13
夏が本格的になり暑い日が続いているが、峯山は高地にあるため茹だるほどの暑さという訳ではなく、時々、爽やかな風が吹き抜けてくれる。
夏休みになれば生徒たちのいくらかは帰省するが、寮に残って過ごす生徒もいるという風に聞いた。学園の寮は案外居心地が良いらしい。
教師たちの夏休みも他の学校や企業と比べると長めに設定されており、一人でどうやって過ごそうかと考えてしまう。峯山の周辺を散策したり、車でドライブしたりするのも良さそうだ。
長期休暇に入る前にやっておきたいことがあった。
先日、檜原さんが言ってた槙野奈々という生徒のことが気になっていたのだ。僕は彼女を育乳指導室へ呼び出し様子を伺うことにした。
「失礼します」
眼鏡をかけた大人しい印象の女生徒で授業でも自分から発言することはほとんどない。ただ、喋らせるとキチンと理路整然と話すので頭のいい子だということはわかる。制服を突き上げているのはZカップに成長した膨らみ。見た目に反して挑発的とも思えるほど衣服を張り詰めさせている。
目の前の椅子に座るように言うと彼女は言われた通りに座った。
「檜原先生から聞いているんだけど、最近胸が痛むとか。今はどうですか?」
「あ、はい。今も少し…」
「医者には見せましたか?」
「はい、一応… でも特に異常ではないのでしばらく様子を見て下さいと言われました。」
「そうなんだね。どの辺が痛みますか?」
「全体的に…なんですけど、脇の方とかも時々ズキッてなるんです。」
「少し見せてくれるかい?」
「はい」
彼女は立ち上がり、僕に背を向けてから制服の上を脱ぎ始めた。白い背中と淡いブルーのブラのバンドが見える。7、8段になっているブラのホックを器用な手つきで外していくと巨大なZカップ乳が解放される。
(ゴクッ…)
八畳ほどの広さしかない指導室にはテーブルとイス、そして保健室にあるような簡易なベッドが置いてある。その中で教師と生徒が2人きり。生徒は衣服を脱ぎZカップのバストをこちらに向けようとしている。
教師であり育乳師である僕は彼女を自由に弄ぶことも不可能ではないが、そんなよからぬ想像をするのはやめて真剣に彼女の痛みの原因に頭を巡らせていた。
医師ではないのでもちろん診断はできないが、育乳師としての知識である程度のことなら分かるはずだ。
槙野さんは僕と向き合うと手で押さえていた淡いブルーのブラジャーを取った。
(ぶるるんっ)
この学園に来て現役女子高生の生乳を目にするのは初めてのことだった。美しい白い肌の大きなZカップ乳。触らずとも張りと弾力に富んでいることが見て取れる。
眼鏡の奥の彼女の瞳には不安の中に期待が込められているように見える。
「触診させてもらっていいかい?」
「はい」
彼女も僕が育乳師であることは当然知っており、触られることに抵抗はないようだった。
育乳師に触ってもらうと胸が大きくなるという迷信があり大抵の女性は胸を進んで差し出してくる。
(ぷにゅっ)
生徒の胸を触るのは初めてのことである。
これまでにクラスの生徒から何度か触ってもらえないかと言われたが断っていた。教師としてどの生徒にも平等に接さねばならず、ある生徒だけ特別扱いにするわけにはいかなかったからだ。槙野さんの場合はトラブルを抱えているわけだから例外としていいだろう。
(もにゅん)
やはり弾力がすごい。
これほどの大きさの乳で脂肪もかなり乗っているのに手を弾き返すような弾力は若さゆえのことだろうか。
滑らかな白い柔肉を指で押しながら、乳腺の張り具合やしこりの有無、痛みの箇所などを確認していく。
これほどの重さのバストを保持する胸筋にもトラブルがないかという観点でも触診をしていく。
(むにゅっ)
「ここはどうですか?痛みを感じますか?」
「はい、少し…」
「痛みはいつ頃からですか?」
「6月の始めくらいからだったと思います。」
やはり乳腺の張り方がおかしい。
高校3年生ではなくまるで成長期の中学生のような張り方をしているのだ。
