理想の彼女

F_able 作
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理想
 窓の外は雨が降っている。雨粒が地面を叩く音だけが僕の耳に遠く響いていた。
 ここは僕の部屋。見慣れた位置にパソコンがあり、ベッドがあり、一人用の小さな円卓――ちゃぶ台が置かれている。それを挟むようにして、僕と葵は向かい合って座っている。向かい合うというよりは、僕は先ほどからずっと自分が座っている床しか見つめていないのだが。
「……その……」
 何分くらいだろうか……沈黙を破ったのは葵だった。言葉を選んでくれているようで、ゆっくりと発語してくれた。
「やっぱり、こーくんは……えっと……」
「…………」
 僕は俯いたまま、聞こえてくる彼女の声と、窓の向こうから流れてくる雨音と、交互に耳を傾けていた。雨脚は一向に収まる気配はない。
「……こういう女の人が、好きなの……?」
 ここで僕はようやく顔を上げた。
 葵が見つめる先には、ちゃぶ台の上に乗せられた一冊の雑誌がある。そこには水着姿の女性の写真が載っており、見出しには目立つ黄色い文字で『Eカップ大胆披露!!』とでかでかと書かれていた。


 僕の目の前にいるのは、幼馴染の日塔葵(にっとう あおい)。家が斜向かいにあり、幼少の頃から彼女の事はよく知っている。元気だけが取り柄の彼女は、僕と同い年ながらどこか幼く、一人っ子の僕にとっては妹のような存在だ。ずっと昔から僕を『こーくん』と呼び(これは僕の本名が我孫子幸平(あびこ こうへい)であることに由来する)慕ってくれている。小学校も同じ、中学校も同じで、高校はおろか受験した大学まで同じ。小中はともかく、高校や果ては大学にまで僕を追いかけてくれる人がいるのは冥利に尽きる話だ。何だかんだで約20年、ずっと葵は僕のことを思ってくれている。その結果、事実上僕ら二人は恋人になっていた。

 で、今日は葵が「こーくんの家に行きたい」と言い出したもので、軽く部屋を整理していた所だった。両親は出かけており、恋人を招き入れるのには最高のコンディションである。もっとも、ご近所ということで今更意識する必要もなかったわけなのだが。
 それはさておき、僕がちゃちゃっと部屋を掃除していると、葵が約束の時間よりも早く来てしまったのだ。勿論部屋は乱雑で、色々と物がごった返してたわけで――。


「……これを持ってるってことは、そう言うことなんだよね……?」
 葵は今にも泣きだしそうだった。もうすぐ成人する女の子が子供のように泣くのはどうかと思ったが、原因を作ったのは僕なので黙っていた。

 迂闊にも、葵に一番知られたくなかった者を知られてしまい、僕は心底参っていた。僕は所謂「巨乳フェチ」で、女性を見るときにまず胸を見てしまうタイプだった(世の女性が聞けばさぞ気持ち悪がられるだろう……)。性癖は幼い頃に体験した微々たるものが影響していると言われるようだが、幼稚園の時から母親の胸に抱かれる感覚が好きでたまらなかった記憶は微かに残っている。はっきり言うと、僕は胸の大きい女性が好みだ。
 それに対して、当の恋人である葵の胸は、お世辞にも大きいとは言えない。何度も言うようだが、彼女はもうすぐ20歳になる。なのだが、胸を含めて彼女の成長は中学生後半から止まってしまっているらしく、身長は158cmとかなり小柄。体の全面には、とても「おっぱい」と認知できるような膨らみは見えず、ある意味で見事な「壁」を形成していた。
 では何故この貧乳の葵を恋人にしたのかと聞かれると、答えるのは非常に難しい。やはり、いつまで経っても変わらない彼女の印象が根付いてしまっているのだろう。彼女を恋人にしたことで、僕のこの性癖もある程度は緩和されるだろうと思っていたのだが……そうなる前に、葵は僕の素性を知ってしまったのだ。

