次の日の午前中、宅配の荷物が届いていると連絡が来ていたのでマンションのコンシェルジュに頼んで部屋まで持ってきてもらった。
洋服、下着、ストッキング、靴下、靴、化粧品、アクセサリー、ハンドバッグなど二十歳の女性が持つようなものを手当り次第に注文したためかなりの量になった。
僕は早速、アイガールに変身しようとスマートフォンを手に取ると、アイデアル・ドール社からメッセージが入っていた。
『3月○日のトランスレポート
なまえ:はるか
トランスタイム:56分
シンクロレート:38.4%(+2.8%)
シンクロレベル:1
シンクロレートは初回としては良好です。アイガールに色んな体験をさせてさらに同調性を高めましょう。
シンクロレベルを上げることで様々な機能が使用できるようになります!
本日のトランス可能タイム 3時間』
これによれば、アイガールとの同調性を高めていくことで新しい機能が解放されていくようである。
レベルアップをすれば体型や年齢も変化させられるようになるのだろう。
僕は早速、アイガールにトランスし、送られてきた荷物の箱たちを開けることにした。
明日はいよいよ外出可能になるので、今日は購入した服や靴などを準備しておこうと思った。
だが、その前にシャワーを浴びたくなった。僕は朝いつもシャワーを浴びて、朝食はパンとコーヒーと決めている。
シャワーと濃いコーヒーがないとどうもシャキッとしないのだ。
アイガールは防水仕様になっていて風呂やプールに入っても問題ないとガイドには書かれている。
「色んな体験をした方がいいって書いてたな。この姿で入ってみるか。」
僕はバスルームで部屋着を脱ぎ始めた。細い腕で服を捲り上げると白いお腹と形の良い乳房が見える。ズボンを脱ぐと丸く盛り上がったヒップが鏡に映る。
片手にタオルを持ち、もう片方の手で胸を隠しながらシャワールームに入る。
「冷た!」
うっかりしてまだ冷たい水を身体にかけてしまった。
冷たいと感じる感覚もふつうと変わらないようだ。
水はすぐ適温の湯になり、アイガールの滑らかな肌にぶつかって流れ落ちた。
「んふぅ…」
温かい湯が心地よく、オヤジ臭く声を漏らしてしまったが漏れて出たのは若い女性の艶っぽい声だった。
思ってもなかったエロい声に男として反応してしまう。
「やべぇ。興奮してきた…」
シャワーの水流が乳房に当たるのが気持ちいい。ふと、胸元を見るとピンク色をした乳頭がピンと尖っている。僕はそれにそっと触れてみた。
「アアッ…」
乳首はとても敏感になっていて男のときとは全く違う感覚だ。指で軽く弾くと強い快感が与えられ、思わず声が出てしまう。
(むにゅっ)
僕は両手で胸を救い上げるように揉みながら人差し指で固くなった乳首を刺激した。
「アッ、ンンッ…イイッ…」
(もにゅっ、もにゅっ…)
「きっ、気持ちいい… すげぇ、女の胸ってこんなに感じるのか…」
揉み続ければそれだけ快感と興奮が高まってゆく。
(もにゅん、もにゅん…)
「し、下はどうなるんだ?同じように感じるのか…?」
胸がこれだけ感じるなら下半身も相当なことになるかもしれない。
僕は片手で胸を揉みながらもう片手を下半身へと滑らせていく。小さな手がへそから下腹部、そしてわれ目へと達しようとしたときだった。
(フッ…)
「あっ!あれっ!?」
瞬間的にトランスが解け、元の姿に戻ってしまった。
そこには美女のわれ目はなく、盛大に勃起した僕のペニスがあった。
どうやら精神的に強い刺激が加わったために強制的にトランスが解除されてしまったようだった。
興奮しきっていきり立った肉棒を収めるため、僕はそれを右手で握りしめて上下に擦った。射精するまでにそれほど時間はかからなかった。
「ううっ!」
よく考えれば胸が気持ちよく感じるのは不思議と言えば不思議だった。自分の身体に戻ると胸を触ってもくすぐったいだけで何も感じなかった。
バスルームから出てスマートフォンを確認すると、アイガールのトランスが解除されたと表示されており、原因は極度の興奮状態となっていた。
僕は再びアイガールの姿になろうと画面をタップしたが、"エラーチェック中のためしばらくお待ち下さい"とメッセージが出てトランスが出来なくなっていた。
