千々山村役場 地域振興課

ブラン 作
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千々山鉄道は次々に観光客を村へと運んできた。土日には便が増便され、三毛
猫のチヂと秘書の匹田さんは大人気になっている。匹田さんの爆乳に埋もれる
千々の写真がインターネット上に拡散して人が人を呼ぶ騒ぎとなっているのだ。
客数アップで笑いが止まらないのは千々山鉄道だけではなく、温泉街の旅館は
軒並み予約で一杯となり村特産の焼酎や木材を加工した工芸品なども飛ぶよう
に売れた。村はにわかの好景気に見舞われていた。中でも千々山湧水の水を
ペットボトルに詰めて“千々山の天然水”と売り出したところ豊胸効果がある
と噂になってインターネットの注文が相次ぎ、生産が間に合わないとの事態に
陥ったそうだ。
このように観光客で賑わうようになった千々山村だが、一過性のブームで終わ
らないようにするのが俺の役目となった。次に俺に与えられたのは村の産業を
継続的に活性化するための活動をしろという指示だった。
千々山がアピールできるものはこの機会に全国的な知名度を獲得してしまい、
リピーターを獲得し、ブランド化すれば継続的な活性化に繋がるというもの
だ。
既に名産の大豆を用いた豆腐や湯葉、豆乳などの加工品、それから、肥沃な土
地で育った地鶏、千々山高原キャベツ。それから、焼酎や木工品などはTVや
雑誌に取り上げられ高い評価を受けていた。
これ以上千々山にPRできるようなものはあるのだろうか?考えあぐねた俺は
ひとまず村民のオアシスであるショッピングセンター“かしの”に行ってみる
ことにした。

かしのは郊外型の大型ショッピングセンターとは比べ物にならない小さな規模
の店舗である。しかし、人口たった4200人の村にしてはそこそこ品ぞろえ
も豊かであり、食料品、日用雑貨、衣料品など一通りのものが揃う。
小さい頃から買い物に行くといえば“かしの”であったが、今まで村の特産品
という目で店の中を見渡したことはなかった。
俺はふとこの間の同窓会で望月さんが“かしの”で働いていると言っていたの
を思い出した。早速、連絡を取って彼女と一緒に店内を見せてもらうことにし
たのだった。

ショッピングセンターのとてつもなく広い駐車場に車を止め、時間に合わせて
店の前まで行くと約束していた望月さんともう一人、初老の男が俺を出迎えて
くれた。

「中山さんですね?ようこそいらっしゃいませ。」

男が差し出した名刺を見ると果たして“かしの”のオーナーだということがわ
かった。幼い頃から通っていた店のオーナーから頭を下げられるなんて少し変
な感じだ。店側からすればタダで店をPRしてくれて売上げが上がる話なのだ
から、このような丁重な出迎えをしてくれるのだろう。一通り挨拶を済ませた
後、俺は今日の目的を簡単に告げ、望月さんが同級生であることも伝えた。

「ええ、望月からも聞いています。どうぞごゆっくりなさってください。」

男はそう言うと頭を何度も下げながら店の奥へと入っていった。残された望月
さんは俺にニコッと笑顔を振りまいた。

「中山さま、本日はどのようなものをお求めでしょうか?」

「ちょっと、モッチーまでその感じ、やめてくれよな。」

「はははっ、ショウくんが真面目に仕事してる姿初めてみるんだもん。ちょっ
とからかいたくなっちゃって。」

ショッピングセンターかしのの制服はイメージカラーであるオレンジ色のエプ
ロンであるが、望月ゆうかも店員と同じものをつけている。男子からはモッ
チー、女子からはゆうと呼ばれる彼女は何かとよく気の回るしっかりものであ
る。記憶力がよく、勉強では数学がよくできたのを覚えている。
三枝ひかりの131センチや仁科ふみえの125センチには遠く及ばないもの
の彼女もなかなか立派なバストをお持ちであった。巨乳揃いの千々山村女性の
中で平均よりは上になるだろう。豊かな胸がオレンジ色のエプロンを大きく前
に張り出させていた。

