(な、何でこんな事に・・・)
箱入り状態のリュングベリは、こっそりと箱の外を見た
外には、リュングベリの追いかけっこの相手、キャンベルがいた
「ああもう、びしょ濡れだよ・・・」
濡れた髪の毛を拭きながら、キャンベルは周りを見渡して、言った
「服・・・脱いでも問題ないですよね?」
「ええ、ここには私たち以外、誰も居ませんから」
「じゃあ・・・脱いじゃおっか・・・」
そう言って、キャンベルは服を脱ぎだした
箱の中のリュングベリにとっては、見たいような見たくないような、微妙な光景であった
「あ〜あ、下着まで濡れちゃってる・・・」
さらに、キャンベルは下着まで脱ぎ、一糸纏わぬ裸の状態になってしまった
「あ、下着なら、代えがありますけど?」
「そうですか?・・・じゃあ、借りちゃおっかな・・・」
「わかりました。ちょっと待っててください」
レジェスは、リュングベリの入っている箱から下着を探し始めた
もちろん、キャンベルにばれないよう、蓋を少しだけ開けて
(・・・あんた、何やってんだよ)
箱の中のリュングベリが悪態をつく
(断る訳にもいかないでしょう・・・適当なの取ってください)
リュングベリは、こっそりとレジェスに下着を渡した
「はい、どうぞ」
「どうも」
レジェスに渡された下着を、キャンベルがつける
「よかった。ぴったり」
レジェスが昔使っていた下着とサイズが同じということは・・・キャンベルが貧乳だということだ
あまり嬉しいことではない
雨はまだ降っていた。止むまでしばらくかかりそうだ
キャンベルは、レジェスに服も借りて、二人でテーブルについていた
「何か、あったかい飲み物でも出しましょうか?」
レジェスがやけに親切になって言う
「良いんですか?じゃあ、いただきます」
台所に向かったレジェスは、何か必要以上にごそごそとしていたが、キャンベルには大して気にならなかった
「はい、どうぞ」
そう言ってレジェスが渡したのは、深い青色をした、見た目にはおいしくなさそうな飲み物だった
「あの・・・これって・・・」
キャンベルが心配そうに聞く
「大丈夫ですよ。結構おいしいですから」
レジェスにそう言われ、キャンベルは意を決してカップに口をつけた
すると、キャンベルの想像に反して、口の中にはさらっとした甘さが広がった
「あ・・・本当だ。おいしい・・・」
「でしょ?」
(・・・でも、何だろう。胃じゃなくて、胸に溜まるような、この感じ・・・)
キャンベルがその違和感の正体に気づくのは、後の話、ということになる
外の雨は上がり、日が射してきた
「ん〜・・・・・・もう出ても大丈夫みたいですね」
レジェスが窓から外を見て言う
「そうですか、じゃあ私はこれで。あ、これ、明日返しに来ますね」
「いいですよ、返さなくても。私着れませんし」
今キャンベルが着ている服では、到底レジェスの爆乳は包み込めない
キャンベルは、その事には触れず、帰っていった
「・・・もう出てもいいですよ」
「はあ、はあ、はあ・・・」
レジェスの言葉を合図に、リュングベリが急いでふたを開ける
「あ〜、苦しかった・・・」
空気が足りなくなっていたようだ
「長居しすぎなんだよ、あいつ・・・」
リュングベリは、見えないキャンベルに向かって悪口を言った
「変だな・・・胸が張ってる気がする・・・」
キャンベルは、元来た山道を下っていた
「先っちょも痛いし・・・あれ?」
乳首を気にしながらキャンベルが歩いていると、彼女にとって想像したくなかった光景が目に入った
「嘘でしょ・・・」
なんと、先ほどの雨で土砂崩れが置き、道が塞がれていたのだ
「・・・じゃあ、帰れないってこと・・・?」
後ろは川、前は土砂、キャンベルには、また引き返すことしかできなかった
