千々山村役場 地域振興課

ブラン 作
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千々山村という名前が示す通り、この村は幾重にも連なる高い山々に囲まれて
いる。人口は約2,400人。過疎化によりゆっくりと着実な減少を続けてい
る。気候は比較的温暖で、人々はわずかな平地に集落をつくりなだらかな傾斜
地に畑を開墾して生活を営んできた。肥えた土壌のおかげで作物はよく育ち、
高い山々に守られていることにより太古の昔からこの村は凶作に見舞われたこ
とがないと言われている。山には良質の木材となる杉や檜が育ち、豊富な森林
資源を町へと供給するため江戸の頃には筏で運ばれていたが、明治から大正の
時代に鉄道が曳かれ大勢の人々で賑わったという。それも遠い昔の話で、海外
から安い木材が輸入され始めると次第に千々山の林業は衰退し、人々は職を求
めて都市へと移り住むようになった。
今ではその鉄道は第三セクターが運営するしがないローカル線として細々と村
人の足の役目をし、村人と少数の旅行者を除いてはほとんど利用する者もいな
い。
なぜその鉄道が潰れずに今でも使われているかと言えば他に有効な交通手段が
ないからである。車で千々山村を訪れようとすれば細く長い山道を幾時間も運
転せねばならず、鉄道よりもはるかに時間がかかってしまうのだ。

このようなしがない山村の村役場に就職した俺を大学の同級生はどうかしてい
ると批判を浴びせる。確かに選択肢はほかにいくらでもあったし、実際にいく
つかの内定ももらっていたが、やはり子供の頃から住み慣れた村で働きたいと
いう思いが大きかった。千々山村生まれの人間によくあることだが、都会のせ
わしさについていけずについ大自然に囲まれた生まれ育った環境に戻って来た
くなるのだ。
当然、こんな寒村に働きの口があるとは考えてなかったが、村役場が求人を出
しており、たまたま受けた公務員試験に受かったことで俺は晴れて村へと戻る
ことができたのだった。

さて、もう少しこの千々山村についての話をしよう。
周囲を峻険な山々で囲まれた寂しい山村に何があるのだと思われるだろうが、
意外にも自慢できるポイントがいくつかある。
まず、“水”である。天下の名水と謳われたこともある千々山湧水の水は深い
山々によって育まれたものである。ここの水を一口飲めば都会の水など飲むに
値しないものだということがわかってしまう。そして、“温泉”だ。全国的な
知名度は低いがかつての江戸時代の大名が愛したと言われ、秘境的な雰囲気が
よいと一部のマニアには知られている千々山温泉がある。美人の湯としても名
高く、湯は乳白色に濁り、もちろん源泉かけ流しであることは言うまでもな
い。温泉が湧く渓谷には申し訳程度の温泉街があり、古き良き日本旅館が軒を
連ねている。ここで働くのはほとんどが地元民であり、千々山の人たちにとっ
ては重要な働き口にもなっている。
そして“食”である。豊かな自然が生み出す山菜やマツタケ、舞茸を始めとす
るキノコ類といった山の幸、清流に住む鮎やヤマメ、鱒といった川の幸も魅力
的だが、地域の特産物となっている地鶏や大豆を加工した豆腐や湯葉などの食
品も都会のものとは比べ物にならないほど滋味に溢れて美味いのである。
その他に何か特徴がないかと問われると、“千々山の女性はとても胸が大き
い”ということだろう。世間一般の人から比べて大きいというだけでなく、例
えばテレビに出ているグラビアアイドルのような胸を売りにする商売の人たち
よりもはるかに大きいのである。
この話を人にすると、皆そんな馬鹿な、担いでいるのだろうという顔をされる
のだがまったくもっての事実なのである。母親も姉も近所のおばさんも親戚の
お姉さんも皆、胸にドッジボールかバスケットボールが入っているのじゃない
かというくらい大きな乳房をお持ちなのである。
そのため、千々山は“ちぢやま”と濁って発音するのが正しいのだけど、外の
人たちは“ちちやま”と呼んでおり、それが普通のようになっている。きちん
と“ちぢやま”と言うのはこの村の人たちだけである。
千々山の女の子は小学校の高学年ごろからバストがすくすくと成長を始め、中
学生に上がる頃にはほとんどが成人女性と見まがうほどの立派な胸に成長す
る。のびのびとした環境で栄養豊富に育つからなのかもしれないが中学で一般
的に“巨乳”と称してよいほどの大きさに到達することがほとんどである。高
校に入る頃には一般的に“爆乳”と呼ばれるほどの大きさに成長しており、卒
業する頃には既成の下着では収まらず、特注で作ったブラを着用するほどの大
きさに成長しているのである。そして、不思議なことに高校を卒業し、二十歳
を過ぎてもなぜか千々山村の女性は毎年少しずつ胸のサイズを増していくので
ある。
このように、もし巨乳好きの男なら、彼にとってはまさに天国のような村なの
であるが、俺たち村の男にとっては至極当たり前なのことであり、母親や祖
母、親戚の叔母や従姉妹に始まり、村に住む全ての女性がこのような巨乳なの
で特別不思議とは思わない。このような村に生まれたせいで、俺たち村の男は
巨乳には全くと言っていいほどに性的な魅力を感じない。どちらかといえば大
きすぎる胸よりも未発達なくらいの小振りな胸の方が良いと感じる者が多い。

