千々山村役場 地域振興課

ブラン(物語)・冷暖坊(挿し絵) 作
Copyright 2018 by Buran (story)
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この第二弾のポスターも反響を呼んだ。
神秘的な千々山湧水をバックに天女のような美しい女性、そしてその女性のあ
りえないほどの爆乳。
役場には再び問い合わせが殺到し、また仁科さんが対応に追われることになっ
た。
旅行会社が千々山温泉への宿泊ツアーを検討するため視察に来たいという申し
入れがあり、いくつかの雑誌社から仁科さんや三枝さんをインタビューをした
いというオファーもあった。
当然の展開になるが、俺にはまた新たなPR手段を考えるようにとの指令が言
い渡された。予算はさらに増え、ポスター以外の企画でも何でもいいというこ
とだった。
廃線寸前と噂されていた千々山鉄道の乗客数が1.5倍に増えたと聞いて俺は
広告の力のすごさを知った。そして、千々山鉄道自体を盛り上げるための企画
を何か考えたいと思い始めたのだった。

俺は休日を使って改めて千々山鉄道に乗ってみた。高校時代に通学で使い慣れ
た鉄道はとても懐かしく感じたが、車体も駅舎も何から何まで老朽化という言
葉以外では形容できないほど古びていた。こういう古い感じがいいと言う人も
いるらしいが、レトロ調というのも気が引けるほどなので少しは金をかけるべ
きだと素人ながらに思ってしまう。
千々山鉄道は明治の終わりから大正にかけて敷設されたとても歴史ある鉄道
で、昔は小型の蒸気機関車が山積みにした木材を町へと運ぶ役目を担ってい
た。その後はディーゼル機関車に役目を引き継いだが木材を運ぶことはなくな
り、今では一両のみのディーゼル車がわずかな人々を運んでいる。
次第に廃線の危機がささやかれるようになり、村ではそれを何とかしようと数
年前から千々山鉄道のPRを行っていた。駅舎はどこも年代物で、特に千々山
駅の駅舎は重要文化財にも指定された趣のある建物である。この駅舎だけは文
化財であることからメンテナンスも行き届いており、一目見る価値はある。村
の外の人なら、急峻な山々の合間を縫い断崖を削って作られた線路を抜けて
千々山駅につくと何か別世界に来たような非日常的な感覚に包まれるそうであ
る。
アピールが上手くいかず、一部の鉄道マニアが訪れるようになったものの乗客
数は大して増えず、ブームに乗って猫を駅長にしたもののそれを目当てに千々
山を訪れたという人はまず聞かない。
三毛猫の“チヂ”はもちろん、千々山から名前がつけられたとても可愛らしい
オスの猫である。ただ、いくら可愛いといっても世の中にはこのような可愛い
ペットはごまんといる。村民たちのアイドルにはなっているが、外から人を引
き付けるとまではいかないのだ。

俺は千々山鉄道をPRするための手段として、三毛猫のチヂをもう一度売り出
そうと考えた。ただし、前と同じことをやっても結果は同じになってしま
う。
そこで考えたのはチヂに美人秘書をつけ、秘書とセットで売り出すのだ。もち
ろん秘書には千々山名物の爆乳を採用する。
早速、このアイデアを仁科さんへ相談してみた。

「秘書?誰がやるの?私は絶対無理だからね。」

仁科さんは最近観光課の仕事が忙しく、夜も残業することも多い。役場では人
の補充も考えているそうだがすぐにやってくるわけではない。正直なところ外
見的にも仁科さんがぴったりだと考えていたのだが今の仕事を放り出して秘書
をさせるわけにはいかなかった。

「この前の三枝ひかりさんは?彼女ならぴったりじゃないの?」

「三枝さんも仕事があるからね。」

仁科さんよりも背は低めでぽっちゃり気味の秘書となるが、三枝さんでも異論
はない。しかし、普段は彼女も温泉宿のスタッフとして働いている。休みは不
定休だし、引き受けてくれるとは考えにくい。

「じゃあ、募集しちゃえば?アルバイトを雇うくらいの予算はあるでしょ?」

募集するというアイデアは俺にはなかった。
この過疎の村で時間に余裕がある若い女性がそういるとは考えにくいが、イベ
ント会社からモデルを派遣してもらうほどの潤沢な予算はないわけだし、ダメ
元で募集をかけるくらいはかけてみようという気になった。

