流星群 前編

橙 作
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後ろから差し込む光を受け、フレッチャーは山積みにされた蔵書の中から本を探していた
「え〜と・・・・・・これだな」
聳え立つ柱と化した本の中から目的の物を無造作に引き抜く
「よっ!」
ドドドドドドドドド・・・・・・
一気に本が崩れ落ち、たちまち彼は本に埋もれてしまった
「ん・・・」
大して痛がっている様子も無く、彼はそのまま起き上がって本を読み始めた
壁に寄りかかり、横になり、うつ伏せになり・・・
そうしているうちに、夜になってしまったが、それでも彼はずっと本を読み続けていた

「さて、フレッチャーはちゃんとやってるかな?」
同じ頃、一人の女性がフレッチャーの家に向かって歩いていた
長い黒髪に、歩くたびにゆっさゆっさと揺れる巨大な胸。見たところ、150cmはありそうだ
上半身は白い半袖のシャツ一枚で、乳首が浮き出ているのが見える
あえて胸を強調するように見える格好をしている彼女、名はファーディナンドと言った
実際には彼女は、その爆乳にどう接していいかわからず、普通の服を着ているだけなのだが
それすらも何かを狙っているように見えるあたり、嫌なものだ・・・と思っている
コンコン
フレッチャーの家のドアを叩く
しかし、返事はない
「はあ・・・またか」
そう呟いて、彼女は家の裏へとまわっていった
南側の窓から家の中を見ると、フレッチャーが壁に寄りかかって本を読んでいるのが見えた
窓の外にいるファーディナンドに気付く様子はない
「もう・・・ちょっと、フレッチャー!」
窓ガラスを叩いてファーディナンドが言う
「・・・あれ、ファーディナンド・・・」
それでようやく、フレッチャーも彼女に気がついた
「まあ・・・座れよ」
そう言われて、ファーディナンドはその辺の椅子にどっかと座り込んだ
フレッチャーも、その向かい側に座る
「どうせまたご飯も食べないで本ばっかり読んでたんでしょ?」
ファーディナンドが問い詰める
「ん・・・当たり」
それに対し、フレッチャーはあっさり答えた
「やっぱり。どうして何も感じないのかしら?」
呆れたようにして、ファーディナンドは台所へと向かった
「・・・何するつもりだ?」
「決まってるでしょ。御夕飯を作るのよ」
そう言うと、ファーディナンドはちゃっちゃと夕飯を作り上げてしまった
時々胸が邪魔で下が見えない時もあるが、それは経験と知識と慣れでカバーしている
「はい。いつもちゃんと食べなきゃだめだって言ってるじゃない」
「ああ・・・いただきます」
ファーディナンドの忠告を軽く流して、フレッチャーは黙々と食べ始めた
途中、邪魔になっているのか、金色の長い前髪をかき上げる仕草が目立つ
「・・・そろそろ髪の毛も切らなきゃだめね・・・自分でどうしようとか思わないの?」
机に頬杖をついたファーディナンドが言う。両腕の間にその乳が割って入り、顎置きになっている
「ん・・・そう言えばそうだな・・・今度切るか・・・」
そう言ってフレッチャーは鏡を見た。首筋のあたりまで伸びた金髪はぼさぼさだ
「もう・・・それだから言われちゃうのよ。『生活力がない』って」
「そうだな・・・俺もそう思ってる。・・・ご馳走様」
質問に答えつつも、フレッチャーはしっかりご飯を食べていた
「思ってるなら直しなさいよ。私が色々と付きっきりで指導してあげようか?」
「付きっきりでって・・・どういう事だ?ずっと一緒にいるって事か?」
「え!?・・・いや、別にそういう事じゃ・・・」
そう言ったまま、ファーディナンドは顔を赤くして下を向いてしまった
二人の間に気まずい空気が流れる
「・・・とにかく!明日からちゃんと食べるのよ。いいわね!」
「あー、ちょっと・・・」
フレッチャーの呼びかけにも応じず、ファーディナンドはこの雰囲気を断ち切るように足早に帰っていった
(・・・俺としては、ずっと一緒にいてくれた方が・・・いいんだけどな・・・)
好きだという一言を口に出せないまま、今日も一日を終えてしまった
フレッチャーは、食器を洗い終えると、再び書庫へと向かった
こういう時に参考になるような本を見つけるために
いつまでも、このままではいられないのだ
一方、帰り道を歩きながらファーディナンドは呟いた
「・・・結局、今日も言えずじまい、か・・・」
空には星が輝いていた
「あ、流れ星・・・」
しばらく立ち止まって空を見上げた後、自分に言い聞かせるように彼女は言った
「・・・星に願いをかけて叶ったら、こんなに苦労しないわよね・・・」
しかしその後、彼女はこうも思った
(それでも・・・・・・願わないよりはマシかな・・・)

