狭苦しい白塗りの部屋の中、机を挟んで向かい合う二人の男女がいた。女性の方は緊張した面持ちで、男性は慣れた
感じでお互いを見つめていた。
「で、どうすればいいんでしょうか。」
私は目の前の男をじっと見つめる。あの生真面目そうな顔からは、表情をうかがい知る事はできなかった。
「契約書には・・・サインいただきましたね。」
「はい。」
私は同じ大学の医学部の知り合いからこのバイトを紹介された。ある薬の臨床実験だ。何でも豊胸剤らしいのだが、
破格ともいえる金額がもらえるので・・・・飛びついてはみたのだが、この雰囲気のせいで、どことなく付きまとう
ようなこの不安は隠せなかった。
「では、この薬で起きた事・・・及び、この薬の事はご他言無用にお願いします。」
男が喋る時も目の前の男はピクリとも顔を歪める事は無かった。
「で、何をすれば・・・。」
「こちらを、明日から一ヶ月。一日一錠をお飲みいただければいいのですが。」
そう言うと彼は、懐から白いカプセルが入った瓶を取り出す。ラベルには@と書かれており、それ以外の記述は無い。
「それだけですか?」
「後はこちらで、一日一回、ブラとかをした状態で構わないので、このカメラでバストを図っている様子を取って
いただければいいので・・・。できれば薬の使用感覚なども言っていただければいいので。只、報酬はこれで30日撮り
続けた時にだけ、お渡しいたします。」
そう言うと机の下からビデオカメラをとりだし、彼女の目の前に置いた。今まで受けた臨床実験よりもかなりゆるい
らしく、家に帰ってよさそうだ。
「わかりました。」
その日から、私の奇妙な日々は始まったのだった。
1日目
早速薬を飲んでみるが、何事も起きないようだ。カメラの前ではいつもと変わらない78.6cm(Bカップ)だ。
少し拍子抜けした感じだ。
五日目
今まで飲み続けて入るものの、変化は1cm前後・・・78.2cm(Bカップ)だしかなかった。いや、日常生活で
起きうる変化といっていいのだろうが・・・最近ではすっかりカメラの前でバストを図るのも慣れてきた。
6日目
何か・・・胸がつんと張ってくるのを感じている。少し先っぽが痛い気がする。胸が膨らみ始めたのかもしれない。
図ってみると80.3cm(Cカップ)だ。少し膨らんだのだろうか。
7日目
朝起きてみると胸周りで違和感を感じる。起き上がって鏡を見ると、一回り大きくなった気がする。夜計ってみると
84.2cmだ。そろそろDカップだろうか。もう今までのブラを付けれそうにもない。豊胸剤とは聞いているので
ブラを買いに行こうかと思ったが一応念のためヌーブラにした。あれなら前だけ隠すことも出来るはずだ。
でも…何か少し嬉しい。
9日目
最近、眠ろうとしても胸が痛くて度々目を覚ますようになる。今日計ってみると92.6cm(Fカップ)だ。
胸がプリンを大きくしたみたいになった。買ってきたヌーブラもあって、ズドンと突き出した胸が別の生き物見たい。
この頃から姿勢が前傾姿勢になった気がする。
12日目
ここ数日の胸の大きくなり方は異常にさえ思えてきた。現在104.6cmだ。もう何カップなのか考えたくなく
なってきた。胸を触ってみるとその柔らかいかたまりが手にずっしりと貼り付いて来る。もう自分じゃない見たく思う。
何か、びっくり人間に出れそうな大きさだ。胸の乳首周りも立派に成長しており、買ってきたヌーブラも何かニプル
キャップみたいな感じに。この頃から周りの人間に噂されるようになる。周りの視線が痛く感じてきた。
一緒に学食を食べに行く友達も視線と時々下に落とすようになる。・・・やっぱり目立つ。
15日目
最近薬を飲むのかどうか悩むようになる。その急激に大きくなってきた胸はカメラの前で測ると129.3cmだ。
この頃になると下を見ても胸で視界が覆われ、足元を見ることができず、靴下やパンツを履くときに鏡がないと上手く
整えることができない。この頃になると、講義後とかに人が集まってこっちを見て来る。友たちとかも声をかける前に
じっとこちらを遠巻きで見つめるようになる。複雑な感じだ。服も何回も買い換えなくてはならず、2、3日ごとに
ショップに通う感じだ。その店員の視線が更に痛く、恥ずかしくなって来る。
18日目
とりあえず、バイトは続けようと思ったが、大学は休む事にした。大学側には休校の申し出をしてきた。ついでに
この頃には169.9cmとメジャーでは出ており・・・自分でも信じる事ができなかった。本気でバイトをやめるか
考えるようになる。
19日目
バイト先の製薬会社に電話をする。だが、契約書に書かれた文面で、今辞めると違約金が途方もない桁で請求される
らしい。・・・。続行するしか手は残っていなかった。胸は189.2cmもあり、自分の身長よりも胸囲が大きかった。合うブラとかがあるわけでもなく、買って来たヌーブラも貼り付けてもすぐ胸の張りで落とされてしまう為、もう付ける事もできない・・・というよりかはすぐ落ちる。只、胸の形はかなりつんとしており、自分が見てても形だけは素晴しかった。この頃には何か胸に違和感を感じるようになっていた。
21日目
今のバストは・・・231.6cmだ。この頃にはへその下あたりに胸の下弦が当たり、アンダーバストとウエストの
差が分からなくなってきた。厚さもすさまじく、手の平で思いっきり叩くと大きく揺れていた。この頃から部屋の中
では、半裸で過ごす事が多くなってきた。ためしにビニールテープで補強したビキニをつけようとしたが、乳首すら
隠すことが出来なかった。・・・体が重い。息切れをよく起こすようになっていた。
22日目
最近寝るときはもっぱら横向きが多くなってきた。上を向くと胸で締め付けられて窒息死しそうな感じになるからだ。
だが朝にシーツを見ると異臭がする・・・胸を触ってみると濡れた感じがする。これは・・・母乳か・・・ついに出る
ようになったんだ・・・。朝測ってみると244.9cmだ。肩の負担を楽にする為に腕で持ち上げてみるが、あまりの
重さと弾力に腕が震えて来る。思い立ったように片乳を持ち上げ、顔に当ててみると顔よりも大きかった。というより
顔に当てられるほど持ち上がり、また大きかった。家に帰り片胸を体重計で量ると20キロ近くある。持っているだけで
腕が震えてくる。これを見た瞬間に私は何か吹っ切れた感じになった。この日、意を決して会社に乗り込んだ。
そしたら、何故かあっさりとテープさえくれれば報酬が支払われる事になった。・・・。拍子抜けしたように会社から
出ていく私には、札束一つとこの巨大とも言っていい乳だ。いろいろな考えをめぐらせ・・・まずは母さんに
報告しよう。まあ・・・驚いてくれるよね・・・。
「今回は22日も続きましたか・・・。かなりの売れ行きを見せそうですね。」
男はそう言うと薬をしまい、テープにあるタイトルを刻んでいく。
(膨乳っ子、22日間の恥ずかしい記録)
「後でモザイクを入れれば・・・ふ、ふふふふふ。」
コンコン。
「はい。」
「臨床実験できたものですけど。」
女の子の声に、男はつい口の端をニイッと歪ませていた。