そのころ、レジェスの小屋では、リュングベリが帰る支度をしていた
「あまり長く居るわけにも行かないからな。ありがとよ」
リュングベリはポケットに手を突っ込む。先ほど入れたブラジャーが在ることを確かめていた
「もっと居ても良いんですよ?」
レジェスが名残惜しそうに引き止める
「・・・いや、俺は行く。じゃあな」
リュングベリがドアを開けて出ようとする
するとそこに、三度小屋にやってきたキャンベルが居た
「「あ」」
ここで二人は、ついに鉢合わせてしまった
一瞬、二人の時が止まる
先に動き出したのは、リュングベリの方だった
リュングベリは、キャンベルを突き倒して、一目散に駆けていった
「あっ、待てっ!」
キャンベルもその後を追いかける
しかし、リュングベリは、この先の橋が既に崩落していたことを知らなかった
「マジかよ・・・」
リュングベリは、川の前で立ち尽くしてしまった
川、と言っても実際には谷で、しかもとてもジャンプして渡れる距離ではない
当然、落ちたらただ事じゃ済まない
そのうちに、キャンベルが後ろから追いついてきた
「はあ・・・はあ・・・追い詰めたぞ・・・」
リュングベリは脇に逃げようとしたが、すぐにキャンベルにつかまり、仰向けの状態に倒されてしまった
「これでお前も終わりだな・・・・・・ん?」
そう言ってリュングベリを捕まえようとしたとき、キャンベルは彼のポケットからはみ出している何かに気がついた
「何だ、これ・・・?」
「あっ、こらっ!」
キャンベルがそれを引っ張ると、それは先程レジェスの家から盗んできた、彼女の使用済みブラジャーだった
リュングベリは一気に青い顔になる
「な・・・何でこんなもの持ってるんだ、お前は!」
ブラジャーをリュングベリに投げつけて、キャンベルが言う
「ち・・・違うんだ、これは・・・」
「何が違うんだ!こんな事もやってたのか、お前は!」
こんな事、とは、いわゆる下着泥棒というやつだ
「これは・・・そう、あんたにプレゼントしようかと思ってさ・・・」
「・・・私に?」
「・・・そう、いつもご苦労様、って・・・」
リュングベリは、訳の分からない言い訳を飛ばしている
「・・・よ・・・余計なお世話だっ!」
キャンベルは、力をこめてリュングベリを蹴り飛ばした
「大体、私が苦労しているのは、お前が逃げ回っているからじゃないか。何を言ってるんだ!」
もっともな意見である
「・・・・・・それに・・・こんなの、もう使えないよ・・・・・・」
キャンベルがそう呟いたのを、リュングベリは聞き逃さなかった
「・・・え?」
ようやく起き上がったリュングベリが聞く
「使えないって・・・どういう事さ?」
「何だ、聞こえてたのか。使えないってのはな・・・こういう事だ」
そう言ってリュングベリは、自分の胸を親指で差した
彼女の胸は、先程、レジェスの家に来たときよりも膨らんでおり、リュングベリの持っている小さいブラジャーでは、とても収まりそうになかった
「あれ・・・本当だ。さっき見た時は、ぺったんこだったのに」
「そうなんだよなあ・・・・・・って、え?」
キャンベルの顔が強張る
「どうかしたか?」
「・・・さっき見た時って、お前、いつ見たんだ?私の胸を」
「・・・え、いや、それは・・・その・・・」
「待てよ・・・確かお前はあの家にいたから、そこに隠れてたってことになるな・・・」
「・・・・・・」
リュングベリは渋い顔をする
「・・・って事は・・・あーっ!」
キャンベルが気づいたときには、リュングベリはもう走り去っていた
「お前・・・あの時・・・見てたんだな〜〜〜!!」
後を追ってキャンベルも走り出した
大きくなった胸を揺らしながら・・・
続く