4月から減量期が始まり、彼女も他の生徒と同じく順調に体重を減らしていた。5月、6月の身体測定結果にも特に異常なところはない。7月になってYからZカップへと大きくなった。乳腺の張りが増したためだろうか。
(ぽにゅっ)
「ありがとう。もう胸を仕舞っていいよ。」
触診の手を止めて僕は槙野さんに言った。
残念ながら僕では彼女の痛みの原因を掴むことは出来なかった。やはり専門の医師に相談するしかないのだろうか。僕はまず学年主任の杉崎先生に相談してみようと思った。経験豊富な彼女なら何か適切な方法を知っているかもしれないと思ったからだ。
僕の手には彼女の温かで滑らかな肌と弾力に富んだ乳房の感触が残されていた。
*
その後、杉崎先生に槙野さんのことを相談してみたがやはり専門家に相談した方がいいとの結論になった。
槙野さんがどんな医者に診てもらったが知らないが、普通の内科などでは何もわからない可能性がある。それよりも研究棟にはバスト専門のドクターがいるのでその先生に診てもらう方が確実だという意見だった。
「研究棟ですか… この学園の奥の方ですね」
「ええ。そう言えば平野先生にはまだ研究棟を案内してませんでしたね… ちょうどいい機会ですので私が一緒に行きましょう。」
杉崎先生が研究棟の先生にアポイントを取った上で、僕と槙野さんを連れて行ってくれることになった。
研究棟には限られた人間しか入ることが出来ず、入るには事前の申請が必要である。それも杉崎先生がやってくれるとのことである。
アポは翌日に取れたため槙野さんにそのことを連絡し、予約の時間に来るように言った。
*
峯山学園の研究部門はいくつかの科に分かれていて、僕たちが訪れるのは医学をベースに新しい育乳法などを研究しているセクションである。
バストに特化した診察も可能であるが主に学園の生徒だけに限っており外来は受け付けていない。言わば保健医のような位置づけである。
「これがゲスト用のIDカードよ。扉の横のリーダに翳してくださいね。」
僕たちは研究棟に入るためのIDカードを杉崎先生から受け取り、入口の扉にかざして重厚な建物の中に入った。
杉崎先生が前を歩き、その後ろを僕と槙野さんが並んで歩いた。槙野さんも研究棟に入るのは初めてということで少し緊張の面持ちだったが、それよりも僕の方が峯山学園の頭脳の中枢に足を踏み入れるということで緊張と興奮に包まれていた。ただ、それぞれの科はまた別の扉の向こう側となっておりその中を窺い知ることは出来なかった。
建物の中はまるで宇宙船の中か何かのように無機質な廊下が続いており窓などもなかった。
医学科の扉を開けて入るとそこはよくある病院のような造りになっており、受付がありその前に長椅子が並ぶ待合スペースがあった。
ただし、受付には誰もおらず杉崎先生がカウンターに置かれた内線電話を使って誰かに連絡を入れた。
「しばらくそこに座って待ちましょう。」
3人で5分ほど長椅子に腰掛けて待っているとコツコツと足音が廊下に響くのが聞こえ、白衣を着た女性が現れた。
「お待たせして申し訳ない。杉崎先生、ご無沙汰してます。」
「こちらこそ、忙しいのにごめんなさいね。こちらが3年8組担任の平野先生、そして生徒の槙野さんよ」
僕と槙野さんは立ち上がってその女性に会釈をした。杉崎先生とは親しいようで、歳は30歳代の後半、言葉遣いからも杉崎さんより年下であることがわかった。そして、白衣を押し上げているバストは杉崎先生に劣らない大きさで、5Zか6Zほどありそうだった。
「あまり時間がないのでついて来てください。ああ、槙野さんだけで良いわよ。状況はだいたい聞いてわかっているから…」
女性医師は槙野さんを連れて廊下の奥の部屋へと入っていった。僕と杉崎先生はその場に残された。
「あの方とはお知り合いなんですね?」
「ええ。長いこと学園にいると様々な知り合いができるのよ。ここの医師は学園の校医を掛け持ちしてるから時々、保健室や測定室で顔を合わせたりするの。」
「しかし驚きましたよ。学園の研究棟がこんな立派だなんて。」
