Float World

橙 作
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「お前さ、何とかしてわかんないの?」
ヴァッセルがアンヘルに聞く
『ぜんぜん』
アンヘルからは、全く頼りない答えが返ってきた
「はあ・・・先が思いやられるな」

その頃、ラウルセンとセーレンセンもまた、ヒツルスペルガーを探していた
もう夜になってしまったが、一向に見つかる気配はない
「なかなか見つからないね・・・」
「まあ、そう簡単にはな・・・」
その時、二人の後ろから突然声がした
「あれ、セーレンセンじゃない!」
セーレンセンが後ろを振り向くと、短い黒髪の少女が立っていた
胸はまあ・・・巨乳というレベルだが、セーレンセンやアンヘルには遠く及ばない
「あっ、ヘンドリー!」
セーレンセンが体を振り向かせると、その胸もぶるんと揺れ、一歩遅れて体に追いつく
「誰だ?」
「友達」
「・・・セーレンセン・・・ちょっと来なさい」
ヘンドリーがセーレンセンを路地裏に連れて行く
「ちょっと・・・何なのよ」
「私たちさ・・・2週間ぐらい、会ってなかったわよね?」
「うん・・・そうね」
「その時さ・・・あなたの胸、小さかったわよね・・・」
「うん。ヘンドリーのほうが大きかったね」
「なのにっ!どうしてっ!いきなりっ!あなたの方がっ!胸が大きくなっているのよっ!」
怒りに似た叫びを発しながら、ヘンドリーがセーレンセンの胸を後ろから鷲掴みにする
「きゃっ!何するのよ!」
「何するのよって・・・あんたこそ、何してるのよ!」
ヘンドリーの指がセーレンセンの太い乳首に伸びる
「私より胸が小さかったはずなのに・・・どうしてこんなになってるのよ!」
「し、知らないわよ、私だって・・・」
「知らないですって!この、このっ!」
セーレンセンの乳首がヘンドリーによって扱かれる
(どうしよう・・・おっぱい張ってきてる・・・このままだと・・・ミルク出ちゃうよ・・・)
なおも乳首を弄り続けるヘンドリー
「ほら・・・こんなに乳首硬くなってるじゃないの!」
(んっ・・・あっ・・・あっ・・・だめ・・・溢れちゃう・・・)
「ちょっと、何とか言いなさいよ!」
「・・・もう・・・やめてよ!」
しつこく乳首を触るヘンドリーを、セーレンセンは渾身の力を持って引き剥がす
ピュッ・・・ピュッ・・・
それとほぼ同時に、セーレンセンの乳首から母乳が溢れ出した
(!・・・やだ・・・ミルク出ちゃった・・・)
セーレンセンは、その場を逃げるように立ち去った
「・・・・・・」
後に残されたヘンドリーは、自分の指を見た
少し濡れている
すぐさま匂いを嗅ぐヘンドリー
(・・・何これ・・・甘い匂いがする・・・)

「おまたせー」
ラウルセンの所にセーレンセンが走ってやって来る
心なしか走り方がぎこちない
「おお、何やってたんだ?」
「えっ・・・うん、ちょっとね」
まさか乳を揉まれていたとは言えず、口ごもるセーレンセン
(・・・・・・?)
「と、とにかく・・・あれは見つかったの?ほら、何て言ったっけ・・・」
セーレンセンが話題を必死にそらそうとする
「ヒツルスペルガー」
「そう、それ・・・どう、見つかった?」
「見つかったって・・・お前と別れてちょっとしか経ってなかったんだから、見つかる訳ないだろ」
「あっ、そうか。そうだよね・・・」
やたらとセーレンセンの発言は挙動不審だ
「・・・お前さ・・・何かあっただろ?」
「えっ!?・・・別に、何も・・・」
「嘘つけ。怪しすぎる」
ラウルセンが追及を深めようとしていたその時、向こう側からヴァッセルとアンヘルがやって来た
「あっ、どう?見つかった?」
セーレンセンが助かったとばかりに話し掛ける
「いや、全然だめだ・・・そっちは?」
「見りゃわかるだろ。さっぱりだよ」
「ふう・・・なかなか難しいもんだな」
路上で固まっている四人のところに、メルベリもやって来た
「あら、みんな揃って・・・その様子だと、見つかってないみたいね」
「まあな。大体、お前の情報は信頼できるんだろうな?」
ラウルセンが不機嫌そうに聞く
「当たり前でしょ。信じて間違いないわ」
「けどよ・・・全然見つかる気配がないぜ?」
「しょうがないわね。もう暗くなったし今日はやめて、明日またやりましょう」
「そうね・・・もう疲れたわ」
セーレンセンのその言葉を合図に散り散りになる5人
しかし、ラウルセンは疑いの目をセーレンセンに向けていた
(・・・絶対怪しい・・・何かされたな、こいつは・・・)
「ど・・・どうかしたの?ラウルセン」
刺すような視線に気づいてセーレンセンが訊く
「何でもないよ。そうだ、ちょっと家に寄っていかないか?」
「えっ・・・いいけど、何で?」
「そりゃまあ、いろいろと・・・また搾りたいしな」
「やだ、もう・・・」

