ワタナベさんはため息が多い

ブラン 作
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チチ暦 962年 春

5年生になってもマリーの胸は慎ましいままでした。
クラスの中ではもちろん、普通科の子と比べても小さいほどでした。
身長が5センチ伸びたのに合わせて胸囲も少し増えて74センチとなりましたが、
膨らみと呼べるほどの胸はありませんでした。
親友のナミは既にGに達していて二人が並ぶと歴然とした差がありました。
特別科の20人はH・1人、G・3人、F・8人、E・6人、D・1人、そして
A・1人という構成になっており、一番小さいのはマリーなのでした。
周りからはマリーは本当に巨乳遺伝子を持つ子なのか?とか、彼女はFCなのではないのか?
と影で囁かれるようになっていました。
FCとは、フラット・チェストの略で胸が膨らまない女性を指す言葉です。
前時代にはかなりの割合で存在したそうです。今はもうほとんどいないと言われていますが、
何百人に1人の割合で生まれるとも言われています。
胸の大きい子たちからは露骨に嫌な顔をされ、無視する子もいるほどでした。
そう言う意味では特別科では胸の大きさでスクールカーストが形成されていて、彼女は
その最下層になっていたのでした。

「はぁ・・・」

マリーはまた無意識のうちにため息をついていました。
選ばれし特別科でも、胸が一定基準を満たさないと中学へ進学する際に普通科へと
落とされることがあります。これは家柄と親のプライドを傷つけることになり、考え
るだけで憂うつでした。
いくら巨乳遺伝子を持っていても将来が約束されているわけではなく、適切な育乳を
行わないと爆乳、超乳と呼ばれるサイズには達しません。
特別科のまま中学に進むためにはバスト100センチかIカップ以上を満たす必要が
あることが暗黙のうちに言われていて、現在74センチのマリーにとってはとても
到達できない高い壁のように思われました。
彼女の唯一の希望は母親の言葉でした。

「マリーったら!ため息をつくのはやめない。お母さんだってあなたくらいの頃は
悩んだものよ。でも、そのうち絶対に大きくなるから。」

母親の超乳を見て自分も本当にそんなに大きくなれるのかマリーは全く自信が持てませ
んでした。しかし、いつか絶対に大きくなるんだと自分に言い聞かせるしかありませんでした。



チチ暦 962年 夏

夏が近づいて、マリーの胸に少し変化が起こりました。
成長期特有の胸の痛みは昔からありましたが、それがひどくなって身体を動かすだけで
も痛みを感じるのでした。

「痛っ・・・」

保健医の先生に相談すると、ひどい時に飲むようにと鎮痛剤を処方してくれました。
それから、マッサージをするときに胸に塗るようにとクリームも渡されました。
皮膚を柔らかく保って胸が成長するのを妨げないようにする効果があるということでした。
成長痛を理由にして体育の授業は休むことができました。
ぼおっとしながら授業を見学しているとナミが時々、手を振ってくれました。
他の子たちがマリーに冷たくする中でも彼女だけは優しく接してくれます。
ナミの胸はまたワンサイズ大きくなってHとなり、体操着の胸元を大きく盛り上げて
いました。
揺れを抑えるのは難しく、歩いているだけでもユサユサと揺れるのが分かるほどです。
普通科の男子たちが見て歓声を上げました。

「おおっ!見ろよ、特別科だ!」
「みんな揃ってデカいよな。」
「やっぱ、普通科とは格が違うな」

小学生と言えどもやはりそこは男性であり、特別科の女子の大きな胸に熱い視線を送っ
てくるのでしだ。
男子だけではなく、女子からも羨望の眼差しが向けられました。

「きゃあ、見て!特別科よ〜」
「大きいわね。どうしたらあんなに育っちゃうのかしら?」
「はぁ、私たちだって頑張ってるのに」

普通科の女の子の中にも胸の大きな子はいますが、特別科の子たちとは勝負になりませんでした。
医師の診断のおかげで、マリーにとって最低な水泳も休むことができました。
このままずっと休んでいられたらどんなにいいだろうかと思いながら彼女はプールサイドで見学するのでした。
ズキズキと痛む胸は実は急成長を始める兆しでした。
そのことにマリーが気づくのは夏休みに入ってからのことでした。



スクールの夏休みは7月中旬から2ヶ月間ありました。このほかに、冬休みは1ヶ月
間、春と秋に1週間ほどの休みがあります。これは教師の年間休日を十分確保するため
の配慮でした。前時代の教師は朝早くから夜遅くまで、休日も働いていたそうですが
ビッグ・ブラジャーが働き過ぎることを禁止しました。
夏休みの間は保健医の診察がなかったので、マリーは鎮痛剤をもらうために近くの
バストクリニックに行かなくてはなりませんでした。

