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BEバトルで3勝した戦士はスリー・スターと呼ばれるそうである。
砦での待遇も少し変化し、鉄格子の窓がある小部屋よりもう少し広く明るい部屋が充てがわれるようになった。
一般的な宿屋にあるような部屋には寝心地の良いベッドと簡易のテーブル、イス、ランプが備え付けられてある。小さなクローゼットがあり、そこにバトルのコスチュームが収められるようになっている。
牢屋のようにいつも見張りがいるわけではなくときどき警備兵が様子を見にやってくる程度になった。
警備の隙をついて逃げ出せそうだけど、既にマグノロワの多くの人々に顔を知られてしまったので逃げても捕まってしまうだろう。
また夜会があって出かけていくと、わたし達は人気歌手や踊り子のように盛大な拍手で迎えられた。
招待されたのはわたしを含めて4人の戦士で、真っ赤なドレスのサマンサ・ニールス、紫のワンピースのサラ・アルベルト、そして、白いドレスのミーナ・ジェッタと一緒だった。
美人度ではサマンサとミーナが飛び抜けていて声援が特に大きかった。ファンクラブなんかも出来ているみたいで、熱烈なファンが会場に押しかけていた。
応援する戦士の色の服や持ち物を身につけるのが流行っているみたいで、街中で売られているグッズを買ったり、中には自作する人もいるそうだ。
なんと!わたしのファンもいるみたいでブルーの星や花の形をかたどったブローチやペンダントをつけた人たちもいた。
歓迎されるのは正直に言って気持ちが良かった。3勝でこれなら勝ち進んでいくとどうなるのかと思ってしまう。
*
砦に連れてこられてからひと月が経った。
健康診断を受けることになり医務室へ来るように言われた。魔法による体へのダメージがないかなどを検査するそうだ。
「1177番、マリカ・マルベリー!」
「はい」
服を脱いでカゴに入れ、医務室の前で下着姿で待っているとしばらくしてわたしの名前が呼ばれた。
「では、まずこちらで身体測定を行います…」
医務室には男性の医師と女性の助手がいて、助手が指差した場所に立つように言った。
木製のスケールで身長を測り、ハカリで体重を測定した後、巻尺をわたしの胴に巻き付けてサイズを測った。
「バストは…73、ウエスト…56、ヒップ…80ね。」
「あ、あのう?」
「なんですか?」
「バストをもう一度測ってもらっていいですか?」
「なぜ?……73、同じよ」
「やっ、やったー!大きくなってる!わーい!やっぱりおかしいと思ったのよね、この歳にもなって全然胸が膨らんでこなかったから。とうとうおっきくなり始めたんだわ!」
「プ、プラス1だけど…よ、よかったわね」
「このペースでいけば80台、いえ!もしかしたら90も夢じゃないかも!」
「はいはい、わかったから先生の診察を受けてください。」
白髪の医師の前でイスに座り、シンプルな白い布のブラジャーを下から捲り上げる。
真っ平らの胸を男性の前で晒すのはもちろん抵抗があるけど診察だから拒否はできない。
先生は聴診器を当ててわたしの心臓の音を聞いた。
(ひゃっ…)
「うおっほん。興奮してかなり心拍数が高くなっているようじゃが…心音に乱れや雑音はない。異常ナシじゃ。」
「ありがとうございます。」
わたしはブラジャーを下ろし、再び簡素な布の服を着てから部屋へと戻った。
胸が少し大きくなっている、という事実はわたしの心を明るくした。BEバトルでは不利になってしまうけど、せめて標準くらいまでには育ってくれないかなと思う。
*
次のバトルの相手が発表された。
わたしはサラ・アルベルトと戦うことになった。彼女はわたしよりひとつ年下、髪は銀色のショートヘアで目がぱっちりと大きく、年齢よりもさらに幼くみえる。背はわたしよりも低い。
イメージカラーはパープルで、バトルでは裾の広がった紫色のワンピースを身につけている。首に巻いた黒いチョーカーが乙女っぽさを醸し出している。
カードの構成は3戦目と同じ。ボム、ハイボムをどちらかどのタイミングで引くかが勝負を左右すると思われる。
*
「いや〜、先程の試合の余韻がまだ鳴り止みませんが、続いての試合に移りましょう!!第2試合!!戦士の紹介をいたします!!まずはイーストサァーイドォ!!マリカ・マルベリー!!」
(ドワァーーーッッ!!!)
