無色 その3

橙 作
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「・・・・・・という訳で、今に至る」
「はぁ・・・・・・」
あまりに突拍子も無い展開に、ハッセルバインクはついて行くだけでやっとだ
「つまりあれだろ・・・・・・お前は、グジョンセンに別れの挨拶をするために、戻ってきたって訳だな?」
「そういうことです」
「ふーん・・・・・・」
「わかっただろ。そろそろ帰ってもいいか?」
「待てよ。それで、グジョンセンにもう正体は言ったのか?」
「いや、それがさ・・・・・・」
ラニエリは、いきなり深刻な顔になった
「あいつに俺の正体を言うって事は・・・・・・あいつはまた俺と一緒に居れるって思うわけだろ?」
「ああ」
「それなのにだぞ?また3日したら強制的に別れちまうなんて、あいつにとっても、悲しすぎると思わないか?」
「まあ・・・・・・そうかもな」
「だからさ・・・・・・正直、迷ってるんだよ、俺」
「複雑だな・・・・・・」
「・・・・・・ああ」
重い雰囲気を残して、ラニエリは「現」自分の家に帰った

「はあ・・・・・・やれやれ」
ラニエリは、ようやく自分の家に戻ってきた
女になっての初めての日も、ようやく終わろうとしている
大きい胸には結構慣れた。トイレは・・・・・・まだちょっと戸惑う
「・・・・・・明日は、どうしようかな・・・・・・」
ふと窓の方を見る。グジョンセンの家の窓から、家の中が見える
よくは見えないが、まだちょっと沈んだ様子だ
「まあ、そうだろうな・・・・・・」
もしかしたら、彼女をもっと辛い不幸のどん底に落としてしまうかもしれない
そう考えると、ラニエリはなかなか行動を起こせなかった
ベッドの上で体育座りをして考え込んでしまう
むぎゅ・・・
柔らかい胸が顔とひざに当たる
「・・・・・・」
それを意識すると、ついつい今の重い状況も忘れてしまう
「しかし・・・・・・でか過ぎだろ・・・・・・これ」
胸を包み込むように手を当てる。弾力も申し分ない、立派な胸だ
「これって・・・・・・あいつの趣味なんかな・・・・・・」
頭の中に女神の姿が思い浮かぶ。そういえば、あの人も超乳の持ち主だった
ラニエリは胸を優しく揉む。その度に、指が乳肉に埋もれていく
「あうっ・・・・・・」
思わず喘ぎ声を上げる。その声に驚いて、ラニエリは手を胸から離す
「何だ今の・・・・・・本当に俺の声か?」
想像もしなかった自分の女らしい声に、ラニエリはちょっと自己嫌悪に陥った

翌朝、ラニエリが戻るまで今日を入れてあと二日
グジョンセンは、いつも通り、朝早く目覚めた
朝起きたばかりなのに気分が重いのは・・・・・・きっと、まだクディチーニの死を引きずっているからなのだろう
グジョンセンは、ベッドから起き上がろうとしたが、いつも通りに行かない
胸が重いのだ
「あ・・・・・・そうだった・・・・・・」
力を入れて起き上がって、胸に手を触れてみる
一夜の内に消えた、なんて事はない。ちゃんと胸はある
胸が大きくなったことが夢でもないことを確認すると、グジョンセンは軽く微笑んだ
しかしここで、彼女にある問題が起きた
「んっ・・・・・・きつい・・・・・・」
グジョンセンの家には、彼女の爆乳を包み込める服がなかったのだ
それもそうである。彼女は、昨日までド貧乳だったのだから・・・・・・
しかし、その苦労も、乳がでかいゆえの苦労だと考えると、グジョンセンは、少し嬉しくなった
やっとの事で服を着ると、グジョンセンは、鏡の前に立って、自分のスタイルを確認した
胸の部分の生地がギリギリで、今にも破れそうな服
しかしそれでも、乳首の部分は完全にガードできず、盛り上がっているのがわかる
グジョンセンは乳首を弄ろうかとも思ったが、止めておいた。朝からでは、ちょっとまだきつい
そして隣の家でも、同じような事が起きていた