「……男の人って、みんなそうだよね……」
 正座した葵は、膝の上の握り拳にぎゅっと力を入れた。
「こーくんも、おっぱい大きいのが好きなんだね……」
「…………」
 まずい、何も言葉が出てこない。肯定すれば葵を悲しませるし、かといって証拠があるため否定することもできない。
「……やっぱり、こーくんは私の事、好きじゃないの……?」
「そ、そんなことないよ! 葵は可愛いし……そりゃ、昔から知ってるから、妹っぽいなぁとは思ってるけど……」
「けど……?」
 『おっぱいが小さいとだめ?』と、葵は目で訴えてくる。
 とにかく詫びよう、謝罪しようと僕は思い、深々と頭を床にこすり付けた。
「……ごめん」
「こーくんは謝らなくていいよ……その、私の胸が小さいのが悪いんだし……」
 葵は怒ってこない。だからこそ、僕は罪悪感が募る。葵は胸が小さいことを気にしていたし、そのことに更に拍車をかける結果となった。今度から今までのように彼女に接することが出来なくなりそうである……。
「……私、帰るね」
 葵はすっと立ち上がり、床とにらめっこしたままの僕の隣を歩いて、部屋を出た。彼女が階段を降りていく足音が聞こえ、だんだん小さくなっていく。いつもなら見送りに出るのだが、僕は誰もいない部屋でただ土下座を続けていた。


 葵が返った後、僕はその雑誌と睨みあっていた。
 僕がこの雑誌さえ買わなければ、葵は悲しまずに済んだのだ……。この雑誌があるから、葵は……。雑誌に腹が立つし、僕自身にも腹が立つ。ぶつける宛先の無い怒りが次第に高まってきた。
「畜生!」
 僕は雑誌をむんずと掴むと、壁に向かって放り投げた。背表紙の硬い部分がぶつかり鈍い音を立て、続けて紙がめくれる乾いた音が響いて、雑誌は床に落ちた。再び同じ行為をするため、僕は諸悪の根源に歩み寄った。
「……ん?」
 偶然開かれたページのある部分に視線が留まった。
 雑誌を拾い上げ、コラムのように区切られたスペースに目を通す。そこには、ピンク色の香水のような瓶の写真が載っていた。
「……『夢の豊胸剤・使えばあなたも立派なバストに』……?」
 見出しに書かれた文章を読み上げる。そこには、通販の雑誌に見るような売り文句で、この小瓶に胸を大きくする作用があることが書かれている。
「『この魔法の液体を服用し胸部マッサージを施すことで、胸の乳腺やリンパ腺を刺激し、乳房を大きくします。しかも、効果は永久持続。将来垂れることのない美しいバストを保証します』……」
 首を捻る。まずこんな物に、本当にそんな効果があるのだろうか。利用者の声といったメッセージも、この手の商品にお決まりの『効果には個人差があります』の文面すら見当たらない。他にあるのは、この小瓶の値段と、購入には記載されたアドレスをインターネットで検索してホームページにアクセスする必要があるとのことだった。その額、ジャスト1万円。……買えない値段ではない。アルバイトの貯金が数万あるので、切り崩せば何とかいけるか。
 ……って、何を考えているのだろう。確かに葵は胸を大きくしたいと思っているだろうが、こんなガセネタを試すほど馬鹿じゃないだろう。
「……でも……」
 葵を悲しませた責任は僕にあるわけだし……お詫びの気持ちも込めて、彼女に渡してみるのもいいかもしれない。もし偽物だとしても、体に害があるわけではなさそうだし……。
 僕は決心して、パソコンを立ち上げた。インターネットに接続し、明記されたアドレスを入力して、サイトに飛んだ。
 そこには、先ほどと同じような小瓶の写真とその紹介文、そして配達の際の住所登録フォームが表示されている。一瞬戸惑ったが、もう後には引けないような気がした。これで葵の胸が大きくなってくれれば、僕の恋人として自信を持ってくれるだろうし、何より僕が一番嬉しい。葵の胸が、雑誌の表紙を飾るグラビアアイドルのように大きくなった姿を想像すると……いかん、下半身に血液が集結する。
「……よし!」
 僕は自宅の住所を入力し、意を決して送信ボタンを押す。
『手続きが完了しました。商品は3日以内にお届けします。代金は商品の到着と共にお渡しください』と画面が切り替わり、購入は完了したようだ。
 ため息が出た。ホントにこれでよかったのかな……?


