その日、あきなからの連絡はなかったが、真夜中過ぎにゲーム機の方にメッセージが届いていた。それに気がついたのは翌朝になってからだった。
"ノブくんにある物を送ったので、今度それを身に着けて家に来てください"
文章はそれだけだった。何か身につけるものを送ってくるそうだが特に心当たりはない。メッセージの発信がかなり遅い時間になっていて、おそらく週刊誌に記事が出たことで何かと忙しいのだろう。
スマホで毎朝のトランスレポートに目を通した。トランスレートが3.6%上がって97%になっていた。今日、アイガールで1日過ごせば恐らく100%に達しそうだ。
アイガールにトランスし、毎朝のルーティンをこなす。シャワーを浴びてからコーヒーとパンで軽い朝食を摂る。
今日も用事は特になかったが、簡単にメイクを施して近所の公園まで散歩に出掛けた。日中は暑くなるし汗もかくので涼しいうちに行動する方がよい。
はるかの姿で過ごすことにもう何の違和感もない。美しい顔と大きな胸が目立ち過ぎることが難点だが、ハラダ・ノブヒコでいるよりは自由なことが多い。
帰ってくると荷物が届いていると連絡が入っていたのでコンシェルジュに連絡して持ってきてもらった。
段ボール箱が2つ、送り主は泉あきなとなっていた。
「軽いな、何だろう…」
1つ目の箱を開け、梱包材を取り除くと中には女性物の服やサンダルなどが入っていた。ビニールから出して手に取るとサイズが少し小さいことに気づく。
「妹バージョンの?これを着て来いってことか??」
イエローの半袖シャツとホワイトのショートパンツを合わせるようだ。
服とは別にブラとショーツのセット、ブラウンの厚底サンダル、星を型どったイヤリング、そして髪留めもセットになっている。
もう一つの箱も開けてみると、同じようにシャツやスカート、靴、アクセサリーなどが入っておりこれも妹のためのものであるらしかった。
つまり、あきながコーディネートを2種類考えてそれをネットで注文し、僕に送ってきたという訳だ。
忙しい中なのに僕に着せる服を考えていたなんて意外と呑気なんだなと可笑しくなった。
今日は僕たちが逢える時間はなさそうだが、明日以降あきなの家に行くときにどちらかの服を着ていってやろうと思った。
久しぶりにテレビをつけて見ると、芸能ニュースであきなのことをやっていた。
もともとチーム47の中でも少し浮いた存在だったことや彼女の育った環境やデビュー前の話、性格が社交的ではなく内に籠りがちなことなどを取り上げていた。
出所のよくわからない情報を司会者やパネラー達が私見を言い合い、特に結論もないままにまた別の話題へと移っていくというくだらない番組だったが、僕もついこの前まで人気コメンテーターとしてあちら側にいたのだと考えるとゾッと寒気がした。
テレビを消すと部屋は再び無音になった。
昼食を済ませた後、せっかくなのであきなが送ってきた服を試着してみることにした。
「先ずははるかの体型を小さく…」
設定を"いもうと1"にして、12歳の少女の体型に変更する。体が縮み、大きくなった部屋着を脱いで裸になる。
「下着はこれか…」
ブラはスポーツブラでショーツは揃いになっており、白と青のストライプが入っている。それぞれ中央に小さなリボンが付いている。
歳の割に豊かなバストには少し小さく感じたが窮屈というほどではなかった。ショーツに小ぶりのヒップを収めるとその上にホワイトのショートパンツを履いた。
ぷりんと可愛く小さなお尻から細くてまっすぐな脚が伸びている。
「肉感は乏しいが、悪くはないな」
次に黄色い半袖シャツを頭から被り、厚底サンダルを履いてから鏡の前で立ち姿を確認するとはるかの細い体にぴったり似合っていた。
さらに髪を後ろで一つに束ね、星の形をしたイヤリングを耳につけるとファッション誌に出てきそうな子供モデルのように思えてしまった。
「か、かわいい…」
体を動かすとフリルの袖が揺れ、白い肩がちらりと見える。
クラスにこんな女の子がいたら間違いなく男子全員が好きになってしまうに違いない。
もう片方の箱は白いブラウスと黒いミニスカートという組み合わせになっていた。