「そうね。単なる学校法人でこれだけの研究施設を整えているのは峯山くらいじゃないかしら?もちろんほとんど峯山グループが資金を出しているわけだけど、それだけじゃなく国の補助金を受けたり、他の企業から資金を募ったりもしているわ」
僕と杉崎先生は椅子に座って雑談をしながら槙野さんの診察が終わるのを待った。
普段、職員室に居るとなかなか2人きりでこうやってゆっくり話す機会もないので僕としては楽しい時間だった。
「ところで先生は夏休みにどこかへ行く予定とかはあるんですか?」
「お盆に少し実家に帰る予定だけどそれくらいかしら。新学期の準備もあるから時々学校にも出てくるつもりよ。」
学園主任となると責任も重く、様々な企画や調整ごともすまさないといけないので大変そうだ。その点、一年契約で採用されている僕は気楽なものだ。
「峯山高原は避暑地として有名ですから夏場はどこも混むんでしょうか?」
「そうねえ。毎年、幹線道路は渋滞するし、多和輪湖は特に人でごったがえすわね。」
「そうですか… 一人でヒマなんであちこち回ってみようかと思ってたんですが…」
多和輪湖の周辺は10年ほど前に峯山グループが大規模なリゾート開発を行い、我が国を代表する避暑地の一つとして大々的に宣伝しているので全国から旅行客がわんさとやってくるのだ。
「峯山を離れればそんなことないんだけどね。たとえば隣りの豊丘市まで行けばそんなに混雑しないし、ひまわり畑なんかも綺麗なのよ。」
「豊丘も良いところだと聞いたことがあります。なだらかな丘陵地にある高級住宅地は有名ですよね。」
「ええ。公園や美術館も充実してるし、多和輪湖ほど広くないけどとても綺麗な湖もあるわ」
「では2人でそこへ行ってみるのはどうでしょうか?」
「あれ?もしかしてお誘いなのかしら?」
「はい」
「…お任せしますわ。」
杉崎先生にデートの約束を取り付けたところで女性医師が槙野さんを伴って診察室から出てきた。診察が終了したようだった。
「お待たせしました。特に病気のようなものではなさそうですが、槙野さんの診察結果が出るまで少し時間がかかると思います。様々なデータを取らせてもらいましたので解析におそらく1週間ほどかかりそうです。結果が出たら平野先生に連絡させていただきます。」
僕たちは医師に礼を言って医学科を後にした。
正直なところその場で診断がなされると思っていたが、1週間必要というのは意外だった。杉崎先生も同じように思ったのではないだろうか?
槙野さんには不安を与えないよう何も言わなかったが、医師からしても難解な症状なのではないだろうか。
*
一週間後、先日の医師から連絡があったので僕は槙野奈々を伴って再び医学科を訪れた。
受付と待ち合いのロビーを抜けて通されたのはアンティーク調のテーブルや椅子、本棚などが置かれた応接室のような部屋だった。
「平野先生と槙野さん、どうぞおかけください。」
部屋に入ると先日の女性医師がいて僕らに椅子に腰掛けるようにと言った。
部屋の中にはもう一人、白髪の老紳士が椅子に腰掛けていた。見たところ60歳台の半ば。痩身で頬はこけている。
老紳士は槙野さんの方を見てゆっくりと口を開いた。
「こんにちは。私は真壁と言います。検査の結果ですが・・・心配することはありません。しばらくすれば胸の痛みは収まってくるでしょう。」
僕は真壁という名には聞き覚えがあった。
いや、聞き覚えというレベルではなくこの業界でその名を知らない人間はいないだろう・・・真壁隆盛。
まさか、この方が真壁先生本人なのか?まだ峯山学園におられたというのか?
「胸の痛みはホルモンバランスの影響です。胸が大きくなり始めるときに経験したことがあるかもしれませんが、それと同じことが今も起こっています。」
峯山学園の育乳研究の重鎮。創業者峯山一郎の意志を継ぐもの。肥育の専門家であり、数々の育乳法の研究と実践にとてつもない貢献をもたらした研究者。既に定年を迎えて引退したと聞いていたが。
「検査の結果、槙野さんのホルモン値は通常よりも遥かに高い値を示していました。つまり、槙野さんの胸は再び成長期を迎えていると考えられます。」
再成長?そんなことが起こり得るのだろうか?
