千々山村 その後のはなし

ブラン 作
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記念イベントの前日はほぼ徹夜をするハメになった。
当日のプレゼンの最終チェックをしているときに、望月さんからアプリの修正
要望が出たからだった。
彼女のこだわりには舌を巻くが、俺もこうなったらとことんやってやろうと時
間ぎりぎりまで調整を続けた。

「御列席の皆様。大変長らくお待たせしました。これより、ボニータ誕生30周
年記念イベントを開催させていただきたいと思います!」

女性司会者の宣言でいよいよそのイベントはスタートした。
村営の体育館を借り切り、この日のために式典会場が設営されていた。まるで
都会の大きな展示会場と見まがう程に洗練された内装に変えられている。
ステージの中央からはモデルが歩くランウェイがせり出すように設置された。
来賓席には役場のお偉方や自治会長達か座り、関係者席には俺を含め、かしの
のオーナーと社員、縫製所の社長と思しき人が座っている。望月さんは裏方に
回り脇からイベントの進行を見守るそうだ。そのほかには新聞記者やテレビ
局。招待された一般客が席を埋めていた。

「では、まずショッピング・センターかしののオーナーであります佐藤の方か
らご挨拶をさせていただきます。」

オーナーがステージに上がり、挨拶が始まった。俺は昨日寝ていないことも
あって必死に眠気をごまかしながらアプリの番が回ってくるのを待った。

「それでは!ここでボニータ誕生30周年を記念しまして、皆さまに発表がござ
います。では、プレゼンターの方、お願いします。」

会場の照明が落ち、大きなスクリーンが下りてきた。ステージの脇から一人の
女性が現れ、スポットライトに照らされながら中央へと歩いてきた。プレゼン
ターは望月みどりだった。

「皆さま、ようこそお越しくださいました。本日、私から紹介させていただく
のはこちらです!」

スクリーンに映し出されたのは"スマホでオーダーブラ"のアプリのアイコン
だ。
望月さんは上下黒のスーツを着て髪をアップにまとめ、黒ぶちの眼鏡をかけて
ビシッと決めていていた。大きな胸の膨らみがシャツを盛り上げ、歩くとゆさ
ゆさと揺れた。

「スマホでオーダーブラ!スマホアプリです!簡単に言いますとカメラで胸の
写真を撮るだけで、ぴったりサイズのブラが作れてしまうんです!これがあれ
ば日本国内どこからでもボニータのブラジャーを注文できて、お手元に届ける
ことができるのです!」

大きなどよめきが起こった。インパクトはかなり大きいようだ。客席の女性達
が食い入るようにスクリーンを見た。

「少しこちらをご覧下さい。ボニータの販売枚数は昔からほぼ横這いで推移し
て来ましたが、ここ数年、インターネットのお陰で千々山村の外からもお客様
がいらっしゃるようになりました。特にこの一年間で村外のお客様は約二割に
まで達しています。ですが、ネット上ではボニータに興味を持ちながらも千々
山村まで来るのが大変!と言う声を多数お聴きしています。」

望月さんはステージを左右に歩きながら熱っぽく観客席にスピーチをした。
まるでどこかの企業のCEOのようだった。

「そこで、私達はこのアプリを開発することにしました!使い方はとても簡単
です。まず、アプリを起動して、カメラでご自分の胸を3枚撮影します。トッ
プとアンダーのサイズを入力し、解析ボタンを押すだけです。どうですか?簡
単でしょう?」

スクリーンにはアプリのデモが流れていた。望月さんはデモの映像に合わせて
説明を続ける。

「このように写真からバストの立体画像が表示され、オーダーブラのお勧めが
このように表示されます。ブラって単純な作りのように見えますが実は数十も
のパーツから出来ています。カップの大きさ、形、種類、デザイン、ワイヤー
の有無、バンドやストラップの太さなどの組合せは4億5千万通り以上もある
んです。その組合せの中からAI、人工知能があなたにぴったり合うブラを提
案してくれるのです!」

観客から大きな拍手が起こった。
望月さんのプレゼンは淀みなく続く。ブラジャーを選択すると立体画像に合成
され、胸のカタチが変化したり、撮影した写真にもブラが合成されるのには皆
が驚いた。

「私ももちろん、このアプリが選んでくれたブラを着けています!」

そう言うと、着ていたスーツの上着がスッと消え、彼女は白いシャツ姿になっ
た。そして、おもむろにシャツに手を持っていく。

ブチッ!ブチ、ブチ、ブチ・・・ばいんっ!

突然、彼女はシャツのボタンを引きちぎって胸の前をはだけさせ、美しいピン
クの花柄のブラジャー姿を披露したのだ。

(お、おい、何て演出なんだよ!)

俺は思わず心の中で叫んだ。スクリーンには、ボニータのブラに包まれた豊か
な胸元が大写しになっていた。

「どうです?かわいくないですか?実はこれ、ボニータの最新作なんですよ!
さて、アプリの紹介はこの辺で終わりにいたしまして、次は新作ボニータの発
表会の方に移りたいと思います!」

望月さんは大きな歓声に送られながらブラ姿のままステージの脇へと下がっ
た。何が"裏方に徹します"だ!バリバリにメインを張ってるじゃないか!と思
いながら、彼女の揺れる胸元を目で追っていた。

ステージが急に明るくなり、ランウェイにも照明が当てられた。
これから爆乳モデル達が登場するのかと思うと胸がドキドキと高鳴るのだっ
た。