ブレストコントローラー

ハリナ 作
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 机上には、ご飯や御数が並べられている。

 しかしカナは食欲が無く、お椀からご飯が一向に減ることはなかった。

 ビーチボールよりも大きいこの胸のせいだ。

 無理にファスナーを上げた胸がきつくて堪らない。それでも襟まで閉めることができず、さらけだされた上乳がスースーして肌寒い。

 母に大丈夫かと何度も聞かれたが、大丈夫の一点張りで通した。

 胸が大きく普段より御数が取りづらい。

 口の中を彷徨うご飯を喉へ流し込もうと、麦茶が湛えられたコップを手に取る。

 口に運ばれたそのコップから垂れた一滴の雫が上乳に零れ落ちる。

 冷たさに敏感に反応するおっぱい。

「ひゃ!」

 まるでおっぱいが驚いたかのようにぶるるんと激しく飛び出したことに仰天し、手を滑らせてコップを胸に落としてしまう。

 零れた麦茶は胸の渓谷に滝のように流れ込み、おっぱいはさらにビクンビクンと敏感に反応する。

「ひゃうう!冷たい!」

「何やってるの。 濡れたなら、お風呂先に入っちゃって」

 カナは胸と胸の間が濡れて冷たい貧乳には解らない独特の気持ち悪さを感じていた。




 食欲も無いので、素直に風呂場に向かうことにした。

 濡れたジャージがぴっちり張り付いて気持ち悪い。

「ひゃぁ!」

 ファスナーを下げると、押さえつけられていた胸がぶるんと弾み、勢いよく飛び出した。

 そして浴槽から湯を掬いって浴びると、胸がぶるんぶるん激しく揺れる。

 カナは少しの動作で揺れるこの胸にうんざりしていた。

 確かに在るおっぱいの感覚が、あっちに行ったり、こっちに行ったりするのに堪えられないからだ。

 浴槽に張られた湯に浸かり、昨日までは無かった谷間を覗く。

(うぅ……おおきいよぉ……)

