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二日間の研修が終わり、いよいよ教壇に立つ日がやってきた。僕が受け持つのは峯山学園高等部の3年8組。生徒の数は30人。学園ではクラスの生徒数を少なめに抑えることで、一人一人の育成に目を届きやすくしているそうである。3年は12組まであり1学年の生徒数は約360人となる。
初等部で育乳の下地を整え、中等部で大きく豊かに発育させ、高等部では肥育を行ないさらに豊かに実らせるというのが大まかな方針であるが、その中で高等部3年は肥育終盤の大切な時期である。
通常、峯山では肥育・減量を数サイクル行う繰り返し肥育法を採用しており、個人ごとに最適なサイクル数と期間を設定する。それらを肥育パターンと呼ぶが、パターンの近い生徒たちを同じクラスに集め効率的な育乳を行っている。
8組の生徒の場合、1年生の10月から肥育を始め、2年生の前期は減量、後期は肥育を行った。3年生ではこれまでの肥育で太った身体をゆっくりと絞っていくのが目的で基本的に一年を通して減量という計画になっている。
胸の高鳴りを抑えながら檜原さんと共に8組の教室に入った。雑談で騒々しかった教室が一瞬で静かになった。檜原さんは2年生の頃からこのクラスを受け持っており生徒とは既に馴染みがある。
「はーい!注目!今日は今度新しく峯山学園に来られた先生を紹介します!平野先生です!」
檜原さんの紹介の後、僕は教壇に上がった。
生徒全員の視線が僕に集まっていた。
黒板がわりとなっているタブレットに専用のペンで"平野大樹"と名前を書いた。
「今日からこの8組の担任になる平野大樹です。大樹と書いて"オオキ"と読みます。前は別の高校で国語の教師を担当してました。教科も国語を担当します。これから一年の間、よろしくお願いします。」
(パチパチパチパチ…)
一人の生徒が拍手してくれたのでそれが誘因となり全員が拍手をした。
緊張が少し落ち着くと生徒たちの顔や教室の奥、窓からの風景が見渡せるようになった。
そして、注目すべきはやはり生徒たちの胸の大きさだった。
(話には聞いていたが…こうやって見ると壮観な景色だな)
教壇の上から30人の女生徒たちが大きな胸を机の上にどっかりと乗せているのがよくわかった。デカい。やはり峯山の3年生は規格外だ。檜原さんからクラスの平均がVカップと聞いていたが実際にそれを目の当たりにするととんでもない迫力なのだ。
「ハーイ!平野先生、質問でーす!先生は独身ですよね?彼女はいるんです?」
その質問はなんと檜原先生からだった。
「え、ああ。独身です。お付き合いしている人はいません。」
虚を突かれて僕は普通にそう答えると女生徒たちが少しざわめいた。若い女性のムワッとした熱量を感じた。
「はい!先生はどんなタイプの女性が好みですか?」
巨大な膨らみをゆっさと揺らしながら一人の女生徒が立ち上がった。
このクラスには既にZカップに達した生徒が5名いるそうだがその一人に間違いなさそうだった。
「そうだな。優しくて癒し系の人がタイプかな…」
「芸能人でいうと誰になりますか?」
「うーん、特に誰っていうのはないけど」
彼女の質問を皮切りに年齢や身長、家族、出身などについての問いが次々に投げかけられた。
「先生は育乳師ということですが、私たちへの指導はあるんですか?」
僕が育乳師であることは既に彼女達に伝わっていたようだった。
「このクラスの育乳指導は檜原先生の担当です。僕は相談に乗ることはあるかもしれないけど直接の指導は考えてません。」
「えーっ、そうなんですかー」
僕がそう答えるとその生徒は少し残念そうな顔をした。女子高生の無垢なバストを揉み込んでみたいという欲望は無きにしも非ずだったが、やはり檜原さんに責任を持って担当してもらいたいという気持ちがあった。
育乳師がバストを触ると大きくなるという迷信があり、この子達はそれを期待していたようだった。
ホームルームの残りの時間を檜原さんに譲り僕は教室の端の椅子に座った。このクラスの子たちは4月から減量期になるためそれについての説明を彼女が行った。
一般的に肥育よりも減量が難しいと言われ、バストのカタチや大きさを維持したまま身体を絞るのには高度な知識と技術が必要である。峯山にはそれらの膨大なデータがありノウハウとして蓄積されている。
最もやってはいけないのは急激な減量である。乳房の9割は脂肪で出来ており身体の中でも痩せやすい部位であるため、大きくバストダウンする危険性がある。そのため月1キロ以下の緩やかな減量が良いとされる。
そのため過度な食事制限などは絶対に禁物だ。体内に栄養素が届かなくなると筋肉が減退し、大きなバストを支える筋力が保てなくなり、サイズが減少したり下垂が起こったりしてしまう。
無理なく体重を絞るためには適度に運動量を増す必要がある。ただ、激しい運動はバストの靭帯を傷つける懸念があるため、峯山ではカロリー消費を把握しやすいエアロバイクによるエクササイズをメインに取り入れている。
だが、どれだけ厳密に管理しても胸だけを維持したまま身体を痩せさせることは理論的に不可能である。
バストダウンを最小限に留めるにはマッサージによって筋肉の張りを緩和し、胸部の血液やリンパの流れを整えたり、胸部の筋肉が落ちないように適切なエクササイズを行う必要がある。
また一方で、空腹状態のときには成長ホルモンの一種であるグレリンの分泌が期待されるため、この作用を活用してバストを大きくする試みも行われている。
8組の生徒は一年間の減量期において各自10〜12キロのダイエットを行う予定だ。
11月には峯山神社の巫女になるための学内選考があり、2月にはその本戦がある。
参加は生徒の自由だが、巫女はなかなかの人気職でありかなり豊満なバストを持っていないと選抜に残ることは難しい。
クラスの中からおそらく3、4人はエントリーするんじゃないか?というのが檜原さんの予想であるが、計12クラスもあるので学年では相当な人数となる模様だ。最近ではZカップ以上がエントリーするかどうかの目安になっているというのは驚きだった。
ところで、檜原さんは生徒達の前で自分も一緒になって減量に取り組むことを宣言した。生徒たちから拍手が起こり、クラスで一体となって減量に取り組もうという雰囲気ができたように感じた。
檜原さんの減量計画は3年生の職員たちにも知れ渡ったが、本気にしない人も多くいた。
どうせ三日坊主で終わるだろうというのが粗方の予想だったが、杉崎先生は彼女の手を握ってその決断をとても喜び、自分も応援すると言ってくれたそうだ。
少し自分に甘いところがある檜原さんを僕だけで見守るのは自信がなかったが、杉崎先生もフォローしてくれるのなら心強い。
もし彼女が今より10キロも痩せたらかなり女っぷりが上がるのではないかと僕も楽しみだ。
僕の本業である国語の授業も始まった。学年に12クラスもあるので大変と思われるかもしれないが、授業はオンラインで行い各教室へ配信する。そのため案外と楽だしその分、準備にしっかりと時間をかけることができる。ちなみに国語だけでなく主要教科は基本、オンライン授業となっており、体育や美術、家庭科、音楽などの副教科は2クラスずつ集めての対面授業となっている。
さて、生徒の話に戻すと、これから僕は30人の顔と名前を覚えるところから始めないといけない。それがあまり得意ではないと言っていると杉崎先生から4月は個人面談を行うことになっているのでその機会にキャラクターを把握すればすぐに覚えられるとアドバイスをもらった。その面談は1週間後から始まるということだった。