シャツを着替え、ショートパンツからスカートに履き替える。ドレーブのかかったスカートの丈はかなり短めでショートパンツ以上に落ち着かない。
一緒に入れられていた黒の靴下は膝までのニーハイソックスとなっていて白い太ももとのコントラストが美しい。
「こちらもなかなか…」
髪留めが2つ入っているということは髪をツインにすればいいのだろうか。長い髪を2つに分けてそれぞれを束ねてみた。
白いブラウスの胸元は適度に膨らみを見せており、ミニスカとの組み合わせは最強だろうなと思ったがこれで外を歩くのはちょっと勇気がいりそうだ。
試着は終わりにして元のサイズに戻る。昨日はこの姿のままバスルームでいけないことをしてしまったのを大いに反省している。
最近、困ったことにアイガールでのオナニーが気持ち良すぎて癖になりつつある。
すぐに性感のスイッチが入ってしまうのはアイガールの特性なのか、それとも僕が原因なのかわからないが
これ以上ハマるのは良くない。少なくとも次にあきなに逢う時までは我慢しておこうと思うのだった。
*
『○月○日のトランスレポート
なまえ:はるか
トランスタイム:15時間53分
シンクロレート:100%(+3.0%)
シンクロレベル:5→6(MAX)
おめでとうございます!シンクロレートが100%に達し、シンクロレベルが最高の6となりました。あなたとアイガールの同調性はパーフェクトです!
新たにフリー調節機能と常時トランス機能が使用できるようになりました!』
翌日、とうとうトランスレートが100%に達した。得られた達成感と共に、目標を達成してしまった物悲しさもあった。
新しい機能が2つ増えた。"フリー調整機能"はアプリを介さずに体型などの調節が行えるというもので、こうなりたいと頭に描くだけでその通りに変化できるらしい。
もう一つの"常時トランス機能"は24時間365日、ずっとアイガールにトランスしていられるという機能だそうだ。
これまで、1日の終わりにはトランスを解除して元の姿に戻っていたがこれをする必要がなくなる。
アイガールの状態で睡眠に入ると意識が切れ、自然にトランスが解けてしまうことがなくなるらしい。
「とうとう最高レベル到達だな!しかし、新機能は地味な気がする。いまいち凄いのかどうかわからん…」
フリー調節機能を使うにはスマホアプリの編集機能をフリー調節に切り替える。
「これでいいのか?」
まずはいつもの状態からあきなの体型に変化してみる。頭の中にあきなのむっちりした体を思い描く。
(シュウウウ……)
目に見えてわかるくらいの速度で身長とバストが少し縮小し、代わりに腰回りが膨らんで部屋着を張り出させた。変化を終えるのに1〜2秒というところだ。
身長 :163→155(-8)
バスト :100→ 95(-5)
アンダー: 65→ 70(+5)
ウエスト: 56→ 70(+14)
ヒップ : 83→ 93 (+8)
スマホ画面のステータスもきちんとそれに変わっている。
「次は妹バージョンに変化!」
(シュウウウ……)
身長がさらに低くなり、豊かなGカップの胸は慎ましいサイズへと縮んでゆく。豊満な腰回りの肉は消えゆき、幅も厚みも乏しい少女の体へと変化を遂げた。
身長 :155→145(-10)
バスト : 95→ 78(-17)
アンダー: 70→ 60(-10)
ウエスト: 70→ 52(-18)
ヒップ : 93→ 75 (-18)
「変わった……だが、いるか?この機能」
トランスシステムと直接アクセスするのには僕の脳波か何かを読み取っているわけで、それなりに凄い技術なのだろうけど使い道には疑問が残る。
今度はもう少し想像を膨らませて少女の胸をもっと大きくしてみる。
(グググッ……)
慎ましかった胸元が膨らみ、部屋着を盛り上げ始めた。あきなサイズのGカップまで大きくした後、さらに膨らませてゆく。
(グッ、グググンッ……)
簡単にメートルをオーバーするとメロンほどの膨らみになった胸は部屋着をぱんぱんに張り出させている。
「キツイ……」
窮屈な衣服から胸を解放するために両手で部屋着の裾を持ち上げる。
(ぶるるるるんっ!!)