食料品のコーナーに行くと、まず新鮮な野菜たちが几帳面に並べられているの
が目に入る。ほとんどが村で採れた野菜で、外から持ってきたトマトやアボカ
ドなどの野菜やリンゴやさくらんぼなどのフルーツになると少し値段が張るよ
うだ。棚には丸々と大きなキャベツが山積みになっていた。そう言えば、匹田
さんの実家はキャベツ農家で高原キャベツというのを作っていると言っていた
のを思い出した。

「大きいでしょう?丸々と大きい高原キャベツも千々山の特産品かもしれない
わね。子供の頃、“キャベツを食べると胸が大きくなる”って噂があって、学
校帰りに農家の人にキャベツを分けてもらって皆でむしゃむしゃ食べてたこと
があるわ。千々山のはとくに甘味があって美味しいのよね。」

「それでモッチーもそんなに大きく?」

「やだぁ、そんなの迷信に決まってるじゃない。それに、私のは普通よ、
ふ・つ・う。」

望月さんは迷信だというが、あの匹田さんの家がキャベツ農家だと聞いている
からあながち根も葉もない噂ではないのかもしれないと思えてしまう。
高原キャベツは既にTVで取り上げられたらしく、何とかの番組で紹介されま
したとポップが立てられていた。キャベツ農家も大忙しのようで、俺は匹田さ
んが秘書の仕事を休んでしまうんじゃないかと毎日ひやひやしているくらい
だ。
魚コーナーにはさすがに海の魚は少なく、マグロやイカなどは基本、冷凍物で
ある。それに対して川魚はアユやマスなど豊富でウナギや川エビ、カニなんて
のもある。この辺のラインナップは子供の頃から全く変わっていない。ウナギ
はもちろん天然ものだ。しかし、捕れる量は少ないので敢えてPRするほどで
はないだろう。
食肉に目を向けると、やはり名産の地鶏の取り扱いが多い。その次に豚、牛と
なる。鹿や猪の肉が並ぶときもあるがこれも流通に乗せるほどの量はない。

俺は一階を後にして、二階へと進む。
かしのは二階建ての建物で二階は主に衣料品や寝具などの日用品を置いてい
る。望月さんの説明を聞きながらもどこでもあるような日用品売り場であり取
り立てるほどのものは無さそうであった。衣料品も子供の頃は母親がここで
買ってくるが、中高生になると町の方で買ってくるようになりあまり利用しな
くなったのを覚えている。女性向けの方が多く、肌着や下着も置かれている。
ふと目に入ってしまったのが女性の下着だった。何でも千々山女性の胸を支え
るブラジャーは巨大で遠目に見てもそれと分かってしまう。

「男の人はあまりここに来ないでしょうけど・・・女の子はブラのサイズを合
わせによく来店するのよ。かしのには“ボニータ”っていう独自ブランドが
あって、千々山の女性にも合うサイズを提供しているのよ。」

女性のブラジャーなどますます俺の守備範囲外となってしまうのだが、独自ブ
ランドまであると聞いて少し関心を持った。

「ふーん、失礼だけど、こんな小さな村の女性相手で商売として成り立ってい
るのがすごいね。」

「ええ、男の子には分からないでしょうけど、千々山の女の子は“ボニータ”
を着けるのが憧れなのよね。私だってここで作ってもらったときはすっごく嬉
しかったもの。」

「そうなんだ。」

俺のそっけない返事とは反対に、なぜか望月さんのスイッチが入ってしまった
ようだった。

「そうそう!元々はね、かしのの二代目が西洋から入ってきたブラジャーとい
うものを仕入れたんだけど、千々山の女性にはサイズが小さくて全く売れな
かったのよね。女性たちから大きいサイズを仕入れて欲しいと要望があって、
いろいろと探し回ったらしいの。で、見つけたらしいんだけど特注の輸入品で
一般庶民が買えるような値段じゃなかった。二代目はそれを一つだけ購入し
て、村で縫製をやってる小さな工場に同じものを作らせた。それがボニータの
始まりなの。」