 それから数日、葵と僕はなんの確執もなく普通に接した。同じ電車に乗って大学に行き、同じような授業を受け、取ってない講義の時間はお互いに時間を潰して、昼食は一緒に食べて――。
 友人からは「末永く爆発しろ」と、嫉妬とも称賛ともとれる言葉を投げかけられる。その位、僕と葵の関係は恋人と呼ぶに相応しい所まで発展していた。……それなのに、僕は彼女のコンプレックスを刺激するという大罪を犯している。何でもないように振る舞っている葵だが、時折下を――自分の胸を見ていることがあるのを僕は見逃していない。
 でも、もう少しだ。もう少しで、あの小瓶が届く。そうすれば、葵は……。
 期待と不安が入り混じる中、3日が経過した。


 小包が届いた。休日で運良く親は不在。よく見る宅配業者が送ってきたため、怪しい感じは無かった。その場で代金を渡し、半分呆然とする僕をしり目に業者は帰っていった。
 それを持って自室に駆け込み、恐る恐る開封する。そこには、綿の中に大事そうに包まれた、あの小瓶が入っていた。
 手に取ってみると、それは僕の手の中に納まる細長いガラス瓶で、可愛らしい花のイラストが小さくプリントされている。初めてゲーム機を買った時のような心臓の高鳴りを感じながら、僕はしばしその瓶をいろんな角度から眺めた。揺らしてみると、一見するとイチゴ・オレのようなピンク色の液体が小さく波打つ。一度小瓶を綿の中に戻し、同封された取扱説明書に目を通した。
『この度は本製品をご購入いただきありがとうございます。
 この製品は、女性の乳房を大きくする成分が含まれています。これを服用した後、胸部マッサージを施していただきますと、乳腺やリンパ腺を刺激して胸を大きくすることができます。更に効果は生涯にわたって継続されます。1回分ですので、全て服用してください。水で薄めるなどすると効果が低下しますので、原液のまま服用してください。また、男性に対して効果はありません』
 ……いざ読み返すと、非常に胡散臭い。
 本当にこれは豊胸剤なのか? イチゴ・オレを騙されて買ったのではないだろうか? 万が一ガセだった場合、葵の身体は大丈夫なのか?
 様々な疑問が浮かび上がってきたが、必死に振り払う。これは葵の為だと自分に言い聞かせた。
 あとは、これを葵に服用させ、胸部マッサージをするのみだ。
「……これも、葵の為だ……」
 僕は小瓶の入った箱を大事に押し入れにしまった。


 その時が来たのは、小瓶が届いてから1週間後の休日だった。
 何故かこの日も我が両親は不在で、僕は自室で一人ネットサーフィンを満喫していた。様々な巨乳女性を扱った画像サイトを駆けずり回り、固くなった我が息子の面倒を見たりしていた。葵との関係も次第に回復してきて、小瓶のことは半ば忘れかけていた。
そんな中、携帯電話が突然鳴った。
「……お」
 葵からだった。家が近所だというのに、訪問の度に連絡を入れてくれるのが彼女の律儀なところだ。
「もしもし、葵?」
『あ、こーくん。今から行ってもいい? お父さんもお母さんも出かけてるんだー』
「うちも出かけてるから、いいけど……」
 そこまで言って、ようやく小瓶が記憶の引き出しから飛び出してきた。僕は携帯電話を片手に押し入れを開けると、そこには1週間前と同じように小包があった。
『……どうしたの?』
「い、いや、なんでもないよ。おいで」
『うん。じゃ、今から行くね』
 電話が切れた。葵の声が電子音に変わったのを確認すると、僕は小包を開けた。綿に包まれた、ピンク色の豊胸液(多分)が入った小瓶。僕はそれを手に取ると、これをどうやって葵に飲ませるかを考えた。素直に「胸が大きくなるよ」と言って飲んではくれないだろう。しかし、コップに注いで飲み物に見立てるにはあまりにも少量。薄めるのは厳禁と書いてあったし、ここはひとつ彼女の口に強引に流し入れるしかなさそうだ。
 そうこうして1分立たないうちに、玄関のチャイムが鳴った。僕は小瓶を後ろ手に隠しながら階段を降り玄関に向かう。空いている片方の手で扉を開けた。
「やっほー」
「いらっしゃい」
 葵は白いブラウスを着ていて、明るい笑顔で挨拶した。靴を脱ぎ、ぱたぱたと小走りで僕の横を通り過ぎて行く。小瓶には気付かなかったようで、まずは一安心。僕は彼女の後を追って2階に上がった。
「こーくん、ゲームしよ! ゲーム!」
「いいよ。何する?」
「テトリス!」
 20歳の大学生が言う言葉じゃないでしょ……と心の中で呟きながら、僕は夢中でゲーム機にケーブルを繋ぐ葵を眺めていた。葵が背を向けたちゃぶ台に、こっそり小瓶を置く。これをどのタイミングで持ち出すか、僕はゲームをしながら算段を立てることにした。