時をほぼ同じくして、ヘンドリーは一人、呆然としてベンチに座っていた
(はあ・・・なんでいきなりあんな事に・・・)
セーレンセンの胸が自分より大きいという事実が、未だに受け入れられないのだ
・・・ムニュッ・・・
下を向きながらぶつぶつ言っていると、何か柔らかいものがヘンドリーの頭に当たった
(!・・・何?)
驚いて上を向くセーレンセン
すると彼女の目の前には、一人の少女が立っていた
年齢的には出会った頃のアンヘルとほぼ同じだろう。肩まで伸びた茶色い髪をしている
前回、ヴァッセル達の脇を通ったのも、この少女と思われる
(えっ・・・ちょっと、何よこれ!)
少女・・・といっても、この少女、胸が年齢と不釣合いなくらい異常に発達しており、ヘンドリーよりも遥かに大きい
服は破れそうなくらい変形していて、辛うじての所で緊急事態を避けている
セーレンセンやアンヘルと同じ位の大きさだろうか。先ほどぶつかったのもこの胸のようだ
非常な現実に打ちのめされるヘンドリー
(・・・なんで・・・どうしてこう私の周りにはこんなに胸の大きい人が多いのよ・・・)
ふともう一度前の少女を見ると、なにやら手をばたばたさせている
「?・・・何やってるの?」
「・・・・・・えっ、あの、私・・・・・・前が見えないんです」
「・・・・・・え?」

とりあえずヘンドリーは、その少女を自分の家に連れ帰った
「・・・なんで、こんな事をするんです?」
「そりゃだって、あのまま放って置くわけにも行かないでしょ」
「はあ・・・」
「・・・それに、一つ訊きたい事もあるのよ」
「えっ?」
少女を椅子につかせてから、ヘンドリーは静かに訊き始めた
「・・・訊きたい事っていうのはね・・・・・・まあ、ちょっと恥ずかしいんだけど・・・その胸の事なのよ」
「・・・はあ・・・・・・胸?」
「そうよ。あなた・・・すごい立派な胸をしているじゃない」
ヘンドリーにそう言われ、少女は自分の胸を触る
「・・・ああ、これ・・・何か重いと思ったら、胸だったんですね」
少女の言ったことはどこかおかしい。まるでその胸が自分の物でないようだ
「・・・?・・・まあいいわ。とにかく私はね、どうしてあなたの胸がそんなに大きくなったのが、訊きたいのよ」
ヘンドリーの言葉を、少女は黙って聞いている
「私ね・・・友達の女の人が居てね・・・その人、ついこの間まで私より胸が小さかったのに、いきなりすごく大きくなってて・・・」
少女は黙ったまま、じっと耳を傾けている
「・・・それがすごく悔しくって・・・何とか私も大きくしなきゃって・・・・・・って、何こんな話子供にしてるんだろう、私・・・」
我に帰って恥ずかしくなったヘンドリーが顔を赤くする
「・・・まあ、お気持ちはわかりますけど・・・私に聞いても何もわかりませんよ」
「・・・そうよ・・・その人も同じような事を言ったわ・・・」
ヘンドリーが落胆する
「・・・そうではなくて・・・私は・・・自分の事など何一つわからないんです」
「・・・・・・えっ?どういう事?」
「・・・私は、気が付いたら体が重かったから・・・きっと、胸が大きかったんでしょうね。それに、既に目も見えなかったし・・・」
「それって・・・記憶喪失、って事?」
「多分、そうじゃないと思います。よくは説明できないけど」
「そうじゃない、って・・・そうじゃなかったら、何なのよ」
「・・・何というか、その・・・いきなりこの体を持って生まれたというか・・・」
「・・・よくわからないわ」
「ええ。私もです」
しばらくチンプンカンプンな会話を続けていると、ヘンドリーが少女に名前を訊いてきた
「・・・名前・・・ですか」
「・・・やっぱり、わかんないかな・・・それがわかれば、少しは何とかなるかなって思ったけど」
しばらく悩んだ後、少女の口から思いもよらない言葉が飛び出した
「・・・アンヘル」
「アンヘル?・・・それがあなたの名前?」
「・・・私が知っているのはその名前だけです。でもこれは私のではありません。この名前は・・・きっと、私にすごく近い人のものです」

続く