望月さんは続けた。

「最初はいわゆるフルオーダーっていう方式。つまり、女性のバストを直接採
寸して型紙を起こして一つずつ作っていたの。でも、これだと時間がかかるし
値段が高くなりすぎる。そこでいくつかの型紙を用意しておいて一番近い形を
選ぶセミオーダーの方式に切り替えたわけなの。一般的にブラジャーって普通
のお店にはせいぜいHかIカップくらいまでしか置いていない。Kカップとな
るともう絶望的なのよ。ボニータはKカップ以上のサイズに的を絞ってセミ
オーダーで作るというコンセプトで村の女性に受け入れられてきたのよ。」

俺はさりげなく望月さんの膨らんだ胸元に目線をやった。彼女がつけているの
もそのボニータに違いない。その視線に気づいたのか彼女はさらに続けた。

「私の場合、高校2年の時にここでボニータを作ってもらったわ。市販のJ
カップがどうしても入らなくなって、ブラと格闘してたらお母さんが作りま
しょうって言ってくれたの。採寸したらKカップだったけど、お店の人はすぐ
にきつくなりそうだからと言ってLカップの方がいいと言ったわ。ボニータに
はバッドを入れることができて、ブラに余裕があるときはそれで調整すること
ができるのよ。
初めてボニータを着けたときにその着け心地の虜になってしまったわ。確かに
もっと安い外国製なんかもあるんだけどアンダーが合わなかったり、ワイヤー
が硬くて痛かったりするし、ホールド性がいまいちだったりするの。ボニータ
を着けると胸が軽くなったような感じがして肩こりもしなくなったのよ。ボ
ニータは千々山女性のために考えられたブラジャー、だから私たちにとっては
特別な存在なの。」

望月さんのボニータ愛を聞きながら、そんなに優れているんなら外にも売れる
んじゃないか?と俺は言った。

「実はね。ボニータは知る人ぞ知るブランドなのよ。そんなに多くないけれど
全国にファンがいて、わざわざ千々山までやってきてブラを作る人もいるくら
いなのよ。」

全国にKカップ以上の女性がどれだけいるのかはわからないが、いわゆるニッ
チな市場でブランドを確立できるかもしれない。

「モッチー、ボニータを全国にPRするってどうだろう?さすがに着け心地の
ことは俺にはわからないけど、そんなにイイものならもっと認知されてもいい
と思うんだ。」

「面白そうね。ボニータを着けたときの感動をたくさんの人に味わってもらい
たいわ。」



俺は役所に戻ってから仁科さんにその話をした。彼女ももちろんボニータのこ
とはよく知っていた。

「いいところに目を付けたわね。確かにボニータはどこに出しても恥ずかしく
ない逸品だわ。でも・・・」

「なんか問題あります?」

「急に注文が増えて、納品まで半年待ち・・・とかはやめてほしいな。」

「それもそうですね。確か、小さな工場で作ってるって聞いたから生産が追い
付かなくなる可能性はありますね。」

「成長期のときってすぐにサイズが上がっちゃうから、出来上がりを待ってる
うちに合わなくなった・・・なんてのは最悪よね。」

元々、千々山の女性のために作られたボニータが買えなくなったら元も子もな
いし、俺の村での立場も危うくなってしまう。俺はまた望月さんにお願いし
て、縫製工場を訪問してその辺りのことを確認することにした。

俺と望月さんが訪れたのは山間にある千々山縫製所という工場だった。
工場の名前は聞いたことはあったが見るのは初めてだった。建物は古めかしい
が思っていたよりも大きく歴史を感じさせる。大昔に養蚕をやっていた頃があ
りその頃はとても景気が良かったらしい。
社長に出迎えられ早速、工場内を見せてもらった。
大きな建屋の割に人は少なく機会も大半は動いていない。お世辞にもあまり活
気あるとは言えなかった。
工場の一角にボニータを作っているラインがあった。そこだけは割合人が集
まっていて、せわしなく女性が働いていた。ボニータのライン以外はシャツや
パンツを仕立てているようだった。
望月さんは少し興奮した面持ちで社長の跡を歩いていた。

