今朝の私を眠りから覚ましたのは、締め付けられるような胸の痛みでした。
「う……ん……、胸が痛いよぉ。」
きっと昨日の晩にケーキを5個いっきに食べたバチが当たったんだ。そんな風に考えながら痛みに耐え、布団にくるまっていた私を、今度はママが起こしにきます。
「さやか起きなさい。もう9時よ。いくら学校が休みだからって、いつまでも寝てたら受験シーズンになって生活が乱れるわよ。」
「分かってる……。でもなんだか胸が痛くって……。」
「何言ってるの、昨日の夜まであれだけ元気だったじゃない。」
「うそじゃないよ!本当に胸が締め付けられるみたいに痛いんだよぉ。」
私は一生懸命に体の不調を訴えたんですが、ママはまったく聞く耳をもってくれません。確かに昨日、Aカップになったことを喜んでいた私を見ているママにしてみれば、今の私は仮病を使っているように見えるのかもしれません。
「ほら、いい加減にしなさいよ。お母さんだって暇じゃないんだからね。」
そう言って、ママは私から掛けぶとんを引っ剥がしました。ベッドの上で丸くなっていた私は、そこで初めてパジャマを着ていないことに気づきました。昨日の晩にケーキを食べた後、そのままの格好で寝てしまっていたんです。
「さやか、あなたお風呂も入らずに寝たのね。……あら、でも確かに顔色悪いわね。熱は……平熱だし。胸が苦しいって、どこらへんが痛むのよ。ママに見せてごらんなさい。」
ママに胸を見せるよう促された私は、来ていたブラウスとキャミソールを胸が見えるようにまくり上げました。そして具体的にどこらへんが痛いのか説明しようとしてママの方を見ると、ママは目が点になったといった感じで、次の瞬間急に笑い始めたんです。
「あきれた、これじゃ胸が締め付けられるように感じるわけね。キツキツじゃない。」
ママは私の胸元を指さしました。私が視線を落とすと、そこには……Aカップのブラに無理やり押し込められたバストが上から横からそれに左右からもはみ出していたのです。ストラップは肩に痛々しく食い込み、カップは原型を留めるのがやっと、それに背中側のホックはいつ弾けてもおかしくないくらいに張り詰めていました。
「そっか、いつもはブラを着けないで寝るから、全然気がつかなかった……。」
「いくら成長期って言っても、一日でこれだけ大きくなるのも考えものだわ。ほら、はずしてあげるから立って後ろ向いて。それとサイズもちゃんと測っておいた方が良さそうね。」
そういいながら私のブラを外したママは、どこからともなく取り出したメジャーで私の体を採寸し始めました。ママは下着会社で働いていることもあり、こういう作業は手慣れたものです。部屋にあったメモ帳に、トップバスト、アンダーバスト、ウェスト……。
「ってママ、今はウェスト測ってもしかたないんじゃない?」
「なに言ってるの。これだけ胸が大きくなったってことは、ほかのサイズも変わってるかもしれないじゃない。そんなことより下もさっさと脱ぎなさい?」
私はママに気づかれないようため息をついてから、履いていたジーンズを脱ぎました。ずっと小さいときからママには何度もサイズを測ってもらっていたの抵抗はなかったんですが、ケーキ5個食べた翌朝ということもあって気が進まなかったと言うのが本音です。実際、ジーンズの後ろポケットのあたりがパンパンで、脱ぐのに苦労しました。
「これで一通り測り終わったわ。それにしても、最近の子供は本当に発育がいいわね。」
メモ帳に書かれた値をまじまじと見ながら、ママは言いました。
「バストはトップ97センチ、アンダー74センチのFカップね。ほのかが中学3年のときと同じになったのかしら。とりあえずブラはほのかのお下がりを着けなさい。ほのかはすぐにGカップになっちゃって、結局何回も着けてないからキレイなはずよ。」
本当は新しいブラを買ってもらいたかったんですが、今はそんなぜいたく言えません。ただでさえ大きなサイズのブラは高いので、お姉ちゃんはブラを買うためにバイトをしているくらいですから。
「それとウェストは62センチね。下着のプロとして言うけど、さやかの身長からすると62センチって結構細いのよ。無理してダイエットなんかしないこと。」
「は〜い、わかりました。」
「それとヒップ。さやか、いま履いてるショーツきついんじゃない?93センチってことは、前に測ったときより8センチ大きくなってるわよ。」
「実はちょっときついかも……。もしかして修学旅行で太ったのかな?」
図星を突かれてドキっとした私は、自分のお尻を手で撫でてみました。さっきジーンズを脱ぐ時すでに気づいてはいましたが、むっちりと張り出した「両頬」はなかなかの存在感を出しています。
「そうじゃなくて、女の体になってきたのよ。ほら、腕とかは前より細くなってるでしょ?あなたもだんだんほのかに似てきたわね。」
そう言ったママは、なんだかとてもうれしそうでした。
ママに出してきてもらったお姉ちゃんのお下がりブラを着けた私は、改めて例の薬――メロンBB――の効果を実感しました。
「潜在的発育力、か。私にはあったのかな。」
そんなことを呟きながらよくよくビンのラベルを見た私は、ある重要なことに気づきました。
「トライアルボトル1週間お試し価格、ってことは……。もしかして」
指を折って計算を始める私。1日分が3錠ということは、1週間分で21錠。今まで私が飲んだのは、3錠+15錠で合計18錠。私が恐る恐るフタをあけて中身をみると、すでに3錠しか残っていません。
「どうしよう、これじゃあと少ししか大きくならないかも……。でもFカップあれば、雄太くんはきっと……。」
そう言いながら私は大きく発育した自分の胸を両腕で挟みこんだり、手でしたから持ち上げたりしました。「谷間」「重量感」という、今までに縁がなかった単語が腕を通して伝わってきます。
「でもFカップの子だったらクラスに1,2人は居そうだなぁ。それに……。」
私の脳裏にお姉ちゃんの顔と胸がよぎりました。お姉ちゃんのバイト先に通って常連になってまで思いを伝えた雄太くん。そう、私の一番のライバルはKカップのお姉ちゃんなんだ。お姉ちゃんの胸に比べれば私の胸なんてお城の隣に立つ一軒家くらいにしか見えないかもしれないんだ。私はそう考えるしかなかったんです。
雄太くんをどうにかして振り向かせる方法を考えた私でしたが、一日中考えたあげくに結局自分一人では何もできないと言うことを再認識することになりました。
「仕方ないよね。だってお姉ちゃんの胸、すごすぎるもん。私なんかかなわないよ。」
そう呟きながらメロンBBのビンを開けた私は、最後の3錠を牛乳で流し込み、歯を磨いて床につきました。ちなみに今日からはブラを着けて寝ることにしました。せっかく育った胸の形が崩れてしまっては困りますから……。
「明日お姉ちゃんよりも大きくなっていますように。」
ここまでが2日前までの私の悩みです。