 ビーチボールが二つくっついたような自分の胸を、改めて大きいと思った。

 未だに胸がムズムズする。とりあえず胸をさするが、収まることなどは無かった。

「ひゃう!?」

 代わりに、感触に敏感なおっぱいが水を弾いて勢いよくぶるんと揺れた。





 その頃、ダイチは自分の部屋でコントローラーを握り、カナのことを思い出していた。

 正確には――ムクムクと大きくなり、ぶるんぶるん激しく揺れる胸のことを――だったが。

「はぁ……」

 深い溜息をつきながら、黒い画面のコントローラーを握りカチカチとマルチジョグを回す。

 画面が消える省電力モードになっているだけで、まだロックオンされている事を知らなかった。

 ダイチは電源が入っていないものと思い込み、無意識にボタンを押したり、レバガチャしたりと、好き放題をしていた。





 違和感を感じるカナの胸だったが、それに増してさらに激しい違和感が襲い掛かった。

 胸にかかる圧力が大きくなり、内側から皮膚が押し出される感覚。

「ん……ま、またぁぁ……?」

 胸がぐいんぐいんと膨らみ、震えだす。

 水面に波紋がひろがり、おっぱいがばしゃばしゃと音を立てて跳ねまわる。

 その光景を例えるならば――おっぱいがバタ足している――そんな感じだ。

「ひゃぁん……ぃいやぁぁんッ!!!」

 自分勝手にめまぐるしく乱舞するカナの胸。上下左右に激しく舞うおっぱいが、浴槽で跳ね返る。

 そして円を描くように弾けるおっぱいが、乳房同士で勢いよく擦り付け合った。

 カナから飛び出さんとあらゆる方向へ暴れている胸がグイッと締め付けられる。

 ぎゅうぎゅうに押し縮められたおっぱいが、激しい振動に伴い今にも爆発しそうになっていた。

「ひゃ……ひゃ……ひゃぅ……」

 もぞもぞと内側で蠢くおっぱいに渦巻く膨張感が止まらない。

「もういやあああああああああああああッッ!!!」



 そのとき不発弾が爆発した――かに見えた。

 それは胸が超急速な膨張したのだ。まさに爆発するような勢いでだ。

 おっぱいが激しく膨らむ感覚を感じたかと思うと風呂の中の水が一瞬で胸の体積に押し出される。

 ゆったりとした風呂は、おっぱいでいっぱいになってしまった。

 ダイチの意図しない手動操作により、一瞬でさっきの数倍にまで膨れ上がってしまったのだ。

 カナの体は非常識な大きさの胸に潰されていた。

 浴槽いっぱいに膨らんだ胸を少しでも抑えようと、ムギュっと手で胸を押し込む。

「はぁぁぁん」

 胸がブブブと震えながら、ぐにぐにッと変形する。そしてその振動は、ばいんばいんと激しく波打つように大きくなり、激動へと変化した。

 しかもまだムクムクと膨らんでいるようだ。

 その胸はとどまることを知らず、カナの鼓動と共にバインッバインッと強く大きくはちきれんと膨らみ続けた。

 膨張が止まらず、今度は水ではなく――おっぱいが風呂からあふれ出してしまった。

 胸に滴る水が厭らしく輝いている。

 そして彼女の顔は、大きくなった胸に完全に埋もれ、口と鼻がむにゅにゅっと塞がれてしまった。

「もういやぁ……」

 膨張する胸に押し潰され、さらに沈みながら嘆くのであった。

 どんどん膨らむおっぱい。

 浴槽から溢れだす胸がついにカナの視界を真っ暗にした。

「あぶ……助け……」

 膨れ上がるおっぱいの圧力に耐えられず、浴槽というダムが決壊した。

 おっぱいは外へ流れ出すように弾みながら膨らんだ。

「はぁ……はぁ……はぅ!? はぐ、あああああああああああああああああん」

 胸から逃れることができたと思った瞬間、燃え盛るような新たな膨張感。ぐいんぐいん大きくなる乳房。まるで胸の内側から何かが弾けているような感覚。

 カナの理性がそのおっぱいが膨らむ感覚を、快感には変えまいと必死に抗っていた。

「ッッッッッッ!!!!」

 見えない足に思い切り蹴られたような衝撃が走り、おっぱいは縦横高さと三次元な方向に勢いよく膨らんだ。

 浴場いっぱいに敷き詰められたおっぱい。それは壁に合わせ形を変え、そのしめった壁の感触がカナの胸に確かに伝わっていた。

 三方の壁と半透明の蛇腹扉、床、窓、そして天井に押さえつけられたおっぱい。

「きッついいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!!!」

 それはカナの体が押し潰されていることと、胸が周りに押さえつけられていること、そして胸そのものが詰め込まれすぎてはちきれそうという三つの意味を持っていた。

 膨らみ続ける胸に押し潰され、呼吸することがほとんどできない。

 さらにバンバン膨らむ胸に、壁や天井がミシミシ音を立てる。

 浴室の窓がバリンと割れ、窓枠にあわせぶにゅると外に向かっておっぱいが飛び出していく。

 胸に押し出され窓枠がガタガタと音を立てる。

 不思議なことに、張り詰めてぷるんぷるんな弾力を持つおっぱいは、割れたガラスをぷるんッと全てはじき返し傷一つつかなかった。

 胸に張り詰める苦しさが限界に達したとき、外から見たら全面肌色になっている蛇腹扉が、メキメキと音を立て、轟音とともに倒れる。

 押さえを失ったおっぱいは扉に合わせ変形し、洗面所へ質量が思いっきり流れていく。

 胸が飛び出したおかげで、なんとか呼吸できるようになったカナ。しかし胸はなおも止まらず、壁を伝うように変形し続ける。