『三毛猫チヂの“秘書”募集』
・千々山村在住の心身ともに健康で猫が好きな女性
 ・年齢は二十歳以上、三十歳くらいまで
 ・未婚、既婚は問わない
 ・年間を通じて、千々山駅に勤務が可能なこと 

俺は村内の公共施設や自治会の掲示板にこういう張り紙を出した。
こういうイベントには消極的な千々山村の人々であるが、千々山鉄道の存続を
かけたPRであること、すでに仁科さんや三枝さんがポスターのモデルとして
活躍し村の観光や経済によい影響が出てきていることが話題になっているので
意外に募集が来るのではないかと淡い期待を持つようになった。

募集をかけて数週間が経ったが、申し込んだのはたったの一人だけだった。

「募集、なかなか集まりませんね。」

「一人だけでも先に面接しちゃえば?」

「そうですね……。本来なら大勢の中から選びたかったんですけどね。」

申し込んできたのは実家のキャベツ農家の手伝いをしている匹田さんという
27歳の女性だった。写真も何もないのでとにかく会ってみるしかない。

「匹田かなこ?」

応募用紙を見ていた仁科さんが思い出したかのように言った。

「あれ?かなちゃんだ、これ。」

「えっ、仁科さんの知り合いなんですか?」

「ええ、学区が一緒だったから。私より2つ下で、子供の頃、よく遊んだも
ん。」

狭い村社会ではよくこういうことが起こる。

「どんな人なんです??」

「まぁ、会ってみなさいよ。かわいい子よ。」

*

女性からかわいい子を紹介すると言われて実際に会ってみるとかわいかった試
しがないとよく言われる。しかし、匹田さんはその例外だったと言わなくては
ならない。
役場の応接室の扉を開けて入ってきた彼女は一目見て“美人”と言って差支え
のない女性であった。仁科さんをクール系の美人だとすれば、匹田さんはス
イーツ系と言えばよいのだろうか、瞳が大きくて愛くるしい顔をしている。
長身で応募用紙によれば171センチと仁科さんよりも背が高い。背中まであ
る黒い髪を後ろで一つに束ねている。
今日は面接ということでスーツ姿で来てくれたのだが、これに眼鏡をかけても
らったら完璧に俺の秘書のイメージ通りになる。そして……。

(で、でかい……)

俺はそれとなく胸元を値踏みしながらも手で合図して彼女に椅子に腰かけるよ
うに促した。

「どうぞ」

(三枝さんを超える爆乳じゃないか……)

思ってもなかった収穫に普段は冷静な俺も声が上ずってしまう

「ちょっと部屋が暑くてすみません。。何しろ冷房は28℃と決められてい
て。よかったら上着を脱いでください。」

冬は温暖で夏は涼しいと言われる千々山村で今日は珍しく気温が高い。彼女は
少し急いでやってきたようでうっすらと額に汗がにじんでいた。

「はい。じゃあ、失礼します。」

スーツのボタンを外し、スルリと上着を脱いだ。黒いスーツの下からは白いブ
ラウスに包まれた巨大な膨らみが現れた。

(ばるるんっ……)

その膨らみは中に大きなスイカが二つ入っているんじゃないかというくらいの
大きさで、ブラウスのボタンが今にも弾けそうなほどパツンパツンに膨らんで
いる。

(よく、スーツのボタンが止めれてたな。)

胸に比例して肉付きも豊かなのかと思えば、腰はキュッと締まっており、手足
は細くてスラリと長い。ヒップは大きすぎず小さすぎずでベストなバランスと
言える。
彼女は俺が指した椅子に腰かけると同時に大きな胸が重そうにユサッと揺れ
た。

「匹田さんは実家の農家の手伝いをされているということですが。」

「はい。昔は普通の会社でOLをしていたのですけどついていけなくて3年ほ
ど前に辞めてしまったのです。それからはずっと実家の手伝いをしていま
す。」

(そうか、OLさんだったのか。どおりでスーツの着こなしがきちんとしてい
る。)