コロッセウムの観客席は今日もびっしりと埋まっている。
「マリカ・マルベリー、16歳。イーグル地方出身。商家の生まれ。可憐な見た目と優秀な頭脳を併せ持つイーグルのブルースター。身長は152。スリーサイズは上から73ー56ー80!!」
(キャーーーッッ!!!)
「続いて、ウエストォーサァーイドォ!!サラ・アルベルト!!」
肩にかからないほどの短い銀髪を揺らしながら小柄な少女が登場した。
パープルのワンピースの裾が風にひらひらと煽られている。
「サラ・アルベルト、15歳。ザース地方出身。元高等学校生。風やまぬ高原に咲く貴きクレマチス。身長148。スリーサイズは78ー58ー82!!」
(ワァーーーッッ!!!)
サラはわたしよりも小柄で華奢に見える。
なのに、バストサイズはわたしより上というのはちょっと納得がいかない。
「それでは、マジックスクリーンにご注目ください!!掛け率はどうでしょうか!?」
掛け率
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マリカ・マルベリー 1.6
サラ・アルベルト 2.0
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デポジット
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賞金 9000s
チップ 4731s
合計 13731s
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「おおっ!両者均衡していますが、マリカ・マルベリーが1.6倍と人気です!年齢や体格、これまでの実績から実力はほぼ互角と思われますが、バストの差が表れているのでしょうか!?」
うっさいわね!いちいち言わなくていいじゃない!
「このバトルの賞金は9000シリング、チップは約4700シリングも集まっています!これは両者の人気の高さを示しているでしょう!
さあ!まもなくバトル開始です!では、これよりフィールド上にエクスクルーシブ・エリアを設定します。」
バトルフィールドの周囲を半透明の魔法の壁が取り囲んだ。それと同時に観客席が見えなくなり、歓声のボリュームが小さくなった。
「それではコインを投げます」
(ピィーン……)
「Eが表!イーストサイドのマリカ・マルベリーの先攻です!さあ!それでは!バトル開始!!」
〜バトル開始〜
「では、まず2人の配札を見てみましょう!
【マリカの手札】
『マムクム』『ドバイン』『バイバイン』『エンジェル』『フリーズ』『成長ホルモン』『ミニマイザーブラ』
【サラの手札】
『ムクラ』『デバイン』『デカバイン』『デクライン』『マジックバリア』『豊乳サプリ』『天使のスポブラ』
両者ともにボム系のカードはありません!どこで引くかが勝負の分かれ目になるでしょう!マリカのバイバインは強力魔法、しかし、サラにはデクライン、マジックバリアと防御能力の高いカードが揃ってます!
サラはそれら2枚を場に伏せました。マリカもエンジェルとフリーズを伏せて準備完了!」
〜1ターン目〜
マリカは場に伏せた"エンジェル"をオープンしターン終了。
サラも場に伏せた"デクライン"をオープンしターン終了。
「両者とも防御を固めます!ただし、マリカのエンジェルは相手の攻撃を10〜40%低減しますが、サラのデクラインは20〜60%と軽減効果は上になります!」
〜2ターン目〜
マリカは場に伏せていた"フリーズ"を発動。
「戦士マリカ、フリーズを発動させて相手のデクラインを無効化します!これはいい選択だ!」
サラの攻撃 "豊乳サプリ!"
「まずは豊乳サプリでじわじわと攻めます。毎ターン5%ずつバストを増加させるカードです!」
[マリカ:B73→77]
〜3ターン目〜
マリカの補充カード『豊乳サプリEX』
マリカの攻撃"豊乳サプリEX!"
「戦士マリカ、やり返します!豊乳サプリEXは毎ターンごとに10%バストが増加します!」
[サラ:B78→86]
サラの補充カード『ムクムーン』
サラの攻撃"ムクムーン!"
