら
待っているとようやく診察室へと呼ばれた。
わたしは先生に事情を説明すると指輪を切るためのカッターが準備された。
(キュイーーーン、ガガガガガ・・・)
指輪を切断する甲高い金属音が診察室に鳴り響いた。
先生は怪訝な表情を浮かべて指輪を見ている。うまく切れないみたい。
先生はカッターの刃を取り換えてもう一度やってくれたがどうしても切れない
ようだ。
「この指輪は普通の金属じゃないようです。どうやっても切れませんね。」
私は待っていてくれていたなぎさにダメだったことを告げ、がっくりと肩を落
として病院を出た。
そのとき、また指輪が光り始めた。
「また体が大きくなる!!」
(ぐぐぐぐっ・・・・パチンッ!)
LLサイズのブラウスの胸がパンパンに膨らんだかと思うとまたボタンが弾けて
しまった。174センチの身長もまた10センチ以上大きくなり180センチ
台の半ばになった。
「なんだ、あのデカ女。すげぇ乳してるぜ。」
わたしはボタンがはじけたブラウスの前を手で隠しながら道行く人々の視線を
避けるように歩いた。こうなったらあの指輪をもらった公園に行って老婆を探
すしかない。
(急がなきゃ……)
また大きくなった胸はバスケットボールよりも一回り大きいサイズで重さもと
ても重く、両手で下から抱えて立っているのがやっとだった。もし、これ以上
大きくなっちゃったらもう歩けない。
(ぶるるんっ、ぶるるんっ、ぶるるんっ・・・)
歩くだけでもゆさゆさと揺れる胸は軽く走っただけで上下左右に盛大に暴れて
しまう。
なんとか公園に到着し、わたしは老婆の姿を探した。
しかし、見渡しても老婆の姿はなくなぎさと二人で手分けして公園の中と周辺
を捜すことにした。
(早くお婆さんを見つけなきゃ……)
しばらく公園を探して回ったけれど老婆の姿を見つけることはできなかった。
疲れてへとへとになって足を止めたそのとき、また指輪がひかり始めた。
(パチンッ!パチンッ!)
「うっ・・・ぐぐぐぐっ・・・・あーん、もう、誰か何とかして〜!!」
ブラウスの残りのボタンが吹っ飛び、胸が大きく前にせり出していく。
泣き叫んで助けを求めたけれど公園にむなしく響くだけだった。身長もぐんと
また大きくなり2メートルほどになっている。わたしはバランスボールよりも
巨大になった胸の重さに耐えきれずにその場にへたり込んでしまった。
「あれまあ、指輪が外せなくなっちまったのかい?」
あの老婆だった。顔を上げると目の前に老婆が立っていた。
「お願いします!これ、外してください!」
「外せんこともないが・・・いいのかい?」
わたしはこくんと頷くと老婆は小声で呪文のような言葉を唱え始めた。
その言葉に反応して指輪が光を放ち始めた。光はだんだんと強くなりやがて目
がくらむほどのまばゆい光になった。まぶしさで目を開けていられなくなり私
は目をつぶった。
しばらくして目をあけると私の指から指輪が消え去っていた。
あの老婆の姿も消えていた。指輪に締め付けられていた指がじんじんと痛かっ
た。
「とにかく助かったわ。」
なぎさが私の姿を見つけて駆け寄ってきた。わたしが大丈夫そうなのを見て安
心しているようだ。
なぎさが近づいてくるとさっきよりも彼女がずっと大きく見えた。
「あれ?わたし、元に戻ってる??」
LLサイズのブラウスはだぶだぶになって、はだけたブラウスの隙間から平らな
胸が見えていた。いままで通りのAAカップの胸だった。
身長も元に戻っていて、なぎさの顔を見上げないといけなかった。
元の姿に戻れてわたしはホッと安心した。もう指輪はこりごりだわ。
わたしはつるペタの胸元を見下ろした。もし途中で指輪を外していたら?
……なんてことは考えないことにしよう。
END