「ワタナベさ〜ん、マリー・ワタナベさ〜ん」

周囲の目がない分、スクールの診察よりも気が楽でした。
待合室で名前が呼ばれるとマリーは診察室に入っていきました。

「今日はどうしましたか?」

彼女は胸が痛むことと、スクールで薬をもらっていたが夏休みになってもらえなくなっ
たことを医師に伝えました。

「そうですか、痛むんですね。では、まず、発育状況を確認させてもらいますね」

そう言うと医師はカメラのような機械でマリーの胸を撮影しました。

"カシャーン"

TOP:80
UNDER:65
CUP:C

機械のモニターにはそのように表示されていました。

「80?ほんとに?」

「何か?」

「いいえ、なんでも」

74センチだった胸が急に80センチに増えたとは信じられませんでした。
初めは測定が間違っていると思いました。
しかし、胸には小振りではあるもののしっかりと手のひらサイズの乳房が形成されてい
ることに自分でも驚きました。

「スキャニングの結果では、ワタナベさんの胸は今、急激に乳腺が発達してきているようです。
成長痛のようなものですが鎮痛剤を出しておきましょう。スクールでもらっているの
と同じクリームも出しますね。そらから、そろそろしっかりしたブラを着けた方がいい
ですよ。カタチが悪くならないように。」

胸が膨らんで来たことは嬉しくないわけがありません。
FCなのではないかと陰口を言われて気にしていたが、そうではないということがわかったのです。
家に帰ってこのことを母親に言うとマリーがFCなわけはない、馬鹿なことを考えては
ダメだと叱られてしまいました。

「でも、良かったわ。ようやく始まったのね、おめでとう。」

母親はそう言うとマリーの身体を引き寄せて抱きしめました。
彼女の超乳にマリーの小さな顔が全部埋もれてしまったのです。

「あのね。お医者さんがしっかりしたブラをした方がいいって。」

「そう・・・でも、必要ないわ。だって、すぐにサイズが変わるでしょうから」

巨乳遺伝子を持つ子は一般の子より発育が始まるのが早く、胸の成長速度も速いと言わ
れます。しかし、中には周りよりも低成長でありながら突然、急激な成長を遂げるとい
うパターンが存在します。俗に"覚醒"と呼ばれていますが、マリーはまさにそうだった
のです。
マリーの胸の痛みはしばらく収まりませんでした。
薬を飲むとそのときは収まりますが、夜中に効き目が切れて眼を覚ますことも多くありました。
また、胸が栄養を欲するためか食欲が増して、普段の食事の量を増やしても物足らず
に、間食や夜食を食べるようになりました。
母親が言ったように、マリーの胸はぐんぐんと大きくなっていったのです。



9月の半ば、夏休み明け。
彼女は制服のシャツのボタンが止まらなくなっていることに気づいて焦りました。
ですが、母親が彼女のために新しいシャツとブラジャーを用意してくれていました。

「どう?マリー。きつくないかしら?」

「うん、ぴったり」

母親が買ってくれていたのはH65のブラ。マリーのトップバストはこの夏休みの間に
93センチまで成長したのでした。
大きくなった乳房全体を包み込むフルカップの白いブラジャーには無垢な柔肉がみっち
りと詰まっていました。
マリーは大人が着けるようなブラを自分が着けていることに興奮しました。
見下ろすと見事な谷間が作られていることにまた感動しました。その上にシャツを着る
とHカップの膨らみが布地を盛り上げ、バストがしっかりと存在感を示していました。
マリーは鏡の前に立ち、慣れない自分の姿を映しました。

「ふふっ。似合ってるわよ」

母親は娘の成長を喜び、笑顔になっていました。

「うん!」

鏡で姿をチェックしていたマリーは母親に最高の笑顔を返しました。



2ヶ月ぶりにスクールへ向かいます。
休み中に急激に大きくなってしまった胸はずっしり重く、足下を見ようとしてもその
膨らみが邪魔でよく見えません。何度か段差につまずきそうになりましたが、他の人だ
ってこういう苦労をしてるんだと思いました。
すれ違う大人たちが私の胸元にチラッと視線を向けてきます。
やはり小学生にしては大きいHカップの膨らみは注目を集めてしまうみたいです。
これまで、スクールに行くのが憂うつだったのですが、クラスメート達はどんな反応
を示すんだろうと楽しみな自分がいました。
普通科の男の子たちとすれ違いましたが、私の胸元を見て騒いでいました。