翌朝
ファーディナンドは、服を着るのに四苦八苦していた
それはつまり、どうやってその爆乳を服に押さえ込むか、と言う事なのだが、今日はもう一つ、悩むべきことがあった
「う〜ん・・・何を着ようかな・・・」
服装をあまり気にかけない彼女は、いつもは胸を入れられる服を選べばいいだけなのだが、今日は違った
「・・・よし、これで行こう!」
そう言って彼女が選んだのは、いつもよりも露出が多い、ちょっと着るのが恥ずかしいものだった
「・・・よい、しょっと!」
普段通り、乳を服に押し込むと、彼女は鏡の前に立って、自分の姿を見た
今日の服はその胸を包み込むには少し小さく、もともとの袖なし、へそ出しの形もあり、彼女の下乳ははみ出していた
生地が薄いので、乳首、さらにはちょっぴり膨らんだ乳輪が透けて見える
胸の谷間に至っては、深い切れ込みが入っており、トップバストのすぐ近くまで見えるようになっている
珍しく彼女がこんな服装をするのには、訳があった
彼女は今日、フレッチャーに以前から抱いていた恋心を伝えるつもりで、このような服を着たのだ
ある意味、勝負に出た、とも言える

フレッチャーは、起きた後いつもと同じように、壁に寄りかかって本を読んでいた
いつもならそれが数時間くらい続くのだが、今日は何を思ったか途中でそれを切り上げ、台所に向かった
珍しく料理をしようと思ったのだ、が、やり方がわからない
乱雑に並べられた食材の前で悩んでいると、ドアをノックする音とともに、ファーディナンドの声が聞こえた
急いでドアを開けた彼は、その向こうにいたファーディナンドを見るなり、驚いた顔をした
服がいつもと違う
明らかに、胸を強調した格好をしている
谷間なんか丸見えじゃないか。乳首だって透けて見えるし・・・
フレッチャーと同様、ファーディナンドもまた、驚いた表情をしていた
「あれ・・・珍しいね。こんなに早く出てくるなんて」
「あ、ああ・・・たまにはな。・・・何の用だ?」
邪な事を考えているのを悟られないように、フレッチャーは必死で言葉を組み立てていた
「まだ・・・ご飯済んでないでしょ?だから、作ってあげようと思って」
「そうか・・・ありがとう」
ぎこちないフレッチャーは、ぎこちないファーディナンドを、ぎこちなく家に入れた

「じゃあ、すぐ作るから、待っててね」
ファーディナンドはフレッチャーをイスに座らせようとする。しかし
「いや・・・俺も手伝うよ」
返ってきた言葉は、彼女にとっては意外なものだった
「え・・・?どうして」
「・・・いいから、手伝わせてくれ」
「いいけど・・・じゃあ、ついでだからいろいろ教えよっか。料理のこと」
「え・・・ああ、わかった」
「そうねぇ・・・簡単なのから行こっか。野菜洗って」
「あ・・・ああ」
フレッチャーは言われた通りに野菜を洗う。しかし、どうも手つきがぎこちない
「それじゃだめよ。もっとこう・・・」
ファーディナンドは後ろからフレッチャーの手をつかんで指導しようとするが、150cmのバストが邪魔で、手が届かない
(う〜ん・・・・・・あ、そうだ!これってチャンスかも・・・)
彼女は、フレッチャーの背中にその爆乳を押し付けた
むにゅう・・・
背中に柔らかい胸の感触を感じたフレッチャーは、ますます体が硬くなっていた
(な・・・何をするんだ、こいつ・・・)
「・・・よいしょ。やっと手が届いた・・・」
表向きには手が届かないから仕方なく、だが本心は、フレッチャーに自分の胸を意識させるため、彼女は胸を押し付けたのだ
おそらく自分の爆乳が最強の武器になるであろう、という事は、彼女にもわかっていた
「はい、もっと力を入れて、こう・・・」
胸だけでなく、彼女は全身を彼に押し付けている
それを感じるたび、彼は体が硬くなり、動きがぎこちなくなり、もっと指導しようとして、彼女は体を押し付ける
まさに、彼にとっては悪循環だった
「・・・なあ、ファーディナンド・・・」
「んー?どうかした?」
「・・・ちょっと俺、休んでるわ・・・」
そう言って、彼は逃げるように台所を出て、イスに座った
(・・・もしかして、効果あり、かな・・・)
効果は絶大だった
フレッチャーは、ファーディナンドの胸のことが、頭から離れなかった

続く