千々山村 その後のはなし

ブラン 作
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望月みどりはボニータブランドの新作について、詰めの打合せをしていた。

「モデルのことなんだけど、そろそろ決まっているのかな?」

「は、はい。ボニータの方は予定通り8名の方にOKを貰えました。デザイン
チームの方にも彼女達のサイズは伝えていて既に製作に取り掛かっているもの
もあります。」

望月が言っているモデルというのはイベントの当日、ボニータの新作を着けて
ランウェイを歩く下着モデルのことだった。
モデルといってもKカップを超えるモデルがいる訳でもなく、彼女はボニータ
の顧客の中からモデルをやってくれる人を募集していたのだった。
彼女に報告していたのは今年の新人で、名前を足立ここみと言う千々山村生ま
れの女性であった。

「8人の資料はある?目を通しておくわ。」

「はい。今、メールで送ります。」

発表会当日はかしのの関係者や村役場の人達、その他に新聞やテレビもやって
来る。ある程度インパクトを持たせるためにもモデルのバストは大きい方がよ
い。望月はボニータの顧客の中で特にサイズの大きい方々を中心にモデルのオ
ファーをしていた。
モデルには心ばかりの謝礼の他に発表会で着けたボニータをそのまま進呈する
という条件をつけた。その結果、依頼した人はほぼオファーを受けてくれたの
だった。

「へーえ、県外の人もいるのね?」

「村の女性で固めた方が良かったでしょうか?」

「問題ないわよ。ボニータのファンが全国にもいるってアピールになるからむ
しろこの方が良いわ。」

「ありがとうございます。」

望月は資料に満足したようで見ていたタブレットをパタンと閉じた。

「足立さんも出れば?」

「わ、私ですか?やだ、先輩、冗談やめて下さいよぉ。」

彼女は恥ずかしそうに言った。

「本気で言ってるの。こういうのを経験すれば少し度胸がつくわよ?イヤなら
いいけどね。」

「で、でも。今からだとブラの製作が間に合うかどうかわかりません。」

「まだ、二ヶ月もあるじゃない?デザイナーにすぐ伝えなさい。」

「わ、わかりました!」

足立はイスから立ち上がり、電話をかけるために会議室を出た。
慌てたのか、大きな胸をぶつけてしまい弾かれたドアが勢いよく開いてバンと
大きな音を立てて外の壁に当たった。



時間は一ヶ月ほど前に遡る。
足立ここみは望月の指示で、ボニータの顧客リストの中から発表会でモデルを
務めてくれそうな人に向いて手紙を出した。

匹田かなこ。駅長ネコのチヂの秘書を務める彼女はチヂと共に千々山村の顔と
なっている。メディアにも度々取り上げられ、170cmを超す身長にWカップの爆
乳のインパクトは見るものを驚かせた。彼女のところに『ボニータ誕生30周
年』の記念イベントへの出演オファーが来ていた。

「なになに?モデルの依頼だって。ボニータの新作を着けてランウェイを歩く
か。発表会で着けたブラは進呈します、だって。ボニータの新作がもらえちゃ
うの??」

彼女は早速、幼馴染で仲の良い仁科ふみえに相談した。

「えっ、かなちゃんとこにも依頼来てるんだ。私にも来たよ〜」

仁科ふみえ。村役場の観光課に勤め、自らも村のPR用ポスターのモデルを務
めたこともあるスタイル抜群の美女だ。Sカップと千々山村でもかなり大きい
部類に入る。
仁科はかしのから届いた依頼状をひらひらと揺らした。

「どうするの?出るの?」

「うん。まぁ、歩くだけでボニータの新作がもらえるんでしょ?お得じゃな
い?かなちゃんは?」

「ふみちゃんが出るなら私も出よっかな。中山さんは何て言ってるの?」

中山さんというのはふみえの彼氏で同じ役場の地域振興課で働く男性である。
二人が付き合い始めてからそろそろ一年が経つ。

「いいんじゃない?って言ってる。彼の同級生の望月さんて子がこのイベント
を考えているんだって。」

「中山さんも見にくるの?」

「うん。村の関係者として式典に参加するそうよ。」

そう言う訳で匹田、仁科の二人はオファーを受けることにしたのだ。



三枝ひかり。千々山温泉にある旅館のスタッフとして働く女性であり、一度は
村のPRポスターのモデルを務めたこともある。Tカップの胸の持ち主であ
る。
少し引っ込み思案なところがある彼女はしばらく返事を引き延ばしていた。
そこに同級生の望月みどりが自ら取立てにやってきた。

「さえちゃん、久しぶり!」

「みどり!忙しそうね。」

「まあね。例の記念イベントが迫ってるからね。で、返事、まだなんだけ
ど??」

「ううん。まだ考え中で。」

「実は・・・もう発注かけてあるの!さえちゃんのブラまで。」

普段はいい子なのだがボニータのこととなると熱くなり過ぎるのが玉に瑕で
あった。

「ええーっ!ひどーい!まだ悩んでるのに!」

「何を悩むことあるのよ??こうやってお願いしてるんだから協力するのが親
友ってものでしょ?」

「で、でも。大勢の人が来るんでしょ?その前で歩くなんて。それに・・・」

「どうしたの?」

ひかりは自分の大きな胸の膨らみを見下ろしながら言った。

「わたし、太ってるでしょ。人前に晒すほどの身体じゃないもの。」

「そんなことない!前にポスターのモデルもやったじゃない!全然、大丈夫
だって!」

「うーん・・・」

彼女は黙り込んでしまった。

「と、とにかくお願いしたからね!ところで、林くんとは最近どうなの?」

「いつの話してるのよ?しつこいからとっくに断ったわよ。みどりはどうな
の?あまり浮いた話は聞かないけど。」

望月さんだけ今まで恋の噂はない。彼女にとって今はボニータが恋人なのだろ
う。

「私は今のところ仕事一筋だからねー。あっ、今度、知り合いのIT社長でも紹
介しよっか?独身の。」

「すごい!そんな知り合いいるの?」

急にひかりのテンションが高まる。

「ええ、まあね。じゃ、約束よ!」

望月みどりはそう言うと手を振りながら去っていった。
このように半ば強引な形でオファーを受けさせられた三枝ひかりであった。