しかし、この紳士が本当に真壁隆盛本人であるならそんなバカげた話にも信憑性が芽生えてくる。
「通常であればバストの成長は12〜15歳でピークを迎え、その後はあまり成長しなくなります。しかし、非常に希なケースですが何かの条件が整うと再び成長し始めることがあるのです。それを我々は『再成長』、リ・グローイングと呼んでいます。」
槙野さんは真壁の方を見ながらじっと話を聞いていた。
「では、先生。槙野さんの胸はまだまだ大きくなる余地があるということですか?」
僕は堪らず真壁隆盛に向かって質問をした。彼は僕に視線を向けて静かに答えた。
「いかにも」
「どのくらいの期間継続すると考えればよろしいのでしょうか?」
「わからない。なにせデータが少なすぎるのだ。1ヶ月かもしれんし、1年以上続くのかもしれない。」
「現在は減量中なのですが、減量は一時中断する方がいいでしょうか?」
「そうだな。体重は落とさない方がいい。減量食はやめて成長食に切り替えるべきだ。しかし、適度なエクササイズは継続した方がよい。運動後の空腹感が成長ホルモンの分泌を促している可能性がある。」
「わかりました。」
「君はいい目をしているな。平野くんと言ったかね?槙野さんの体調は定期的に私に報告してもらえるかな?」
「はい!承知しました。」
*
僕と槙野さんは真壁先生の研究室を後にした。
そして、彼女を送り届けると僕は職員室へと戻った。
思いがけず育乳界のレジェンドに対面できた僕はしばらく興奮が冷めやらなかった。
「真、真壁隆盛先生がいらっしゃったんですよ!」
僕は職員室で杉崎先生に先ほどの様子を報告すると彼女は冷静に答えた。
「まあ、わざわざ真壁先生が出てこられてたんですね?」
「まさか、まだ学園にいらっしゃるとは思ってなかったんで。驚きましたよー」
「定年後も顧問として学園に残られてます。ほとんど研究室から出てこられませんけれど。」
杉崎先生の表情にも真壁先生に対する尊敬の念が表れているのが見てとれた。
檜原さんも会話に口を挟んできた。
「あっ!あのお爺ちゃん先生のことですね?あの人、そんな凄い人だったんですか?」
「檜原先生!まさか真壁隆盛のことをちゃんと知らないんじゃないでしょうね?峯山学園の育乳メソッドは全て先生の手が掛かっていると言っても過言じゃないくらいなんだから!」
「まっ、かべ先生ですよね。ヤダな、もちろん知ってますよっ、平野先生!新人研修のときの講師でしたから。」
「うおっ!檜原さんは真壁先生から直々に教えを受けたのか!?なんて羨ましい・・・」
檜原先生は怪しい気がするが、とにかく峯山学園の名を知らしめた貢献者として一番に名前が上がるのは真壁隆盛で間違いないだろう。
育乳に適性のある遺伝子パターンを見出したことは有名だが、成長期の終盤に肥育を行うことを提唱したのも彼である。肥育後にバストダウンさせずに減量する手法も先生の研究成果である。
近年、当たり前になりつつある『幼少期の育乳指針』や『繰り返し肥育減量法』も真壁の理論を元にしたものである。
20年前、世の中に衝撃を与えた日本一バストの大きい高校生、國場ゆうこを育てたのにも彼が大きく関わっている。当時、育乳師の香川透が國場の胸を5Zまで育て上げたとして大きく報道されたが、真壁先生の協力があってこそ達成できた偉業である。理論派の真壁、実践派の香川が2人でタッグを組んだことで化学反応が起こり、創業者峯山一郎の悲願であった"Z超え"を我が国で初めて実現することができたのだ。
その育乳界のレジェンドにお会いすることができたこの日を僕は一生忘れることがないだろう。しかも、槙野さんの体調を定期的に報告するように言われたため、先生と再び対面して育乳論を聴かせてもらうこともあるかもしれない。
「平野先生?帰ります??杉崎先生はもうとっくに帰っちゃいましたけどー」
「あれ?いつの間に?人が居なくなってる…」
「帰るなら車で送りますよー。ところで平野先生は夏休み、どこかに行かれるんですかぁ?」
あと数日で夏休みに入る。
杉崎先生とのデートの計画があるが、そのことは言わずに特に何もないと僕は答えた。僕たちは職員室を出て檜原先生の車がある駐車場の方へと歩いた。
「ふーん、じゃあ、夏休み中も峯山に居られるんですね??じゃあ、いつものマッサージはやってもらっちゃっていいんですか?」
「そうだね。全然いいけど」
「それじゃあ、先生ん家に行きますね!私ん家に来てもらっても構わないですけど!」
「もちろん、来てもらって構わないよ。女性が来るならキチンとしとかなきゃダメだな」
峯山にやって来て4ヵ月ほどになるが、僕が住んでる家にはまだ引っ越しの段ボールがいくつか放置されている。人を呼んだこともまだないのであまりキレイにはなっていない。
檜原先生はお盆の週に実家へ帰るほかにも、友達と海や山、街へと出掛ける予定をたくさん入れているらしい。ただ、付き合っている男性はいないみたいだ。もしいるなら僕を家に呼んだりはしないだろう。