 ――数時間後。
「あー! また負けたー!」
 僕は絶叫した。葵はゲーマーだ。どのジャンルでも彼女に勝つのはごく稀である。
「こーくん下手だもん。持ってるのに何で練習しないの?」
「ゲームの練習よりもすることがあるからだよっ」
 僕は負け犬の遠吠えを吐き捨てて、窓の外に目をやった。すっかり日が落ちて、空は茜色に染まっている。
「……帰らなくていいの?」
「もうちょっと」
「そっか。……何か飲む?」
「オレンジジュースがいいな」
「了解」
 僕は立ち上がって、飲み物を取りに階下に下っていった。
 リビングを通り過ぎ、冷蔵庫の扉を開く。オレンジジュースは……残念ながら無かったが、イチゴ・オレの2リットルパックがある。代わりにこれでいいか、と僕は二つのコップを持ち出し、パックからピンク色の液体を注ぎいれる。

 ……ピンク色の液体。
 ……ピンク色の液体……?

「……しまった!」
 小瓶を手放している! 僕はパックを激しく台所に立て置き、急いで2階に戻った。半月前の雑誌と言い、我ながら肝心なところで詰めが甘いことに定評がある我孫子幸平である。
「葵!」
 僕は自室の扉を開け放った。
 そして、僕は目を疑った。床に葵が倒れている。ちゃぶ台の上には……空になった小瓶が転がっていた。
「……あ、葵!」
 絶望感に苛まれながら、僕は葵を抱きかかえた。やはり服用してしまったようで、口元に微かにピンク色の液体がついている。意識こそあるものの、葵は苦しそうに荒い呼吸をしていた。
「こ……こー、くん……」
「葵! しっかり!」
 僕が彼女の身体を揺すると、葵は苦悶の表情で、僕に訴えかけてきた。
「はぁ……はぁ……なんか、私……」
「どうしたの?」
「か……体が、熱い……の……」
「えっ……!?」
 僕は葵を一度ベッドに寝かせ、急いで押し入れから箱を引っ張り出し、取扱説明書を再び眺めた。そこで、1週間前に見落としていた文面を発見した。
『服用すると一時的に心拍数が上がり、人によっては感度が向上します。一時的なものですので心配はありません』
 心配あるだろどう考えても! と心の中で突っ込むはいいが、ベッドでは葵が苦しそうに悶えている。僕はその彼女の表情を見ているうちに……。
「……う」
 不覚にも興奮してしまった。AV女優が喘ぐ様に、切なそうな吐息を吐く葵。今まで見てきた彼女の姿のどれより、この瞬間が一番『女』を感じさせるものだった。そして、僕の『男』の本能が瞬時に囁く。
 ――胸部マッサージは、今しかない!
 僕はごくりと生唾を飲みこんで、ベッドの上の葵に近づいた。
「こ……こー、くん……っ!」
「葵……今、助けるよ」
「えっ……? あっ……!」
 僕は彼女に跨った。着ていたブラウスに手をかけ、ボタンを一つ一つ外していく。
「こーくん……! 何、して……!」
「葵……葵が飲んだそれは、僕が買った豊胸剤なんだ」
 早口で説明しながら、今度は彼女インナーを強引に引っ張り上げる。
「ああっ……んん!」
 今まで聞いたことのない、葵の色っぽい声。今まで妹として見てきた女性が、ここまで淫らに体をくねらせている。僕の中の『男』は次第に肥大化していた。
「この薬を飲んで胸を揉むと、大きくなるらしいんだ……葵が喜ぶと思って、僕は……」