千々山村出身の人間には都会の生活になじめず帰ってくるケースは珍しくな
い。そして、そういう人間を温かく迎える土壌もこの村にはある。

「お家ではキャベツを作っておられる。」

「千々山高原キャベツ。ご存知ですか?」

「はい。」

正直なところ知らなかったが、役場の地域振興課の人間が知らないとは言いに
くかった。

「農業の繁忙期はお休みさせていただくかもしれないです。それを除けば、
だいたい一年中働けると思います。」

「ええ、もちろんそれは構いません。」

容姿は申し分なく、受け答えも問題ない。そしてなによりも三枝さんをも凌ぐ
巨大な“おっぱい”だ。本当は即採用と言いたかったが、ルール上、面接の結
果は後日お知らせしますと言った。

(コン、コン)

応接室のノックする音が聞こえたかと思うとこちらが返事をする前に仁科ふみ
えが入ってきた。

「面接はどうだった?」

「ふみちゃん??」

「久しぶり〜!!」

「ほんとだね〜!!」

仁科さんは彼女が村に戻ってきていることを知らず、6年振りの再開となった
らしい。
応接室はしばし二人の幼馴染の歓談タイムとなってしまったのだった。

「しばらく見ないうちにまた大きくなったよね。」

仁科さんは匹田さんの胸元を指して言った。

「ふみちゃんこそ」

「かなちゃんには遠く及ばないわよ。高二で追い抜かれてから差は開く一方だ
もの。」

二人が並ぶと身長はもとより、胸も匹田さんが圧倒しており、相当な爆乳なは
ずの仁科さんの胸が小さく見えてしまうのだから不思議だ。匹田さんによると
仁科さんは美人で胸が大きいことで有名で女子たちの憧れだったそうだ。しか
し、匹田さんも中学で仁科さんに肩を並べるほどに成長し、卒業時には二歳上
の仁科さんよりも大きくなっていたらしい。

「私、ふみえ姉ちゃんみたいな胸になるんだと思って育乳してたからここまで
大きくなったのよ。」

「いまいくつあるの?」

「136センチのWよ。」

「うわぁ、10センチ以上も差をつけられちゃったか。」

俺がいる前で俺に構わず二人はおっぱい談義を続けている。お互いの胸をつつ
いたり、持ち上げたりは親しい間柄ではごく自然な振る舞いである。
翌日、俺は募集を打ち切り、匹田かなこに採用通知を送った。おそらく彼女以
上の人材はいくら待っても見つからないだろうと思ったからだ。

さて、秘書が決まったところで早速、千々山鉄道のPR用のポスターの撮影に
入ることにした。衣装は匹田さんの自前のスーツにした。面接のときの姿があ
まりにも決まっていたからだ。中にはこちらで準備した上品なフリルが付いた
白いブラウスを着てもらう。このいでたちに秘書っぽい黒ぶちの眼鏡をかけて
もらい、髪は束ねずにロングにしてもらった。ストッキングは濃い目である。

(完璧だな)

千々山駅の駅舎をバックに匹田さんには駅長ネコのチヂを抱いてもらう。

(スルリ……)

彼女が抱き上げようとするとチヂは体を捩じらせて逃げ出してしまった。普段
はおとなしい猫なのだがきっと急に大勢の知らない人に囲まれたので気が立っ
ているようだ。これで駅長ネコが勤まるのかと不安になったが、まずは撮影を
終わらせることを考えないといけなかった。
仁科さんがスルメで気を引いてチヂを捕まえ、そして匹田さんへと渡した。

(むにゅん……)

匹田さんはチヂを胸に抱き、少し頭を傾けてニッコリとほほ笑んだ。巨大なバ
ストが白いブラウスにぴっちりと収まってボタンが飛びそうになっているとこ
ろに、チヂの体が柔らな胸にめり込んでいる。

(にゃぁ……)

チヂは思いのほか胸の居心地がいいらしく、その後は全く暴れる様子はなく匹
田さんに抱かれたままになっていた。



このポスターは千々山鉄道の各駅に張られる他、近隣の市や町にも配布され
た。そして、インターネットでもダウンロードできるようにした。
役場の観光課と千々山鉄道には問い合わせが殺到した。駅長ねこが秘書の爆乳
に埋もれて幸せそうにしている姿を間近に見てみたいのだという。
千々山鉄道は千々山駅を訪れる人々のために往復割引きっぷを売り出すことを
決めたそうである。