初めての夏休み

蛭子 作
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 街並みが歪んで見える。砂漠のような日差し中を歩いていた。
 高校に入学して三か月余り。夏が来た。成績表という夏休みへのパスポートが入ったカバンと、汗と共に失われる水分とミネラルを補給してくれるペットボトルを大事そうに抱えながら、ゆっくりと歩いている。とにかく暑い。青春系のマンガやアニメでは主人公やヒロインが夏休みをさわやかに駆け抜けるイメージがあるが、これが現実だ。この暑さで、はしゃげるわけがない。
「お〜い!月野く〜ん!」
 聞き覚えのある声が、背後から聞こえてきた。
 後ろを振り返ると、はち切れんばかりの胸をゆっさゆっさと揺らしながら、あいつが小走りで近づいてきた。
彼女の名前は“星川ユミ”。僕にとって一番大切な人・・・恋人だ。身長は小学生並みでありながら、まるで大玉のスイカを二つ抱えているような胸。もはや巨乳と言う言葉では済まされない。
「はぁはぁはぁ・・・月野くんにやっと追いついた・・・」
 激しい呼吸で、ユミの胸は上下に動いている。汗もすごい。いや、それよりもすごいのは、ユミの胸だ。薄手のワイシャツがはち切れてしまうほどの胸と、その胸を包み込んでいる下着。ワイシャツの下に着ている純白のブラジャーが透けて見えている。
「大丈夫か、少し休むか?」
「うん、平気だよ。それより、早くしないとバスが出ちゃうよ。」
 僕とユミは少し急ぎ足で駅前のターミナルに停車しているバスに乗り込んだ。「ふぅー。」思わず声が出た。一番後ろの座席に座ると同時にバスは予定通り走り出す。乗客は僕とユミの二人だけ。静かだった。
「ねえ、月野くん。昨日、夏休みになったら海に行こうって約束したよね。」
「そうだね。いつにする?」
「今じゃ、だめかな?実はわたし、水着を持ってきているんだけど・・・」
「行こうか。海。」
 バスの終点は小さな漁港になっている。そこから歩いて五分もすれば海岸がある。まるで初めて海に行く子供のように、僕の胸は高鳴り続けていた。
 バスを降りると、夏の高気圧と潮の香りに包み込まれた。青い空、白い入道雲、青い海。
カモメの鳴き声と波の音をBGMにして、防波堤沿いの道を二人でふざけ合いながら歩いた。
「誰も居ないな・・・」
「わーい!貸切だね!」
 七月だと言うのに、海岸には誰も居ない。ユミは靴と靴下を脱ぎ捨てて、波打ち際まで走り出す。僕も、靴を脱ぎ捨てネクタイを解き、カバンを投げ捨てて、思い切り海に飛び込んだ。水しぶきが太陽に乱反射する。気持ちいい!水を手ですくい、ユミにかけた。ユミもお返しと言わんばかりに、僕に水をかける。まるで僕とユミは子供だった。
 水で濡れたユミのワイシャツにブラが透けて見えている。
「ユミ、水着があるんだろ?着替えたらどうだ?」
「そうだね。」
 防波堤の下に荷物を置いた。この場所は日陰になっている。僕はコンクリートの壁にもたれて座り一息ついた。そんな僕の目の前でユミは何のためらいも無く、ワイシャツを脱ぎ、ブラのホックを外そうとした。うわ。初めて見た、ユミの下着姿。僕は興奮を抑えきれそうも無かった。特注サイズのブラジャーに包み込まれる規格外に大きな胸。色白の柔肌が織り成すどこまでも深い胸の谷間。さすがにフェアじゃないと判断した僕の理性は、自然に僕の手を動かし、気が付けば片手で両目をさりげなく覆い隠していた。
 しばらく波の音しか聞こえない。
「どうしたの?月野くん・・・頭が痛いの?」
「いや、ちょっとめまいがしただけだよ。大丈夫だよ。」
 目を開いた。目の前には心配そうな眼差しで僕の顔色を覗き込むユミの姿があった。スクール水着に身を包み、前のめりの体勢で僕の顔をじっと見つめている。そして、スクール水着には収まりきらないユミの胸が目の前にある。
「ユミ・・・」
 何を思ったのか、僕はそのままユミを抱き寄せ、砂浜に二人で倒れ込んだ。仰向けになったユミの上に覆いかぶさるようにして、僕は彼女の胸を鷲掴みにした。「あっ・・・」ユミがかわいい声を出す。そんなユミに僕は口づけをした。ユミは嫌がる素振りを見せない。僕は一旦、唇を離した。「ハァハァハァ・・・」僕もユミも、お互いに息が荒い。「気持ちいいよ。」小声でつぶやいたユミは僕の背中に腕を回して、思い切り抱き寄せ、再び口づけを交わした。
「月野くん・・・」
 全てを受け入れるような体勢で涙を浮かべるユミの姿を見た瞬間、僕は我に返った。
「ごっ、ごめん。急にめまいがして・・・ふらっとして、足がもつれて・・・」
「ふふふ・・・月野くん。一緒に泳ごう。」
 ユミは立ち上がって、海に向かい走った。
「よーし!」
 僕も意気込んで、ワイシャツもズボンも履いたまま海に飛び込んだ。
 今日、僕は生まれて初めて、女の子とキスをした。
 甘酸っぱいレモンのような、どこか塩の風味もする、生まれて初めての味だった。

『続く・・・』