 インナーも脱がし、彼女の肌を隠すものは可愛らしい緑のブラジャーのみとなった。
 と、ここで異変に気付く。心なしか、彼女のブラはどこかきつそうに見えた。もともと貧乳の彼女もブラを着用していたのはこの際どうでもいい。それよりも、彼女の胸は微々たるものの、明らかに大きくなっている。薬効は本当のようだ。
「僕は、葵の胸を……大きくしたい!」
「ひゃぁんっ!」
 僕は遂に彼女の背中に手を入れ、ホックを外した。半ば強引にブラを外すと、彼女の慎ましい胸がそこにはあった。なだらかな二つの丘の頂上には、しきりに天を仰ぐ蕾が咲いている。
「こーくん……こーくん……!」
「葵……ごめん!」
 もう止められない。誰が止められるというのだ。僕は夢中で、彼女の胸に手を重ねあわせた。その瞬間、彼女の身体が激しく跳ね上がる。
「はあぁぁんっ!」
「ご、ごめん! 痛い?」
「はぁ……んんっ……い、痛く……ないよ……。ちょっと、ぴりって……した、だけ……」
「じ、じゃあ……」
 僕は改めて、優しく葵の胸に手を置いた。まずは指先の圧力だけで、軽く押すように刺激を与える。
「あっ……! ん、んくっ……! うぅんっ!」
 大きな声を出さないように堪えているのか、葵は右手の甲を口にぎゅっと押し当てている。怯える小動物のような彼女の挙動は、僕の性欲を激しく掻きたてた。
 変化は徐々に表れてきた。最初はあばら骨の硬い感触が指先に感じられたが、次第にそれが無くなっていき、柔らかいものになっていく。やはり、葵の胸は大きくなっているようだ。今度はある程度膨らんだ胸を、指先で軽く揉み解していく。
「ん! んんー! ふっ……んくっ! ん、ん、んぅー!」
 喘ぎ声を出す葵は、一切抵抗してこない。まるで、僕に全てを委ねているようで……実際にその通りだった。僕の手の中で、胸はどんどん大きくなっていく。内側から何かが注入されているように、ぷるぷると震えている。とうとう僕の手のひらに収まるまでに成長した胸を、今度は上下から挟み込むように揉んでやる。
「んあっ! あはぁ! ああぁん! あんっ! あぁー!」
 とうとう葵が右手を口から離した。快楽の声が僕の部屋全体に木霊する。近隣住民のことなど既に念頭にはない。ただ、葵の胸を大きくしたい、葵を気持ちよくしてあげたいことの一心だった。
 数分前まで壁同然だった胸はあっという間に巨大化し、左右から押し寄せれば谷間が作れるまでに成長した。しかし、まだまだ葵の膨胸は止めさせない。今度は上から彼女の胸を鷲掴みにする。
「あああっ! そ、それぇぇ! らめえっ!」
 口からだらしなく涎を流し、呂律の回らない言葉で葵は喘ぐ、ダメと言ってる一方で、体は確かに快楽を求めていた。僕が揉むたびにむにむにと脂肪分が増してゆく。ついに僕の指が彼女の胸に埋もれはじめた。それでもなお、僕は胸を揉み続ける。
「ひっあっああっ! こっ、こーくん! こーくぅぅん!」
「葵……葵……っ!」
 とうとう自然に谷間が形成できるほどにまで胸は成長した。高校生に満たない身長でこの胸を持つ女性を僕は見たことが無い。その女性が僕の彼女で、今目の前で僕に身を委ねている――それが僕にとって最高の瞬間だ。何にも代えがたい、思い描いた理想の女性だ! 僕の手で、葵を理想の女性にしてみせる!
