天浄封滅記

フェルディナンデ 作
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プロローグ

人間と仙道と妖怪が共存する世界。
この世界で生きる全ての者は桃源郷と呼んだ。

「白蓮神徒よ。そなたに十老仙の権限を持って命ずる。弥勒法師、羅刹戒王、剣竜童子を引きつれ、千年前に我らが封印した大妖怪を完全に浄化すべく、悪夢の城――夢幻城へと向かうがよい」
「この計画を天浄封滅計画と名づける。このことは天上界でも極秘とする。我々十老仙と一部の上級仙道しか知らぬ事項だ。安易にその他の者や仙道に話さぬよう頼むぞ、白蓮神徒よ」
「御衣にございます」

ページ・1「男たちは駆け出した」
「極秘、か」
俺は十老仙直々のご指名の三人と合流すべく、待ち合わせの場所へと向かっていた。

「意外と早く着いたな」
思いの他、馬車は目的地に早く着いてしまったのだ。まだ三人は来ておらず、暇な時間をもてあそぶためこの辺りをふらつこうと周りを見回した時、茂みの中にかすかに何者かの気配を感じた。
気になった俺はその茂みに近づいてみた。
「ワッ!」
その茂みの中から現れたのは三人の内の一人、剣竜童子であった。
その無邪気な笑顔にはまだ子供らしさが残っていて、右眼が蒼、左眼が紅のオットアイの少年だ。
「よ、白蓮。あいつらは来てないの?」
「ああ、まだ来ていないみたいだ」
「そっか。ま、しばらくすりゃ来るだろうし一緒に待っとこうぜ」
俺は辺りをふらつこうと思っていたが、剣竜がいるため二人で待つことにし、その場から立ち去ろうとしたその時、複数の殺気を感じた。剣竜も俺と同様、複数の殺気を感じていた。
数は20…いや、もっといる。どんどん、ここに集まっていることに気付いた俺は、
「剣竜、俺から離れろ」
剣流は俺が何をするかに気付き、すばやく俺から離れた。
それを確認すると、すぐさま陣を地面に空書きした。すると、地面には俺が空書きした陣が光とともに浮かび上がった。陣の上に両手をかざし、俺が術を唱えようとした瞬間、茂みに隠れていた妖怪が一斉に俺に襲い掛かってきた。
しまった……。
この瞬間を狙われていたか。
俺は術の体制に入ってるため、通常攻撃が出来ない。剣流は俺に襲い掛かってきている妖怪の倍以上を相手にしていて、とても余裕がない。
俺は早く唱えようと急ぐも間に合わない。
駄目か、と覚悟したその時、襲い掛かってきた妖怪の大群が一瞬にして灰となり、風とともに彼方へと消えていった。
「おやおや、仕方がないねェ。白蓮」
向こうで妖怪と戦闘していた剣竜が全部斃しこちらに戻ってきた。
「あー、やっぱり弥勒か」
弥勒と呼ばれた青年は肩まである黒い髪をなびかせらがら答えた。
「剣竜、さっきから見ていたけど遅すぎだよ」
「って、いたのかよ。なんで助けてくれないんだよ」
「二人がピンチになったら、現れようと思ってね。」
剣竜が弥勒の後ろにまだ妖怪がいることに気付き叫んだ。
「弥勒、後ろ!」
このことに弥勒は微動だにしなかった。
「フフ…」
その顔には自分が危険にさらされようとしているのに笑みを浮かべていた。
襲い掛かってきた妖怪が真っ二つにされ、崩れたように地面に落ちた。
「弥勒よォ、俺に働かせようとさせんなよ」
「羅刹、それは違うよ。君が勝手にやったことだろ?」
弥勒は当たり前のように羅刹と呼んだ短髪の髪型が似合う男に言った。
「テメッ…マジでムカつく奴だなァ、おい」
羅刹はあまりの弥勒の一言に我を忘れかけていた。それを見た剣竜が二人の間に割り込むようにして入った。
「二人とも落ち着けって。なんでいきなりケンカし出すんだよ」
「まだしてねーだろうが」
「同感だね」
「ウ…アッ……」
三人が駄弁っている後ろ側にまだ妖怪が一人血まみれになって倒れていた。その口元からうめき声がもれている。それに気付いた白蓮はその妖怪のもとへ向い、腰を下ろした。
「誰の差し金だ?」
「貴様らめ……あの方に…逆らうとは…愚かな」
「誰の差し金だと聞いている。誰の命令で俺たちを襲った」
その妖怪はなんとか瀕死の体で声を発した。
「…ヘッ、教え……る…か……よ」
そう言い終えると妖怪は息を引き取った。
「何が…何が起ころうとしている?」
「これも千年前に封印した大妖怪とやらと関係しているんだろうね」
「ケッ、どーやら大変なことみてーらしいな」
「ま、誰でもいいんだけど。俺たちに阻む奴が誰であろうと俺たちは俺たちを貫き通すんだからな」
そう、剣竜の言うとおり俺たちは俺たちの目的、天浄封滅計画を遂行すること。
それは誰であろうとも俺たちは俺たちを貫き通す。
そして、四人は夢幻城への長き道のりを歩みだしていった。