「どうしたのおねえちゃーん!!」

 駆けつけたナナと母親は圧倒された。洗面所全体が巨大な脂肪に侵食され、おっぱいが壁を呑み込んでいく光景に。

「カナ! 大丈夫!?」

 目の前の謎の物体に母親は声を張り上げるが、カナの返事は返ってこない。

「これ……まさかお姉ちゃんの胸……?」

 カナのムクムク大きくなる胸を思い出していた。

 ナナは思わず腕をその部屋を飲み込まんとする乳に押し込んだ。すると腕から体全体を、壮絶な柔らかさでずぶずぶと蟻地獄のように飲み込んでいく。

「きゃああああ」

 胸から抜けない腕。左腕で抑えようとするが、飲み込まれてしまう。

「何これ!? どうなってるの!?」

 母親に引っ張られようやく脱出することができたナナ。

 おっぱいのせいで、浴場はもちろん、洗面所の壁さえもが悲鳴を上げている。

 洗面所の扉が破壊され、廊下に勢いよく飛び出てしまったおっぱい。

『きゃぁぁぁぁぁ!!!!』

 家が崩れてもおかしくない質量と体積が浴場と洗面所に渦巻いている。

 それでもミッチミチに変形しながら、まだ大きくなっていく。

 家が崩壊するのは、時間の問題に思えた。

「お姉ちゃんを助けないと!」

「どうやって!? とにかく逃げよう」

「でもさ! きゃあ! こっちきたぁ!!」

 洗面所を越え、廊下におっぱいの津波が勢いよく押し寄せる。

 呑み込まれないように急いで逃げ出す二人。

 家の内部にあわせ広がっていくおっぱいは、家を崩壊させないのは奇妙としかいえない。

 おそらくソフトで柔らかなおっぱいを育んだ、コントローラーの設定によるものだろう。

 カナもコントローラーに守られて、これだけのおっぱいに潰されながらも無事であった。

 そのとき、地面がゴゴゴと揺れた。

 その揺れの大きさはどんどん増してゆき、家全体が激しく震えた。

 箪笥や棚が倒れ、食器が割れ、次々に大きな音を立ててゆく。

 震度7に近い地震が起きた。しかしその振動は、地震――地面の振動によるものではなかった。

 もはや直径何Mあるかさえわからないおっぱいが震えだし、加速、高速振動して、大きな地震のようなものを生み出したのだ。

 膨らみながら震える胸にもう耐えることはできなかった。

「もうだめぇええ……気持ちぃ……いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!!」

 今まで理性に押さえ込まれていたヒトとしての本能がとき放たれた。

 大きくなる胸を受け入れて、膨らむ快感に目覚めたのだ。

 快楽に身を任せたその瞬間、その脂肪が光輝いたかとみれば、おっぱい全体に波が走り、解き放たれたバネのように一瞬にして大膨張する。質量と体積が爆発し、周辺のものを勢い良く吹き飛ばした。

 家は全壊こそしなかったが、半分以上吹き飛び、もはや原型はとどめていない。

 その胸は隣の家の壁さえも突き破り、ブルンッッブルンッッッと瓦礫を吹き飛ばし、所狭しと暴れまわる。

 そしてそこには、住宅街にはとても似合わない、家よりもふた周りほど大きな、肌色の二つの城――おっぱいが、煙を巻き上げ星の見えない空に向かってそびえたっていた。

 だがしかし、馬鹿みたいに大きな胸は夜風にさらされ、轟々と震えながらまだ大きくなっている。

 本能に従順になった、カナの意思と同調するように止まることはなかった。カナは『胸が膨らむこと』に快感を感じるようになっていたからだ。

 おっぱいの大きさに伴い、その快感も増していく。あまりにも大きい胸が与える快感に耐えられるはずなかった。

「はぁぁぁぁぁぁ……もっとぉ……!」

 天国に昇華したようなカナの意識が、さらにおっぱいが大きくなるエクスタシーを求めていた。

 快感と共にぐんぐん大きくなる胸。その止まることを知らないおっぱいは大地が割れそうな轟音を響かせて一気に膨らんだ。

 カナはもう自分の意識を制御できず、膨らむ快感を感じたいという欲望だけでおっぱいをさらに大きくする。

 膨らむスピードがさらに上がり、どんどん大きくなるおっぱいは、カナに清清しい快感を与え続けた。





「はぁ……カナちゃん、どうなったのかな」

 ベッドで天井を見上げるダイチに罪悪感が渦巻く。揺れ弾むおっぱいが、頭に焼きついて離れることは無かった。

 ふと、光っているボタンが視界に入る。

 所謂省電力モードになっていただけで、まだコントローラーの電源が入っていることに気づいた。

 拾い上げ、裏についている電源ボタンを長押しで強制的に切る。今カナがどんな目にあっているかも知らずに。





 非常識を超えたおっぱいはさらに大きくなり、ビクンと震え、家をなぎ払うように回転する。さらに暴れ狂うそれは地面に叩きつけられて、地震を引き起こした。

 その反動で天高くバウンドし、ぼよんという柔和な轟音を響かせて飛び跳ねたと思うと、まるで風船が萎むように小さくなった。

 そこには、家を押しつぶしたそびえたつ山はなくなっていた。

「うへへへぇ……気持ちいぃ……」

 快感に溺れ、笑顔で口元から涎を垂らすカナが、直径1mのバランスボールより大きなおっぱいをぶるんぶるんと激しく揺らし、かつて浴室だった場所で倒れていた。

 微かに踏みとどまっていた、空虚の快感に夢心地の意識が、プツンと途切れた。