「あうっ! ふあぁぁ! こーくん! い、いい! きもひいいよぉ!」
「葵……もう、少しだから、ねっ……!」
 とうとう葵の胸は、僕の片手には収まりきらないほどにまで成長した。力を込めて握ると、指の間から肉がむにっとはみ出す。今まで触れた何よりも柔らかく、弾力に溢れた葵の胸。「おっぱい」と形容するに相応しいものにまで膨らんでいる。
 もうこのくらいでいいだろう。僕はそう思い、胸から手を離そうとした。
 だが――。
「も、もっとぉ! こーくん! もっとしてぇ!」
「うわっ!」
 葵が両手で僕の手首を掴んできた。この状態だと、彼女の胸から手が離れない。否が応でも彼女の胸には刺激が与えられ続けている。
「んあああ! こーくんのて、あったかくてきもちいいのおぉ! もっとぉ、あおいのおっぱい、おっきくひてえぇ!」
 もう止められない。葵は更なる快楽を求めて僕にすがり、胸は更に大きさを増していく。綺麗な肌は汗で濡れ、宝石のような輝きを放っている。僕の今までの葵のイメージとはかけ離れた、官能的で美しい女性の肢体。僕の中の野生は既に限界だった。僕は愛しい恋人の唇にめがけて、僕の唇をあてがった。
「んっ! んんーっ! んふぅー!」
 くぐもった声が口内で反響する。初めてのキス以来したことが無い深い口づけをする。舌を絡めあい、お互いの唾液を交換する。その間も胸部への刺激は怠らない。ますます葵の胸は大きさを増していき、遂には一般的に巨乳と言われる範疇から爆乳へとレベルを上げる。僕は唇を離し、緩んだ葵の手を振り払って、今度は可憐な蕾にキスをした。
「んひゃあああああ! それらめぇぇぇぇ!」
 この日一番の絶頂を迎え、彼女は快楽の叫びをあげながら体を何度も痙攣させた。張り裂けるような声が部屋中を満たし、一瞬のはずだったその声は1分くらい続いたような気がした。
 葵はぐったりと力尽きた。僕も彼女の胸から口を離し、息も絶え絶えにその全貌を目視する。ここまで何分の出来事だったろうか……先ほどまでは微かな膨らみさえなかった葵の胸は、彼女の頭ほどもある大きさにまで成長していた。
 ああ……これが、僕が夢見た理想の胸だ。その胸を手に入れたのが、他でもない僕の恋人、葵。これがどんなに嬉しいことか! 僕の彼女は、他の誰にも負けない素敵なおっぱいを手に入れたんだ!
 ……と、自己満足も程々にして、僕は絶頂の余韻を感じる葵に囁いた。
「……おっぱい大きくなったよ、葵」
「んっ……」
 僕は葵の肩を抱いてゆっくりと起き上らせた。ぼんやりと焦点が定まらない彼女だったが、次第に自身の前に誕生した二つの膨らみを目にし、軽く手を触れてみた。
「んっ……!」
 まだ薬効が残っているのか、少しだけ葵の胸は膨らみ、たぷんっと上下に揺れた。下から持ち上げるようにすると、ぐにゅっと重量感を感じる様子で、さらに何度も持ち上げると、たぷたぷと表面が波打つ。
「……え、えへへ……」
 葵は嬉しそうに笑って、僕の方を見た。
「これで……ホントにこーくんの彼女になれたんだぁ……嬉しいなぁ……」
「……ありがとう、葵」
 僕は彼女を抱きしめ、こっそり横から胸を揉んだ。
「あ、やんっ……! もぉ、こーくんのえっち……」
 葵はそう言って、僕に軽く口づけてくれた。

(了)