僕は仕方なく部屋着に着替え、パンとコーヒーで遅い朝食を摂ることにした。
*
昼過ぎにスマートフォンを確認すると、再びトランス可能な状態になったので僕はまたアイガールの姿に転移した。時間はまだ2時間以上余っていた。
部屋には宅配で届いた服や下着、靴などを並べておいた。まずこれらを着てみようというのだ。
僕に女装の趣味があるわけではないが、外を出歩くことを考えるとある程度無難で、女性らしい格好をしておかなくてはならない。
部屋着を脱ぎ、上半身裸になる。ブラジャーを引っ張り上げてカップを胸に当て、肩ひもに腕を通す。
「確かこうやるんだったかな…」
ブラはピンク色でカップのふちがレースで飾られている。カップ部分とレースとは少し色合いを変えてある。
サイズはD65、つまりアンダーバスト65センチのDカップだ。きちんと測った訳でないが胸に当ててみた感じは悪くなさそうだ。
バンドの先端を掴んで手を後ろにしてホックを止めるのだが、これがなかなかうまくいかない。
「クソッ…クッ…ヨッ…」
やっとのことでホックを止め終わると今度はカップに手を入れて乳房をカップ内に収めた。肩紐が緩いのでそれを調整すると何とかブラの装着が終わった。
カップサイズは合っているように思うが、何となく胸全体が締め付けられて苦しい気がした。
ブラジャーを着けるのはもちろん初めてなので、サイズが合ってないのか、そもそもこういうものなのかがよくわからなかった。
次いでブラとお揃いのショーツを履くと、布が少なくて心許ない感じがしたが鏡に映った姿を見ると悪くはないと思った。
その次はスカートに脚を通しジッパーを上げてホックを止めた。丈は膝の上までで、ラズベリー色の布地に小さな花が散りばめられている。
上にはクリーム色の薄手のニットのセーターとカーディガンという組み合わせだ。
少し大人しめのコーディネートになったが初めてにしては上出来ではないかと思った。
「あとは、ストッキングか…」
生足のままで外に出たりはあまりしないらしい。僕は何種類か買っておいたストッキングから色が薄めのを選んで袋を開けた。
よく考えると女性がこれを履いたり脱いだりしている場面を見かけることは少ない。まあ、長めの靴下と同じと考えてくしゃくしゃと短く縮めてそこに足を突っ込んだ。
生地は薄く肌触りがよく、白い脚を包み込んで僅かに黒っぽく見せる。両脚とも太ももまで履いてからさらに引き上げてヒップと下腹部をすっぽりと包み込んだ。
ストッキングを履く仕草と履いた姿が意外にいいことに気づいてしまった。
「うーん。これは…なかなかセクシーだな」
服装が整うとどこに出してもおかしくないお嬢さんに見えた。
最後の仕上げは化粧だ。どんな美人でもノーメイクで外出という訳にはいかないそうなので恥ずかしくない程度にはしないといけない。
化粧品を昨日注文したときに、メイク術のネット動画を見てある程度は予習しておいたのでまずその通りにやってみることにした。
最初は化粧水をたっぷりと手に取って肌を潤し、乳液をつけて潤いが逃げないようにする。その上にファンデーションを重ねて肌ツヤを出す。
さらにフェイスパウダーで明るさをプラスする。ここまででようやくベースのメイクまでが終わった。この後、目の周りなどのポイントメイクに移る。
アイシャドーを目の縁に引き、ビューラーでまつ毛をカールさせた後、マスカラで色をつけるとグッと大人っぽい印象になった。
「意外に楽しいな。こういうの性に合ってるのかもな。」
最後に口紅を引いて完成だが、もともとモデル張りの美女だったアイガール"はるか"がメイクをしたことで女っぷりが増し増しになっている。
「かっ、かわいいっ…化粧で結構印象が変わるもんなんだなっ」
ふと、スマートフォンを見るとトランス可能時間をオーバーしていると警告が出ていた。メイクに夢中になりすぎてあっという間に残りの2時間以上が過ぎてしまったのだ。
「おっと、今日はここまでか。急いで元に戻らないと!」
僕は服を着替えてからスマートフォンを操作してトランス状態を解除した。