俺には二つ年上の姉がいる。彼女も5年生の夏ごろから胸が膨らみ始め、中学
に上がったときに母親が買い与えたブラはEカップだったが、毎年2サイズの
ペースで大きくなり高校入学時にはIカップ、卒業するときにはMカップまで大
きくなったと記憶している。ただし、同級生と比べれば自分は小さい方だとも
言っていた。
高校を卒業してからは成長のペースは落ちたものの、25歳の今でもまだ少し
ずつ大きくなっているのだという。現在のサイズは把握していないがブラ
ジャーは特注サイズであることは間違いない。

なぜ千々山村の女性の胸は大きいのか、と過去にどこかの大学で研究がなされ
たことがあるそうだ。結論ははっきりしないのだが、一つに気候が比較的温暖
で安定しており、作物がよく獲れること、そのためせわしく働かずともよく基
本的にのんびりとした性格の人が多いこと。村の自慢である温泉の成分に原因
があるという研究結果もあり、元々、名水として名高い千々山の水にミネラル
分豊富な温泉成分が加わり、美肌効果だけでなく豊乳効果もあるのだとも言わ
れている。またある人は千々山で獲れる大豆にはイソフラボンが豊富に含ま
れ、豆乳や豆腐、湯葉などの大豆製品を摂るからだと言い、その大豆かすを食
べて育った地鶏にはさらなる豊乳効果があるのだと言う人もいる。諸説を数え
上げればもっとたくさんあるのだが、いずれにしてもこれという結論は出てい
ない。

さて、胸の話はこれくらいにして俺自身の話をしよう。
俺こと、中山昇一は大学を卒業し、千々山村の役場に就職した。そして配属さ
れたのが“地域振興課”である。山歩きや旅行が趣味。カメラも得意。とこれ
といったアピールポイントでもないが、それをかわれてこの課への配属される
ことになったらしい。
地域振興課といえば聞こえが良いが、課長と俺の二人だけの課であり、しかも
その課長も定年間近ときている。ここで何をすればいいのかと聞けば、千々山
村の人口減少を食い止めるため何か企画を考えろというのだ。
村の人口は右肩下がりであるから税収も同様に右肩下がり、そのため使える予
算は雀の涙ほどしかないのである。若者なら得意のSNSか何かを使って費用
をかけずに村おこしをやれということなのだろう。
やれやれ。とはいっても自分の故郷である千々山村の人口が減少の一途をたど
ればいずれは廃村や他の市町村との合併も考えられる。少しでもそれを食い止
めるためにひと肌脱いでやろうではないかと、俺なりにモチベーションはそこ
そこ沸いている。

「はあ〜あ、退屈だなぁ。ねえ、何か面白いことないの?中山くん。」

退屈しのぎに話しかけてきたのは観光課の仁科ふみえさんだ。
俺の6つ年上の先輩にあたるが、おっとり系のなかなかの美人である。机を一
つ挟んで向かい合わせに座っており、いつも机に特大のおっぱいを載せている
のが視界に入る。彼女も千々山育ちであり当然のことながら巨大なバストをお
持ちである。
三十路にもう少しで手が届くところであるが、村では珍しい独身でありいつも
冗談のように役場のおじさんたちから自分の嫁になってくれとちょっかいを出
されている。事実、童顔なのが手伝ってかもうすぐ三十とは見えず、なかなか
の美人とあって役場の男性人気ナンバーワンとなっている。
俺は上司から村を盛り上げる企画を考えろと言われて頭を絞っているところで
あったが、仁科さんに考えを乱されてしまった。

「ないですよ。それよりも邪魔しないでください。」

冷たく言い放ったが、彼女にはこれくらいがちょうどいいのだ。ふくれっ面を
して俺の方に消しゴムのカスや紙くずを飛ばしてくる。ったく、見た目も若い
が頭の中も相応に若いのだろう。彼女がゴミを投げると胸がぶるんと揺れ、机
に乗った大きな膨らみがふにゅっと形を変える。

(相変わらずデカいおっぱいだな。うちの姉さんよりも遥かにデカい。村でも
かなり大きい方だろうな、仁科さんは。)

「こらっ、無視するな。」

白いブラウスのボタンを今にも弾けそうにさせながら、仁科ふみえは俺をにら
みつけていた。

(おっぱい、おっぱい・・・か・・・そうだ!!)

ふみえさんの揺れるバストのお陰で俺に神の啓示のような素晴らしいアイデア
が降りてきたのだ。
そう、おっぱい、おっぱいだ。おっぱいで村おこしだ。