夏も終わりに近づいている。コオロギや鈴虫が秋を呼び寄せているらしい。夕焼けに赤く染まる入道雲。風鈴の音色も、どこか寂しげに響いている。
「月野君、そろそろ終わりだね。」
「明日だよね。ユミの両親が帰って来るのは。」
「うん。さっき、メールが来てた。明日の夕方までには帰宅するって。」
ユミは突然、僕に抱き着いてきた。
「月野君、今日の夜いいかな?」
「いいよ。」
僕もユミを思い切り抱き寄せた。
晩御飯は早めに済ませた。風呂に入って、いつもより念入りに体を洗った。歯も磨いた。居間に行くと、ユミが布団を敷いていた。電気を消した。気が付かなかったが、今日は満月だ。月明かりが窓から差し込み、幻想的な淡い光で僕たちを照らしている。
ユミはピンク色のパジャマを着ている。はち切れんばかりの胸を服の上から揉んだ。気持ちよさそうな声を出すユミ。色っぽさよりも、無邪気さを感じさせる声。ユミを仰向けに押し倒して、パジャマのボタンを一つ一つ外していく。窮屈さから解放された胸は少し汗ばんでいた。相変わらず、寝ていても型崩れしない胸。寝ていても胸に谷間が出来る程の乳房を、僕は両手で抱えるようにして寄せ、両方の乳首を同時に舐め回した。体をビクビクと震わせるユミ。
「かわいいよ、ユミ。乳首が敏感なんだね。」
僕は耳元でささやいた。
「乳首は、ちょっと弱いの・・・」
ユミは恥ずかしそうな顔で自分自身の乳首を触っている。
僕はいたずらに、ユミの乳首をつまみ上げた。
「あっ・・・だっ、だめぇ・・・」
ユミは僕の体を抱き寄せ、僕の股間に自分自身の股間を寄せて腰を上下に動かす。僕の頭はユミの胸に埋もれている。温かく柔らかい感触に包まれながら、ユミの胸を強く激しく揉んでいた。
「月野君・・・お願い。」
「うん。」
ユミは花火大会の時に使おうとしていたあのコンドームを僕に手渡した。
「ユミ・・・入れるよ。」
「うん。いいよ。」
この夜。僕とユミは、お互いに生まれて初めて自分以外の人間と一つになった。
初めての夜なのに、僕はあまり覚えていなかった。確かに繋がったのは覚えている。けれど、そこから先はあまりにも気持ち良すぎて、頭の中が真っ白になっていたのかもしれない。
気が付けば、布団の上でお互いの事を見つめ合っていた。
「ずっと、一緒だよ・・・」
「月野君、あの時と同じセリフだね。ちゃんと、覚えているんだ。月野君が花火大会の最中に私の手を握ってくれて、言った言葉だよね。」
「独り言のつもりだったけど、やっぱり聞こえていたんだ。」
「うん。ありがとうね。月野君。ずっと、一緒だね。これからも。」
「ユミ、またあの時みたいに、甘えさせてもらってもいいかな?」
「うん。いいよ。」
僕はユミの体を抱き寄せて、両手で抱えきれない程の胸の中に顔を埋めた。静かに目を閉じると聞こえてくる、ユミの呼吸と心臓の音。そして、なによりも安心する温もりと柔らかい感触。僕はまるで赤ん坊のように、静かに目を閉じて、夢の世界へ入り込んでいった。できる事なら、ずっとこのままでいたい。ずっと、ずっと・・・
あれから半月。彼岸の季節を迎えた。
僕とユミは僕の母親のお墓の前で手を合わせている。
「母さん、約束するよ。高校を卒業したら、ユミを幸せにする。だから安心してくれ。そしていつか、ここに母さんの孫を連れてくるよ。」
ユミは墓前に花を供えて「初めまして・・・」とつぶやいた。
「ユミの胸に抱かれると、なんか安心するんだ。まるで、母さんの胸に抱かれているみたいだよ。僕は泣き虫で甘えんぼかもしれないけれど・・・」
僕はそこまで言うと、流れる涙をスーツの袖で拭きとった。
「これだけは約束する。母さんが守ってくれた僕の命は、ユミと一緒に大切にさせてもらうよ。」
母に見守られて、僕はユミを幸せにすると誓い、ユミの事をしっかりと抱きしめた。
今日僕は生まれて初めて、自分以外の掛け替えのない存在の為に生きていくことを誓った。そして、僕が今ここに生きている事を、母親に感謝したのだった。
『終わり。』