「あの子誰だ?」
「あの胸だし、特別科だろ?」
「そんな子いたかなぁ?」

教室に入るともうほとんどの生徒が集まっていました。
私はその中にナミの姿を見つけ、2ヶ月振りに顔を合わせました。

「ナミ〜!元気だった〜!すっごい焼けてるね〜。どうだったワイチチ島は?」

彼女の視線がすぐに私の胸元に止まったのがわかりました。

「うん!最高だったよ!マリーこそ、元気そうね。すごく顔色がよさそうだし・・・
ところで、これ何なのよ!?」

ナミは私に顔を近づけて小声で言いました。

「なにが?」

「胸よ、むね!何入れてるのよ?」

「何も入れてないわよ、失礼ね!休みの間に少し大きくなったかもしれないけど」

ナミはすかさず両手を私の方に差し出して、二つの膨らみを下からすくい上げるよう
にして持ち上げました。

(もにゅん、もにゅん)

「ちょっと!痛い、痛い!あんまり強く触らないで」

ナミは私の胸を押したら揺さぶったりして確かめていましたが、本物だということが
わかってくれたようでした。

「うっそー!ホンモノなの!?偽乳かと思った」

ナミが私の胸を揉むのを他のクラスメートも見ていたようでした。

「あれがワタナベさん?」
「この前までペタンコだったよね?」
「ヤバイ、追い抜かれちゃったかも?」

周囲の視線が私の胸に注がれました。
今まで特別科のお荷物と陰口を言われていた私が他の子たちから驚きの目で見られているのです。
私は得意げな気持ちをグッと抑えて必死にクールに振る舞うようにしました。
ナミの胸も休み中にワンサイズ大きくなって私より一つ大きいIカップになったそうで
す。ナミと比べると私の方がまだ一つ小さいですが、膨らみはだいたい同じくらいに見
えるのでした。
特別科のカップサイズは、I・2人、H・3人、G・5人、F・6人、E・4人と
なったそうです。私は最下位から一気に上位グループに入ったのでした。

大きな胸でちょっと困ったこともありました。
夏休み明けの最初の体育の授業は水泳でした。久しぶりの水泳なのですが、水着を新し
く買うのを忘れていたのです。お母さんもそこまでは気がつかなかったみたいでカバン
には今まで着ていたのが入っていました。

(どう考えても入らないよね?)

着る前からわかっていましたが、わずかな可能性にかけるしかありませんでした。
更衣室で、まず下を履き替えてからシャツを脱ぎ、ブラを外します。
そして、紺色の水着の肩紐に腕を通します。

(よいしょっ)

やはり、思った通り大きな胸が引っかかって上にあがりません。
無理矢理引っ張り上げて何とか収めようとしましたが、Hカップの乳房はどうやっても
入ってくれませんでした。

(だめかぁ・・・)

その様子を見かねたナミが私に言いました。

「マリー?これで良ければ貸してあげよっか?私が前に来ていた水着だけど。」

ナミは新しい水着を買ったらしく、少し小さいけどマリーのそれよりはマシよと言って
古い方を貸してくれました。
私はありがたくそれを受け取って、ナミの水着を着ることにしました。

「・・・っしょっ。どうかな?」

やはり胸のところはかなりキツく感じましたが、何とか収まってくれました。
紺色の生地がピッチピチになって胸にぴったり貼り付いていました。

「うん。いいんじゃない?」

着替えを終えてナミと二人でプールへ向かうと、同じ学年の普通科の女子たちがプール
サイドに集まっていました。どうやら前の授業が終わったところのようでした。
普通科は1クラス40人のため私たちの倍の人数です。その子たちの視線が一斉にこち
らに向けられました。

「来たぁ!特別科の子だわ!」
「やっぱり、大きいわ〜」
「水着がちょっと小さそう」

ナミはこういう視線には慣れっこになっていましたが、私はやはり戸惑ってしまいま
す。でも、私は改めて自分も特別科の一員になったのだと実感しました。
普通科にも大きい子はいましたがせいぜいEかFカップで、ほとんどはCかDあるかど
うか、そしてまだ膨らみ始めの子も多くいました。
準備体操では胸がぶるん、ぶるんと揺れて、付け根が痛くなりました。
以前から、胸はあまり揺らさないように教わっていましたが私はすっかりそれを忘れていました。
反対に水に浸かると胸が軽く感じて、水の中が楽に感じました。
泳ぐときに大きな胸は邪魔になりましたが、私は久しぶりに水泳が楽しいと感じたのでした。