「行ったぁ!ムク系最強魔法!激しい黄色い光が戦士マリカを襲う!エンジェルの作用で少し軽減されますが…」
(むくむくむくむくむくむくむくむくむく・・・)
「慎ましかった胸元が大きく盛り上がり、ブルーの衣装を押し上げます!」
[マリカ:B77→115]
「プラス38!そして、さらに豊乳サプリの効果も加わったぁ!」
[マリカ:B115→121]
〜4ターン目〜
マリカの補充カード『ボム』
「おおっとぉ!ここで、戦士マリカが強い引きを見せたぁ!ボムを手札に加えます!」
マリカの攻撃"マムクム!"
「いきなりボムは使わない!相手のマジックバリアを警戒しているのか!?」
(むくむくむくむくむくむくむくむく・・・)
「戦士サラの胸元も勢いよく盛り上がっていく!バスト+30〜!そして、豊乳サプリEXの効果ものしかかる!」
(ググッ……ビリビリビリーッ!!)
「乳圧に耐えかねて紫の衣装に亀裂が入ったぁ!サラは裂け目を手で覆ってバストを隠している!」
[サラ:B86→116→128]
サラの補充カード『ハイボム』
「ぬあぁんと!戦士サラもここで凄い引きを見せる!ボムよりも強力なハイボムだぁ!これをどうするんだ!?」
サラの攻撃"ハイボム!"
「行ったぁ!すぐさまハイボムを仕掛けた!魔法の導火線が現れ、それに炎が灯る!さぁ、4ターン後には発動しバスト+300だがマリカになす術はあるのか!?」
[マリカ:B121→127]
〜5ターン目〜
マリカの補充カード『縮乳ブラ』
マリカは"ミニマイザーブラ"をディスカードし、"ボム"を使用。
「ここでまたしてもマリカがやり返します!ボムは2ターン後に発動。ハイボムよりも先に攻撃が出来ます!
なお、ブラのカードはターンを消費せずにディスカード、つまり、捨てることができます!より効果の高いブラカードを手にしたときに有効なテクニックです!」
サラは"マジックバリア"をオープン。
「ここで戦士サラは場に伏せていたマジックカードを開き、ボムをキャンセルします!プラス100を喰らえば堪まったものではありません!よい選択でしょう!」
[サラ:B128→141]
[マリカ:B127→133]
〜6ターン目〜
マリカの補充カード『マムク』『特製ドリンク』
マリカの攻撃"バイバイン!"
「ここで戦士マリカ!とっておきのカードを切ったぁ!バストサイズ2倍の強力魔法だぁ!真っ赤な炎がサラに襲いかかってゆくが…んーっ!なすすべがなーい!」
(むくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむくむく・・・)
「戦士サラのバストがものすごい勢いで膨れ上がってゆくーっ!」
(ビリリリリリーーッ!ブルルンッ!)
「巨大化した乳房が溢れ出す!支えられるか!どうだぁ!?」
[サラ:B141→282]
「さらに豊乳サプリEXの効果が追い討ちをかけるーっ!」
(ぐぐぐんっ!)
[サラ:B282→310]
とうとうサラは乳房の重みを支えきれずになり前のめりになる。
「ズッシーーーンッ!!」
「勝負あり!勝者、マリカ・マルベリー!!何という強さでしょう!終始相手を圧倒していたと感じます!ボムを捨てゴマにして相手のマジックバリアを消費させ、切り札のバイバインを確実に決める戦術はお見事と言うしかありません!」
(ワァーーーーーーッ!!)
(ワァーーーーーーッ!!)
エクスクルーシブ・エリアが解け、大歓声が耳に届いた。
「マ・リ・カ!、マ・リ・カ!・・・」
シュリーンで胸が元に戻された後、巻き起こったコールに手を振って答えながら花道を通って退場した。
「あーっと!会場にはマリカ・コールの大合唱が起こってます!戦士マリカ、それに応えながら退場していきます!
サラは大きな胸を観衆の前に晒したまま呆然としています。早速、彼女を引き取りたいという申し出が寄せられているそうですよ。立派なお屋敷のメイドとして働くことになるのかも知れませんね…詳しいことはわかりませんが。さぁ、それではこの辺で!また、お会いいたしましょう!」