「私も工場の中を見せてもらうのは初めてなの!」

まず、巨大なブラジャーのカップ部分が目につく。サイズごとに裁断された
カップ部が順番に並べられており、同じカップサイズでも胸の形によっていく
つかの型紙が用意されているということだった。カップ部には胸をホールドす
るためのワイヤーが通される。サイズが大きくなればなるほど胸を支えるため
のワイヤーも太く、強くする必要がある。ただし、太くすればしなやかに曲が
らなくなり胸に痛みを感じる原因になるそうだ。そこで、ボニータには細くて
も強度があってしなやかな材質を特別に選んで使用しているということだっ
た。
ベルト、ストラップなどもきちんと整理されて並べられていた。カップの脇か
らバストが横に逃げるのを防ぐための工夫がベルトにはなされていて、詳しい
方法は企業秘密だということだったが、ボーンと呼ばれる部分の材質を工夫し
ているとこうことだった。
これらのパーツをベテランの工員が器用にミシンで縫い合わせていたが、その
手際の良さにも望月さんはいたく感動しているようであった。

「すごいっ!ますまずボニータのファンになっちゃうわ!」

社長の話によると、ボニータは常に一定量の注文があるのでこのお陰で工場が
やっていけている。それ以外の衣類の仕事はほとんど儲けがなく、工場を動か
し、人を確保するために続けているということだった。
もし、ボニータを全国的にPRして注文が沢山舞いこんでも対応はできるか?
と聞いたらそれは大歓迎でぜひともお願いしたいと逆にプレッシャーをかけら
れる始末だった。



ボニータのPR方法については既に考えてあった。ボニータを着けて写真を撮
り、それをホームベージの千々山の特産品のコーナーに載せる。それだけで大
きな反響がくるはずだ。
問題は下着モデルを誰にするか?というところだけだったが、もちろん俺は彼
女しかないだろうと考えていた。

「というわけでさ、モッチー。PRのためのモデルをやってほしい。」

それまでにこやかにしていた望月さんの表情が急にこわばった。

「い、いやよ!私がモデルだなんて絶対無理!!仁科さんとかさえちゃんとか
がいるじゃない??それから秘書の匹田さん。みんな美人だし、その方がいい
よ!」

焦っている望月さんが可愛く思えてしまう。彼女だって容姿は全然悪くない
し、むしろ俺は適任だと考えている。

「その3人だと胸が大きすぎて現実味が出ないと思うんだ。ボニータを買うの
はおそらくK〜Nカップくらいの女性が多いはず。だったら普通サイズのモッ
チーの方が適任だよ。」

そういわれて望月さんはぐうの音も出ないようだった。ボニータの熱烈な支持
者であり、PRに大賛成していたから断る理由を無くしてしまったようだ。

「わかったわ。ボニータのためにひと肌脱ぐ。でも・・・やっぱり、顔出しは
NGでお願いしたい。」

何にでもさばさばしていて積極的なイメージのある望月さんがそこまで恥ずか
しがり屋だったのは意外だったが、俺は顔出ししないという条件をのんで交渉
成立とした。

撮影は役場の会議室を使用し、化粧板と照明器具、レフ板などを借りてきてス
タジオのようなセットを作った。ちょうどボニータの新しいモデルが来月発売
されるということで望月さんにはそれを着けてもらう。
望月さんが羽織っていたカーディガンを取ると白い肌と白いブラに包まれ美し
く盛り上がった胸が登場した。ボニータのブラは繊細で美しいレースで装飾さ
れており、望月さんのきめの細かい肌を引き立てていた。ブラジャーはフル
カップでバストとカップがぴったりとフィットし、中央には見事な谷間が形成
されていた。
なお、望月さんのサイズは113センチのNカップだそうである。
彼女は恥ずかしいのか俺と目を合わせようとせず、早く撮影を終わらせてほし
いとだけ言った。
俺は彼女の口元だけを入れ、美しいボニータのブラが映えるようにシャッター
を何枚か切った。

ホームページにその写真とボニータのPR文を載せると案の定、問い合わせが
殺到した。望月さんはその対応で大忙しになっているそうだ。
俺は千々山村以外にも大きな胸をお持ちの女性って意外にいるんだなと驚きつ
つ、あの古めかしい工場が工員で一杯になっている風景を頭に思い描いたのだった。