巨大化したバストが自由を得て勢いよく溢れ出る。少女の姿には既にあるまじき大きさになり肩にずっしりと重みがのしかかっている。
「重い…この体には負担が大き過ぎる」
ステータス画面を確認するとバストサイズは120を超えている。以前、141センチまで膨らませてみたことがあったが、今ならそれを軽く超えられるだろう。
ただ、少女の筋力では巨大な乳房を支えておくには限界がある。僕は両胸を抱きかかえるように移動しソファの上にずしんと腰を下ろした。
「ふぅ…さて、さらに大きくしてみるか」
(ムクッ、ムクムクッ……)
胸が大きく様子を頭に思い浮かべるとその通りにバストの体積が増してゆく。もちろん止めることも僕の自由だが今はどこまで大きくなるのか確かめてみたい。
(ムクムクムクッ……)
これまでの最高記録141センチをあっさりと更新し、順調に150、160と記録を伸ばしてゆく。ビーチボールほどの大きさに達してもさらに成長を続けていく。
(ムクムクムクムクッ……)
リビングのソファには巨大な乳房の小山が2つ鎮座し、真白な乳肉がふるふると揺れながら大きさを増している。
バランスボールほどの大きさになったであろうか、バストサイズはもう200をとっくに超えている。
(ムクムクムクムクムクッ……)
(ぎしっ…)
巨大化した乳房の重みにソファが悲鳴を上げ始めた。それと同時にシートから胸が溢れ始め、リビングの床を侵食し始めた。
もう5mは超えただろう自分で乳房の先端に手が届かない。
(ムクムクムクムクムクムクッ……)
胸がリビングテーブルを押してズルズルと動かしていく。2つの山は裾野を広げながらも高さを増して僕の視界を覆っていく。
スマホ画面が見れなくなり、バストサイズが10mを超えたところでわからなくなってしまった。
「自分の胸に潰される!?いや、まだだ!まだ大きくなれる!」
(ムクムクムクムクムクムクムクッ……)
大きくなる2つの乳房の間に埋もれて身の危険を感じながらも、どこまで大きくなるのか確かめたいという好奇心とどこまでも乳房を大きくしたいという欲望とが僕に成長を止めさせなかった。
(ガシャン!)
巨大なバストは広いリビングルームの端に置いてあった観葉植物をなぎ倒した。だが、まだ大きさを増してゆく。
「鉢が倒れただけだ。まだまだっ…」
(ムクムクムクムクムクムクムクムクッ……)
ミシッ… ミシッ…
乳房はとうとうリビングの壁と窓ガラスまで到達し、行き場を失った乳肉が玄関ホールやキッチンに溢れ出ようとしている。
乳房の重みと圧力で部屋全体がミシミシと軋み始めていた。
僕はそこで胸の成長をストップさせた。これ以上建物に負荷をかけると床が抜けたり、ガラスが割れてしまいかねない。
高層マンションの高層階でこのような事件を起こしたら大変な騒ぎになってしまう。
残念ながらバストの最大限界には達することができなかったが、部屋いっぱいまで膨らませてもトランスは解除されないことは確認できた。そのことに僕は満足だった。
「元に戻すか…」
(シュウウウウ・・・)
リビングを占拠していた乳房が縮み始めた。膨らむ時よりも縮む方がやや速度は速いようである。見る見るうちに縮小して元の慎ましい少女の胸へと戻った。
僕の中にはもっと乳房を大きくしてみたいという欲望がまだ存在している。機会があれば大きな会場を用意して本当にどこまで膨らむか試してみたいと思った。
「アイガールを何体か集めて膨乳できる大きさを競う大会なんてどうだろう?ごく一部のマニアにしか受けなさそうだけど…」
世間にほとんど出回っていないアイガールの所有者の中でそんな大会に出てくれる人がいる可能性は低い。
「まてよ。膨乳だけでなく膨腹や膨尻、巨体化、肥満化などのジャンルを作ればそれなりのマーケットになるかもしれないな…」
ただ、アイガールをもっと宣伝して認知度を上げ、本体価格を車一台分くらいに下げないとユーザーは増えていかないだろう。
もっと廉価なアイガールが開発されるよう今後の技術の進歩に期待しよう。
もう1つの新機能、常時トランス機能は今夜寝るときに試すことにする。これからは寝ても覚めてもアイガール"はるか"で過ごすことが可能になる。
なお、毎日のトランスレポートはもう来なくなるそうだ。アイデアル・ドール社からの連絡がある時だけ来るということだ。