森エルフさんの巨乳願望

ブラン 作
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15 エルフの歴史

私が叔父さんの家にやって来たのは三月の初めでしたからもう半年が過ぎました。
私の両親は伝統的な森エルフですが、年々森での暮らしが制限されていく中で子供に街エルフの生活を経験させたいということで一年間の約束で私を叔父さんの家に預けました。
私にとって街での暮らしは驚くことばかりです。人間は家や車、服、食料などたくさんのものを産み出してすごいペースで消費していきます。
それは便利である反面、少し慌ただしさを感じます。すべてのヒトが元気に楽しく暮らしているのならいいのですが、何かに追い立てられて苦しそうにしているヒトもたくさんいます。
森でゆったりと流れる時間のなかで過ごすエルフたちの方が実は豊かに生きているのではないかと時々思うことがあります。

私たちエルフはヨーロッパ北部に棲む森の精霊と言われていますが、古い祖先を辿っていくと元々は人間と同じだそうです。
いつから枝分かれしたのかははっきりしませんが、ちょっと不思議な能力を持った私たちの先祖が森の中で生活を始めたのが最初のようです。
大昔、人間の中には私たちと同じようにまじないを使える人はいたそうです。それらの人たちは時には人間の支配者となったり、時には気持ち悪がられて追い出されたりしたそうです。
私たちの先祖も人間界で行き場を無くし、森で生活を始めたのではないかと考えられています。
先祖は森の奥で鳥や獣を獲って暮らしていました。エルフが弓矢に長けていると言われるのはそのためかも知れません。また、静かな森で微かな音を聞き分けるために聴力がとても進化したと言われています。
人間の描くエルフのように耳は尖っていませんが、よく聞こえるのは事実です。
先祖たちは次第に鳥や獣は獲らなくなってきます。動物を食べなくても木の実やフルーツ、野草、キノコなどを食べるようにも進化したからです。
エネルギーの摂取と消費を抑えることで人間と比べてとても長い寿命を手に入れました。それと引き換えに、身体は細身になり、力強さは失うことになりました。
人間たちは互いに争いながら勢力を拡大していきましたが、深い森の奥まではその力は及びませんでした。
私たちエルフは人間との争いを避けて深い森で静かに暮らし、自分たちだけで生き残る戦略を選んだのです。
エルフは長い時間をかけてゆっくりと勢力を伸ばしました。ヨーロッパ北部を出発点にして、ロシアやウクライナ、中央アジア、そして、東アジア、日本にまで拡大してきました。
エルフ全体の正確な数はわかりませんが、数万とも数十万とも言われています。
私たちの祖先がロシアからサハリンを経由して日本にやって来たのはおよそ1500年前と言われています。当時、日本に住む人間の数は今よりもずっと少なかったそうです。
それが400年ほど前から徐々に増え始め、百数十年前からは急激に増えました。
森は切り開かれて田畑や住宅地になり、エルフは森の奥へと移住しなくてはならなくなりました。
また、住む場所に困った少数のエルフが街で人間に混ざって暮らし始めたのもこの頃です。彼らがいわゆる街エルフの先駆けになるのです。
日本では森エルフよりも街エルフの数の方がかなり多くなっていると言われています。
街エルフたちはまじないの力を使って決して人にバレないように上手に暮らしています。
まじないには強いまじないと弱いまじないの二つがあります。強いまじないは強力ですが反作用も大きいためほとんど使われません。
また、ごく一部のエルフにしか伝授されません。弱いまじないは炊事や洗濯、掃除、裁縫から、言葉を信じ込ませるたり軽く混乱させたりするもので数え切れないほどたくさんあります。
街エルフたちはそれらを巧みに使いながら人間の社会に溶け込んで暮らしているのです。
今後も街エルフ化はどんどん進むでしょう。人間の便利な暮らしに慣れてしまうと元に戻ることは難しくなると思います。
ですが、エルフが蓄積してきた森の知識やまじないの文化は絶やしてはならないと私の父は言います。
私は半年後には森に戻ります。森に帰って元の生活に戻れるかどうか私自身も少し不安です。