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次の日から私は日常の生活に戻った。しかし、カレンと過ごした1日は私の人生観をガラリと変えてしまった。
これまでの実績が評価されて2級市民に昇格した私は、あとは爆乳の女性と結婚して幸せな家庭を築くというのがライフプランであったはずだった。
女性の胸は大きければ大きいほど高貴で美しく、男に安らぎを与えてくれる。それがこの世の中の常識であったはずだった。
だが、カレンが教えてくれたのは胸の大きさなどは女性の品格や人間性には関係がなく、むしろ胸が小さいことで社会から理不尽な扱いを受け、
それでも健気で健康的に生きている人々が存在するという事実だった。
私はこのことを誰かに伝えたいと思った。
しかし、私のこの考えは完全に反社会的な思想であり、知られればまず確実にパイデッカーに捕らえられてしまうだろう。
そして、2級市民などはおろか最下層の階級に落とされてしまうか、犯罪者として抹殺されてしまう可能性もある。
私の日々は空虚なものになってしまった。仕事については決められたことを決められた通りにきっちりとこなしたので私の変化に気がつくものはいなかった。
しかし、仕事に対する熱が以前より失われてしまったのは確実だった。
私の頭の中は今度いつカレンに会えるだろうかということだけだった。
会いに行くときに何を持っていけば良いか、どんなものなら彼女は喜んでくれるだろうかということだった。
また、いっそのこと何もかも放り出して森へ行き、カレンと二人で生活するなんて妄想もしてみたりするのだった。
「・・・さん。ちょっと、サトウさん。」
私は名前を呼ばれたのに気づいてハッと後ろを振り返った。ナカガワさんだった。
「どこか具合でも悪いのですか?最近、なんだかボーッとしていることが多いですよ。話しかけても返事がないことがありますし。」
「す、すみません。具合が悪いわけではないんです。」
ナカガワさんは優しい笑みを浮かべながら私を見た。私が2級市民に昇格するとわかってから彼女の私に対する扱いは明らかに変わっていた。
これまでは単なる上司と部下の関係であったのだが、仕事のパートナーとしての相談だけでなくプライベートのことについても話すようになっていた。
このまま良い方向に関係が進展すれば美人で大きなバストの彼女をモノにすることができるのではないかと密かに期待を寄せていたのだが、
カレンと出会ってしまった今は事情が変わってしまった。
彼女の大きな胸はもう私の気持ちを惹きつけなくなっていた。私は失礼がないように彼女と少し距離をおくようになった。
そして、仕事中はカレンのことを考えないことにして仕事に集中するようにした。
*
私は1ヶ月後に森へと出かけることを考えていた。
本当ならもっと早くカレンに会いたかった。しかし、登山には前もって入山申請が必要だったし、それを怠ると無許可で市外に出たことになり罰せられてしまう。
さらに、無許可で一定時間行動すると指にはめているiリングから警報が発せられ、居場所が特定されるとともにセキュリティまでやって来る仕組みになっている。
もしそうなったらカレンの存在も政府にわかってしまい彼女の身もどうなるかわからないのだ。
両親にはまたマヒラ山へ出かけると言い残して私は出発した。
前と同じ登山口までやってきて、登山道に入り、途中からルートを外れてカレンの森を目指す。
天候は良く、真夏の太陽がじりじりと私の背中を照りつけた。しかし、森に入るとそれも気にならなくなり途中、沢で水を補給しながら進んだ。
小屋の場所には自信があった。前回帰るときにもう一度来る時に目印になる沢や大きな木や岩を覚えるようにしたからだった。
カレンの小屋が見えてくると私は嬉しくて小躍りした。
「まあ!サトーさんじゃない!」
「やあ、カレン。元気だったかい?」
「もう来てくれないんじゃないかと思っていたわ。とにかく中に入ってよ!」
「ごめん、なかなか承認が下りなくてね。これでも急いだ方なんだ。」
私は1ヶ月ぶりに小屋の中へと入ると早速、カレンを抱きしめてたっぷりと口づけをした。彼女の小さな胸が私の胸板に押し当たった。
「もう・・・すごいことになってるわよ。」
彼女は私の耳元で囁いた。私の下半身はむくむくと起き上がりズボンを盛り上げ、カレンの腹部に突き当たっているのだった。
「このひと月、ずっと君のことを考えていたんだ。」
「私もよ。サトーさん、いつ来るのかなぁって。今日はごちそうにしなきゃ。」
私は今すぐにでもベッドに入ってカレンと抱き合いたいくらいだったが何とか自分を抑えた。
「今日は君にお土産を持って来たんだ。この前泊めてくれたお礼に。」
そう言って私はナップサックから買って来たものを出した。一つはデカメロン市で若い女性に人気の菓子店のクッキー、もう一つは森では手に入りにくいと言ってた砂糖だ。
「やだ、ありがとう!とっても嬉しい!すぐにお茶入れるわね。それから、お砂糖まで。」
彼女はクッキーの箱の可愛い包装紙をビリビリと剥がした。
私はもう一つプレゼントを用意していた。それは装飾品店で買った金のネックレスだった。
「ええっ?!これを私に?もらっていいの?すっごくキレイ!」
カレンは早速ネックレスをつけると私に抱きついてきてキスをした。
「私、男の人から一生こういうものをもらえないと思ってたわ。だからとっても嬉しい!」
ちょっと値が張ったが買ってきてよかったと思った。彼女はかなりご機嫌で何度もそれを見ていた。
料理を作るカレンの後ろ姿を眺めているのも楽しかった。彼女は時々振り返って1ヶ月間に起こったことなどを私に話した。
食事は素晴らしかった。彼女は果物を漬け込んだお酒を私のために用意してくれていてそれを少し口にした。
そして、食事の後は二人の甘い時間となった。
彼女のシャツを脱がすと下はノーブラなのかと思ったら、きちんと下着を着けていた。
それは子供用のものでフリルで縁取られていて中央にピンクの小さなリボンが付いていた。彼女の胸のサイズに合うのは子供用しかないのだそうだ。
私が可愛いと言うと彼女は恥ずかしがった。私はブラをめくり上げて胸を露出させ、乳首を指で弾いた。
「あんっ・・・」
彼女の乳房には全く膨らみがなく、乳首の周りが少しだけぷくっと膨らんでいる。乳輪の周りに何周か舌を這わせておいて、一気に乳首を舐め上げる。
「あっはああんっ!」
胸は大きいほど美しいとは誰が言ったのだろうか、カレンの胸は小さくても素晴らしかった。
私のペニスは勢いよく勃起し、この日は何度か射精をしても衰えなかった。この1ヶ月間、この日のために自慰行為を我慢してきたためであった。
私はカレンの小屋で二晩を過ごし、三日目の朝にそこを後にした。
彼女と別れるときは心臓が締め付けられるほど苦しかった。
「またひと月後に来るよ。それまでのお別れだね。」
「うん。絶対だよ。待ってるからね、サトーさん。」
私は小屋が見えなくなるところまで来てカレンに向かって手を振った。
二人の秘密の生活が終わることがあるなどとはこの時は少しも思っていなかった。