「んあ・・・・・・朝か・・・・・・」
ラニエリがグジョンセンよりもちょっと遅く目を覚ます
「んっ・・・・・・」
起き上がって、胸元に見慣れない豊かな双球を発見する
「そっか・・・・・・女になったんだっけ・・・・・・」
割とあっさりと状況を受け入れ、ラニエリはとりあえず着替えることにした
しかし、大した服がない。もともとここは空家だったので何もないし、昨日と同じ服というのも難だ
ではそんな時、ラニエリはどうするのか?
「・・・・・・お、これか」
ラニエリは、その辺に投げてあった旅行者向けの大きいカバンを手に取った
御丁寧に説明書が付いている
「なになに・・・・・・『甦り便利グッズ・何でも出てくるカバン』」
説明しなくてもわかるだろうが、要するに欲しい物が何でも取り出せるカバンだ
「これは便利そうだな・・・・・・じゃあ、早速」
ラニエリは、そのカバンから今の自分の体型に合った服を取り出そうとした
しかし、カバンから出てきたのは・・・・・・
「・・・・・・何だこりゃ?」
水着だった。恐らく、女神様の趣味なんだろう
ラニエリは、こんなの着てられっかよ、と思って水着を投げようとしたが、ちょっと思いとどまって、着てみることにした
ちょっとだけ興味があったのだ
「んっ・・・・・・結構、難しいな・・・・・・
」 ラニエリは、限られたスペースにその爆乳を押し込もうと必死になっている
しかし、押し込もうとすればするほど、胸は水着から溢れ出す
そう簡単に入るものではない。女神様がわざわざ小さいのを出したのだ
やっとの事で胸を押し込んだラニエリは、同じくカバンから出した鏡で、自分の格好を見てみた
生地から大いにはみ出した爆乳、今にも水着を突き破りそうな乳首・・・・・・
「・・・・・・結構、いいかもな」
とりあえずそれは大事にしまっておいて、本来の目的である、その爆乳を包み込める服を取り出した
女神様も、今度はちゃんとしたのを用意してくれたようである

ラニエリが着替え終わるのとほぼ同時に、ラニエリの家のドアをノックする人がいた
急いで出ると、そこに居たのはグジョンセンだった
胸の部分がきつそうな服を着て、妙に色っぽい
(しかし、こいつ・・・・・・なんでいきなりこんなに胸がでかくなってんだ?)
そうは思ったが、ラニエリは平常を装って、挨拶をした
「ああ、どうも・・・・・・おはようございます」
「はい・・・・・・それで・・・・・・その・・・・・・」
グジョンセンは緊張しているようだった
「紅茶・・・・・・入れたんですけど・・・・・・如何ですか?ご一緒に」
「ええ、そりゃもう喜んで」
ラニエリは、嬉々としてグジョンセンの家に行った
中に入ると、生前と少しも変わっていない
まだ三日しか経っていないのに、なんだか懐かしい感じがする
すると、ラニエリは、棚の上にあるものを見つけた
(あれ、これって確か・・・・・・)
それは、ラニエリ・・・・・・クディチーニが生前グジョンセンに贈ったブローチだった
「・・・・・・気になりますか?」
思わずブローチに見入っていたラニエリに、グジョンセンが声をかける
「ああ、いや・・・・・・まあ」
「これはですね・・・・・・私の・・・・・・もう死んでしまった彼氏が、生きている時に私にプレゼントしてくれたものなんです」
グジョンセンはほんの少しだけ悲しそうな顔をしたが、それはラニエリにはわからなかった
「へぇ・・・・・・」
知っているが一応驚いてみる
(結構大切にしてくれているみたいだ・・・・・・)
そう思うと、ラニエリは少し嬉しくなった
コンコン
そのとき、玄関のドアをノックする音がした
「・・・・・・はい」
「よう」
グジョンセンがドアをあけると、そこにはハッセルバインクが居た

続く